【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第325話 激闘、勝機の糸を手繰り寄せ

 戦場の状況は加速的に変化を続けていた。

 

 本来ならばあり得ることはない、Sランクの探索者とSランクの魔物の戦い。

 ダンジョン空間として広がる千界学園の中で起きたその戦いは、終わる兆しを見せなかった。

 

「ハハハハハッ! ぶん殴っても斬っても死なねェ! こんなに面白ェサンドバッグは初めてだぜェ!」

 

 地絃天星埜御霊の砲撃を六波羅は真正面から突破する。

 探索者の肉体であれど一瞬で蒸発する威力のそれを彼は無敵の力により完璧に防いでいた。

 

「痛くも痒くもねェなァ! また最初の一発みてェな、でけェのくれよォ!」

「それ私が死ぬんですけどー!」

 

 リュウコは地絃天星埜御霊と六波羅を見上げながら言った。

 彼女は八岐大蛇となったバルティウスの首の付け根で体を縮こまらせている。

 

「バルティウス! 火とか毒とか!もっと吐いて!」

 

 主の命令でバルティウスは八つの頭から地絃天星埜御霊へと様々なブレスを放つ。

 六波羅ごと巻き込んだブレスは、しかし次の瞬間には一瞬にして霧散した。

 

 巨大な翼の羽ばたき一つで、地絃天星埜御霊は神話に語られる怪物の攻撃を無力化したのである。

 

「手数で攻めようと思ったけど、ミスったかも……。こんな事なら、最初からラグナロク使っとけばよかった」

 

 彼女にとってそれは切り札であり、使ってはいけない最後の手段でもあった。

 とある神話の終わりを順に再現するその力は、彼女の体へと凄まじい負担を掛ける。

 既にここまでスルトや八岐大蛇を使用している彼女にとって、ラグナロクを使うのは自殺行為に等しい。

 

(でも、今なら誰かが蘇生してくれる。私も救ってくれるって確信がある!)

 

 故に、リュウコは常に勝機を伺っていた。

 強力な神話への龍位継承の残り回数は一回。

 

 それが自分へと死をもたらそうとも、有名人を救い自分の好感度を上げられるならばそれで構わなかった。

 

(……いや、待ってやっぱりミユメちゃんの治療は駄目かも。私、六波羅さんみたいな酷い治療されたらお嫁にいけないよ~!)

 

 彼女の心の中は、やっぱりいつも通りだった。

 

「六波羅さん、私はアレを使う! その分の魔力が丁度一回だけあるから、何とか隙を作って!」

「ハハッ、いいねェ。やっぱお前連れてきて正解だったぜェ!」

 

 地絃天星埜御霊の攻撃を双剣で受け止め、八岐大蛇へと着地した六波羅はリュウコの言葉に笑みを浮かべる。

 

「が、そいつは駄目だなァ」

「えっ、なんでよ! いっつもラグナロクとかアジダハーカとかすぐに使わせようとするくせに!」

『お前ぇ! スケスケバニーリーダーの意見に逆らうのかぁ!?』

「お前だけ思考別の事に割いてんだろオイ」

 

 双剣をぶんぶんと振ると、エイナは『ごめんさいぃ!』と情けない謝罪の言葉を何度も口にする。

 リュウコは納得できないのかバルティウスの首から顔をひょっこり覗かせたまま抗議をした。

 

「私がここで死ねば、すっごく丁度いい美談になるの! そんで、後で生き返らせて! あ、でもミユメちゃんはやめてね。六波羅さんみたいに尊厳をコンテンツ袋にぶち込まれたくないから」

「……オイ、俺はどんな治療を受けた」

『……』

「……」

 

 エイナとリュウコは答えない。

 六波羅は、彼方から飛んでくる砲撃を打ち落としながらこの日一番の顰め面をした。

 

「後で本人に聞くからいい。それよりも、ここでリュウコが死ぬのはリスクがありすぎる。お前には今後も馬車馬のごとく働いてもらう予定なんだからよォ」

「ひえ」

『あはははは! ざまあないなぁ! 人間って愚かですぅ!』

「デモンズギアとしてその台詞はどうなんだお前」

 

 六波羅は呆れながら双剣を構える。

 そして、再び地絃天星埜御霊を見据えた。

 

「お前はとりあえず、俺とアイツの戦いを観察しろ。出来るだけ詳しく、()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……えっ、噓噓噓! 六波羅さんもしかして――」

「じゃァな! また行ってくるわァ!」

「無理難題押し付けないでー!?」

 

 リュウコの悲鳴を背中に受けながら、六波羅は地絃天星埜御霊へと向かう。

 無敵の力を持つ彼にはいかなる攻撃も通用しない。

 

「そらそらァ! もっと激しく踊ろうぜェ!」

 

 双剣で翼の根元を切り裂き、頭部を蹴り上げ地絃天星埜御霊の頭上を確保する。

 そして双剣を大弓へと変化させて叫んだ。

 

「愛しているぜェ! エイナァ!」

『リーダーあぁぁぁぁぁ! 私もですうぅぅぅぅぅ!』

 

 愛が増幅され、純粋なエネルギーへと転換される。

 その瞬間最大の威力は、共鳴現象や収束砲撃と同等以上の威力をもっていた。

 

 深紅のエネルギーが地絃天星埜御霊の巨体を直撃し、更に地面へとたたきつける。

 辺りに激しい砂煙が巻き上がり、突風で揺れる髪を押さえながらリュウコは険しい顔で呟いた。

 

「……もう六波羅さんだけでいいんじゃないかな?」

「馬鹿言うな、まだまだ死なねェよアイツは。本気で殺すなら、ソルシエラを含めたSランク全員で3日間ぶっ通しで戦う必要があるだろうなァ」

「そんな化け物だって知ってて私にあれをやれと……?」

「ハッ、ラグナロクよりはマシだろ」

 

 そう言うと、六波羅は砂煙の中へと飛び込んでいく。

 間もなく、赤い光と黄金の光が空へと昇り軌跡を描きながら衝突を繰り返し始めた。

 

 地絃天星埜御霊の動きは鈍ることはなく、それどころかより速さを増している。

 

「チッ、どっからエネルギーをそんだけ引っ張ってんだァ。……まさか」

 

 六波羅は地絃天星埜御霊の攻撃をわざと受け、更に空高く跳躍する。

 そして杭の方を見た。

 

「エイナ、目ェ貸せ」

『はい』

 

 六波羅の感覚が強化され、視覚能力が一時的に上昇する。

 杭の根元、黒い触手に囚われたソルシエラの姿がそこにはあった。

 

 ソルシエラは意識を失っているが、時折苦しそうにうめき声をあげている。

 それと同時に、更に地絃天星埜御霊の速度が増す。

 

 今までは目視で直前に対応できていたそれに、六波羅は初めて予想で防御をとる選択をした。

 

 無敵により体へのダメージはなくとも衝撃は十分に伝わる。

 今度は意趣返しのように六波羅が地面へとたたきつけられた。

 

「お前も見えただろエイナ。地絃天星埜御霊が強化されると同時にソルシエラが苦しんだ。アイツと地絃天星埜御霊は完全につながってやがる」

『ただでさえ死ぬ寸前なのに、そんなに吸われたらやばいですよぉ!』

「あァ、急がねェとな」

 

 六波羅は起き上がりそう言うと、不安そうに八岐大蛇の首元に隠れるリュウコを見る。

 

「ふわふわじゃない。もっとシュッとしてシャキーンって感じで――」

 

 彼女は地絃天星埜御霊を見つめながら、ブツブツと何かを呟き続けていた。

 六波羅は双剣を構えると、天の地絃天星埜御霊を見て笑う。

 

「もう少し、時間を稼ぐとするかァ」

 

 

 

 

 

 私、ソルシエラ15歳!

 今は杭の破壊に失敗してえっぐい触手に捕まっちゃってたいへーん!

 そんな私をめぐって0号とネームレスが戦うみたいだし……。

 

 これから私、どうなっちゃうのー!?

 

『どうなるもこうなるも、私があいつをしばき倒してお終いだろう。ネームレスは以前よりも格段に強くなった。それは認める。が、まだ私の敵じゃない。数値にするなら0.5ソルシエラというところだろうか』

 

 半分も!?

 それは結構強いんじゃないのかい!?

 

『彼女は私には敵わないよ。だって――私には君がいるからネ☆』

 

 きゃっ♥

 

『おぉ……私もいるぞ……』

 

 カメさーん!

 だいすきー!

 

『おぉ! そうかそうか! ならば、今すぐ私も外に出てネームレスを倒そう。案ずるな、奴のエクスギアは機械。ならば、私の力でどうとでもなる』

『ちょ、おい出ようとするな!』

『ええい出せ! あんな剣、私が触れればすぐに壊してくれる!』

『くっ……私の中で好き勝手に暴れないで欲しいねぇ!』

 

 カメさんあばれないでー!

 お外行っちゃやだー!

 

「……っ!」

「アレ、どうしたのかな0号。急に立ち止まって胸を抑えたりして……まさか、もう終わり」

「いいや、別に何でもないさ。私はまだ戦える」

「嘘ばっかり」

 

 カメ君を封じ込めた星詠みの杖君の行動を勘違いしたネームレスは得意げに笑う。

 ネームレス、なんて強いんだ……!

 

『お前、次暴れたらお前自身をロリにしてコンテンツを作るからな^^』

『おぉ……それだけは……』

 

 あ、それはまだ嫌なんだカメ君。

 

『私は守護る者であって守護られる者ではない。小さなおててでは、幼き命を守ることはできないのだ……』

『じゃあ大人しくしていてくれ』

 

 星詠みの杖君の言葉に、カメ君はしゅんとなりながら頷いた。

 カメ君、わかるよ。役に立ってくれようとしたんだよね。

 ありがとう、カメ君!

 

『おぉ……!』

『そんな海洋生物の事はどうでもいい。それよりもここからどうするつもりだい? なんかあの鳥強いし……』

 

 あれ、やっぱ欲しいよねー。

 どういう訳か、妙な親近感を覚えるし。

 

『それ半分侮辱だぞ』

 

 どういう意味だおい。

 

『おぉ……しかし、アレを飼う余裕はもうないぞ。うちは赫夜牟の世話で手一杯なのだ。面倒をみれる確証がないならば飼うべきではない』

 

 カメ君……。

 そうだね、まずは赫夜牟を完璧なのじゃロリにしよう。

 薄くてでっかい皿でお酒を飲んでカラカラ笑うのじゃロリにしよう!

 

『楽しみ^^』

『その場合、私は守護るべきなのか……? いや、だがしかし奴は……ううーん……』

 

 カメ君はロリ守護のパラドックスに囚われてしまったようだ。

 

 くっ、カメ君の動きを完全に封じるなんてネームレス、なんて厄介な相手なんだ……!

 

『笑顔で自爆スイッチ連打している人間の台詞ではない』

 

 俺たちはもう限界だ!

 どうやら六波羅さんに何か考えがあるみたいだから、その作戦を手伝うしかない。

 

 最悪、俺があっちで目を覚まして最後の力を振り絞って0号に力をあげるムーブをすれば、もう辺りは滅茶苦茶に出来るし。

 これほど安定したコンテンツ生産の現場は中々ないよ。

 

「あれあれ、もう喋る余裕もなくなった? あはははっ、0号を倒すのって案外あっけないんだね!」

「別に余裕はあるさ^^ ほんの少し、考え事をしていただけだ^^」

 

 星詠みの杖君! ちょっと表情に出てるよ!

 

『あっぶね^^』

 

「隙だらけだなぁ!」

「っ」

 

 0号はネームレスの攻撃を鎌で受け止めて、わざとらしく弾き飛ばされる。

 空中で何とか姿勢を整えた彼女は、怒りの籠った目でネームレスを見ながら言った。

 

「お前だけは、必ず殺そう。私とあの子の世界にお前は不要だ」

「そうやって上位存在気取って……! お前みたいなのがいるから、あの子が苦しむんだ!」

「全てあの子が望んでいることなのだよ!」

「苦しむことをか!? ふざけるなぁ!」

 

 争いは激しさを更に増す。

 

 二人とも、私のために争わないでー><

 

『どの口が言っているんだろうねえ』

『――カリキュラムに思考ロリ化を加えれば赫夜牟も守護対象になるのでは?』

『急に何を言っているんだろうねぇ』

 

 

 

  

 

 

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