【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第327話 堕天、全ては貴女のために

 大変たいへーん!

 私の体が誰かに乗っ取られちゃったみたい!

 これから私、どうなっちゃうの~!

 

『そういうテンションで説明するべき内容ではないだろ』

『おぉ……マイロードの幼き体が……』

 

 幼くはねえよ。

 

「っ!? ソルシエラ、どうして急に動き出したの!?」

 

 ネームレスが驚いて動きを止める。

 星詠みの杖君、ここで攻撃しちゃ駄目だよ。

 

『隙を見逃すというのか……まあ、仕方がないだろう』

 

 0号の見守る中、ソルシエラはネームレスの傍に行く。

 そして、無表情のまま彼女を守るように立った。

 

「え……?」

「共に戦う」

「で、でも」

「大丈夫」

 

 いつもよりも冷たく無機質な声でソルシエラはそう言うと、0号へと砲撃を放った。

 

『あぶねっ。おい! 普通に攻撃してきたんだが!? 君の体はボロボロじゃないのかい?』

 

 いや、ここで多くのコンテンツを摂取したことにより、俺の体にも常に美少女エネルギーが送られている状態だ。

 つまり、今のソルシエラは俺達と同じくらいに強い。

 

『利敵行為やめてくれよ』

 

 繋がっちゃってるんだから仕方ないだろ!

 

 でもこうして意識だけは残ってエネルギーを奪われ続けているって考えると、テンション上がるね^^

 

『言っている傍からコンテンツを生産するな。そもそもあれは何なんだ』

 

 わからない……。

 洗脳シエラであることは見てわかるが、それ以外は全く分からないな。

 肉体に戻れないし……。

 今の俺は美少女エネルギーを奪われるだけの哀れな魂だよ。

 

『魔法が十分に扱えているのはどういう理屈だ…? 演算を肩代わりする何かがあるのか……? それに、あの形態は私抜きでは不可能な筈だが』

 

 わからない。

 だが一つ言えることがある。

 

 今のソルシエラは、洗脳されて目の光を失ったエチエチソルシエラだという事だ。

 

『この状況でも自分に興奮できるんだねぇ』

 

 素晴らしい。

 まさか、俺が手を出すまでもなくこうなるとは。

 

 どうやら今日の俺は運が良いらしいな。

 

『状況だけ見たら不幸のどん底だねぇ。ボロボロの体で戦って捕まって、鳥のエネルギー源にされておまけに洗脳。BADルートかな?』

『マイロード、緊急事態につき鎧星形態の使用を申請する。0号の肉体なのは癪だが、背に腹は代えられぬ。ここは幼き0号になって貰って、私で対抗しよう。ネームレスの持つ剣が原因の可能性もあるだろうからな』

『別に私が幼くなる必要はない』

『は?』

『ん? ^^』

 

 喧嘩をするなよ緊急事態だぞソル。

 

『美少女エネルギー漏れてますよ』

 

 いけないいけない。

 洗脳シエラの可能性にエネルギーを生成してしまった。

 

 見たまえ、洗脳シエラの威圧感が見るからに増したぞ。

 俺の美少女エネルギーが無事あちらにわたっている証拠だ。

 

『困るねぇ。ものすごく困るねぇ』

『おぉ……0号にエネルギーを全て渡すことはできないのか?』

 

 ……。

 

『黙ったぞ、きっと出来るんだ』

『マイロード、解決策があるならば何故出さないのだ……』

 

 そりゃ俺が直接0号に美少女エネルギーバフを掛ければ終わるけどさ……でも、せっかくの洗脳シエラがさ……。

 触手に囚われてエネルギーを吸われた挙句に洗脳されて敵に回るソルシエラなんて、二度もあっていいわけないだろ。

 せっかくの一生に一度のコンテンツをこんな所で手放していいと思うかい?

 

 俺はね、今君たちの道徳心に問うているのだよ。

 

『道徳心……?』

『どの口が言ってんだろう』

 

 こうなると、ここで倒すのは勿体ないよ!

 ソルシエラ自爆スイッチもある事だし、これを使ってクラムちゃんの脳を焼かなきゃ……!

 

『その使命感いらないだろ』

『マイロードがそこまで言うなら好きにすると良い。伸び伸びと育つんだ』

『馬鹿親すぎる』

 

 さあ、星詠みの杖君方針は決まったぞ。

 ここは一つ洗脳シエラに負けるんだ。

 

 それから君は嫌々ソルシエラ以外の人間と手を組んで洗脳シエラに勝利するんだよ。

 そうすることで、人間との間にあった壁を少しずつなくしていくきっかけを作るんだ。

 個人的にはヒカリちゃん辺りの無垢さに触れて欲しいです。

 嫌味を言われてもまっすぐに受け止められてから回る0号が見たいです。見せろ。

 

『別に人間に壁とかないんだけどねぇ……まあ、君が望むならそうするとしよう。仮にも君の肉体ならば、負けるのもやぶさかではないしね』

 

 ではこれより、洗脳シエラに負ける0号を始める。

 

『はーい^^』

『おぉ……結局また私の出番はないのか……』

 

 

 

 

 

 

 それが、六波羅の良く知るソルシエラでないことはすぐに理解した。

 動きと声こそ本物ではあるが、その光の消えた冷たい目は彼女のものではない。

 

「……流石にこれは想定外だったなァ」

 

 六波羅は双剣を構え、一歩もその場から動いていなかった。

 今この戦場を支配している殺気は、ただ一人の少女から放たれている。

 

(俺は無敵で何とかなるが……こうなるとリュウコがあぶねェな)

 

 そう思ったその時には既にソルシエラは行動を開始していた。

 

「堕とす」

 

 その場から黒い羽根を残してソルシエラの姿が消える。

 次の瞬間には、彼女はリュウコの背後にいた。

 

「後ろだァ、リュウコォ!」

「っ!? やばっ――」

 

 振り返ったリュウコの目の前には、魔力を宿した鎌があった。

 いつもの彼女とは違い、砲撃ではなく刃での確実な絶命を狙った攻撃。

 今までの優雅さは消え、まるで処刑人のような動きでソルシエラはリュウコの命を奪おうとしていた。

 

 防御しようにも、バルティウスは足の下。

 リュウコは草薙剣を握るが、もう遅い。

 

 彼女が死を覚悟したその瞬間、彼女の前で紫色の転移魔方陣が展開された。

 

「――誰の許可を得てその体を使っている?」

 

 ソルシエラの鏡写しのような姿で飛び出してきた0号は真正面から大鎌を受け止める。

 そして銀の鎖を放った。

 

「邪魔」

 

 鎖は同様に飛び出した鎖によって絡めとられる。

 が、その一秒の間にソルシエラの周囲には砲撃陣が展開されていた。

 

「傷つけるのも治すのも私だけの特権だ」

 

 0号はそう言って指を鳴らす。

 その瞬間、砲撃が彼女へと一斉に放たれ大きな爆発が起きた。

 

「うわあああ!」

「黙って地上に降りろ。もう何度も転移はできない」

 

 リュウコの頭を掴んでそういうと、彼女は無言で何度も頷き地上へと降りる。

 そして、六波羅へと泣きながら言った。

 

「もう無理~! 逃げようよ~!」

「情けねェな。その剣で戦えよ。ダイエットするんだろ?」

「ハードなダイエットは嫌だよぅ! 私は楽して尊敬されながらダイエットするぅ……」

『ダメ人間ですねぇ! 根性が腐ってますよぉ!』

「……そうだな」

 

 六波羅は相棒へと言いたい事をぐっとこらえて、煙の中を見る。

 

(まあ、あんなのでぶっ倒れてくれれば楽なんだが)

 

 彼の期待を裏切るように、煙が晴れた場所から出てきたのは傷一つないソルシエラであった。

 

「0号、この状況をどう見る」

「どうもこうもあるか! 私のマスターの体を操っている何かがいる。許されるべき行為ではない。即刻見つけ出し、残虐に殺さなければ……!」

「貴女のじゃなくて、私のソルシエラなんだけど!」

「っ、邪魔をするなネームレス!」

 

 黒い焔が燃え、いたるところからカエルが飛び出してくる。

 かと思えば、次の瞬間には斬撃が襲い掛かってきた。

 

「チッ、凡人風情が」

 

 0号はそれを干渉の障壁で完全に無力化する。

 そして全てを防ぎ切った彼女は、そのままソルシエラの元へと一直線に飛び出した。

 

「おい、勝手に始めんなァ!」

「黙れ! これは私とこの子の戦いだ!」

 

 0号は冷静さを失っていた。

 

 獣のような目で大鎌を振りかざすと、ソルシエラへと砲撃と鎖の雨を降らす。

 しかし、ソルシエラはそれを完全に相殺する形で砲撃のみを放った。

 

 それから0号へと肉薄して、いつもの様にほほ笑む。

 

「弱いのね」

「は? ^^」

 

 0号は転移によりソルシエラの背後を取る。

 そしてソルシエラへと向かって刃を振り下ろした。

 

 が、ソルシエラはそれを見ることすらなく障壁で防ぐと、小さくその名を呼んだ。

 

「ネームレス」

「うん!」

 

 0号の真横で黒い焔が迸る。

 次の瞬間には、機械仕掛けの剣が0号へと狙いを定めていた。

 

「act4」

「チィッ――」

 

 切断の力を障壁で防ぎつつ、迎撃の準備を開始する。

 しかし、その頃には既にソルシエラが砲撃の準備を終えていた。

 

「隙だらけね」

「ッ!?」

 

 迫る銀光を見て0号は咄嗟に転移をする。

 が、その先には既に転移魔方陣が置かれており、爆発寸前の蛙が中から飛びだしてきた。

 

「くっ」

 

 爆発が、0号の体に確かなダメージを与える。

 苦悶の表情を浮かべる0号へと、ソルシエラとネームレスは同時に迫った。

 

「私達なら、きっと勝てるよ!」

「そうね、ネームレス」

 

 彼女達の戦い方はあまりにも完璧であった。

 まるで最初からそうであったかのように息の合ったコンビネーションで0号へと着実に攻撃をしていく。

 手数でネームレスが翻弄し、干渉の力でソルシエラが的確に攻撃を差し込む。

 

 驚異的なその力の組み合わせに0号は一方的に攻撃をされ続けていた。

 

「ふざけるなッ……!」

 

 ついに、0号は痺れを切らしたかのようにネームレスへと突撃する。

 

「っ、人間風情が!」

 

 魔力を込めた大鎌がネームレスへと迫る。

 焔や斬撃を潜り抜けた先で、0号がその刃を振り下ろそうとしたその瞬間銀の鎖が彼女を完全に拘束した。

 

「獲った」

「これでお終いね」

 

 ネームレスとソルシエラがそれぞれとどめの一撃を放つ。

 瞬間、赤い閃光が0号を包み込み鎖を引きちぎった。

 

「あらら、逃がしちゃった」

「誰を野放しにしてんだァ? あんだけ俺にビビってたくせに、愛しのソルシエラが味方になったらでけェ顔かよ」

 

 上空、0号とリュウコをそれぞれ肩に担いだ六波羅はそう言った。

 

「おい離せ! 奴は必ず殺す!」

「そりゃ無理な相談だなァ、状況が変わったんだ。これ以上は無理だろ――」

 

 会話をする二人へとソルシエラは反応すらせずに砲撃を放つ。

 と同時に、六波羅の背後へと転移をした。

 

「読めてんだよ馬鹿」

「っ!?」

 

 ソルシエラの放った砲撃は、赤い矢によって派手な爆発を起こす。

 完全に死角であった筈なのに、六波羅は既に回し蹴りの体勢に移行していた。

 無敵を纏った蹴撃に、防御が不可能と選択したソルシエラは咄嗟に距離をとる。

 

 それを見て六波羅はつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん、その辺の勘はそのままかァ。まあ、いい」

 

 六波羅がそう言うと、彼のガラスの靴が更に輝きを増した。

 

「次こそてめェらの泣き面見てやるよ」

 

 一瞬、赤い閃光が辺りを包んだかと思うと次の瞬間には六波羅達は姿を消していた。

 

 ネームレスは暫く警戒していたが、攻撃がこないことを確認すると息を吐く。

 

「はぁ……良かった」

「お疲れ様、ネームレス」

「ソルシエラ……」

 

 自分へと当然のようにねぎらいの言葉を掛けるソルシエラを見て、ネームレスは一瞬泣きそうな顔をしたがすぐに頭を振って笑みを作った。

 

「私たちの勝ちだね」

 

 その言葉を、ソルシエラは静かに肯定した。

 

 

 

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