【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第329話 覚悟、貴女のために

 大変だ! ソルシエラが洗脳されてその力を悪い事に使い始めたぞ!

 これからどうすれば……!

 

 そうだね、ここでソルシエラ殺害スイッチだね☆

 

『元々は意識を消失させて、肉塊の兵隊にするスマートなシステムだったのに……。いつの間にか普通にソルシエラを殺すシステムになってしまった……』

 

 元々がやばいんだよ。

 どうして肉塊にしちゃうんだ。

 

『? もう脳が焼き切れて使えなくなった物になんの意味があるんだい? 折角ならその肉体も再利用しないと^^』

 

 流石、生粋の人外思考だなぁ。

 一ミリたりとも罪悪感とかなさそうなその思考は見習うべきものがあるよ。

 

『君も大概だけどね』

『マイロード……ソルシエラを殺すのではなく、ちっちゃくして無力化するシステムもどうだろうか。別に命までは取らずとも良いだろう……』

 

 そうなると、歴代の星詠みが全員ロリになってなきゃ整合性がとれないだろ。

 

『歴代は全員幼き命なのか!?』

『今都合の良い単語だけ聞き取っただろお前』

 

 カメ君には悪いが、ロリにはなれない。

 すまない、本当に申し訳ない。

 

『おぉ……』

 

 本気で悲しそうな声をだすカメ君には申し訳ないが、今はそういう流れではないのだ。

 今は、ソルシエラを殺すシステムの前で葛藤するクラムちゃんとミロク先輩のターンである。

 

「どこに向かっているのだ」

「ソルシエラの部屋だ」

「ソルシエラの部屋……!? 何故彼女の部屋がフェクトムにあるんだ!」

 

 ミズヒ先輩は、0号の背中へと真剣な表情でそう問いかけた。

 

『そう言えば、まだミズヒは知らないんだねぇ』

 

 結構一緒に戦った気がするけど、まだ正体を明かしていなかったか……。

 よし、ではクールに正体を告げるとしよう。

 

 脳焼き砲、用意!

 

『照準、ヨシ!』

 

 0号は、足を止め振り返る。

 そしてニタリと笑ってこう告げた。

 

「那滝ケイの部屋に向かっている……そう言えば、理解できるかな?」

「ソルシエラの部屋が、ケイの部屋……。ま、まさか」

 

 ミズヒ先輩は答えにたどり着いたようだ。

 真剣な表情で、ミズヒ先輩は頷きながら口を開く。

 

「ケイとソルシエラは、協力関係にあったのだな……!」

「……ん?」

 

『マジかよこいつ^^』

『おぉ……理解力が幼き命』

 

 その場の空気が一度完全に停止する。

 まさか俺達の思考に空白を生むとは、流石ミズヒ先輩だぜ!

 戦場だったら、この間に死んでいたにちげえねぇや!

 

『どうしよう、想定よりもアホの子だ』

 

 うーん……面白いからこのまま続行で!

 

「まあ、君がそう考えるならそれでいいとも。くだらない問いに時間を使ってしまったな」

 

 0号はそう言うと歩き出す。

 ミズヒ先輩は慌ててその背を追った。

 

「ケイとソルシエラが……そうか、そうだったのか……!」

 

 ミズヒ先輩の中では、完全にそうなってしまったようだ。

 

「納得してくれたのなら、それでいい。邪魔だけはするなよ」

「……本当にソルシエラを殺すのか? 」

「元々星詠みとは、使い捨ての存在だ。燃え尽きた星に何が出来る? せめて、最後は華々しく散らせてやるのが愛というものだ」

「……そうだろうか。私には、お前が悲しんでいるように見える」

 

 0号はその言葉に僅かに反応を見せた。

 が、何か答える様子はない。

 

『渾身の演技です^^』

 

 完璧だ星詠みの杖君!

 

『監督のおかげだねぇ。ここまで良い見本がいるならば私のラーニング能力ですぐに美少女演技も習得可能だ』

 

 俺は君の美少女への愛もその演技の中に感じたよ。

 成長したね、星詠みの杖君。

 

『成長と捉えて良いのかは甚だ疑問だが、まあ嬉しいよ。これからも精進するとしよう』

 

 流石だ、星詠みの杖君。

 これから君には、ソルシエラぶっ殺し魔法の起動を推奨する存在として一時的にフェクトムの皆と対立してもらうことになる。

 そこで自分の本心に気が付いて、こんな魔法に頼らずにソルシエラを救う決意をして皆と力を合わせる、そんなシナリオだからね。

 失敗は許されないからね。

 

『救われる側の言葉とは思えない。これもうクライアントだろ』

 

 ちなみに、俺の体はいまどういう状況にあるのかはハッキリとはわかりません。

 美少女粒子の乱れ的に、おそらく5秒ほどネームレスに膝枕をして、その後30秒ほどネームレスに膝枕をして貰ったのだろうが。

 

 それ以外の情報が不足している。

 クソッ、向こうはどうなっているんだ……ッ!

 

『そこだけピンポイントでわかるのキモイね』

 

 ストレートな賛美だぁ。

 

「着いたぞ、どうやら既に先客がいるようだ」

 

 0号はそう言ってケイの部屋の前に立つ。

 そして、ミズヒをちらりと見た。

 

「言っておくが、私は兵器だ。お前の考えているような情や愛は持ち合わせていない」

「……そうか」

 

 納得していないミズヒ先輩を尻目に、0号は扉を開けた。

 

 クラムちゃんとミロク先輩の脳焼き、スタート!

 

『わぁい^^』

『おぉ……』

 

 

 

 

 

 

「まだいたのか、クラム。……ああ、ミロクも来ていたか」

 

 入室してすぐに、0号はそう言った。

 彼女が入ってきたのを見て、クラムとミロクは同時に声を上げる。

 

「0号!?」

「ソルシエラは無事なのですか!」

 

 駆け寄ってくる二人をそれぞれ見た0号は、何も言わずに部屋を見渡した。

 

「さて、どこに仕舞ったか」

「ちょっと、答えてよ!」

 

 部屋の中で何かを探す0号の後ろを追いかけて、クラムは声を荒らげる。

 その後ろでは、ミズヒへとミロクが問いかけていた。

 

「作戦は成功したのですね?」

「……いいや、むしろ」

 

 ミズヒは言い淀む。

 が、その態度でミロクは全てを察したようだった。

 取り繕っていた笑顔が剥がれ落ち、絶望した顔で首を横にふる。

 

「うそ、ですよね」

「嘘じゃないとも。私たちは失敗した。それはもう盛大に、そして無様にね」

 

 0号はミロクに振り返ることもなくそう答えた。

 

「恐らくは銀の黄昏の仕掛けだろう。彼女は、その策略にはまり、洗脳された。考えうる限りで最も最悪な展開だ。ソルシエラが敵に回るとはね」

「は!? 嘘、あの子が洗脳されたの!?」

「君は一々うるさいねぇ。もう少し落ち着いて会話が出来ないのかな」

 

 呆れた0号の言葉に、クラムは思わず人吞み蛙を召喚する。

 が、その部屋が誰の物かを思い出して、寸前で爆破をやめた。

 

「……でも、ここに来たってことはあの子を救う方法があるんですよね?」

「救う、か。確かに、これから行うことはあの子にとってある種の救いになるかもしれない」

「もったいぶってないで教えてよ、0号」

 

 ベッドを見た0号は、枕元にあったカメのぬいぐるみを手に取った。

 持ち主に大切にされてきたのだろう。カメのぬいぐるみは古びてはいるが、どこも傷んだ様子はない。

 

 0号はそれを無機質な目で見つめ、やがてその甲羅をちぎり取った。

 

「何やってんだ!」

「0号、止めてください! それはケイ君の大切な物な筈です!」 

 

 二人の制止を無視し、0号はぬいぐるみの中へと手を入れた。

 綿があふれ出し、まるで臓物のように零れ落ちる。

 

 やがて、何かを掴んだその手が引き抜かれた。

 

「あったあった、これだよ」

 

 その手には、小さな銀の弾丸が掴まれている。

 

「弾丸……? どうしてこんな所に……」

「私が契約するとき、必ずこれが生成される。これは星詠みの干渉を無効化し、星詠みとして作られた体を細部まで破壊する弾丸だ。つまり、あの子を殺せる唯一の武器という事になるねぇ」

「……おい、0号お前まさか」

 

 クラムは震える声と共に0号の胸倉をつかんだ。

 意外なことに0号は抵抗せずに、そのままベッドに押し倒される。

 

「あの子を殺そうとしているのか!? お前がっ、お前があの子を助けるって言うから信じていたのに……!」

「戦況とは流動的に変化するものだ。何も驚くことはない」

「お前はそれでいいのかよっ!」

「……ああ、構わない」

 

 0号はそう言った。

 彼女の顔に浮かぶのは、計算されたかのように綺麗な笑顔だった。

 

「私は星詠みの杖だ。その本懐に従うことになんの不満がある」

「こいつ……」

「それに、ああなった以上は殺してやる他ない。それが私にできる唯一の手向けだ」

「そんな……そんなの……っ」

 

 クラムは顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくりながら立ち上がる。

 が、すぐにバランスを崩してその場にへたり込んだ。

 

 起き上がった0号は、それを見下ろしながら襟元を正す。

 

「クラム……」

 

 ミズヒは慰めの言葉を掛けようと手を伸ばす。

 しかし、それはミロクによって遮られた。

 

「――それで、あの子が殺せるのですね」

「ああ、そうだ。蒼星ミロク、君もこの作戦には反対かな?」

 

 ミロクは、泣くこともせずに真正面から0号を見て言った。

 

「いいえ。それがあの子への救いになるなら、準備を始めましょう」

「……ミロク、お前」

 

 ミズヒは驚いたように幼馴染の顔を見る。

 彼女は、いつもの様に落ち着いた様子であった。

 

「ミズヒ、私を信じてください」

 

 その言葉に対する答えは、昔から決まっていた。

 

「ああ、わかった」

「ミロク、あんたもこいつと同じなの!?」

「事態の収束が最優先であると判断しました。これから、全員にこのことを告げ、作戦開始へ向けて準備を始めます。0号、確認ですがそれが唯一こちら側でソルシエラを救う(ころす)手段なのですね?」

「ああ、そうだ。物分かりが早くて助かるよ。流石は、生徒会長様だねぇ」

 

 0号は興味深そうにしながら頷いた。

 ミロクは、毅然とした態度を崩さないまま言い放つ。

 

「それがあの子の望みなら……いかなる罪も私が背負います」

 

 その目には、今もあの星の輝きが見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『やばい! ミロク先輩は脳を焼くと覚悟決めるタイプだった! 死んじゃう! 俺バーンって撃たれて死んじゃうよ! バーンって!』

『やっべ、後戻りできね^^』

『何故私のお手製カメさんぬいぐるみをあんな風に破った! ちゃんとお腹にチャックがあるのだぞ!』

『ちょっ、作戦変更! 衰弱してぶっ倒れてくれ、星詠みの杖君! いったん、それで白紙にしよう!』

『目が、目がまっすぐ過ぎてびっくりした^^』

『おぉ……次はベッドそのものをカメさんにして壊されないようにするしか……』

 

 

 

 

 

 

 

 

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