【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第330話 結束、星を堕とすために

 脳を焼けば、全ての人間を掌の上でコーロコロ出来ると思っていた……。

 けれど、違ったんだ。

 

 ミロク先輩は、こういう時自分から地獄にダイブできる美少女だった……!

 

『マズイぞ相棒。あんなに目が据わった人間は初めて見た。……こ、これが人類への恐怖という感情?』

 

 星詠みの杖君があまりの衝撃に新たな感情を会得しそうになっている。

 

 こうなっては仕方がない、プランBだ。

 

『私が倒れればいいんだね?』

 

 そうだ。さも、エネルギーがないと言った風に倒れよう。

 そうすれば、あの弾丸を使う存在がいなくなって別の計画に移行するだろう。

 

『……あの』

 

 どうしたんだい、星詠みの杖君。

 

『弾丸の形なのは、その……シエル用だからです……。私が倒れても……あんまり意味はないです……』

 

 ……。

 

『幼き命、そのちっちゃな肩になんと重い責務を……!』

 

 え、じゃあ俺本当に殺されるって事!?

 

『はい……』

 

 なんでそんな物騒なモンを残しておくんだよ!

 

『シエルは元々星詠みの杖のプログラムを停止させる唯一の個体だ。下手に弾丸を処理すると、彼女に感づかれるだろう。それに……脳を焼くのにソルシエラ抹殺システムを使うとはしゃいでいたのはどこの誰だったかな?』

 

 くっ……これじゃあ、他人の事を弄んでいたつけが回ってきたみたいじゃないか!

 

『実際そう』

 

 そんなわけないだろう!

 俺は囚われ洗脳ミステリアス美少女だぞ!

 死んではならない、この後は皆と本当の意味でフェクトムの仲間となり不器用ながらも距離を縮めようとするお労しい美少女になるんだ!

 

 ここで死ぬのは、俺のシナリオとは違うんだよぉ!

 

『やれやれ、困った子だねぇ。取り敢えず、会議に参加するとしよう。そこでミロクがどんな作戦を立てるのか。対策はそれを聞いてからでもいいじゃないか』

 

 そ、そうだね。

 ミステリアス美少女なら、こんな時でもクールでいるべきだ。

 

 あくまでも事態に柔軟に対応する。

 それこそがミステリアス美少女なのだから。

 

 二人とも、必ずソルシエラ抹殺計画を阻止するぞ!

 

『自業自得なのに、凄い気迫』

『おぉ……いっそ、ロリとして復活するのはどうだろうか』

 

 もうその可能性すら視野に入れているよ俺は。

 

 弾丸で殺された筈のソルシエラが、なんかいい感じに奇跡がうまい事重なって偶然の産物としてどういう訳か記憶を失ったロリとして復活するルートも考えている。

 

『過程がふわふわすぎる』

『おぉ……!』

『興奮すんな』

 

 とにかく、全てはこれから行われる会議次第だ。

 これで全てが変わるぞ。

 

 

 

 

 

 

 現在、フェクトムに残されたメンバーは少ない。

 ここに在籍していた彼女達の他に、満足に動けるのはキリカと九重、そしてタタリぐらいのものであった。

 

 三人とも、戦力としては申し分ない。

 しかし、彼女達を除いたフェクトム総合学園のメンバーだけがその会議室にはいた。

 

「ご、ごめんなさいっす! 遅れたっすよー!」

 

 会議室の扉が開かれ、ミユメが入室する。

 それを見て、今まで目を閉じていたミロクはようやく全員を見渡して言った。

 

「これでフェクトムのメンバーは全員揃いましたね。では、始めましょうか」

「始めるって何を始めるのかな、ミロクちゃん」

 

 トアの問いにミロクはテーブルの上に小さなケースを置いた。

 

「これは?」

「現状、唯一ソルシエラを殺せるシステムです」

「……え?」

 

 トアは一瞬思考を停止させ、その後に驚いたように顔を上げた。

 

「は、え……ソルシエラを、殺すシステム?」

「それは星詠みに必ず用意される処理システムだ。それを使えば、ソルシエラを殺せる」

 

 0号は腕を組み淡々と説明をした。

 彼女の態度が気に入らなかったのか、トアは0号を睨みつける。

 

「ソルシエラはネームレス達の作戦により洗脳されてしまいました。なので、私たちはこれからソルシエラを殺します」

 

 その言葉に、トアだけが驚いたように立ち上がる。

 ミロクの言葉が信じられなかったようだ。

 

「ちょっと待って! ソルシエラを殺すの!? だって……いやいやいや、おかしいじゃん! ヒカリちゃん、ミユメちゃん、おかしいよね!」

 

 トアは同意を求めるようにヒカリやミユメへと声を掛ける。

 しかし、返ってきた言葉は予想外のものだった。

 

「……私には、何が正しいのかわかりません。けれど、これでソルシエラを救えるなら、これしか道がないのなら、やるしかないです」

「そうっすね。合理的に考えても、この選択は間違ってないっす。ソルシエラの体は摩耗しきっている。なら、その命へと正しい終わり方を与えるのは救いになるっすよ」

「……信じられない」

 

 トアはそう言って、力なく椅子に座る。

 ミズヒは終始口を閉ざし、目をつむっている。

 そしてクラムは目を真っ赤にして、唇をかみしめていた。

 

 既に、彼女達もこの話を聞いて覚悟を決めてきたのだろう。

 

「……トアちゃん、私はソルシエラを正しい形で眠らせてあげるべきだと思います。あの子が守ろうとした世界が、あの子の手で壊されていくなんて、酷いと思いませんか」

「……で、でも」

「辛いのは皆同じです。でも、ソルシエラ自身が一番辛いはずですよ。……だから、この引き金は彼女ではなく私たちの手で引かなくてはならない」

 

 ミロクはトアを見据えてそう言った。

 すでに、議論の余地はない。

 

 これは決定事項を伝えるために設けられた場なのだ。

 

「そしてトアちゃん、この弾丸は貴女に託します」

「………………は?」

 

 ケースとミロクの顔を見比べて、トアは間の抜けた声を上げた。

 

「わ、私が……?」

「はい、ミズヒと他Sランクを前衛兼おとりとして長距離からの狙撃。これでソルシエラを殺します」

 

 その言葉に真っ先に反応したのは0号であった。

 

「待て、その弾丸はシエル専用だ。人間に使えるものではない」

「けれど、仕方がありません。私も含めて、ナナちゃんの()()()()()()()()()()のですから。私ですら、アンプルを使用して数時間触れられる程度。到底、戦うなど不可能です」

「……っ」

 

 ミロクがそう言うと、クラムが顔を上げる。

 そして、信じられないとでも言いたげにミロクを見ながら立ち上がり、その場を後にしてしまった。

 

 扉が閉まる音と共に、わずかな沈黙が辺りを支配する。

 

「クラムちゃん!」

「放っておいてください。今回の作戦に彼女の出番はありませんから。それよりもトアちゃん、やってくれますね」

「……本当に私がやるの?」

「貴女しかいないのです。弾丸は、この一発のみ。これで、ソルシエラを仕留めなければ、世界は滅びます。あの子の守ろうとした世界が」

 

 訴えかけるような、そして力強い言葉だった。

 ミロクは立ち上がり、ケースを手にトアの前に立つ。

 

 そして、ケースを開けて見せた。

 中には、魔術式が彫り込まれた銀の弾丸が一つだけ入っている。

 装飾品のように美しいこの弾丸が、今からソルシエラを殺すのだ。

 

「トアちゃん、お願いします」

「………………わかった」

 

 長い沈黙の果てに、トアは頷いた。

 それを見て、ミロクは深く息を吐いて頭を下げる。

 

「ありがとう、こんな役目を負わせてしまってごめんなさい」

「いいよ、誰かがやらなきゃいけないんだもんね」

 

 トアはそう言うと、ケースへと手を伸ばす。

 が、ミロクはそれに気が付いていなかったのかケースを拡張領域にしまい込み背を向けた。

 

「この弾丸を撃てるように、これからトアちゃんの重砲を改造します。トアちゃん、これからミユメちゃんのラボに行きますよ」

「あ、うん」

「よーし、改造っすね」

「皆さん、フェクトムはこれまで何度も彼女に救われてきました。今度は私たちが彼女を救う番です。彼女に安らかな眠りを与えてあげましょう」

 

 各々が返事と共に力強く頷く。

 作戦に向けて、着々と準備が行われていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ん?』

『どうしたんだ相棒』

『何か……何かがおかしい気がする。美少女粒子の流れが変だ……』

『おぉ……沈黙を貫くシエルも可愛らしいぞ……』

『変なのこいつだろ』

 

 

 

 

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