【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
はわわ……はわ……はわわ……。
『やっべ、まじやっべ^^』
『早く契約をしろと、天上の意思も言っている気がするぞ』
三者三様で混乱中である。
理由は勿論、ネームレス=トアちゃん事件と、ヒカリちゃん契約事件だ。
一つ一つがただでさえ大事件なのに、どうしてこうも重なるんですか?
イベントは丁寧に処理していかなきゃ駄目わよ!
『私は正直、君以外とは契約したくないのだが? ネームレスの件に関しては正直どうでもいい。後で私が作り出したコンテンツの海に沈めてやる^^』
星詠みの杖君は、どうやらヒカリちゃんとの契約が気になっているようだ。
確かに、目下最大の問題はそれだろうか。
俺にとってはネームレスの方が大事件なんだけどね……。
ずっとトアちゃんの事は食いしん坊臆病として認識していたのに、まさかこんな……。
『近しい人間の目を欺き、自身の計画を遂行する。まるで本物のミステリアス美少女みたいだぁ』
俺が本物だよぉ!
うわーん!
『おぉ……よしよし。マイロード、貴女が一番のミステリアス美少女であることに変わりはないからな……』
カメさーん!
『……というか、そもそも実は気づいていましたでもいいのでは?』
成程、ソルシエラの中に残された弱さが、トアちゃんがネームレスであるという真実から無意識のうちに目を背けていたという事か。
『そこまでは言ってないです』
……だが、正体を知っていたならどうしてソルシエラは動かなかったのだろうか。
あれほどの意志の強さを持つソルシエラが、近しい人間だからという理由だけで見逃すか?
『マズイぞ、自問自答のフェーズに入った』
やっぱりそっち方面で攻めるのは悪手な気がするな。コンテンツとしては美味しいが、ソルシエラの行動に少々の矛盾が発生する。
ここはやはり、知らない方が良いだろう。
そして、ソルシエラは裏切られたという事実すら知らないままに全てを忘却してしまうんだ。
本来あるべき葛藤も何もかもが消失する。
これほどの美しい尊厳破壊があるだろうか!
可哀そうなソルシエラ……!
『調子が戻って来たねぇ』
うんうん、良いコンテンツが出来そうだ。
美少女に欺かれたというダメージはトラック換算で999トラック程だが、ぎりぎり魂への致命傷で済んだ。
『それは済んだと言えるのかい?』
大丈夫だよ。
俺はこうしてピンピンしている!
『体置いてけぼりですよ』
体も向こうでピンピンしてらぁ!
そうと決まれば、やる事は簡単だ。
星詠みの杖君、君にはヒカリちゃんと契約してもらいたい。
『良いのかい? 私は良くない』
俺を一日好き放題して良い。
『たまには味変しないとねぇ! ヒカリと契約するのもやぶさかではないよ^^』
『おぉ……そうやってまた自身を顧みない恐ろしい提案を……』
大丈夫だよカメ君。
俺はコンテンツの修羅と化す。
そのためなら、この命は惜しくないさ!
『流石だ相棒。その誉れ高き言葉、この国の男児♀として相応しい!』
人はコンテンツに生まれコンテンツに死ぬ。
故に、俺は美少女コンテンツの為ならどんな壁でも乗り越えよう。
で、本当に契約は出来るの?
そんな二重契約とか可能なシステムなんすか星詠みって。
『普通は無理だねぇ。だが、ミユメの言う通り、ヒカリの体にはソルシエラの魔力が流れている。だから理論上は可能だ』
へぇ……ん? なら、あの時一緒に六波羅さんの魔力もぶち込んだからエイナちゃんとも契約出来るって事?
『どうだろうねぇ。私は干渉の力があるからこそ、ある程度の融通が利く。が、エイナはその鋭い感覚のせいで細かい違いに拒否反応を示してしまうかもしれない』
そっかぁ。
ヒカリちゃんがエイナちゃんと星詠みの杖君を扱えたらカッコいいと思ったんだけどなぁ
『私が! 私がいるぞマイロード! 星詠みの杖と私を扱えば! どうだ!』
『お前は無理^^ そもそも相棒ですら、星詠みの杖と天使の完全な同時使用は出来ていないのに、ヒカリがやったら体が爆発する』
カメ君、俺と一緒に脳内で観戦してよう。
大人しくね。
『おぉ……』
『本気で悲しそう^^』
いつか、ぜってえソルシエラで同時に使ってやるから待っていてくれカメ君。
片手に大鎌、片手にボウガンの星天形態……三人の心が一つになったその時に現れるソルシエラの最強フォームだ!
『既に最強フォームが予約されている……』
双星形態の三倍の魔力生成機能と鎧星形態の防御力とビットを兼ね備えているぞ!
『勝手にスペックが決められてしまった。というか、双星形態の三倍の魔力生成とか正気か? 星を作れるぞそれ』
俺達ならそれくらいできらぁ!
『おぉ……ちなみに幼いのか?』
ごめん。
『おぉ……』
『さっきより悲しそう^^』
と、とにかくソルシエラはそんぐらい強くなるの!
『強くするの主に私とカメなのだがねぇ。まあいいさ、とりあえずヒカリに力を貸すことは決定なのだな』
そうそう。あ、でもすぐに力を貸さないでね。
0号はそういう事しないから。
あくまで、ソルシエラを助けたいという自分の感情に気が付いてないから合理的に殺そうとする。
そんな彼女をヒカリちゃんのまっすぐな思いが変えるんだ。
ソルシエラ以外の人間を信用していない0号と、誰でも信じ協力することが出来るヒカリちゃんのコンビ……良い。
これはこれで、良い……。
『いえーい、クラム見てるー? 君の大事な幼馴染と大好きなケイは、私が契約しちゃいましたぁ^^』
まさかのクラムNTRだったとは……。
『元気にダブルピースするヒカリと、照れ気味にぎこちなく片手でピースをするソルシエラ。そんな二人を侍らせる0号……』
『と、膝の上に乗っている小さなカメさん達』
急に絵面がNTRからウミガメほのぼの飼育日記になっちゃった。
『勝手に私のコンテンツに入り込んでくるな海洋生物。お前は、天上の意思ロリコン支部にでも籠ってろ』
『そんなふざけた支部はない。天上の意思幼き命支部だ』
『それもふざけてんだよ』
よしよし、皆調子を取り戻してきたな……!
『こいつだけずっと本調子だったぞ』
『おぉ……シエルがいなくて調子はいまいちだ』
『ご覧、絶好調だ』
これなら、今から摂取するコンテンツも大いに演出できるというもの。
ヒカリちゃんは、過去ソルシエラに命を救われている。
だからこそ、ヒカリちゃんがソルシエラを救うこの構図は美しい。
全力で支援せねば。
口の主導権だけ奪って「星詠みは……私一人でいい……」とか言ってあげるね。
『そんな器用に奪えるなら全部奪えばいいのに……』
全部は無理だ……。
今の俺の実力では、取り戻すことは出来そうもない。
だから頼んだヒカリちゃん!
ソルシエラを、星詠みの呪縛から解放してやってくれ……!
あの子は、どこにでもいる普通の女の子なんだ……!
『『普通……?』』
という訳で、庭園に行こうね。
あそこでお話して、良い感じに協力関係を結ぼうね。
最近出来たとは聞いていたけど、まだ行ってなかったんだよね。
誰の脳を焼くか考えていたら、行きそびれちゃった。
『よーし、それじゃあそこでヒカリを待ち構えようねぇ。あ、もう少しだけ体の構築を崩壊させないと^^』
やっぱりデータロイドの体は便利だね。
こういう時、好きに自分の体の状態を管理できるから。
『生身でやってるやつが言うセリフではない』
■
0号の後を追った先にあったのは、緑豊かな庭園であった。
「待ってください!」
ヒカリは躊躇なく足を踏み入れ、すぐに0号を見つける。
彼女は、白いベンチに腰掛け花を指先で弄んでいた。
「0号、私の話を聞いて下さい」
「はぁ……しつこいな、君は」
0号は呆れた様子でそう呟く。
そして、指を鳴らした。
「……っ!? これは……!」
赤い茨があらゆる場所から出現し、庭園を覆っていく。
ヒカリが空を見上げると、既に空も封鎖されていた。
「話がしたいのだろう? なら、徹底的に話をしようか。二度とそのふざけた幻想を語れないように」
0号の背後、黄色い花が茨に締め上げられ地面に一つ堕ちた。
「不確かな希望は、私自ら手折ってやろう」