【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第336話 支度、決戦へ向けて

 ヒカリちゃんはやはり主人公属性の持ち主であったか。

 俺の目に狂いはなかったな!

 

 痛みに耐えて0号の手をとるあの姿、なんと見事であろうか。

 その名に相応しい光属性だ。

 

『加減したとはいえ、契約時の痛みに耐えられるとはねぇ』

『流石は幼き命だ! 後でカメさんストラップをプレゼントしよう』

『ごみを押し付けるな』

『持ち主の魔力を増幅して、身体能力を向上させる効果があるぞ。仮にも天使の作り出すものだからな』

 

 そんな効果あるんだカメさんストラップ……。

 じゃあ俺にもくれよ。

 

『マイロードはもうそういう次元にいないだろう。今の貴女に対抗できる存在など、私は天上の意思くらいしか思いつかない』

『それすらも余裕だろうねぇ^^』

 

 え、俺が天上の意思を倒すの?

 

 違うよ君達、それはトウラク君の役目だ。

 やっぱりラスボスは主人公が倒さなくちゃ!

 

 俺達に出来るのはミステリアス美少女であることだけだ。

 役割を粛々とこなさなければ……!

 

『役割……? ただの趣味では……?』

 

 さあ、星詠みの杖君!

 0号として、ヒカリちゃんと協力してソルシエラを取り戻すんだ!

 

『頼んだぞ星詠みの杖』

『取り戻すも何も、もうここにいるんだけどねぇ』

 

「――0号、どうかしましたか?」

「いや、別に何も」

 

 先を歩いていたヒカリちゃんは振り返る。

 一度、凄まじい苦痛を味わったというのにケロッとしていた。

 

「そうですか、ミユメちゃんが、すっごい奴を作ってくれている筈なので早く受け取りに行きましょう!」

「わかったから、手を引っ張るな。またあの苦しみを味わいたいのか? 私がその気になれば――」

「ほら、急ぎましょう!」

「おい、話を聞け!」

 

 ヒカリちゃんに手を握られ、0号はミユメちゃんの元へと走り出す。

 普段はソルシエラ以外に興味がなさそうな0号が、ヒカリちゃんと仲良さそうにしているよ、可愛いね。

 

『正直、私は苦手だ……。何故だか、彼女は絶対に受けに回らない気がする……。磁石のS極同士が一緒にいる奇妙さがあるんだ』

 

 ふむ、なら一緒にソルシエラとクラムちゃんをぐちゃトロにする仲間だと思って接してみては?

 

『それでいいのかマイロード』

『ヒカリ、トモダチ』

『お前もそれでいいのか』

 

 皆が仲良くしてくれるなら俺はこの身を喜んで捧げるさ。

 

 ほら、そうこうしているうちにミユメちゃんのところに到着したみたいですよ?

 次はどんな倫理観ゼロの発明品をお出ししてくれるんでしょうね?

 

「ミユメちゃん! 戻りました!」

「あ、ヒカリちゃん! 丁度いい所に……お、0号も一緒にいるところを見るに説得は成功したみたいっすね」

「説得されたわけではない。一度だけ、戯言に付き合ってやることにしただけだ」

 

 星詠みの杖君は、0号としての演技を続けながらミユメちゃんのラボに入る。

 そして、適当なソファの上に腰を下ろした。

 

「クラム、ありがとうございました。この子のおかげで勇気が出ました!」

 

 ヒカリちゃんは足元にいた人吞み蛙を抱えると、クラムちゃんの元へと駆け寄る。

 そして、笑顔で人吞み蛙を差し出した。

 

「あんたなら、やってくれると思ったよ」

 

 クラムは0号を見て、勝ち誇った顔をしながら人吞み蛙を受け取る。

 やはり、ゼロクラもあるか……?

 

「では、早速ですがヒカリちゃんにはこれをお渡しするっす! ……よっと」

 

 ミユメちゃんは、拡張領域から一つの大鎌を取り出した。

 それはソルシエラが普段使っている物に似ているが、黄色と黒の配色でよく見れば、細かい部分も違っている。

 

「これはなんですか?」

「そのまま契約をすると流石に体への負担が大きいっす。だから、これを介して0号と契約するっすよ」

「おぉ……! 専用アイテムですね! 前売り券の購入特典!」

 

 ヒカリちゃんはキラキラとした表情で大鎌を受け取ると、0号へと見せてきた。

 

「似合ってますか!」

「あー、はいはい。良く似合っているよ」

「ありがとうございます!」

「……単純で助かるねぇ」

 

 呆れた様子の0号はそう言って、ヒカリに見せつけるようにため息をついた。

 

 ちなみに、これの性能って君達から見てどんなもん?

 

『……^^』

『おぉ……』

 

 え?

 どうしたんだ、君達。

 

『仮にだが、君と契約して美少女への愛に目覚めていなければ、すぐにこれと空無ミユメを処分していただろう』

『人の身でこれは称賛に値する。これは幼き命の守護者ではなく、天使としての評価である』

 

 えっ、そんなやばい代物なんすか。

 

『これに人間の少女をパーツとして組み合わせれば、すぐにでも新たなデモンズギアが完成する。そう言えば、伝わるかな?』

 

 えぇ……。

 

『流石は追放系主人公……少しだけ、人類にドン引きしてます^^ 本当にこの子が味方で良かったね^^』

 

 そこまでの代物だとは思わなかった。

 俺にはソルシエラの武器のリデコにしか見えなかったよ。

 

「これには、あの銀の弾丸を使っているっす。星詠みを殺すためのシステムが、星詠みへの負担の相殺に役立ってくれたっすよ」

「……銀の弾丸? アレは、ミロクが持っているのではなかったのかな?」

「ああ、実は……アレは私の複製品っす。夏休み中に、ミロクさんがどこからかアレを持ち込んできて解析と複製を頼んできたっすよ」

「え?」

 

 え?

 

『夏休み中……マイロードがスク水で川遊びをしていた時だな』

 

 そんな記憶はねえよ。

 

『山の向こうに沈む夕日を見ながら、小川にあんよを浸けてスイカを食べたあの時だな……!』

 

 パワーでねじ伏せようとすんな。

 星詠みの杖君、助けてくれ。

 

『わ、私が複製に気が付かなかった……!? あり得ないねぇ……!』

 

 普通に動揺してらっしゃる?

 

『どうやら、既に銀の弾丸は見つかっていたようだ。あの時は、あのふざけたぬいぐるみの中にはなかった筈だ。もっと丁重に隠していたのだが……え、それを見つけ出してミユメに色々とさせたの……? 怖……』

 

 更に言えば、0号がぬいぐるみの腹から弾丸を出した時に、実は驚いていたんじゃなくて『ついにこの時が来ましたか……』とか思っていた可能性が高いぞ。

 つまり、ずっと俺達はミロク先輩の掌の上だった。

 

 はわわ……。

 

『はわわ……』

 

「……あー、だからアイツあんなに冷静だったんだ。というか、それくらいは私に言ってくれてもいいじゃん……!」

「あー、はいはいヨシヨシ」

「うぅ……ヒカリぃ……! 私、誰からも頼りにされなくてつらいよぉ!」

「わ、私は頼りにしてるっす! 人吞み蛙にはいつも助けられているっすよ!」

 

 クラムちゃん、なんか情緒が安定しないな。どうしたんだろう……。

 

『どうしたもこうしたも、君が原因だろ』

 

 あ、そうだった^^ ずっと不安そうで可愛いね^^

 ちなみにこの後、ソルシエラは無事助かるけど記憶がなくなるからね^^

 全てを失ったソルシエラを見て、もっと情緒を乱高下させてね^^

 

『……ミロクやミユメも中々だと思ったが、やはり君がぶっちぎりだよ』

『おぉ……記憶を失う幼き命……ちっちゃな体になってしまうのか……!』

 

 見た目は変わらねえよ。

 

「美味しいご飯を作ってクラムは待っていてください! 必ず、連れ帰りますので!」

「うぅ……せめて一匹くらいはマーちゃんズを連れてって……」

 

 クラムを撫でながら、ヒカリは0号を見る。

 そして、真剣な顔でこう言った。

 

「こちらは準備が出来ました。皆さんを連れて、行きましょうソルシエラを連れ戻しに」

「……ああ」

 

 星詠み奪還作戦は、間もなく始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 同時刻、星木の学園にて。

 

 大量の熾天使の死骸の上に腰を下ろし、ラッカは虹色の空を見上げていた。

 

「また空なんて見上げて、どうしたんですか?」

 

 ガーデナーは、天使の素材回収の手を止めてラッカを見た。

 彼の問いに、ラッカは「んー」と首を傾げる。

 

「少し前なんだけどさ。誰かが一瞬、ここに入って来たみたいなんだよねー」

「……それって、あのトアちゃんとかいう人です?」

「違う違う。初めての気配だった。……アレは、デモンズギア使いかな? 昔、似た気配を学園都市で感じたことがあるんだよねー」

 

 ラッカはそう言って、透明な槍を担ぎ立ち上がる。

 

「ここって、肉体を持たない魂か、銘がないと入れない筈なんだけどね」

「気のせいとか?」

「ははっ、そりゃないよ。確かに感じたんだ……抜き身の剣のような鋭い気配を」

「……成程」

 

 ガーデナーはラッカの言葉に適当に相槌をして、死骸の山を指さした。

 

「適当な事言ってないで、さっさと仕事してください。これから、忙しくなるって言ったの先生じゃないですか」

「……確かに感じたんだ……抜き身の剣のような鋭い気配を」

「無視してTAKE2入った?」

「だってだって感じたんだもん。それに、ああやって不正にアクセスされると、鏡界が乱れて、うっかり引きずり込まれる子もいたりして大変なんだよ? どうするのさ、いたいけな少女が迷い込んできたら!」

「あー、はいはい」

 

 くだらないやり取りをしながら、二人は熾天使の素材回収を続ける。

 視界いっぱいに広がる世界は、数百を超える熾天使の死骸で埋め尽くされていた。

 

「……それに、なーんか求道者の気配もするっぽいんだよなぁ」

「そうやってすぐに手を止めないでください。これ終わらないと、寮に戻れませんよ」

「うぅ……こっちのガーデナー君だと厳しいからきらーい! 女の子の方になってよー!」

「嫌です」

 

 騒がしくしていた二人だったが、唐突に顔を上げて空の彼方へと視線をやった。

 一人は嬉しそうに、そして一人はため息をつく。

 

「はぁ……だから言ったのに。第二陣が来る前に、この死骸を片付けようって」

「こうなったら片付けどころじゃないね! さあ行こう! 天使狩りだ!」

 

 駆けていくラッカを見ながら、ガーデナーはやれやれと首を振る。

 そして、拡張領域から宝石のような何かを取り出した。

 

「俺も手伝いますから、早く終わらせましょう。編成は……さっきのでいいか」

 

 彼は宝石を地面に放り投げる。

 地面を転がった宝石は途端に輝きはじめ、三人分の人の形を形成していく。

 そして、それぞれが違う姿の少年少女へと変化した。

 

「じゃあ、いつも通りよろしくお願いします」

 

 ガーデナーがそう告げると、三人は頷き熾天使へと駆けだして行く。

 

 既に最前線ではラッカが熾天使を相手に無双を始めていた。

 

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