【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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十一章 【期間限定イベント】始まりの星を詠う君へ
第340話 1‐1 流星の少女


 地球から隔絶されたその場所は、位相の海を越えた先にある。

 本来、たどり着くことは不可能であり、一方的に地球へと干渉し続けるだけの世界。

 神話性の海、あるいは鏡界と呼ばれるその場所には一つの学園があった。

 

 アリアンロッド理事会が特殊任務のために設立したその学園の名を、星木の学園。

 アンカーの代わりを果たす特異な巨木の傍にひっそりと存在する木造校舎の学び舎だ。

 

 どこか情緒を感じさせる校舎だったが、今は熾天使の死骸の山によりその景観は台無しであった。

 

「ふう、素材集めお終い!」

 

 手に付いた汚れをはらいながら、ラッカは宣言する。

 その傍では、ノートに熾天使の素材を記録する黒髪の青年の姿があった。

 

「月末の換金が楽しみですね」

「うんうん、理事長が今回は色を付けてくれるって言ってたし、ハッピーが予約されているよ! ……まあ、今は連絡が出来ないんだけどね!」

「理事長、どうしたんですかね……」

「知らなーい。どうせ生きてるよ」

 

 ラッカはそう言うと、何かを思い出した様子で声を上げた。

 

「あっ、そろそろ行かなきゃ! 私のセンサーが反応してる!」

「……俺も、付いて行きましょうか?」

「大丈夫大丈夫。ガーデナー君は星木の学園守っててよ! じゃ、ちょっと行ってきまー」

 

 言い終わるよりも先に、轟音が響く。

 それはラッカが踏みこんで跳躍したからであった。

 

 折角積み上げた熾天使の素材の山が、風圧で崩れ落ちる。

 当の本人の姿は既になく、残されたのは素材の中に埋まるガーデナーだけであった。

 

「苦労して積んだのに……!」

 

 素材の山から這い出たガーデナーは、うんざりした様子で息を吐く。

 そして、空を見上げた。

 

 鏡界の空はオーロラのように煌めき美しい。

 長年この場にいたとしても、見飽きることはないとはラッカの談である。

 

 ガーデナーもこの空を気に入っていた。

 だから、何か嫌な事があった時はこうして空を見上げるのだ。

 

「はぁ、皆に手伝って貰ってさっさと終わらせよ……ん?」

 

 空の片隅、何かがこちらへと堕ちてくるのが見えた。

 蒼銀と黒のそれは、まるで流れ星のように星木の学園へと向かっている。

 

 あと1分もしない内にここに落下してくるだろう。

 

「んー? なんだろう、鏡界石なら歓迎だけど、たぶん違うよなぁ……」

 

 ガーデナーは目を凝らす。

 そして唸りながらそれを見つめ、やがて理解した。

 

「女の子!?」

 

 空から一人の少女が堕ちてきたのだ。

 意識を失っているのか、頭から真っ逆さまに落下してくるその姿を見てガーデナーは迷わず動き出した。

 

「多々良さん!」

 

 腰のホルダーにセットしていた宝石のような種子を放り投げ、その名を呼ぶ。

 すると、それは一人の少女を形成した。

 

「――お呼びですかー?」

「あの子、受け止めてください!」

「……じゅる」

「やばい人選ミスったぁ!」

 

 涎を拭うタタリを見てすぐに自分の選択を後悔したガーデナーは、その場にあった熾天使の素材を掴んで差し出す。

 

「これ食べていいですから!」

「ふむ、ではではー」

 

 ガーデナーから素材を受け取ったタタリは影に放り投げる。

 そして、満足そうに頬を押さえながら堕ちる少女を見た。

 

「んー! やっぱり熾天使は美味ですねー! ご飯分は仕事しますよー!」

 

  タタリの背後で影がうごめく。

 それは風船のように膨らむと、少女をふんわりと受け止めた。

 

「ナイスキャッチ!」

「ふっふっふー、ガーデナー君の頼みとあらばご飯一つでお任せですー!」

 

 影がゆっくりとしぼんでいき、少女が地上に降ろされる。

 無事任務が完了した事を確認すると、タタリは「それじゃあ、また」と言って花弁になり風に乗って消えた。

 

 残されたのは気を失った少女とガーデナー、そして大量の熾天使の素材である。

 ガーデナーはその少女を観察して、首を傾げた。

 

「……今まで見たことがない子だなぁ。どの位相鏡界にもいなかった。ラッカさんなら何か知ってるかな」

 

 それは、美しい少女であった。

 陶器のように白い肌に、手入れのされた美しい蒼銀の髪。

 華奢な体は、白と黒のゴシックな衣装により着飾られており、まるで西洋人形のようだ。

 

「取り敢えず運ぶか……あ、そうだった」

 

 少女へと手を伸ばしたガーデナーは動きを止める。

 そして、腰のホルダーから種子を取り出すと、口に放り込んだ。

 

「女の子相手なら、こっちだ」

 

 瞬間、ガーデナーの体が色とりどりの花で覆われる。

 頭まですっぽりと覆われ、花の塊となったガーデナーは中から少女となって姿を現した。

 辺りに花弁が舞い、ガーデナーを飾り立てる。

 

 亜麻色の長髪をもつ素朴な少女となったガーデナーは、腰に手をやり胸を張った。

 

「うんうん、絵面的にもこっち!」

 

 先ほどよりも自信満々な声でそう宣言したガーデナーは、少女を抱きかかえた。

 探索者であれば、少女を一人抱きかかえるなど容易い。

 

「軽っ!?」

 

 が、それを加味してもあまりにもその少女は軽かった。

 まるで、臓器や筋肉が存在していないのではないかと思われるほどに軽いその少女の顔を見る。

 

「良い……久々に正統派美少女だ……」

 

 ガーデナーは頷くと、そのままやや駆け足で校舎の中へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 『『はわわ……』』

 

 変態と変態はあわあわしていた。

 

 理由はただ一つ、変態がどこかに行ったからである。

 

「……うん、目立った傷もありませんね!」

「ああ、意識を失っているだけだろう。もう少しだけ眠らせてやってくれ」

 

 0号として冷静に告げる裏、星詠みの杖とカメはてんやわんやであった。

 

『相棒ー!』

『マイロードー!』

 

 叫んでも返事は返ってこない。

 あれほど異常な存在感を放っていたソレが消えたという事実は、いかにデモンズギアの始祖と天使と言えども理解しがたいものだった。

 

『くっ、おいカメ! 今すぐ和ロリコンテンツを生産しろ! それで寄ってきたところを捕まえるんだ!』

『マイロードを野生動物か何かだと思っているのか? それに、コンテンツで来るなら既にこうしてヒカリがソルシエラを抱きかかえている時点で来るだろう』

『くっ……』

 

 星詠みの杖、完全論破である。

 

「杭の破壊も完了した。すぐに撤退するとしようか」

「そうですね。またルシエラが来るかもしれない。早く戻りましょう」

 

 撤退の準備を進めるミズヒとトウラクの表情は晴れ晴れとしていた。

 背後には、全身が焼き焦げた地絃天星埜御霊の姿がある。

 

 地絃天星埜御霊は、頭だけを動かしてカイをじっと見ているようだった。

 

「鶏がらスープ」

 

 タタリの言葉と共に、影に地絃天星埜御霊がとぷんと沈む。

 それを見て、カイは悲鳴を上げた。

 

「あー! 駄目だって言ってるだろ! かーえーせー! 後でアイ兄さんに引き取ってもらうから!」

「じゃあ代わりにカイを食べますねー」

「いや僕も駄目だって――ひゃあっ!? おいどこ触って」

 

 カイの太ももに影が巻き付き再び影へと沈んでいく。

 タタリは満足そうだ。

 

 本来であれば、ソルシエラを助けた後のこの光景は享受すべきものである。

 しかし、星詠みの杖とカメにはその余裕はなかった。

 

『どこにいったかわからないのか?』

『ダメだ、私の見守りカメさんピンバッジの反応もロストしている。恐らくは、位相を越えたのだろう』

『保護者が聞いて呆れるねぇ!』

『相棒を名乗っておきながらその体たらくはなんだ!』

『あ?』

『は?』

 

 冷静な顔の0号だが、脳内ではデモンズギアと天使が一触即発の状態である。

 そんな中、ヒカリが声を上げた。

 

「あっ、目覚めたみたいです!」

 

『『えっ』』

 

 その言葉に、全員の視線がヒカリの腕の中のソルシエラに集中する。

 永い眠りから覚めたようにゆっくりとソルシエラは目を開けた。

 

『ま、マズイぞ! 相棒の言う通りなら今のソルシエラは自律稼働記憶喪失型脳焼き状態! 相棒の制御なしだとどうなるかわからない!』

『おぉ……成す術無し……』

 

 二体の心配などつゆ知らず、ソルシエラは辺りの景色を見渡す。

 そして、ヒカリの顔を見てどこか怯えた様子で恐る恐るこう言った。

 

「え、えっと……だれ、ですか……?」

「……え?」

 

 言葉の意味が理解できなかったのか、ヒカリ達は上手く言葉を紡ぐことが出来ない。

 

 戦いの果て、ソルシエラを救うことはできた。

 しかし、同時に何か大切なものを失ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『『はわわ……』』




※この章はソシャゲあるあるで構成されているので、よくわからない人はカクヨムの方で一気に流し読みすることをお勧めします。
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