【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
「――成程、大体理解したわ」
ガーデナーと六波羅からの回答を経て、ソルシエラはそう言った。
「えっ、もうわかったの?」
「私からしてみれば、答え合わせでしかないもの。星木の学園と鏡界……別に驚くことではないわ」
「ほんとに? ここに来たほとんどの人は最初は理解できないよ?」
「天使たちを殺すために理事会が秘密裏に作り上げた学園でしょう? そして、この鏡界という特殊な状況下では普通の探索者はまともに戦えない。だから、位相鏡界を通して探索者の魂の情報を複写することで兵隊とする。既にその情報は閲覧済みよ。本当に、悪趣味で傲慢な計画よね」
淡々としたその言葉に、ガーデナーは「ほえー」と気の抜けた感嘆を漏らす。
一方、六波羅は興味深そうにソルシエラを観察していた。
ソルシエラはその視線に気が付いたのか、六波羅を見る。
「何かしら」
「……お前、そっちの世界の俺と戦ったことがあるな?」
「ふふ、どうかしらね」
「ハッ、じゃあその目は何だよ。隙があれば俺の脚を見やがる。普通は剣か、このガラの悪い面を見る筈なんだがなァ?」
半分は直感である。
そして、もう半分は自分自身への信頼であった。
(見たらわかる。こいつはたぶん強ェ。今はどこか気迫に欠けるが、死線を潜り抜けてきた人間特有の臭いがしやがる。そんな奴を、どの世界であろうとも俺が放っておくわけがねェ)
仮に、ガーデナーに呼び出されたわけではなく自分の世界でソルシエラに遭遇していたのなら戦っている。
その確信があった。
「ねえねえ、ソルちゃんは六波羅パイセンと戦ったことあるの?」
「ソルっ……聞き間違いかしら?」
一瞬、明らかに余裕そうな笑みが崩れたソルシエラだったが、すぐに取り繕う。
威圧的な笑みを浮かべながらガーデナーに問いかけるが、当の本人には効果がなかった。
代わりに、エイナが泡を吹いて倒れた。
「じゃあ、ソル姫? なんか、フリフリのお洋服で可愛いし。あっ、もしかしてそういう位相鏡界? それぞれの学校をお姫様が治める学園都市とか?」
「学園都市にそんなふざけた制度あるわけないじゃない」
ソルシエラの否定に、誰も何も言わなかった。
現に、ここにパティシエの恰好をした男がいるからである。
「……で、実際ソル姫は六波羅パイセンと戦ったことあるの?」
「ソル姫はやめて。……六波羅と戦った事はあるわ。当然、星穿ちと異能を使用した彼とね」
「……へェ。それで生き延びたってのか、お前」
「生き延びた? 違うわ、私は……勝ったのよ」
「よォし、戦争だ」
六波羅の判断は早かった。
気絶しているエイナを無理矢理武器に変えた六波羅は、ソルシエラを獰猛な笑みと共に誘う。
ホイップクリームとカラースプレーでデコレーションされた弓は、一見ふざけているが彼が持つと妙な威圧感がある。
「ちょ、ちょっとパイセン! 駄目だよ! 今は先生もいないんだから! ここが壊れたらどうなると思う? 私が怒られるの!」
「いつもの事じゃねェか」
既に六波羅はやる気満々のようであった。
そんな彼を見て、ソルシエラは応えるようにベッドから起き上がる。
そして傍らにあった大鎌を手に取った。
「ふふっ、またあの時みたいに遊んであげる」
「いいねェ、お前みたいな活きの良い奴に会ったのは久しぶりだぜェ」
「人選ミスったぁ! レイちゃんにしておけばよかったよぉ!」
頭を抱え叫び、ガーデナーは咄嗟にホルダーへと手を伸ばす。
そして、この事態を収束できそうな生徒を呼び出そうとしたその時だった。
「――ッ、天使のお出ましかァ!」
「………………そのようね」
六波羅の言葉に、ソルシエラは頷く。
一触即発の空気から一転、二人は揃って窓の外を見た。
ガーデナーも釣られて窓に向かえば、遠くに黒い何かが見える。
「……ナニアレ?」
「天使だろ」
「天使は普通白いでしょ。見なよ、真っ黒だよ? 六波羅パイセンの作るショコラケーキより黒いよ?」
六波羅は呆れた様子でため息をつく。
そして、ガーデナーの首根っこを掴んで窓から飛び降りた。
「うわぁっ!?」
「ソルシエラ、てめェも来い!」
窓の外から聞こえた声にソルシエラはため息をつき、首を横に振る。
「本当、何がどうなっているのかしら」
独り言をつぶやきながら、彼女もまた窓枠に足を掛け部屋を後にした。
■
星木の学園の校門は、一見して古びた門ではあるが特殊な聖遺物により強固な障壁として機能している。
籠城戦を視野に入れた作りになっており、本来は校舎の中から天使を安全に殺すのだがその使い方をされることは中々ない。
まさに今も、校舎から少し離れた場所に陣取り、真正面から天使を迎え撃とうとしていた。
ソルシエラが到着した頃には、両者にらみ合いの状態となっている。
「……これだけの数の天使は初めて見たわ」
「うわ、黒いだけでなんか強そうに見えるなー」
本来天使は白く、人間の手足のような部位で構成されている。
が、今ガーデナーたちの前にいる天使たちは全員その体表が黒く、そしてひび割れていた。
「強いならいいじゃねェか。俺は仕事じゃなくて殺し合いがしてェんだ。……おい、いい加減起きろエイナ」
『ふえっ!? あ、こ、ここは……?』
「気合を入れろ、久々の祭りだ」
六波羅の言葉で察したのか、エイナは嫌そうな声を出した。
「うーん、やっぱり様子がおかしい。六波羅パイセン、一体生け捕りに出来る?」
「あァ、わかった」
ガーデナーの指示に頷き、六波羅は弓を構える。
そして、先端がいちごになった矢を番えた。
「じゃあ、始めるとするかァ!」
矢が放たれる。
まっすぐに天使へと向かった矢は、辺りにホイップクリームをまき散らして派手に爆発を巻き起こした。
数体の天使が吹き飛ばされる。
間もなく、その後ろから続々と天使が迫ってきた。
「行くぞエイナ!」
『はいぃ!』
弓をへし折って双剣にした六波羅は、天使の群れへと駆けだす。
それを見て、ソルシエラはガーデナーの傍で大鎌を構えた。
「護衛はいいのかしら?」
「大丈夫だよ、そっちこそ無理しちゃ駄目だからね」
「ふふっ、心配してくれてありがとう」
ソルシエラは微笑むと、大鎌を掲げる。
その瞬間、彼女の背後に大量の砲撃陣が展開された。
ガーデナーはそれを見て、ぎょっとする。
「え、それ六波羅パイセンに当たらない?」
「六波羅なら避けるでしょ。当たったら……ふふ、どうしようかしら」
蠱惑的な笑みと共にソルシエラは大鎌の先端にある銃口を天使に向ける。
そして、迷いなくトリガーを引いた。
「消し炭にしてあげるわ」
銀色の砲撃がまるで雨のように天使たちへと降りかかる。
それを見た六波羅は、高ぶった様に笑って天使の首を刎ねた。
「ハハハっ、それでいい! お前の本気を見せてみろソルシエラァ!」
『あわわわわわわ……リーダーぁ帰りましょうよぉ!』
懇願するエイナの声を無視して、六波羅は攻撃を続ける。
間もなく、ソルシエラの砲撃が天使たちへと――。
「させないよー☆」
どこからか放たれた無数の
更に地上からソルシエラが放った強力な収束砲撃は、突如現れた何者かによって切り伏せられた。
「今度は何ー!?」
「……これは」
爆発の中、一人の少女が姿を現す。
ピンクを基調として白のフリルがついた、ロリータファッション。
蒼銀の髪は、可愛らしいカチューシャで纏められている。
その姿を見て誰よりも驚いたのは、ソルシエラであった。
「わ、私……!?」
動きが止まったソルシエラの前で、よく似た少女はリボンのついた大鎌をクルクル回して決めポーズをとる。
そして、あざとい声で言った。
「皆に愛される一番星! ソルシエラだよっ☆」
「「「!?!?!?!?!!?」」」
ガーデナー陣営の思考が完全に停止する。
『……ぷっ、あっはははははははは! お姉様がっ、あんなっ……いっひひひひひひひ! お腹いたっ、ちょっ、やめてくださいよぉ! はははははははははは!』
一人、大ウケであった。
『ソルシエラがもう一人!? こんなのデータにないぞ!?』
『いっつもデータにないねぇ(精一杯の星詠みの杖の声真似)』
『おぉ……なんと可愛らしい(精一杯のカメの声真似)』
『……やっぱ寂しいよぉ!』