【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第348話 3‐1 星詠み達の輪舞

――ハッ、傲慢系僕っ娘が目覚めた気がする!

 

『何を言っているのじゃ主殿』

 

 感じないかい、赫夜牟君。

 俺にはコンテンツの息吹……そう美少女の春一番が吹いたように感じたんだ。

 まるでそよ風のように優しく、しかし同時に確かな存在感を主張しているのだよ。

 

『……そうか』

 

 今考えるのやめただろ^^

 後でおしおきね♥

 

『ひぃ……』

 

 怯える姿も可愛いね。

 さんざん那滝家でイキってたのにね。

 

 さあ、もう一度質問するよ。

 感じないかい、赫夜牟君。

 

『……感じるのじゃ!』

 

 適当言うな!!!

 こっちは冗談で言ってるわけじゃあないんだよ!!!

 

『どうすればいいのじゃぁー!』

 

 コンテンツの導きに従うんだ。

 今の赫夜牟君には人外のじゃロリとしてガーデナーちゃんに質問をする役目があるだろう。

 ほら、のじゃロリって俗世に疎いし(偏見)。

 

『わ、わかったのじゃ。じゃが、主殿がずっと狸寝入りを決め込んでいるのはなぜじゃ。もう戦闘も終わり、ベッドの上に戻ってきたというのに』

 

 アイドルソルシエラを撃破した後、流れを読んで倒れた俺はそのままベッドまで運ばれた。

 今はベッドの上で時折苦しそうに唸り声を上げる仕事をこなしている最中である。

 

 ちなみにパティ波羅さん達は、役目を終えたかのように花びらとなって消え去ってしまった。

 折角のコンテンツ拡張パックが……。

 

『……体調は悪くないんじゃよな?』

 

 勿論!

 むしろ、アイドルシエラから出てきた光を吸収したおかげでなんか使える力が増えたっぽいんだよね。

 

 いいかい赫夜牟君、こういうのはね13人をソルシエラが倒して元の力を取り戻すのがお約束なんだ。

 きっと、この状態の俺が配布で、力を取り戻した完全体ソルシエラが限定なんだよ。

 

『お約束……ハッ、カメ先生から聞いたぞ! お辞儀をした時ランドセルから教科書をこぼしたり、偉そうにしておいて夜にはしっかり眠くなっちゃうアレだな! 我、きちんと20時にはお眠になる様に練習したぞ!』

 

 あの変態保護者の授業内容偏ってんな……。

 まあ、だがコンテンツとしての王道の流れという意味では間違いないね。

 

『つまり、これからあの偽者の主殿をなぎ倒して行けば良いのだな! 我、そういうの得意じゃ! 特に、弱者を嬲り殺すのは心地が良い……』

 

 ちょっと以前の残虐性が残っているけど、いいぞその調子だ赫夜牟君。

 

 そして今の俺は一人目を倒して、その力を吸収した段階。

 けど、俺が一人目で色々と察してちゃっちゃと行動するのは流石にミステリアス通り越して気持ち悪い。

 

 いくらミステリアス美少女と言えども、理解力が高すぎる。

 

『成程……?』

 

 そこで君が色々と情報を集めるためにガーデナーちゃんに根掘り葉掘り質問をする。

 俺は丁度良い所で会話に入って、いつの間にか目覚めて話を聞いていたムーブをするんだ。

 その時にはガーデナーちゃんの話からある程度の答えを導き出している予定だよ!

 

 第一声は「成程……そういう事だったのね」で、いくから!

 

『じゃが、道中で既に質問したが、ガーデナーも良くわかっていなかったぞ。このような事は初めてだと言っていたのじゃ』

 

 この事件の事じゃなくてもいいよ。

 ガーデナーちゃんの能力とか、鏡界の事とかを詳しく教えて貰えればいい。

 ソシャゲの配信前PVの知識だけじゃ全知ムーブが出来そうにないからね。

 

 色々と知れたら、後で良い感じの真実をでっちあげるから^^

 

『あの……』

 

 なにかな^^

 

『ずっと……主殿はこんな感じでやってきたのか……?』

 

 そうだよ。

 

『異常じゃぁ……』

 

 そんな事はないよ^^

 

『嘘じゃぁ! なんか我の知っている探索者とは違うし、怖いのじゃ……!』

 

 いいからやれ。

 

『はい……』

 

 

 

 

 

 

 眠るソルシエラの傍で、小さな体躯の少女は退屈そうに首を鳴らした。

 

「つまらぬのぉ」

 

 そうこぼす姿は、見た目とはかけ離れておりまるで老練の戦士に見える。

 頭部に取り付けられた耳のようなムカデの胴体に、先の割れた真っ赤な舌など、人間には思えない姿をしていた。

 

「あの……赫夜牟ちゃん……だっけ?」

「ほう、我を子供のように扱うとは人の子が随分と思いあがったものじゃ」

 

 ぎろっと、真っ赤な目がガーデナーを睨みつける。

 しかし、ガーデナーはそれを見ても得意げに胸を張った。

 

「ふふん、そういう脅しは効かないよ! もっと怖い人たちを召喚できるからね!」

「召喚……そうじゃ、貴様から話を聞くのじゃったな。この小娘が如何様にしてこの有様となったかは分からないと言っていたが、己が力の事なら説明できるじゃろう?」

 

 赫夜牟の着物の裾から伸びたムカデのような触手がソルシエラの頬をつつく。

 ソルシエラは苦しそうに唸るだけで、それでも目覚めようとはしなかった。

 

「そ、そんな雑につっついて良いの?」

「質問しているのは我じゃ。貴様の力について、話してみろ」

「はいはい……って言ってもそこまで面白い話じゃないけどね」

 

 ガーデナーは反対のベッドに座ると足を伸ばした。

 

「理事会が作り上げた最後のSランク、それが私だよ。無数の可能性の世界から探索者を呼び出すことが出来るんだ、凄いでしょ」

「よくわからん。次はこの場所について説明を続けろ」

 

 突き放すような赫夜牟の言葉に口を尖らせたガーデナーだったが、すぐに説明を始めた。

 

「ここは、厄災である滅びの六天使を選別するための学園だよ。学園都市にどのタイミングでヤバそうな天使が向かったかを理事会に知らせる役割もあるんだ。他にも、天使が向こうの世界に行き過ぎないように殺して調節する仕事もあるね!」

「そうか」

「うーん、説明と言ってもこれくらいなんだよね」

「なんだか面白くないのじゃ。小娘の知っている情報と大して変わらないではないか」

「……ねえ、次はソルちゃんについて教えてよ」

 

 ガーデナーは顔を寄せて、そう囁く。

 すると、赫夜牟は口を吊り上げて笑みを浮かべた。

 

「嫌じゃ。こやつの苦しみは、こやつだけのもの。我が他者に話しては、せっかくの苦悩が台無しではないか」

「……ソルちゃん、何か悩んでいるの?」

 

 今までの軽い調子から一転して、ガーデナーは真剣な顔で問いかける。

 ソルシエラの纏う独特の雰囲気については既に知っていた。

 

 だからこそ、目の前の少女にその真実を教えて貰おうと思ったのだ。

 しかし赫夜牟はそれを見透かしたかのように意地悪そうな笑みを浮かべるばかりである。

 

「知りたいなら、相応の情報を寄こせ。まったく、大した情報を持っていないのに強欲な奴じゃ」

「そんなこと言っても、私は雇われみたいなものだから詳しい事は知らないんだよー! こういう時、先生がいてくれたらなー!」

「……先生?」

「そう、先生。ラッカちゃん。私よりも強くて、たぶん賢い人。あの人なら赫夜牟ちゃんを満足させられるかも」

「そうか。して、そのラッカとやらはどこにいる」

 

 赫夜牟の言葉に、ガーデナーが首を横に振ろうとしたその時だった。

 

「――私はここだよ」

 

 見れば、窓が開け放たれ窓枠に足を掛けた少女がいた。

 桜色の髪に、軍服のような白い制服。

 まるで春風のように優しい雰囲気をもつその少女を見て、ガーデナーは驚いたようにその名を呼んだ。

 

「先生!?」

「や、留守番どうも」

「何やってたんですか、急にいなくなってびっくりしたんですよ。それに、その後正統派美少女が降ってくるし」

 

 ラッカは室内に降り立つと、ベッドで眠るソルシエラを見た。

 

「この子に用があって戻って来たんだ。……あ、用が終わったらすぐにまた出て行くから」

「えぇ!? なんですか、また私を置いてけぼりですか?」

「そう怒んなよー。……で、こっちのちっこいのは何?」

「貴様……我を子ども扱いしたな……?」

「へぇ、威勢が良いな。一度殺すか」

 

 一触即発の空気を察してガーデナーは間に立つ。

 そして、必死に首を横に振った。

 

「ダメダメ! 喧嘩はやめてください!」

「はーい」

 

 ラッカは素直にうなずき、ソルシエラのベッドの傍に椅子を置いて腰を下ろす。

 

「それにしても……やっぱり求道者だ。また会えるなんて思わなかった」

「求道者……?」

「そう。理想の銘を持つ、銀の黄昏の初期メンバー。教授と私に次ぐ実力を持つ子」

 

 愛おしそうに髪を撫でるラッカの目は、遠い昔を見ているようだった。

 

「先生、ずっと聞こうと思っていたんだけど……銘って何ですか? たまに、先生と理事長が言っていますよね」

 

 その言葉に、ラッカは目を閉じる。

 そして優しく頷いた。

 

「そうだね、そろそろ君にも教えようかな。本当は私達だけで片付ける予定だったけど。教授が覚醒した今、そうも言っていられなくなったしね」

 

 ラッカはソルシエラを見つめる。

 

「彼女の中にある銘の輝きは乱れていない。きっとすぐに目覚めるよ。そうしたら、この子と一緒に銘について教えてあげる。たぶん、同じ銘を持つ者でも考え方は違うだろうからさ、私と求道者の二人で説明した方がいいよ」

「ソルちゃんも、銘を持っているんですね」

「そうだよ。すっごく強くて、反則的なやつ」

 

 それは、ガーデナーが初めて耳にするラッカの声だった。

 まるで憧れている子供のような。

 まるでヒーローについて語るような。

 

 誰かの手を引いて進む彼女からは想像もできない言葉、声色、表情である。

 

「早く目覚めないかなー」

 

 まるでプレゼントを待つ子供のようにラッカはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 まっ、まままままマズイぞ!

 俺、銘についてなんも知らん!

 

『なら正直に言えば良いじゃろ』

 

 ソルシエラが無知で許されるかぁ!

 どんなことでも、少しは情報を知っておきたいんだよぉ!

 

 うわーん!

 星詠みの杖君、カメ君ー!

 

 どうしていないんだよー!

 

『……? 主殿、意図して離れた訳ではないのか?』

 

 そんな訳ないだろ!

 あんな常識のない変態達を放っておけるか!

 

 くそっ、ここにいればすぐに『銘 何 説明』で二人に聞けたのに……!

 

『なら聞けば良いのじゃ』

 

 それが出来たら苦労しねえよ!

 今頃、コンテンツにお腹を空かせていやしないかな……。

 心配だ。

 

『あの……』

 

 なんだい、赫夜牟君。まさか、君が銘について知っているのか?

 

『いや、それは知らないんじゃが。我、カメ先生となら恐らく交信できるぞ』

 

 エッ!?

 

『我もカメ先生も位相世界を移動可能であるじゃろう? じゃから、連絡くらいは造作もないのじゃ』

 

 でも、それならどうしてカメ君から未だに何もメッセージが来ないんだよ!

 自分で言うのもなんだが、俺はカメ君のカワイイ愛娘なんだぞ!

 

『……え、それはどういう……ではなく。どうやら、今主殿がいる位相世界は随分と特殊な場所のようじゃ。常に座標が変動を続けておる。まるで海を漂うクラゲのようじゃ。故に、あちらからここの座標を捉えるのは難しいじゃろう』

 

 へー、赫夜牟君けっこう詳しいね。

 まるで本当ののじゃロリみたいだぁ。

 

『これでも百年以上は生きておる。多少は知識もあるのじゃ』

 

 百年はのじゃロリには少し若すぎるかな。

 

『すまぬ、その知識はない(断言)。兎にも角にも、主殿がカメ先生とお話をしたいと言うのであればこちらから接続するとしよう。あちらは座標が固定されているからの、通信も容易い』

 

 ほ、本当かい!?

 

『ああ。我を誰だと思っておるのじゃ』

 

 のじゃロリ強化アイテム。

 

『聞いた我が馬鹿じゃった』

 

 何、不満なの?

 

『ひぇ……ふ、不満はないぞ! 我、そういうの大好きじゃ!』

 

 よし、じゃあ早速頼むぞ赫夜牟君!

 俺、たぶん後数分もしない内に目覚めて銘について説明しなければいけないっぽいから!

 

『カメ先生との意識の接続を開始するぞ! むむむむ……』

 

 そわそわ……。

 

『むむむむ……!』

 

 ソルソル……。

 

『むっ、繋がっ『おぉ! その波動は娘のマイロードではないか!』……あっ、あのカメ先生』

 

 この声、カメ君だぁ!

 

『相棒ー!』

 

 こ、この声は星詠みの杖君!

 

 瞬間、俺の脳内が満たされる感覚があった。

 二人分の空白が埋まり、美少女への愛で満たされていく……。

 

 

『マイロード!』

『相棒!』

 

 二人ともー!

 

『『チュッ♥ チュッチュッチュッチュッチュ――』』

 

『ひえ……』

 

 いつもの四人が揃ったな!

 もう負ける気がしねぇ!

 

『いつもの……? 我、この集団のいつものメンバーにカウントされておるのか……?』

 

 

 

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