【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第349話 3‐2 星詠み達の輪舞

 一体どれだけの苦しみを味わっただろうか。

 それはまるで、絶対死なないと思っていた推し美少女があっけなく死んでしまった時のように辛く苦しいものだった。

 

 本当に寂しかったんだよ二人とも!

 

『私もだよ^^ 私から断りもなく離れるなんて、後でぐちゃトロにしてあげる♥ 』

『おぉ……お腹は空いていないか? マイロードの好きなキッシュを作ってあげよう』

 

 くうー!

 これだよこれ!

 一方的に自分の好き勝手な事を主張する感じ!

 

 この脳内で祭りが行われているような感覚、やっぱこれが無いと。

 

『あの……主殿……本題に入らなくても良いのか?』

『ふむ、君は赫夜牟だね。随分と可愛らしい姿になったじゃないか。実に、わからせがいがある』

『演技も出来ているようだな赫夜牟よ……』

『は、はいカメ先生! そ、それでお二人をお呼びしたのは銘について教えて欲しかったからじゃ』

 

 そうだった。

 脳内でイチャイチャしながらコンテンツを生産するためじゃなかった。

 

『それも大事だろ。実際、記憶を失った君は自律稼働して今も大勢の脳を焼いているのだから。このコンテンツもしゃぶりつくさねば』

 

 ああっ、そっちもあった!

 

 『ちなみに私は銘について知らないよ^^ 恐らく、作られるときに意図してその情報は除外されたのだろう』

 

 そうなのか……。

 

『おぉ、私は知っているぞマイロード。任せるのだ』

 

 カメさん!

 流石だ、デモンズギアと天使で知識の補い合いに隙が無いぜ!

 

『そもそも、銘とは天上の意思が授ける救世主の資格。であれば、私こそが貴女の疑問を解消するのにふさわしいだろう』

 

 よし、ではカメ君は常に俺に知識を授け続けるんだ。

 今から目覚めて、さも全知のふりをするからね!

 

『……我は帰っても良いな! そろそろのじゃロリ講習に戻るのじゃ』

『ダメだよ^^ 今は、君だけがソルシエラの相棒として鏡界にいるのだからねぇ。脳内で繋がっているとはいえ、私たちは完全に合流したわけではない』

『で、でもさっき脳内だというのに接吻を大量に交わしていたような……?』

『何がおかしいんだい? 文句があるなら、掛かってこいよ^^ やったんぞ?』

『ひぇ……なんでもないのじゃ……』

 

 よし、じゃあ目覚めるからね。

 行くぞ三人とも!

 

 これより、『衝撃の真実! 理想の銘を持つソルシエラの正体とは!?』を開始する!

 

『『応ッ!』』

『……え? あっお、応!』

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 苦し気なうめき声と共に、やがてソルシエラの目が開かれる。

 まるで悪夢を見ていたかのようにその額には汗が浮かんでおり、彼女は起き上がると苦々しい表情と共に首を横に振った。

 

「……また、あの夢」

「目覚めたようじゃの、小娘」

「赫夜牟……それにガーデナーも」

 

 ソルシエラは二人の顔を見て、ここまで運ばれたことを察したようだった。

 礼でも言おうとしたのか、ソルシエラは口を開く。

 その瞬間、一人の少女と目が合った。

 

「……ラッカ?」

 

 彼女の顔はみるみるうちに驚きに染まっていく。

 そして何か更に言葉を続けようとしたが、それよりも早くラッカがソルシエラへと抱き着いた。

 

「求道者ー!」

「わっ、ちょっと、いきなり何をするの?」

「私の事覚えているんだよね? ……あ、今は『さくらば』じゃなくて『さくらにわ』だからね! これからは、桜庭(さくらにわ)ラッカって呼んで!」

 

 ソルシエラの胸に顔をうずめ、頭をこすりつけるその姿はまるで大型の犬のようであった。

 困惑した表情のソルシエラに代わり、赫夜牟は服の裾から触手を出すとラッカの襟元を引っ張り上げる。

 

「一人で盛り上がるな。我にも説明をするのじゃ」

「こっちは数万年ぶりの再会なんだよ!? ちょっとくらい、いいじゃん! ねー?」

「えっと……あの……」

「どうしたの?」

 

 ラッカは、ソルシエラの態度がおかしい事に気が付いた。

 どこかバツの悪そうな表情を浮かべる彼女は、ラッカの顔色を伺うようにこう言った。

 

「私、貴女の事をよく覚えていないの。……名前と見た目、そして自分と関わりがある人だったという事しか……」

「記憶喪失……!? 銘を持つ者が……?」

 

 ラッカはソルシエラの顔を掴むと、目をじっと見つめる。

 

「銘については覚えてる?」

「……天上の意思が、裁定の公平性を保つために生み出す人類側の代表よ。一つの文明に()()()()()()()()。銘を与えられたものは、裁定の日に向けて人類を率いて戦うことになる……で、合っているかしら」

「うん、覚えているね。ガーデナーちゃん今の説明で理解できたかな?」

「なんとなく。魔王がフェアプレイ精神で自分を殺すために勇者を作ったって事でしょ?」

「そう言われるとなんかアレだね……でも、大体合ってるよ。天上の意思から銘を与えられた者は世界を統べる力を持つことになる」

 

 ラッカは胸を張ってそう告げる。

 ソルシエラはその言葉に首肯し更に続けた。

 

「当然、制約も多いわ。持ち主がどのように人類を進化させたいのか、それによって銘は変質する。同時に、それに背いた時点で人類の代表の資格を失い死ぬことになるわね」

「一方的に力を与えて、心が折れたら殺すって……天上の意思ってクソでは?」

「あはは……昔指揮者も同じことを言ってたな……でも、この力がないと裁定の日に滅ぼされるのも事実だ」

 

 苦笑いを浮かべながらラッカは、ソルシエラのベッドに腰を下ろす

 そして、首を傾げた。

 

「本当に覚えていないの? 銘については完璧な説明だったけど」

「私は何も知らないわ」

「ルシエラの事も、終末決戦の事も?」

「……ええ」

 

 ラッカは硬い表情でこう問いかけた。

 

「ソルシエラの事も?」

「……ソルシエラって、今の私の事よね。それは理解できているわ」

「違う」

「え?」

「博愛のソルシエラ。銀の黄昏に存在する七つの銘の元になった最初の銘だよ」

 

 その言葉は、どこか後悔を帯びているようだった。

 

 

 

 

 

 

 はい、一旦集合。

 

『はい』

『おぉ』

『集合も何もずっとここにいるじゃ『^^』……ゴメンナサイ』

 

 星詠みの杖君、あんまり新人を威圧しないでね。

 

 それよりも、だ。

 

 博愛のソルシエラって……何ー!?

 星詠みの杖とかデモンズギアとは別に何かあるの……?

 

『解説のカメ』

『私にもわからない。本当に申し訳ない』

『海に帰れ』

 

 そっかぁ……。

 おかしい、謎を解決するはずだったのに謎が増えたぞ……?

 

『そもそも銘は世界に一つが原則だ。七つもあったら天上の意思が即滅ぼしに来るだろう……おぉ、愚かな人の子よ。選択を誤ったというのか……』

 

 と、とにかく銘についてはわかったよ。

 あと、ルシエラが以前言っていたように、俺の中に理想の銘があるっぽい事も。

 

『時折無茶苦茶な事をしていたのはそれのおかげだったんだねぇ』

『……おぉ、私がはっきりと感知できなかった事を考えると他にも何かある気がするのだが……』

 

 わからない。

 俺はフィーリングでミステリアス美少女をやっている。

 

 ラッカちゃんのあの口ぶりだと、どうやら俺とラッカちゃんの間にもコンテンツがありそうだし……。

 

『ソルシエラ総受け概念が広がりを見せるねぇ』

 

 天上の意思さんこの概念だけ生まれない世界作ってくれないかな。

 

『それは世界が生まれなくなるのでは?』

 

 世界に根付いてるものなのかよソルシエラ総受け概念。

 

「博愛……ごめんなさい。聞いたことがないわ」

「そっか……わかった」

「良ければ、教えてくれないかしら」

 

 ここからはソルシエラと一緒に博愛について学んでいこうねぇ。

 

『そんな悠長なことを言っていて良いのかい? こっちでは虚無シエラが脳焼き絨毯爆撃を仕掛けているというのに』

 

 それも見たい。

 けれど、俺は今から13人のソルシエラを倒さなきゃいけないんだ。

 

『?????』

『お ぉ !』

 

 全員ロリではねえよ。

 

『おぉ……』

『どういうことだ? ここが鏡界だという事は理解したが。一体何が起きているんだ』

 

 俺も詳しくはわからないんだけど『【期間限定イベント】始まりの星を詠う君へ』が開催されているっぽいんだよ。

 

 だからここで俺はソルシエラを全うしないと。

 

『また変なこと言ってる……』

 

 本当なんだって。

 さっきもアイドルシエラを倒したんだから。

 

 ――っ、この気配。

 またソルシエラが来たのか!?

 

『ソルシエラは君だけだろう』

『幼き命のソルシエラ・ブライトも忘れるな!』

『面倒くせえなこいつ^^』

 

 アイドルソルシエラを吸収したことにより感知能力が上がったのだろうか。

 この場所に近づいてくる何かの気配を察知できた。

 

「……求道者も気づいた?」

「ええ、来るわね」

 

 強者特有のふわっとした返答をしながら俺達は頷く。

 そして部屋を飛び出した。

 

『博愛のソルシエラについての説明はおあずけだな……』

『で、ずっと喋ってないけど、それで逃げられると思うなよ^^』

『ひぇ……我は難しい話だから大人しくしていただけなのじゃぁ……』

 

 行くぞ、ソルシエラ狩りじゃぁ!

 

 

 

 

 

 

 星木の学園前に、一つの流星が堕ちる。

 

 派手な爆発と轟音が辺りを揺らし、煙の中から出てきたのは蒼銀髪をポニーテールにした活発そうなソルシエラであった。

 

「たのもー! 私は規律のソルシエラ! いざ尋常に勝負ー!」

 

 ぴっちりとした黒い軍服に身を包んだソルシエラは、軍帽のつばを掴みながら校門を睨みつける。

 

 間もなく、学園からソルシエラ達が姿を現した。

 

「来たな! ソルシエラ! 私は他の奴らとは違う。正々堂々と勝負だ!」

「えっ、なにあれ」

「わかんない」

「……私もよくわかってないわ」

 

 疑問と驚愕の渦巻く中、戦いが再び始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

『思想の強そうなソルシエラみたいなの出てきたねぇ……』

『幼くない……』

『我、また戦うのか? ……あ、もっ、文句とかではないのじゃ!』

 

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