【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
俺達の前に現れたのは、軍服に身を包んだソルシエラであった。
その表情は、ミステリアスの欠片もなく勲章を見せつけるように胸を張り、俺達をまっすぐな目で見つめている。
『えっちだねぇ……。どうしてわざわざそんなにボディラインが出るサイズにしたのかな^^ というか、短パンだけど……お膝と太ももはペロペロしていいキャンディーって事かい?』
見ろ、星詠みの杖君がご乱心だ。
『おぉ……正直ドン引き』
『カメ先生、あやつは怖いのじゃ……』
『据え膳なんだから喰わないと恥だろ^^ あんなのが13人も来るのかい? ……おいおいおいおい! まるでフルコースだねぇ!』
一人はもう殺しちゃいました。
アイドルシエラ、いい奴だったよ……最期までコンプライアンスを気にしていた……。
『もう一度復活させないと』
利敵行為やめてください。
ちなみにリュウコちゃんが倒してました。
『絶対に許さんぞ……渡雷リュウコ……!』
よし、ヘイト管理完璧。
「やあやあ! よく逃げずに姿を現した! ソルシエラ、いざ勝負だ!」
「あー、待って待って」
ラッカちゃんが俺と軍服シエラの間に割って入る。
どうやら何か考えがあるようだ。
『それはそれとして、黒の軍服と白の軍服で美しいねぇ。軍国パロでラッカ×ソルシエラ、こーれあります。真面目一辺倒なソルシエラに対して、不真面目な態度ながらも次々と成果を上げていくラッカ。そんな彼女がソルシエラと共同作戦を行うことになり――』
『赫夜牟よ、この言葉は聞かなくとも良い』
『わかったのじゃ』
赫夜牟君へと教育が行き届いているね。
でもランドセルとかお眠時間の設定とかしてたの忘れてないからな。
「何者だ、貴様! 名を名乗れ!」
「私はラッカ! すっごく強い無敵のラッカ! ソルシエラを倒すなら、まずはこの私を倒してからにしろ!」
「先生、別にあいつに乗らなくてもいいのに」
「えーだってそっちの方が楽しそうじゃん?」
ガーデナーちゃんの言葉にウインクをしたラッカは、わざとらしく戦う構えをとった。
それを見て、軍服シエラは頷く。
「その意気や良し! ではラッカ、私と尋常に「待たれーい!」……今度はなんだ!」
「何故、私たちの姫を狙う! 相応の理由があっての事だろうな?」
「姫……」
「あー、全力で乗っちゃう日の先生だったか……」
置いてけぼりのガーデナーちゃんと、ミステリアス薄幸美少女求道者系ソルシエラのどこか冷たい視線を受けながら、ラッカは軍服シエラを睨みつける。
「正々堂々と勝負がしたいならば、その理由を話してみせろ!」
成程、どうやら軍服シエラから情報を引き出そうとしているらしい。
だがいくら真っ直ぐガールとはいえソルシエラであることに変わりはない。
そのミステリアスなお口から情報が出てくるわけがないのだ。
「13人のソルシエラの頂点に立つためだ! そして私が真のソルシエラとなり、人類を勝利へと導く!」
……こ、ここまでは別に聞いた情報だし、話しても仕方ないね。
「13人のソルシエラ……!? お前達を生み出したのは何者だ! 一体なんの目的があってそんなことをする!」
ソルシエラがそんなイベントの核心みてえなことペラペラ話すわけないだろ。
「いいだろう、教えてやろう!」
やめてくれよ。
「その前に訂正をしてやる! 生み出されたのは12人だ! 破滅のソルシエラ、奴が私達を生み出した!」
「破滅のソルシエラだと……!?」
「ソルちゃん知ってる?」
「知るわけないでしょ、あとソルちゃんはやめて」
続く言葉を待っていると、軍服シエラは俺を指さした。
「ソルシエラ、お前がかつて
苦痛の転移……?
そんな器用な事やった覚えがねえよ。
それに苦しみはソルシエラにとってはご馳走だ!
『気持ち悪い根拠』
『………………おぉ』
『カメ先生どうしたのじゃ』
気にしないで、どうせ幼き命がどうとか言うだけだよ。
「破滅のソルシエラは、滅びをもってお前自身を救済することに決めた! 同時に、自分を含めた13人で次のソルシエラの資格を持つ者を選ぶともな! それこそが、ソルシエラバトル……! そして私は、規律で世界をより美しくすると決めたのだ! ルールは厳格にしなければならない! そうすれば、安寧が得られるのだからな!」
ソルシエラにしてはやたらと口が軽いなこいつ……。
こんなチョロいわけないだろ! ミステリアス美少女の後釜ならミステリアス美少女であれよ!
『あの……マイロード……』
どうしたんだカメ君、急に元気がなくなったようだけど。
『その……八束ヒカリをソルシエラにした時の事を覚えているだろうか』
覚えているとも!
俺の脳内美少女フォルダにしっかりと保存されている。
ソルシエラ・ブライト、とても素晴らしい美少女コンテンツだった。
例えるならばそう、初夏に吹き抜ける色鮮やかな風のように心を躍らせる……。
『……その時、マイロードが肩代わりした痛みに私がしたことを覚えているだろうか』
カメ君の言葉を聞いて、俺の脳内にとある台詞が浮かび上がってきた。
【痛いの痛いの天上へと飛んでいくが良い! 痛いの痛いの天上へと飛んでいくが良い!】
……おい、嘘だろ。
『おぉ……私はマイロードの苦痛を和らげるために鏡界を経由して天上へとその痛みを送り込んだ。つまりは……おぉ……』
『こいつやっぱ海に帰そう^^』
本当に痛いの痛いの飛んでいけやってたのかよ!
じゃあ今俺の目の前にいるソルシエラって、その一部って事!?
『本当に申し訳ない』
『か、カメ先生も悪気があったわけではないのじゃ!』
『赫夜牟……すまない、私は教師失格だ……』
いいやカメ君、落ち込むことはないよ。
むしろ、こんな素敵なコンテンツを用意してくれたことに最大限の感謝を送ろう。
俺ではこんなコンテンツは生み出せなかった。
カメ君の親(偽)としての熱い心があったからこそ、この奇跡を生み出せたんだ。
つまり、愛、やね。
カメさん、ありがと!
大好きー!
『おぉ……お ぉ!!!』
『ッ!? 主殿の気配が急に幼く!?』
『赫夜牟、よく見ておくんだ。これが相棒だよ。自身の魂や記憶、肉体すらも捧げ、変幻自在の美少女コンテンツ的理想を体現する者――即ち、求道者だ』
『たぶん違うのじゃ』
カメさん落ち込まないで!
ぎゅーってしてあげる!
『おぉ……なんと優しい子に育ったのか……! 私も事件解決に尽力するとしよう!』
うん、がんばろうね!
『我は何を見せられているのじゃ?』
『A.とんだ茶番^^』
■
規律のソルシエラの言葉にソルシエラは顔を顰めた。
そして、大鎌を生み出すとラッカの横に立つ。
「下がってなさい。アレが私の弱さが生み出したものなら、私が片付けるわ」
「自ら戦う事を選ぶ……死に急ぐか、ソルシエラ! だがそれもまた良し! 来い!」
規律のソルシエラは応えるようにその手に銀の鎖を生み出し掴んだ。
その先端には大鎌の刃が取り付けられている。
形状こそ変化しているが、それは星詠みの杖の機能を持った兵器であることに変わりはない。
「ふふふっ、誰が本物か教えてあげる」
「私こそが本物に相応しい!」
二人のソルシエラが対峙する。
次の瞬間には戦闘が始まりそうな、張り詰めた空気の中ラッカはどこか懐かしそうにそして呆れた様子で笑みを浮かべた。
「そうやって、一人で背負い込んだり、責任感が強い所やっぱり求道者だ。……私が戦うから下がってて」
「必要ないわ」
「強がるなよ、銘を持つ人間の目を誤魔化せると思ってる? 体はまだ本調子じゃないんでしょ」
ソルシエラは答えない。
しかし、背けた顔が何よりの答えだった。
ならば、ラッカのやるべきことは一つである。
「あれは私が殺す。ついでに、見せてあげるよ。もしかしたら思い出せるかもしれないしね」
ラッカの手の中で空間が歪み、透明な槍が握られた。
姿や形は必要ない。
ラッカがその手に持っている。それだけが、唯一重要なのだ。
「博愛より最後に生み出された銘――憧憬を」
最強による戦いは、ここに幕を開けた。
『はわわ……カッコいいよぉ』
『マイロード、次の戦いに備えてゆっくり休むのだ』
『我、やっぱりもう出番ないのじゃ。帰るのじゃ』
『相棒の脳内がつまらないって言いたいのか?^^』
『ひぇぇ……』