【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第353話 傍観者達の狂騒曲

 鏡界の窓から失礼します^^

 フェクトムでは、この時期になると記憶を失った薄幸美少女の脳焼きを見られると伺ったのですが。

 

『はっはっは、確かに我々の村では九月の中頃に脳焼きが行われていますが……外からのお客様とは珍しい。きっと、しえら様もお喜びの事でしょう』

 

 ……しえら様ですか?

 

『ええ。この辺りには昔から薄幸美少女に脳を焼かれた美少女♂を求める神様がおられるのですよ。()()()()()()()見守ってくれる神様です』

『終わった因習村なのじゃ』

『マイロードと星詠みの杖は昂ると時折こうして意味の分からないやり取りを始める。今回もそうだろう。放っておけ』

 

 カメさんもこっちであそぼー!

 

『おぉ……観光客とは珍しい。どうぞ、好きに見て回ってください』

『カメ先生? 我を置いていかないで欲しいのじゃ』

『まあ、そこまで大きな村ではないですから、きっと半日もあれば見終ってしまうでしょうが。……ああ、けれど、山のふもとにある祠へは近づいてはいけませんよ。何故って、あそこには()()()()()()へと捧げる美少女♂が保管されていますから』

『なぁに、本物ではありませんよ。昔の風習に倣ってわらで編んだ美少女♂を捧げる形式上の儀式です。よければ見ていくと良いでしょう。……え、昔は本当に美少女♂を捧げていたのかって?』

『『……はっはっは』』

『我の領分な筈なのに、全然ついていけないのじゃ……。生贄とか我は本当にいっぱい貰ったりしてたのに……祠の中にいた本物なのに……のじゃ……』

 

 興奮、とどまるところを知らず。

 いやぁ、甘楽甘楽!

 

 虚無シエラがここまで素晴らしいとは。

 やはり自分で手を加えない方がコンテンツは活きが良い。

 

『記憶の無いケイに、無い記憶を語るアイ……はたから見ると恐ろしい光景だねぇ』

『おぉ……腕によりをかけて幼い思い出を作った甲斐があるというものだ』

 

 俺たちの夏休みの集大成と言っても過言でないからね。

 

『幼い思い出を……作った……?』

 

 そうか、赫夜牟君は知らないんだね。

 実は、俺は那滝ケイは女だったという過去を作るために親族使用人その他まとめて記憶を改ざんしたんだ^^

 

『ど、どおりで話がかみ合わないと思ったのじゃ……。我の知っている那滝家の三兄弟とは違うエピソードばっかり出てきて……というか、どうしてそんな酷い事をしたのじゃ』

 

 ?

 

『なんでわからないのじゃ!?』

『どうして笑うんだい? 彼女♂は本気で記憶を改ざんしたんだよ』

『笑ってないのじゃ! 震えているのじゃ! こ、こんな恐ろしい怪物たちに我が勝てるわけなかったのじゃ……。あの時大人しく逃げるべきだったのじゃ……』

 

 逃げても必ず捕まえるよ。

 地平の果てだろうが、宇宙だろうが別の世界だろうが。

 

『ひえ』

『おぉ……可哀そうに、こわかったな。よしよし』

『今はカメ先生も若干怖いのじゃ』

 

 恐れることはないよ。

 君にもいずれわかるさ。

 

 御覧、アイ兄さんとケイちゃんの表情を。

 二人とも、無い思い出を脳裏に浮かべて穏やかに話しているじゃないか。

 

「――その時のカイの慌てようといったら、今でもすぐに思い出せるほどです」

「ふふっ、カイお兄ちゃんってそんな方なんですね」

 

 二人は姉妹♂ということもあって、すぐに意気投合していた。

 物腰柔らかなアイ兄さんと、記憶がなくなっても元来の優しさを失っていないケイちゃんの会話はどう見ても美少女スチルである。

 

『髪型のせいで、虚無シエラこのあと死にそう^^』

 

 いいよね、記憶を失ったケイがこの後ふらっと消える展開。

 こんな穏やかな笑顔をしていても、心のどこかでは焦燥感に苛まれているんだよね……。

 

『え、消えるのじゃ?』

 

 消えないよ。

 でもそういうコンテンツもあるという事だよ。

 一つのコンテンツを見たら、そこから分岐するコンテンツをも楽しむ。それが俺達人類なんだ^^

 

『人類……恐ろしいのじゃ……』

 

 月のない夜は、星の明かりだけがこの部屋を照らす明かりである。

 薄暗い部屋で揺れるカーテンを眺めながらケイちゃんは一瞬、悲し気な顔をした。

 

 流石俺、自律行動も完璧だ。

 あれで中身がないなんて誰もわかんねえよな!

 わはは!

 

『中身がない!? ど、どう言う事じゃ!』

 

 どうもこうも、俺がここにいるんだからアレはただの抜け殻に決まっているでしょ?

 何を驚くことがあるんだい?

 

『驚くことしかしてないのじゃ……。それに、そもそもどうして我と主殿はこの景色を見られるのじゃ……』

『私とカメが出来たんだから、出来るに決まってるだろ^^』

『頭がおかしくなりそうじゃ』

 

 赫夜牟君、考えるんじゃない。

 感じ、流れに身を任せるのだ。

 

『この激流に?』

 

 どう見ても穏やかな海だろ。

 

「……アイお兄ちゃんは、優しい人ですね」

 

 ケイちゃんはそう言って俯く。

 表情はわからないが、握られた拳に落ちた小さなしずくがそれを示していた。

 

「私、これだけ聞いても何も思い出せない……」

 

『無いから当然じゃ』

 

「きっと大事な思い出なのに……忘れちゃ駄目だったのに……』

 

『忘れる以前の問題じゃろ』

 

 ちょっとうるさいよ君!

 今、ケイちゃんが泣いているでしょうが!

 

『どの立場からの言葉なのじゃそれは』

『おぉ……赫夜牟よ、いちいち指摘しているとお前が先に壊れるぞ……』

 

 赫夜牟君はまだのじゃロリ講習しか受けていないから、美少女コンテンツについてはわからないところが多いんだろうね。

 

『あ、じゃあ後で私がメスガキ講習もしてあげよう^^ のじゃロリ人外メスガキ……えっちだねぇ!』

『ひええ、カメ先生ー!』

『うちの教え子に何をするつもりだ星詠みの杖!』

『チッ、熱心な教育者め……』

 

 のじゃロリでも破壊力あるのに、ここでメスガキまで取得したら俺達はともかくソウゴ君がぶっ壊れちゃうよ。

 

『のじゃロリメスガキASMR!?』

 

 非人道兵器の名前かな?

 

『ソウゴ……ああ、我と戦ったあの童か。アレがどうかしたのじゃ』

『お楽しみに^^』

『こんなに不安なサプライズ予告が世の中にはあるのじゃな』

 

 不安なものか!

 年明け一発目の強化アイテムだぞ!

 鳴るし光るから値段は少しお高めだ!

 

『なんの話をしておるのじゃ』

 

 あ、そんな事を言っている間にアイ兄さんがケイちゃんを抱きしめたようですよ。

 

「ケイっ……! 大丈夫、大丈夫ですから」

「ごっ、ごめんなさい……ぐすっ、わたし、自分がわからなくて怖いよぉっ……」

 

 アイ兄さんに縋りつくケイちゃんは震える声でそう言った。

 上手い言葉が見つからないのか、アイ兄さんは「大丈夫」と繰り返しながら頭を撫でる。

 

 凄いな、ここまで来ると本当に虚無シエラがいるみたいだ。

 ……ん?

 カメ君が痛みを飛ばしただけで、破滅のソルシエラが生まれたのだとしたら。

 この状況、本当に虚無シエラが生まれるのでは……?

 

『……』

『……』

『え、何なのじゃ、急に黙り込んで』

 

 ……カメ君、至急適当な組織を潰してとある実験結果を捏造してもらいたい^^

 

『10分……いや、5分くれ、マイロード。すぐに貴女の望むものを用意しよう』

『な、なにが始まるのじゃ』

『君は知らなくても良い^^ さあ、そろそろ鏡界に戻ろうねぇ。あっちのコンテンツもしゃぶらないと^^』

 

 こっちの仕込みはまだ発動しないから忘れていいよ。

 万が一に備えての事だからね。 

 

 さーて、次はラッカちゃんとお話だぁ!

 

『く、狂ってるのじゃ……』

 

 

 

 

 

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