【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第365話 5‐6 悲哀の彼岸

 ガーデナーちゃんの賢くて凄い作戦がこれより発表される!

 皆のもの、心して聞く様に!

 

『『応!』』

『……あ、わかったのじゃ』

 

 ガーデナーちゃんとダラシエラは胸を張って、自信満々である。

 可愛いねぇ、でも戦闘中だから手短にね?

 

「先生とソルソル、そして赫夜牟ちゃんには目いっぱい暴れて欲しいんだ」

「私が一番得意な奴だ! 任せて!」

 

 意気込むラッカちゃんに思わずほっこり。

 

「それで、御大層な作戦というのは? まさかそれだけを伝えるために呼んだわけではないのでしょう?」

「まあまあオリジナル、そう焦らないで。三人が暴れた後、私たちは高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変にそしてフレキシブルに動くからさ」

「……作戦と言えるのかしら、それは。それに貴女、そのサソリでどうにかできないの?」

 

 ダラシエラは俺の問いかけに自信ありげに鼻を鳴らす。

 

「ふふん、私は賢いからね。空を飛んでいる奴にさっちゃんが有効な訳ない。だから後方支援だよ。余計な魔力は使わない主義なんだ」

「そう……」

「ガーデナーを守るぐらいなら出来るよ。私、本気出したら強いし。マジで(笑)」

 

 どう見てもイキり引きニートなのだが、彼女はやる気満々だった。

 俺は心配になってガーデナーを見る。

 すると、自信満々のピースサインが返ってきた。 

 

「大丈夫大丈夫! 危なくなったら六波羅さんとかリュウコちゃんとか……あとはツグノちゃんとか」

 

 誰よその美少女!

 

「 おっけー。そこまで言うなら暴れるわ。行こ、求道者」

「……ええ」

 

 ツグノって誰ー!?

 

『ツグノという人物について調べてみましたが、詳しい事はわかりませんでした!』

『幼き命であることに期待ですね!』

『急にどうしたのじゃ二人とも』

 

 ソシャゲ時空で新しい美少女ネタバレされたんだけど。

 こんなネタバレどう回避しろってんだよ。

 

「どこに悲哀のソルシエラがいるかわからない今は、私達を信じて欲しい」

 

 ダラシエラにそう言われ、俺は小さくため息をつく。

 それはそうとツグノって誰なの……?

 

「仕方ないわね」

 

 大鎌をかっこよく片手で構え、ラッカちゃんの傍に並び立つ。

 絵になるねぇ^^

 

『私も何故かこれがしっくり来すぎて怖いよ。……魂はラカソルを求めていた……?』

 

 歪な形なんだね、星詠みの杖君の魂って。

 

「それじゃ、第二ラウンドだ!」

 

 駆けだしたラッカちゃんに合わせて俺も走り出す。

 空中に浮かぶ悲哀のソルシエラはどうせ偽者なのだろうが、攻撃はしなければならない。

 くっ、このままだと魔力が尽きるぞ……!?

 

『今もじゃかぽこ湧き出てるのに?』

 

 尽きるぞ……!

 

『じゃあもうそれでいいや』

 

 俺とラッカちゃんは、阿吽の呼吸でクラゲをはじめとした海洋生物を倒していく。

 倒しても泡になるだけだが、あまりにもラッカちゃんとの戦闘リズムが合いすぎて無双ゲーに通ずる快感があった。

 

『無双したのか……? 私以外の奴と……』

 

 体がどういう風に動けばラッカちゃんに合わせられるのか、不思議と理解して俺は進んでいく。

 赫夜牟君、ついてこい!

 

『この姿だと飛べないのじゃ……。そもそも主殿はともかく、横の女はどうして飛んでいるのじゃ?』

 

 言われて気が付いたが、ラッカちゃんは空中浮遊が出来るようだ。

 流石ソシャゲの顔だぜ! きっと、アイコンもラッカちゃんなのだろう。

 

『アレは足場として障壁を展開しているんだねぇ。随分と器用な子だ』

 

「何やらくだらない作戦を立てていたようですが、私には勝てませんよ。死に抗う事は、世界に抗う事。大人しく。末日に沈みなさい」

「末日末日うるさいよ! 今すぐ涙目で命乞いさせてやるからなぁ!」

「どっちが悪役かわからなくなるから止めなさい」

 

 俺はラッカちゃんを諫めながら悲哀のソルシエラの頭を収束砲撃で消し飛ばす。

 が、すぐ真横に悲哀のソルシエラは現れた。

 

 今度の相手にこれやろう!

 舞うのは泡じゃなくて羽がいい!

 

『子亀はどうだマイロード』

 

 考慮の余地すらなく却下に決まってんだろ。

 

「誰にも避けられない事だとわかっているでしょうに、本当に哀れな子たちですね」

 

 悲哀のソルシエラはタクトを優雅に振るう。

 すると、俺達の周囲にクラゲが大量に出現した。

 

「敗者としての結末を受け入れなさい、オリジナル」

 

 その言葉と共に、クラゲが一斉に膨らみ爆発する。

 俺はラッカちゃんも囲むように障壁を展開した。

 

「なんて威力……!」

 

 干渉の力を使っている筈の障壁が軋む音が聞こえてくる。

 それだけでこの爆発の恐ろしさは十分に理解できた。

 

『収束砲撃の応用だろう。途中で敢えて収束を不安定にし、爆発を起こす。威力は収束砲撃と大して変わらないだろうねぇ』

 

 なるほど。

 幻覚を見せたり、自分は直接手を下さずに戦ったり、こいつ中々にミステリアス美少女レベル高いな。

 

「今までのはお遊びです。あるいは、貴女が自らの喉笛を掻き切るための猶予でしょうか。しかし……それももうおしまいです」

 

 障壁の周りに更にたくさんのクラゲが現れる。

 俺はより魔力を流し込んで、強力な障壁を作ろうとしたが膨らんだクラゲたちは、爆発することなくぴたりと止まった。

 

「まったく見ていられないのじゃ」

 

 下から聞こえるのじゃロリボイスに俺は視線を向ける。

 腕を組んだ赫夜牟君が袖口から触手を出してこちらを見つめていた。

 

「この程度、我の停滞でどうとでもなる。もう少し派手に暴れて我を楽しませよ、小娘」

「……相変わらず可愛くない奴ね」

 

 俺は吐き捨てながら障壁を解除し、悲哀のソルシエラへと斬りかかった。

 

『カッコいいぞ赫夜牟! よくここまで成長したな!』

『もう何でもいいから早く終わらせたいのじゃ』

 

 

 

 

 

 

 空中で繰り広げられている戦いを、ガーデナーは固唾をのんで見守っていた。

 

「本当に見つけられるの? ダラちゃん」

「任せてガーデナー。自分の役割はきちんと果たす。こんな所でガーデナーの魔力を無駄に消費させるわけにはいかないよ。けど、用心だけしといて」

 

 その言葉に頷き、ガーデナーは腰のホルダーへと手を掛ける。

 が、まだ種を取り出そうとはしなかった。

 

「こういう時は相手の気持ちになれば良い。御大層な推理はいらない」

 

 堕落のソルシエラはそう言って空を眺める。

 ソルシエラの砲撃や槍が飛び交う世界で、クラゲやサメは現れては泡となって消えていく。

 

「……いた」

 

 そんな中、不自然な動きをする存在を見つけ堕落のソルシエラは思わず笑みを浮かべる。

 

「いたの!?」

「……まだ安心しちゃ駄目。ここからが大事だから」

 

 そう言うと、堕落のソルシエラは赫夜牟へと近づく。

 そしてサソリの尾でちょいちょいと肩を突いた。

 

「なんじゃ?」

「あのクジラ、撃てる? 出来れば尾を狙って欲しい」

「ハッ、造作もないわ」

 

 赫夜牟は笑うと砲身を作り上げ、すぐさま空へと放った。

 昇っていく赤黒い砲撃はクジラの尾に当たるとそのまま引きちぎる。

 

 苦し気なクジラの咆哮が空へと響き渡った。

 

「オリジナル、あの中に本当の悲哀のソルシエラがいるよ」

「ええ、わかったわ」

 

 頷いたソルシエラはまっすぐにクジラへと飛翔する。

 その行く手を阻むようにクラゲが湧いてくるが、それは全てソルシエラの後ろから放たれた矢によって消失した。

 

「行って、求道者!」

「いい働きね、褒めてあげる」

「……愚かな、まだ死に逆らうというのですか!」

 

 悲哀のソルシエラは顔を歪め、ソルシエラへとタクトを振るう。

 瞬間、彼女へと大量のサメが襲い掛かった。

 しかし、ソルシエラへとかみつく寸前で銀の鎖で拘束され、すぐに泡と消える。

 

「どうして……どうしてですかオリジナル。私を否定しても、貴女が傷つくだけだというのに」

「私は私よ。貴女のような弱者とは違うわ」

 

 言い聞かせるようにそう言ったソルシエラは、大鎌をクジラへと構える。

 尾は泡となって分解を始めているものの、その巨体は未だに健在であった。

 今となってはそれが、何かを守る砦のようにも見える。

 

「そんなに死が好きなら向こうに送ってあげる」

 

 間もなく、銀の閃光がクジラへと放たれた。

 

「やめてください!」

 

 両手を広げた悲哀のソルシエラの姿が銀の閃光に消える。

 主に追従して砲撃を防ごうとしたクジラやサメも同様だ。

 

 そして砲撃が着弾する瞬間、クジラが突然勢いよく潮を吹く。

 それから一秒もかからずにクジラは砲撃に直撃し、そのまま泡となり消えた。

 

「――随分と可愛らしい姿ね」

 

 ソルシエラは既に二射目の準備を終えている。

 照準の先は、先ほどの潮吹きで飛び出してきた悲哀のソルシエラの本体であった。

 

 今までの悲哀のソルシエラと服装こそ同じであるものの、その容姿は随分と幼いものである。

 

「……い、嫌です。私はまだ死にたくない! 末日は遠い!」

 

 悲哀のソルシエラは叫ぶと照準から逃れるように必死に飛翔する。

 間もなく悲哀のソルシエラを覆い隠す様に大量のクラゲやサメ、クジラが現れた。

 

「チッ、邪魔ね。まとめて消し去ってしまいましょう」

 

 ソルシエラは砲撃で辺りの海洋生物を一掃する。

 しかし、次から次へと湧き出てくるそれらは、完全に悲哀のソルシエラを隠してしまっていた。

 

「次から次へと」

 

 うんざりした様子のソルシエラがそう言って、再び砲撃を放とうとしたその時だった。

 

「――獲った」

 

 下から聞こえた言葉と共に、海洋生物が姿を消し、幻想的だった世界は元の水族館へと変わる。

 何が起きたのかと周囲を見渡せば、透明な何かに背後から腹を貫かれている悲哀のソルシエラの姿があった。

 

「い、嫌だ……私は、わ、たしは……」

 

 貫かれた状態で必死に悲哀のソルシエラはもがく。

 その後ろ、輪郭がはっきりとし始め、姿を現したそれは機械で作られたサソリであった。

 その背中に無理矢理羽を取りつけられたサソリは、尾で悲哀のソルシエラを貫き、白く細い腕を鋏で完全にとらえている。

 

「さっちゃん、戻っておいでー」

 

 堕落のソルシエラの声に反応したサソリは、悲哀のソルシエラを完全に拘束したまま地上へと降り立った。

 続いて降りたソルシエラとラッカへと堕落のソルシエラはドヤ顔を浮かべる。

 

「まさか透明になれるだけじゃなくて飛ぶとは思わなかったでしょ」

「……私はただ命令通りに動いていただけで何も聞かされていないのだから、何をされても驚くに決まっているわ」

「あ、拗ねてる? ソルソル拗ねてる? ……い、痛い、頬をつねらないで!」

「ふふふ……まだ幻覚かもしれないもの。よーく確認しないと」

 

 ソルシエラは笑顔ではあるが、明らかに不機嫌であった。

 

「オリジナルを警戒する癖に、私の方は一切警戒していなかった。だから、私が殺すのが最もやり易いと思ったんだ」

「私たちは陽動というわけね」

「あのままとどめを刺せるならそれも良かったけれどね。ま、これもチームワークって事で」

 

 堕落のソルシエラはそう言って、サソリの尾に刺さったままの悲哀のソルシエラへと向かう。

 彼女の小さな体躯は貫かれ、腹部から光の粒子が溢れていた。

 

「気分はどうかな、悲哀のソルシエラ」

「た、助けてください……! 私はまだ死にたくない! 夢を見るには早すぎます!」

「あんなに人に思想を押し付けてたくせによく言うよ」

 

 堕落のソルシエラは笑みを浮かべる。

 そして、囁く様に言った。

 

「悲哀の力を全てオリジナルに渡せ。あとこの水族館の売り上げの20%を毎月私に振り込め。……ああ、それと年パスも発行しろ。そうしたら、館長としては生かしてやる」

「わ、わかりました! 生き残る為だったら私、なんでもやります!」

 

 その言葉にガーデナーが反応して口を開いたが、傍にいたソルシエラに口を片手で押さえられていた。

 

「よし、わかればいいんだ。……私より背が小さい癖に調子に乗りやがって。キッズが」

 

 堕落のソルシエラは悲哀のソルシエラをひと睨みする。

 腹を依然として尾に貫かれている悲哀のソルシエラは、涙目で痙攣をしていた。

 

「ガーデナー、これで悲哀のソルシエラは攻略完了だ」

 

 まるで正義の味方とは思えない笑顔と、背後の悲哀のソルシエラの惨状。

 しかし、確かにここに勝敗は決したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『悲哀のソルシエラも生き残るのか。良かった良かった。お腹は後で俺が撫でてあげるね♥』

『おぉ……なんて惨いことを……! マイロード、私は己の無力さが憎いぞ!』

『お腹を貫かれる悲哀のソルシエラ……これもえっちだねぇ!』

『痛そうなのじゃ……』

 

 

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