【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第369話 6‐2それを献身と呼ぶならば

 視界いっぱいに広がる水槽の中を色とりどりの魚たちが泳いでいく。

 大小問わず種類も様々な魚たちが泳ぐ様は、まるで海の中を切り取って見ているかのようだった。

 

「……はぁ」

 

 そして、そんな水槽の前でため息をつき物憂げな表情を浮かべるミステリアス美少女が一人。

 そう、ソルシエラである。

 

 これまでの戦いで蓄積した疲労と事態を収束しなければならないという焦燥感。

 そこに悲哀と空想の力を吸収した事で一時的にコンディションが更に悪くなっている。

 

 今の彼女は自分に余裕が無いとわかっていながらも、冷静に立ち回ることが出来ない程に弱っていた。

 

『弱っていた……? 30分前まで記憶喪失コンテンツについて大真面目に考えていたのに???』

『この水槽には私がいない。これではマイロードを楽しませることが出来ない……!これは何より恥ずべきことだ……! 私は……弱い……!』

『ラッカがこっちをずっと観察してるのじゃ。早く戻ってきて欲しいのじゃ。アレは絶対に『もしも敵に回ったらどう殺そうか』考えている目なのじゃ。怖いのじゃ……』

 

 うるさいよ君達!

 ソルシエラは今、落ち込んでるの!

 自身のミステリアスな計画と違った事件に巻き込まれ、かつそれが自分が原因であることで精神が過去一番不安定なの!

 

『精神はいつも不安定だろ』

『だが一周回って強靭な精神でもある。それがマイロードの美徳だ』

『確かに狂人な精神ではあるのじゃ』

 

 へへっ、よせやい。

 褒めても美少女エネルギーしか出ねえよ。

 

『そんなもの垂れ流すな』

『……あの、そもそも美少女エネルギーってなんなのじゃ?』

 

 そうか、赫夜牟君は古きのじゃロリだから知らないんだね。

 

『のじゃロリになったのは最近の事じゃ』

 

 美少女エネルギーとはね、体内に流れる美少女粒子が美少女へのBIG LOVEにより加速した際に発生するエネルギーの事だよ。

 今は魔法や概念への干渉に必要なエネルギーとして使われているね。

 

 学園都市のインフラの重要な基盤でもあるんだ。

 

『何故質問をして疑問が増えるのじゃ? 知らない単語の説明に知らない単語を使わないで欲しいのじゃ……』

『はっはっは、無知な新入りだ』

『じゃあ星詠みの杖先輩は知っているのかの?』

『…………^^』

『おぉ……赫夜牟よ、美少女エネルギーはまだお前には早い。のじゃロリ研修を全て終えた後に控えているのじゃロリコンテンツ研修を終えてようやく美少女エネルギーについて知ることが出来るのだ』

 

 危険物みたいな扱いなんだ美少女エネルギーって。

 別に何もおかしなことはない、美少女の体に流れている普遍的なエネルギーなのに。

 

『おそらくは銘に由来する力をそう呼称しているのだろう。……たぶん』

 

 星詠みの杖君は珍しく歯切れが悪そうに言った。

 赫夜牟君は納得したのかしていないのか、「わかったのじゃ」とだけ返す。

 

 もー、君達は頭で考えるから駄目なんだよ。

 心、つまりはあっちぃあっちぃsoulで感じるんだ。

 

 ほら、今のソルシエラからも美少女エネルギーが発生しているだろう?

 

『落ち込んでいるって言っているのに美少女エネルギーが発生するとか、やってることが無法なのじゃ』

『ここで0号が現れて、体と心を慰めればもっと美少女エネルギーを生み出せるのに……』

 

 体は別に必要ないだろ。

 それに今は赫夜牟君が俺の事を『おもしれー人間』として見ているポジションを請け負っているのでその点は安心してくれ。

 0号やカメ君とは違って、厳しくも挑発するように発破をかけてくれるはずだ。

 

 他のソルシエラを殺すのを渋って怪我を負う予定だから、その時は胸倉をつかんでごみを見るような目をしてね。

 自分よりちっちゃな子に胸倉をつかまれても、反撃できない程に弱ったソルシエラのコンテンツを作ろうね。

 

『期待が重いのじゃ』

『……あ、あぁ……の、脳が……! そのポジションにいたのは私だぞ!』

 

 君そのまま濡れ場に移行するだろ。

 全年齢向けソシャゲで君は出せないんだよ。

 

『おぉ……星詠みの杖よ……なんと哀れな……』

『記憶喪失コンテンツがなければ即死だったねぇ。仕方がない。ここは君が戻ってくる前に体の方に色々と仕込んでおくか^^』

 

 カメさん助けて!

 

『指一本たりとも触れさせないぞ!』

『セコムが優秀すぎる』

 

 今の無垢シエラにそれは危険すぎる。

 あの子が本当にえっちな子になったらどうするんだよ。

 絶対にやめてね。あの子には第二部でソルシエラクローンとしての苦悩を抱えるヒロインキャラの役割があるんだから。

 

『人生に第二部作ってるやつ初めて見た』

『第二部に幼き命は出るのか!?』

 

 わからない。

 第二部は来年入学してくるであろうまだ見ぬ美少女達次第だ。

 ミズヒ先輩というクソデカ広告塔がいるから、来年に生徒たちが押し寄せることはもはや確定したも同然。

 

 その時、即座にコンテンツをジュルジュルできるように用意しておくんだ。

 今蒔いた種は、春風と共に芽吹く。

 

『用意周到で感心だねぇ^^』

『おぉ……幼き命の合格率を上昇させよう……』

『カメ先生、流石にそれは不正なのじゃ』

 

 はっはっは、皆未来の事を想像して胸が熱くなったようだね!

 

 だが、目の前のコンテンツも忘れちゃいけないぞ!

 きっとあと少しでガーデナーちゃんが来る。

 

 ダラシエラに言われて、俺に声を掛けるように言われている筈だ。

 あの子はソルシエラに似て根は優しいけど素直じゃないからね。きっとソルシエラを励ますようにガーデナーに頼むだろう。

 

 こーれ、ソル×ダラあります。

 

『間に0号入れたら売れたわ^^』

『いや、ここはどちらも幼き命としてアンソロジーを……!』

『どうでもいいから早く戻ってきて欲しいのじゃ。ずっとラッカにさりげなく間合いを測られているのじゃ』

 

 

 

 

 

 

 ソルシエランドには家政婦サービスが存在する。

 炊事洗濯から犬の散歩、家庭教師の真似事までなんでもこなす奉仕エラ達の集団。

 それはとある強力なソルシエラによって組織されていた。

 

 ソルシエランドの遥か上空を飛行する巨大な島型ご奉仕戦艦『ソルシップ』に慌ただしい声が響く。

 

「た、大変ですー!」

 

 クラシカルメイド調の服を着たソルシエラは、ポニーテールを揺らしてあわあわと駆けていた。

 やがて彼女は、ソルシップで最も大きな部屋の扉を開けると、紫色のカーペットの上を一礼してからまた駆け出す。

 

「騒がしいね」

 

 奉仕エラよりもずっと大きな白亜の柱や鮮やかなステンドグラスは、その部屋にいる者の格を誇示しているかのようだ。

 カーペットに沿うようにずらりと並んだ奉仕エラ達を見下ろして、そのソルシエラは、駆けてきた奉仕エラを見下ろす。

 

 同じメイド服ではあるが、彼女はスカートの裾も短く色も白ではなく一人だけ水色であり、頭にはハンドメイドの冠を乗せていた。

 髪はウルフカットであり、どこか少年的な雰囲気も感じる。

 

 彼女は頬杖をついて、薄い微笑と共に問いかけた。

 

「何か用かな?」

「献身のソルシエラ様にどうしてもお伝えしなければいけないことがあります! 堕落のソルシエラが、悲哀のソルシエラを討ち取りました! 勇猛、加虐、背徳も戦争を始めています!」

「そうか、僕の予想より早かったね。オリジナルが介入した影響かな」

 

 献身のソルシエラは立ち上がると、片手を前に突き出し奉仕エラ達へと命令を下した。

 

「これより、ご奉仕戦艦はソルシエラ水族館へと向かう! 派手なご奉仕で僕たちの強さを思い知らせるんだ!」

「「「「「はい」」」」」

 

 奉仕エラ達は深く丁寧な一礼をして、その場から去る。

 残されたのは献身のソルシエラと、報告をしに来た奉仕エラだけであった。

 

「大丈夫でしょうか……?」

「安心してくれ。献身のソルシエラが負けるわけがない。だって」

 

 献身のソルシエラは笑みと共に天井を仰ぐ。

 

「――オリジナルにとっては、絶望と同等以上の感情なのだから」

 

 

 

 

 

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