【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第377話 それを任務と呼ぶならば

 六波羅さんはTSにおいても最強。

 やはり、原作強キャラは格が違った……!

 

『総評、エッチとさせて頂きます^^』

『おぉ……次はランドセルを背負わせるのだ……』

『それより早くあっちに戻りたいのじゃ。主殿が倒れたままで、空気が最悪じゃ。我、ずっとラッカに警戒されてて怖いのじゃ』

 

 もう少しだけ遊ぼうね赫夜牟君。

 御覧、ギャル波羅さんだよ?

 滅多に見れるもんじゃないからね。まだ流星群の方が見れる確率高いよ。

 

「はい、リーダー。記念にピース!」

「チッ……」

 

 六波羅さんはエイナのスマホを取り上げて、拡張領域へと放り投げる。

 悲鳴を上げるエイナだったが、すぐに拡張領域からスマホを取り出して、六波羅さんと一緒に写真を撮っていた。

 

 ……ん!? あの二人って拡張領域を共有してるの!?

 それもう結婚じゃーん!

 

『エイナの場合、変なものを隠さないようにという意味合いもあるのだろうけどねぇ』

 

「どうしたんだい六波羅。そんなに怖い顔をして。もしかして、この子を相手に柄にもなく緊張をしているのかな?^^」

 

 0号が無垢シエラの肩に手を置く。

 無垢シエラの方は、六波羅さんをちらちらと見ながら、目が合うとあわあわとしていた。

 

 可愛いねぇ。

 

『ストレート自画自賛』

 

 きっと六波羅さんとお話がしたいのだろうが、本人が狂犬みたいになっているから話しかけられないのだろう。

 頑張れ無垢シエラ……! 六波羅さんは話してみれば普通に優しいぞ!

 

「リーダー、ケイちゃんが怖がってるじゃないですかぁ。いつもみたいに優しくしてあげてくださいよぉ! ほら、三人でパフェとか食べに行った時みたいにぃ?」

「……エイナァ」

「あはは、怒っても可愛さが増すだけですぅ!」

 

 いいぞエイナ! 過去一で輝いてるぞ!

 六波羅さんったら、相棒に煽られて顔真っ赤だね^^

 悔しくて袖をぎゅっと掴んで睨んでいるけど、それもこっちにとってはコンテンツだよ^^

 

「ほら、リーダー。怖がらせないためにその姿になったのでしょう? これは私からのアシストですよぉ」

 

 小声でエイナちゃんは六波羅さんへとそう囁く。

 0号の地獄耳にはしっかり届いていた。

 

「チッ、やっぱりてめェの戯言なんざ聞くんじゃなかった」

「まあまあ、もしかしたらこれで記憶を取り戻すかもしれないじゃないですかぁ。協力してあげましょうよぉ」

「……チッ、今回だけだぞ。あと、撮影は禁止だ。撮影したらおやつ半年抜きな」

「…………はぃ」

「やろうとしてんじゃねェか」

 

 六波羅さん達の会議が終わったようで、二人は改めて無垢シエラを見た。

 

 

 

 

 

 

 朝、クラムは幼馴染のクソデカ声で起こされた。

 

「クラムー! 朝ご飯が無くなっちゃいますよー!」

「うるさ……」

 

 長年の付き合いだ。

 抵抗は無意味だとわかってる。

 

 クラムは朝日が昇る直前までケイの為に護衛したりトアを監視したりと色々していたのだが、そんな事は関係ない。

 朝が来たなら朝ご飯を食べるのだ。

 少なくとも、ヒカリが当番の時はそれが絶対のルールになっていた。

 

「ほら、行きましょう!」

「あーい」

 

 光翼に持ち上げられたクラムは、食堂へと連行される。

 寝巻として使っている騎双学園時代の赤ジャージはしわくちゃで、若干色落ちもしており、運ばれる姿はなんだか情けない。

 

「んー、ねむい……」

「ご飯を食べれば目が覚めます! 今日はクラムが好きななすの煮びたしも特別に用意していますよ!」

「うれしー、ねむい……」

 

 ヒカリの言葉に適当に相槌を打ちながらクラムはやがて食堂へと運ばれる。

 食堂に入った彼女の耳に、間もなく楽しげな会話が聞こえてきた。

 

「――そこで、リーダーが言ったんですよぉ! 『悪党にクレープを食う資格なんてある訳ねェだろうが!』って!」

「そうなんですか!?」

「……あ、あァ。確かにあの時俺は「リーダー、一人称」……わ、たしは、そう言ってやっ「口調も可愛く」……そ、そう言ったんだぁ~」

「へえ、やっぱりすごいんですね! 騎双学園の執行官って!」

「当然ですぅ! しかもリーダーは可愛いじゃないですかぁ? 執行官の紅一点って事もあって、風紀委員たちにもモテちゃって……! 前も、校舎裏に呼び出されて男子に告白されてましたよねぇ?」

「……う、うん。そうなんだよ。でもォ、断ったけどねェ~」

「え、ど、どうしてですか……!?」

「い、今は執行官の仕事に集中したくてェ……ねェ……」

 

 悪夢かと、クラムはそう思った。

 記憶喪失の人間の前で、何事かと。

 この執行官は一体、何をしているのかと。

 

(趣味!? い、いや、流石に騎双学園一の常識人が急にこんな奇行に走るわけない! 何か理由が……)

 

 眠気は吹っ飛び、クラムは戦闘中と同じだけの思考能力で答えを探す。

 と、その時、六波羅と目が合った。

 

「「……あ」」

 

 一瞬、二人の視線が交錯する。

 一秒もなかっただろう。

 最初に動いたのは六波羅だった。

 

「ッ――」

 

 ローファーをガラスが覆い、赤い閃光が辺りを染める。

 そして次の瞬間にはクラムは六波羅により腕の関節を固められた状態で廊下に立たされていた。

 

「いたたたたた!? なんで!? 私悪くなくない!?」

「黙れェ……! 見た奴は殺す。お前は特に殺すゥ!」

「た、助けてヒカリ!」

「ご飯の用意してきますねー」

「ヒカリ!?」

 

 幼馴染に見捨てられたクラムは六波羅に壁に押し付けられる形で拘束された。

 と言っても、その背丈は逆転し、今は六波羅を見下ろしているのだが。

 

「いいか、これはあいつを怖がらせないようにするためだァ! 間違っても余計な真似すんじゃねェぞォ!」

「ウィッス」

「あと、撮影も禁止。他の人に言うのも禁止だァ!」

「ウィッス」

「よォし。じゃあ、戻るぞ」

 

 六波羅はそう言って先に食堂へと入る。

 その瞬間、彼のクソ真面目仕事スイッチは再びONになった。

 

「ごめーん。ちょっとクラムと話したいことがあって~」

「ブフォッ」

 

 噴き出したクラムを見て、六波羅は笑顔のまま囁く様に言った。

 

「笑っても殺す」

「ウ、ウィッス」

 

 気を取り直した六波羅は、パタパタと内またでケイの方へと向かう。

 彼の尊厳は、木っ端みじんになっていた。

 

 そんな彼を遠くから観察しようと、クラムはわざと隅の席に座る。

 

「それで、どこまで話したっけー」

「リーダーが告白された話ですぅ」

「そうだったァ。私、びっくりしちゃって断りながらすぐ逃げちゃったんだよね。あの子には悪い事したなァ……」

 

 端々からいつもの彼が見え隠れしているものの、その甘ったるい声は完全にギャル波羅と言って差し支えないものであった。

 

「……そう言えば、ケイは彼女達とコスメを見に行ったこともあったねぇ^^ あの時はとてもはしゃいでいたのを覚えているよ^^」

「0号……てめェ……」

「どうしたのかな^^」

「う、ううん、何でもないよ。ケイ、また後で皆で行こうね。騎双学園は、安くて質が良いものが揃ってるからさ。またお互いの選びっこしよ(自暴自棄)」

「ぶふっ……」

 

 つい堪えきれなくなってクラムが噴き出すと同時。

 気が付けば、隣に笑顔で殺意を漏らすギャルがいた。

 

「こんな所で一人でなにやってるの? 一緒にご飯食べようよォ」

「え、私は別に……力つよっ」

 

 グイグイと引っ張られたクラムは、六波羅の隣に着席させられる。

 既に彼女もこの地獄の超特急に乗せられた後だった。

 

「クラムも一緒にご飯を食べてもいいかな? 私、こいつ……じゃなくて、この子とも友達なんだァ」

「はい、勿論いいですよ」

 

 ふんわり微笑むケイを見て、六波羅はパァッと太陽のようなヤケクソ笑顔で返す。

 

「それと、敬語じゃなくてもいいんだよ? ケイは、前は私に敬語使ってなかったし。ケイさえ、嫌じゃなければ今までみたいに普通に話してよ」

「いいの?」

「うんっ(瀕死)」

「あとあと、前はリーダーの事を六波羅ちゃんって呼んでましたよぉ」

「そうだったね(憤怒) ケイ、私の事は今まで通り六波羅ちゃんって呼んでいいよ(虫の息)」

 

 六波羅の精神力はもうズタボロであった。

 それでも美少女のままでいられるのは、相方が興奮して感情エネルギーを増産しているからである。

 彼、……いや彼女は自分からは決してこの勝負を降りることはできなかった。

 

「そ、そう言えばケイは朝ご飯を食べに来たんだよね。お話ばっかりで邪魔しちゃってごめんね! 食べて食べて」

「あ、うん。ありがとう六波羅ちゃん」

「っ……う、ううん、気にしないで!」

 

(あ、早く食わせてこの時間を終わりにしようとしてる)

 

 クラムは隣で他人事のようにそう思った。

 六波羅はSランクとして多くの任務をこなしてきた。

 その中には今と同等以上のピンチに陥ったこともある。

 

 彼の中の冷静な部分はこれまでのケイの言葉や視線、喰いついた話題からこの地獄が終わるまでの時間を演算、答えを導き出そうとしていた。

 と、そのタイミングで、廊下から声が。

 

「――やっぱりここだよ。ついでにご飯を食べようトウラク」

「朝食べたばかりだから駄目だよ。ミハヤに怒られちゃう」

 

 六波羅は背中に嫌な汗をかきながらゆっくりと入り口の方を見る。

 丁度そのタイミングで、見たくない顔と目が合った。

 

「「……あ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『TS六波羅さんとトウラクの組み合わせ……拗らせヲタクの二次創作かな?』

『必死にギャルになろうとする六波羅もいいねぇ。今の彼ならソルシエラにも負けるんじゃないかい? まさかここまで弱い受けがSランクにいたとは……』

『おぉ……赫夜牟、幼い命がいないから今の内に宿題でもやっておくのだ。私が見てあげよう』

『ありがとうなのじゃ。でも我としては早く帰ってきて欲しいのじゃ。ラッカが槍をもってずっと我の死角に立とうとしてくるのじゃ』

 

 

 

 

 

 

 

 

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