【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第386話 7‐8 背徳の星、地を照らせ

 ガーデナー達は今、絶望のソルシエラの待つ城へと向かっていた。

 彼女達を乗せた一匹の白い竜は、虹色の空を裂く様に凄まじい勢いで飛んでいく。

 

「リュウコちゃん、もっとスピード出ない!?」

「出してもいいけど、お前らが耐えられない。人を乗せるなら白竜はこの速度が限界。素人は黙ってろ」

 

 キッと睨まれたガーデナーは、それに堪えた様子はなく「素人……」とどこか別の事を気にしていた。

 

「で、到着したらどうする。もしかすると絶望とオリジナルを両方相手にしなくちゃいけないかもよ?」

「オリジナルは私が止めるよ。求道者の戦い方はよく知ってる」

 

 ラッカはそう言って挙手した。

 それに追従するように背徳のソルシエラも手を上げる。

 

「私も立候補します。この権能は、相手の無力化には最適な筈です」

「あ、じゃあ私もソルソルの方に行こうかな」

「……え、もしかして私一人に絶望の相手をさせようとしてる? さっちゃんとゲームの腕にしか取り柄がないこのいたいけな私に? それ、ダルくない?」

「我がいるじゃろ」

 

 自信満々に親指で自分を指した赫夜牟を見て、堕落のソルシエラは露骨に嫌そうな顔をした。

 

「……こんな倫理観無くした幼女と二人なの? ガーデナー、私にも最強キャラ頂戴よぉ」

 

 目をウルウルさせてガーデナーにしがみついた堕落のソルシエラだったが、今までの言動からただ面倒くさがっているのは事実であった。

 少なくとも、ここまで生き残るだけの実力はあるのだ。

 

 それに、ここには数の利を容易く覆す少女が一人いる。

 

「大丈夫大丈夫。ツグノちゃん呼ぶから」

「誰……?」

 

 少なくとも、堕落のソルシエラが保有している記憶には存在していない。

 しかし、その言葉を聞いた瞬間リュウコが反応した事から相当な実力者であることは理解できた。

 

「私達がとある位相世界で出会ったSランクだよ。最強というよりは、無法と言った方が近いかな」

「……先に言っとくけど、アレと組むのは私はパス。弱い私にでも変えて」

「わかってるわかってる。また六波羅パイセンとレイちゃんにお願いするから」

「ならいい」

 

 それだけ言うと、リュウコは黙りこんだ。

 もうこれ以上会話をする気はないらしい。 

 

 代わりに、堕落のソルシエラが口を開いた。

 

「絶望のソルシエラは影を操り戦う。戦いが長引けば長引くほど奴は自身の影を倒して強くなるから、短期決着が望ましい。というわけで私もパワーアップしたいな」

「パワーアップ?」

 

 堕落のソルシエラは頷いてさっちゃんを指さす。

 

「さっちゃんは変形機構を残している。今の私はガーデナーと契約して力を制限されているからその変形機構を解放できないんだ。だからさガーデナー」

 

 堕落のソルシエラはニッコリと笑って手を差し出す。

 

「悲哀のソルシエラとの戦いでドロップした素材、吐き出せ♥」

「そんなゲームみたいに簡単に言わないでよ! あんな貴重な素材、滅多に確保できないんだよ!?」

「でも、ソルシエラを倒せるのは同じソルシエラだけ。今の私は言わば、攻略最適キャラ。ねえ~頂戴よ~」

 

 子供がねだるようなわざとらしい猫撫で声にガーデナーは少し悩んだ様子だったが、やがて頷いた。

 

「……わ、わかった。ソルソルを助けるためだもんね。出し惜しみは無しだよ」

 

 ガーデナーはそう言うと拡張領域から素材を取り出す。

 そしてそれに念じるように手をかざすと、光の粒子となり堕落のソルシエラの中へと溶けていった。

 

「ああっ、しばらく周回とはおさらばだと思ったのに……!」

「おぉ、圧倒的なパワーを感じる。これはいわば、堕落のソルシエラver2」

 

 力を確かめるようにさっちゃんを撫でた堕落のソルシエラは、力強く頷く。

 

「期待していいよガーデナー。素材以上の働きを見せてあげる」

「本当に期待しているからね。あと、ツグノちゃんと仲良くしてね。あの子、ちょっと多弁だから」

「多弁……?」

 

 堕落のソルシエラが詳細を聞こうとしたその時だった。

 

「そろそろ着くよ。用意して」

 

 リュウコがそう言うと同時にバルティウスが高度を下げ、一直線に堕ちるように加速していく。

 そして城に開いた穴へと勢いよく飛び込んだ。

 

 砂煙を上げ、城の大部分を壊しながらバルティウスは無事に着地する。

 

「これもう不時着じゃろ」

「いててて……ダラちゃん大丈夫?」

「私は問題ないよ、さっちゃんが守ってくれたからね」

 

 砂煙を巻き上げ視界が一時的に制限された城の中をガーデナーは覗き込む。

 すると、視覚よりも先に聴覚が何かを捉えた。

 

 固い金属同士がぶつかり合うような甲高く重厚な音。

 そして、誰かの唸り声に近い叫び。

 

「絶望のソルシエラ?」

 

 ガーデナー達は即座にバルティウスから飛び降り警戒した。

 それを絶望のソルシエラの声であると判断した彼女達は、互いの死角を補うように陣形を取る。

 

 ただ一人、赫夜牟だけはその声を聞いて呆れたようにため息をついていた。

 

「はぁ……まったく。これでは賭けにならぬではないか、小娘」

 

 赫夜牟は袖口から触手を吐き出すと、束ね翼のような形をとり砂煙をひと仰ぎした。

 加速の力が加えられた風により、辺りの砂煙があっという間に晴れる。

 

 そして城の内部をはっきりと目にした瞬間誰もが息を呑んだ。

 

 黒いセーラー服にマントを靡かせて戦うソルシエラと、それに付き従う影シエラ。

 そして、影シエラを手当たり次第に吸収し武器へと変えて戦う獣のような狂戦士。

 

 その場にいた全員が、誰が倒すべき敵で、誰が救うべき仲間なのか理解していた。

 筈だった。

 

「……まさか、アレが求道者?」

「ソルソル……!」

 

 彼女達の目の前で戦いを繰り広げているのは、もはや一匹の獣であった。

 右半分が体のシルエットをなぞる漆黒の鎧に包まれ、顔は仮面に覆われて表情はわからない。

 

 それでも彼女がソルシエラであるとかろうじてわかるのは、特徴的な大鎌と、漆黒の兜に覆われつつある頭部から蒼銀の髪が見えたからだ。

 

「影シエラを無理矢理取り込んで自身を強化してる? まずいよガーデナー。あんな事したら、オリジナルの自我が崩壊する」

 

 堕落のソルシエラの言葉にガーデナー達が動こうとしたその時だった。

 彼女達の前に無数の影が現れ、ソルシエラの形を作り上げていく。

 あっという間に、百を超える影シエラにガーデナー達は囲まれてしまっていた。

 

「歓迎が遅れて申し訳ない。背徳と堕落、そしてガーデナー」

 

 絶望のソルシエラは彼女達を見て大剣の切っ先を向けた。

 その顔には楽し気な笑みが浮かんでいる。

 

「見ての通り、既に決戦は始まっている。存分に楽しんでいくと良い」

 

 ガーデナー達の乱入に驚いた様子はなく、それどころか彼女は歓迎しているようだった。

 そんな彼女の元へとソルシエラは影シエラ達を切り裂きながら駆け寄り首を狙って大鎌を振るう。

 

「私を無視するなッ!」

 

 絶望のソルシエラは大剣の腹で一方の大鎌を余裕そうに受け止め、逆側から放たれた影の大鎌を肘でへし折る。

 それから彼女は顎でガーデナー達を指し示した。

 

「無視などしていない。ただ、客人を歓迎していただけだ」

「客人……?」

 

 ソルシエラはその言葉に釣られ、目をやる。

 そして、動きを止めた。

 

「――ぁ」

 

 彼女はここで初めてガーデナー達の存在に気が付いた。

 漏れ出た言葉は小さく短かったが、確かにその声には深い絶望がある。

 何かを誤魔化す様に、彼女はすぐさま言葉を紡ごうとした。

 

「おいおい、私を無視するなよオリジナル」

「ッ!」

 

 一瞬の隙を突かれ、ソルシエラは蹴りによるカウンターを真正面から喰らった。

 漆黒の鎧により威力は軽減されたのか、二転三転とその場を転がるもすぐに大鎌を地面に突き立てて態勢を整える。

 

「ソルソル!」

 

 名を呼ばれたソルシエラは一瞬反応を示す。

 

「……邪魔だからどこかに行って」

 

 しかし、すぐに絶望のソルシエラに向き直った。

 そして自分へと襲い掛かってきた影シエラを武器に変えて再び駆け出す。

 

 会話が出来る状態ではないことは明白だ。

 

「……アレ、早く止めないとマズイよ。アイツ壊れる寸前だ」

 

 意外にも、最初にそう言ったのはリュウコであった。

 彼女は面倒くさそうにそう告げて、ガーデナーへと目を向ける。

 

「お前、ああいう拗らせた奴の相手得意でしょ。さっさと行ってきなよ。私はもう帰るから。……アイツ見てると昔の自分を思い出して嫌になる」

 

 リュウコはそう言うと、バルティウスと共に花弁となってその場から消え去った。

 残されたガーデナーはその一片を握り頷く。

 

「じゃあ、始めようか。作戦通り」

 

 その場の全員は頷くと、それぞれの役割ごとに動き出した。

 

 ガーデナーはその場にただ一人残って、ホルダーから種子を三つ取り出す。

 そして魔力を込めて放り投げた。

 

「六波羅パイセン! レイちゃん!」

 

 名を呼ばれ、種子は芽を出しあっという間に人の形へと変化する。

 やがて、シェフの姿をした六波羅とレイがその場に現れた。

 

 彼らはいずれも、恋慕のソルシエラを倒した実績を持つ探索者である。

 しかし、この戦いにおける主役は彼らではなかった。

 

「――ツグノちゃん!」

 

 最後に名を呼ばれた種子が、人の形をとる。

 間もなく完成したのは、長い白髪が特徴の少女であった。

 

 背丈の程はガーデナーよりも少し高めで、その凛とした表情と琥珀のような瞳からは知性を感じさせる。

 黒い制服に白衣を身に纏った彼女は、ややボサついた髪を靡かせてゆっくりとガーデナーに振り返った。

 

「やあやあマスター! アタシを呼んでくれてありがとう! 貴女の良き隣人、三ヶ嶋(みかしま)ツグノだ! 丁度今月の生活費が底を尽きそうだったから会いたかったんだよ~! アタシとしても心苦しいんだけど、また援助をお願いしたくてね? ああ、当然援助と言ってもただで貰おうとは考えていないよ? 呼ばれたからには立派に役目は果たすつもりさ! でもね、事前に報酬について明示してくれるとこちらとしても仕事に身が入るってものなんだ。そこで一つ提案なんだが、どうやらこれは絶対に負けられない戦いと見た! そこでアタシも全力を出そうと思うからそれ相応の報酬について先に「パイセン、後はお願いします!」……ああっ、ちょっとマスター! アタシを置いてどこに行くんだい! おい六波羅! 引っ張るのは止めてくれ! この白衣だって高級なんだぞ!? 三ヶ嶋の本家が作り上げた超特殊な耐魔力繊維で編み上げられて「黙れェ」なんで話を聞かないんだお前は! おい、離せ!」

 

 うんざりした様子の六波羅は、ツグノの白衣を引っ張り絶望のソルシエラと影シエラ達の前に放り出す。

 

「おらよ、戦え」

「……まあいい。ここで存分に活躍して援助して貰うとするか」

 

 ツグノは改めて絶望のソルシエラに向き直った。

 

 そうして戦いは更に加速し、混沌としていく。

 新たに乱入してきたガーデナー陣営との三つ巴が今始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰ぇ……!? ねえあの美少女誰なのぉ……!?』

『幼くはない。無視していいだろう』

『喋ってないで思考を回せカメ^^ こっちは並行して闇堕ち侵食ぴっちり鎧スーツも作ってんだ^^』

『また難しい話してるのじゃ……!』

 

 

 

 

 

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