【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第388話 7‐10 背徳の星、地を照らせ

 新たな美少女がエントリーしてしまった……!

 くそ、こんな事なら実はこのソルシエラバトルの黒幕はソルシエラでしたルートも用意したのに!

 今更路線変更なんて出来ないから、このまま精神ぶっ壊れシエラを貫くぞ!

 

 星詠みの杖君、進捗はどうだ!

 

『9割完成^^ 後はカメがいろいろやる^^』

『おぉ……任せるのだマイロード……。サイバーな羽を付けてあげよう……。本編からは離れたソシャゲコラボならば、こういった原作ではお出しできない形態も良いと星詠みの杖から学んだ……』

『ち、ちなみにこの黒い鎧は何なのじゃ? ものすごく恐ろしい気配がするんじゃが』

 

 それは俺も少し感じていた。

 というか、痛い。なんか、ずっとじわじわと痛いんだけどなにこれ。

 

『影を無理やり吸収したのだから代償が必要だ。まあ、侵食形態ほどではないから安心したまえ。それにそっちの方がえっちだ^^』

 

 クライアントの指示にないことするな。

 でも出来が良いから、事後報告でもOKしちゃう。やっぱこの町一番のえちえち衣装製作所に依頼してよかったなぁ。

 

『そんなの産業にしてる町は無くなった方が良いのじゃ』

『古くは江戸時代から続く由緒正しきコンテンツ衣装屋さんだ^^ ぴっちり闇落ちスーツから、馬鹿みてえな布面積の戦闘水着までなんでもござれだよ^^』

『おぉ……武器の希望はあるかマイロード。おすすめは先端がカメの形をしているカメさんチェーンハンマーだ』

 

 うーん、やっぱり武器は鎌が良いね。

 この後ガーデナーに召喚されることを考えても鎌の方が見栄えが良い。

 

『で、この意味のない戦いは一体どれだけ続くのじゃ。主殿が癇癪を起して暴走を続けているだけではないか』

 

 癇癪じゃなくて、メンタル崩壊ね。

 ソルシエラとしてギリギリ保っていた精神が遂にぶっ壊れた哀れな少女の心の叫びを御覧に入れよう。

 

『心の叫び(偽装)』

 

 さて、俺もそろそろ始めるとするかね。

 

『な、なにをじゃ……?』

 

 何故か赫夜牟君が身構えている気がする。きっと楽しみなんだな^^

 

 新形態があるなら、そこに至るまでのプロセスは大切にしなければならない。

 そこで、ガーデナーちゃんには俺の心象世界に入ってきてもらう事にした。

 

『な、なぜそんな惨い事を……! まるで鬼の子じゃ……!』

 

 赫夜牟君からの俺の評価どうなってんだ。

 

 俺はただ、ガーデナーちゃんに知って欲しいだけだよ。

 ソルシエラがどんなプロセスで心を折ったのか。

 

 それを教えたいだけなんだ。

 

『主殿は心が折れるという事が本当にあるのか……?』

 

 無いよ。

 

『無敵じゃ……最悪じゃ……』

 

 でも、ソルシエラは心が折れるよ。

 だって本当は女の子なんだもん。

 

 きっと求道者としての潜在意識が働いて、何かを為さなければならないという焦燥感が胸の中にあったのだろう。

 

『本当にあったのじゃ?』

 

 無いよ。

 

『嘘じゃ……偽りじゃ……』

 

 星詠みとして自分が為すべきことを常に探し続けていた彼女が教授に負け、味方を襲い、最後には鏡界で自らの封じた欲望が原因で事件を起こす。

 何者かになろうとした少女が、何者にもなれず最後には星詠みの座すら奪われようとしているんだ。

 美しい……! まるで夜空に輝く星そのものだよ……!

 

『最初から最後まで嘘なのが怖いのじゃ』

 

 嘘じゃないよ。

 これからはこれが事実となる。

 それが俺の理想とするコンテンツだからね。

 

 じゃ、心象風景を作るぞぉ!

 赫夜牟君、手伝って!

 

『えっ、我は今主殿と戦っているのじゃが』

『そんなの理由にならないよ^^ まったく最近ののじゃロリは根性がないねぇ!』

『おぉ……マイロードと一緒にいるならば戦いながら何かをするなど当たり前だ。戦いながら心象風景を作るが良い赫夜牟。私からの課題だ』

『まあカメ先生がそう言うなら……』

『本当になんでこいつには従順なんだよ』

 

 師弟の熱い絆だね。

 

 それじゃあ赫夜牟君行くぞ!

 俺達は今から『ヒロインの過去を劇場形式で見せて心情を教えるやつ』を制作する!

 ついてこい!

 

『……あ、応!』

『きちんとお返事出来て偉いぞ赫夜牟』

『甘やかすな^^』

 

 

 

 

 

 

 それを言い表すならば、嵐であった。

 近づくものを例外なく否定する黒い凶風。

 

 それはソルシエラが身に纏う黒い鎧から放出される強力な魔力であった。

 

「っ、一秒ごとに激しさが増してる……! 早く止めなきゃいけないのに……!」

 

 ラッカは歯噛みをして、一歩強く踏み込む。

 弾丸のように飛び出した彼女は、そのままソルシエラへと槍を突き出す。

 対してソルシエラは大鎌を構えず、自身から漏れ出す黒い魔力を鞭のように扱って迎撃した。

 

 槍と鞭がぶつかり合い、更に激しい魔力波が発生する。

 それをソルシエラは取り込み、次の瞬間には更に強くなっていた。

 

「魔力であれば見境なしに吸収してる。これマジでやばいよ! どんどん理性もなくなっている!」

「そんなことをすれば体に負担がかかるというのに……」

 

 ソルシエラはゆっくりと背徳のソルシエラへと振り返る。

 そしてその鞭を背徳のソルシエラへと放った。

 

「その力も貰う」

「っ」

「下がるのじゃ」

 

 背徳のソルシエラの前に赫夜牟が飛び出し、触手で鞭を打ち払う。

 そして停滞の力により再びソルシエラを拘束した。

 

 「ハッ、それでは獣となんら変わりないではないか。滑稽もここまで極めると中々に愉快じゃのう!」

 

 赫夜牟とラッカは同時に飛び出す。

 停滞がソルシエラを拘束していられる時間は僅か1秒。

 

 しかし、それはラッカと赫夜牟にしてみればあまりにも長すぎた。

 

「命までは獲らん」

「ごめん求道者」

 

 挟み撃ちの形で、赫夜牟とラッカの最速の攻撃がソルシエラへと放たれる。

 ソルシエラは防御をしようとするが、それよりも早く触手と槍は彼女を貫いた。

 

 そして。

 

「なっ」

「フェイクか!?」

 

 体は泡となってはじけ、ソルシエラの姿がその場から消える。

 その光景には見覚えがあった。

 

「悲哀のソルシエラの権能!? まさか、今まで倒したソルシエラの力も使えるの? すっごい厄介だよそれ!」

「我の空間も小娘の許可が無いと開けん。献身を使われたら洒落にならんのじゃ」

 

 そこで二人は再認識する。

 ソルシエラという少女がどれだけ強力な存在であるか。

 そして、そんな彼女が理性を失ったこの状況がいかに深刻であるのか。

 

「――力を寄こせ」

「ッ!?」

 

 背徳のソルシエラの背後の空間が歪み、ソルシエラが姿を現す。

 その全身は殆どが漆黒に覆われていた。

 伸ばされた手は、まるで獣のように鋭い爪が生えている。

 

「防げなっ――」

 

 背徳のソルシエラは防御しようとするが、気が付いた時にはもう対処は不可能であった。

 と、その時氷の柱が両者の間に出現する。

 そして同時に高笑いが聞こえた。

 

「アーハッハッハッハァ! ワタシ様とガーデナーを忘れて貰っては困るなぁ!」

「チッ」

 

 ソルシエラは追撃することなく距離をとる。

 そのすぐ後、彼女が今までいた場所が凍てついた。

 

 レイは片手にボウルを持ち、何かをかき混ぜながら背徳のソルシエラを守る様に立つ。

 その横にはガーデナーの姿があった。

 

「ほお、今のを読むか! ワタシ様の次にはやるな!」

「背徳のソルシエラ、大丈夫?」

「はい、おかげさまで」

「良かった。ついでに、お願いをしていいかな。あの子を救う方法があるから手伝って欲しいんだ」

 

 ガーデナーは真面目な顔でそう言った。

 当然、背徳のソルシエラには断る理由がない。

 

「聞きましょうか」

 

 背徳のソルシエラが目くばせをすると、ラッカと赫夜牟は頷き、時間稼ぎのためにソルシエラへと向かって行った。

 

「見ていて思ったんだ。あの子は、きっと誰の言葉も聞こえていない。だから、もっと近く……あの子の心の中に直接言葉を届ける必要がある」

 

 ガーデナーはそう言うと、ホルダーから一つの種子を取りだした。

 何も色が付いていない、無色透明の種子は不思議と輪郭だけが浮かび上がり、そこにある事がわかる。

 

「私が、一時的にあの子と契約をする。そして私の思いを届けるよ」

「……しかし、それは貴女がオリジナルの思考に汚染されるという事では?」

 

 ガーデナーはその言葉を否定しなかった。

 

「あの子の苦しみを理解しなきゃ、言葉は届かないよ。そしてその役目は私が背負う」

「……何故」

 

 背徳のソルシエラは困惑した様子で問いかける。

 

「何故、貴女はオリジナルを救おうとするのですか。貴女とソルシエラには何の接点もない筈」

 

 ソルシエラを止めるのは、力の暴走を防ぐためである。

 生きて止めることが出来るのが最良ではあるが、絶対の条件ではない。

 

 背徳のソルシエラは常に最悪のシナリオも想定しながら立ち回っていた。

 ラッカが救おうとする理由は理解できる。求道者という繋がりがあるのだから。

 赫夜牟が止めようとする理由も同様だ。彼女はソルシエラと契約を交わしている。

 

 だが、ガーデナーは違う。

 彼女との接点は、ソルシエラバトルにおける協力者でしかないのだ。

 

 極論、彼女はこの場に居なくても良いのである。

 しかし自ら危険に身を晒す理由とは何か。背徳のソルシエラにはそれが理解できなかった。

 

「何が、貴女をそうさせるのですか」

 

 その問いに、ガーデナーは平然と答えた。

 

「私が救える可能性があるのなら、当然の事でしょ。理由なんてない。……あ、ごめんやっぱりあるかも」

 

 ガーデナーはそう言って、ニッコリ笑う。

 

「可愛い子には笑っていてほしい。戦う理由なんて、それだけで十分でしょ!」

 

 話は終わり、そう言わんばかりにガーデナーはソルシエラへと向き直る。

 

「背徳のソルシエラには、一瞬でいいからまた権能を使って欲しいんだ。ソルソルはきっと自分の感情を表に出したくない。それを逆転させてほしい。その後は、私が何とかする」

「……わかりました」

「よーし、じゃあ行くよ! レイちゃんサポートよろしく!」

「ツグノ用のシャーベットを作りながら、ガーデナーのサポートもする。ワタシ様でなくては出来ない芸当だな!」

 

 レイは高らかに笑いながら、ソルシエラまでの氷の道を作り上げた。

 その上をガーデナーは駆けだす。

 氷上のガーデナーへと影が襲い掛かろうとすれば、それらは例外なく氷漬けになった。

 

 走るガーデナーの背中を見つめて、背徳のソルシエラは頷く。

 

「……貴女に鏡界を任せた理由がよく分かりました」

 

 手のひらを広げ、集中力を高める。

 対象は、荒れ狂うソルシエラであった。

 

 ガーデナーは攻撃を避けながらソルシエラへと近づく。

 そして、強く踏み込んで一気に跳躍した。

 

 ソルシエラはすぐに気が付き、鞭を体中から生やし放つ。

 しかしガーデナーは構わず種子を握り拳を作ると、殴るような構えを取り叫んだ。

 

「先生! 赫夜牟ちゃん!」

「任せて!」

「我を下僕の様に扱うとは」

 

 二人の攻撃が鞭を払い、ソルシエラまでの最後の道を作り出す。

 おそらくは、最初で最後のガーデナーが攻撃可能な瞬間だった。

 

 ガーデナーは拳を放ちながら、精一杯叫ぶ。

 

「今だよ、お願い!」

「わかりました!」

 

 背徳のソルシエラは合図と同時にソルシエラの感情へと干渉する。

 ソルシエラが抱える、感情を表に出してはいけないという強い思いを利用し逆に彼女の感情を表に引きずり出した。

 

「背徳の権能は使用済みです!」

「おっけー! 後は任せて!」

 

 その瞬間、全ての条件がクリアされた。

 

 互いに魔力を有している事、互いを認識している事、互いに感情を隠さない事、それらの条件が揃った時にこそガーデナーの異能は力を発揮する。

 

「ソルソル! 私の話を聞いて!」

 

 拳が鎧へと当たる瞬間、ソルシエラとガーデナーの意識は確かに接続された。

 同時にガーデナーの視界が一度暗転する。

 次の瞬間にはガーデナーは別の場所に立っていた。

 

「……ここが、ソルソルの心の世界」

 

 そこに広がっていたのは、小さく古びた劇場であった。

 年季の入ってボロボロになった座席に、埃が積もったステージ。

 今にも落ちて来そうなライトや、先端が破れたカーテン。

 

 まるで、捨てられた廃墟のような場所であった。

 

「――おねえちゃんも、劇を見に来たの?」

 

 ふと気が付けば、ガーデナーの傍には幼い子供がいた。

 蒼銀の髪に、可愛らしいフリルがついたドレスを着た少女はソルシエラによく似ている。

 

 ガーデナーは視線を少女に合わせると、笑って頷いた。

 

「うん、そうだよ」

「そっか。なら、いっしょに見よう!」

 

 ガーデナーと少女は近くの席に腰を下ろす。

 二人の他に観客は一人もいなかった。

 

「はじまるよ」

 

 少女の声と共に、開演を伝えるブザーが劇場内に響く。

 そうして、舞台の幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ソールソルソル! まさかこちらから招待するまでもなく自ら乗り込んでくるとは! まんまと罠に引っかかったソルねぇ! 今から『原作を知らなくてもわかる! ソルシエラのお労しい半生』を見せつけるソルよ~!』

『おいカメ勝手に幼女生やしただろ。趣味を混ぜ込むな^^』

『おぉ……』

『満足してんじゃねえよ^^』

『何とか間に合ったのじゃ……』

 

 

 

 

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