【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第396話 8‐1 始まりの星を詠う君へ

 いやぁ、絶望のソルシエラは強敵でしたね。

 さて、なんやかんやあってガーデナーに助けられた俺だったが、今は背徳のソルシエラのお家のベッドで眠っている状態だった。

 

 周りには見張りとしてラッカちゃんと赫夜牟君がいる。

 赫夜牟君はともかくとして、ラッカちゃんは俺の事を心配そうに見つめていた。

 

 大丈夫だよ、なんともないから。

 

『このパターンでその言葉が本当なことってあるんだ……』

 

 ステージ変わったら体力が回復するのは当然だろう?

 俺は何もおかしなことは言っていないぞ。

 

 

 それよりも最終決戦だ。

 

 もうすぐ、ラストステージが始まる……!

 自分の弱さを曝け出すことを受け入れたソルシエラは強くなった。

 きっと破滅のソルシエラとの戦いで新たな新衣装をお披露目してくれるはずだ。

 これが期間限定ピックアップ……!

 準備は出来ているか、星詠みの杖君!

 

『ああ^^ 銀星冠装形態(プライマルフォーム)の準備は出来ている。ソルシエラが憧れていたお姫様と勇者、その二つを入れ込むことにより那滝ケイらしさを表現した』

『おぉ……胸部や右肩の鎧は私がデザインした。本当はカメ型の自律兵装も搭載したかったのだが、星詠みの杖に止められた』

『やらせるわけねえだろ^^ 兎にも角にも、これで限定としてお出ししても恥ずかしくない形態が完成したんだ。後はどこで見せるのかだよ』

 

 それはもう破滅のソルシエラとの戦いに決まってるじゃん。

 なんかいい感じの流れになったら、ふわっとしてじゃじゃんって感じよ!

 

『完璧な作戦だねぇ』

『おぉ……流石はマイロード』

『作戦……えっ、今のが作戦?』

『なんだお前^^ 私の相棒になんか文句でもあんのか?』

『ひえ』

 

 まあまあ星詠みの杖君落ち着いて。

 ここからは言葉ではなく行動で示せばいいんだ。

 

 突然のソルシエラ限定衣装実装でプレイヤー達を怖がらせましょう!

 

『天井まで回せ^^』

 

 その為にも存分に活躍しないとな!

 と言う訳で星詠みの杖君、 銀星冠装形態で使える能力について教えてくれ!

 事前に予習をして、本番には完璧に使いたいんだ。

 

『ガーデナーとの疑似的な共鳴を可能とした。他者へのソルシエラの権能の分割譲渡も可能だねぇ』

『それと、ミニミニカメさんエマージェンシートルネードを採用した。近くの天使を完全に支配下におけるぞ。天上の意志にも気が付かれないだろう。マイロード、これが私達から貴女に送る祝福だ……』

 

 限定衣装実装の祝福で天使の使役権貰うとは思わなかった。

 けどありがとう。おかげで能力自体は理解した! 後は俺のアドリブコンテンツ精製能力に任せてくれ!

 

『では私達は特等席で楽しませてもらうよ^^』

『おぉ……これが最終決戦と考えると少し寂しいものがあるな。これ以上、幼き命に会えないとなると、どうにも寂しい』

 

 今度は皆でここに来ようよ。

 そして、次は俺達で一から事件を作ろう!

 

『えっ……?』

『そうだねぇ^^』

『え? えっ?』

『おぉ……それは名案だ』

『黒幕……? たった今、黒幕が生まれたのじゃ……?』

 

 ソルシエラバトルから一年、平和だったソルシエランドに新たな危機が迫っている!

 堕落のソルシエラからのSOSを受けて駆け付けたガーデナー達が見たものは、幼くなったソルシエラ達であった。

 どうやら新たに生まれた純真のソルシエラが事件に関わっているらしく、ガーデナー達は再びソルシエランドを冒険することに……?

 

『お ぉ ……!!』

『ここの運営はすぐにロリ化するから良くねえや! 私だったら、突如として現れた淫靡のソルシエラがソルシエランドを支配するイベントを作るのにねぇ!』

 

 星詠みの杖君だけずっとこの世界をR18だと勘違いしてない?

 ここは全年齢対象のソシャゲ世界だよ。

 

『君みたいな全身どスケベな子が実装されているのに全年齢対象な訳ないだろ^^』

 

 うん、後で一度話し合おうか星詠みの杖君。

 最近、君の思想がエロに侵食されすぎているから。ちょっと矯正しよう。

 

『かかってこいよ^^ ベッドで白黒つけようぜ^^』

 

 なんで君のフィールドで勝負することになってんだよ。

 とにかく、後で皆で君の思考を健全にする。座して待て。

 

『のじゃ、そろそろガーデナーが戻ってくるのじゃ。主殿、準備をせよ』

 

 そうか、教えてくれてありがとう赫夜牟君。

 では、これより『ガーデナーラブ勢になりつつあるソシャゲ時空シエラ』を始める。

 あくまで原作ではなく、このソシャゲ世界のソルシエラだからその辺はきっちり分けて考えるぞ!

 

『世界全てをコンテンツとして考えていないと出てこない台詞過ぎる』

 

 パティ波羅さんとか平然と存在するお祭り的ソシャゲじゃないと、ソルシエラが安易に恋するなんて許せないからね。

 ではお見せしよう、親愛度1のソルシエラを。

 ちなみに親愛度5まで行くと専用スチルが解放されるぞ!

 

 ガチャを引いて、ぜひ君自身の目で確かめてくれ!

 

 

 

 

 ラッカと赫夜牟は、一言も発することなくベッドの上のソルシエラを見つめていた。

 特にラッカの内心は、傍目で察することが出来るほどに心配しているのが丸わかりである。

 

「……求道者」

「そんなに心配せずとも目覚めるであろう」

「わかってる。でも、こうして手でも握っていないと私が不安なんだ。今度こそどこかに消えてしまいそうで」

「ハッ、随分と肩入れしているのぉ。小娘も、随分と厄介な奴に好かれたものじゃ」

「お前もな」

 

 ラッカは威圧的に睨みつける。

 しかし赫夜牟はそれを涼しい顔で受け入れて、「きひひっ」と笑うだけで受け流していた。

 

 空気は間違いなく最悪である。

 少なくとも、ソルシエラの目覚めを待つ空気ではない。

 

 と、その時だった。

 この重苦しい空気を取っ払うように勢いよく扉が開かれる。

 

 そこには、足で扉を開けたであろうガーデナーがいた。

 両手にたくさんの食料を持った彼女は、フラフラとしながら入室する。

 

「ま、前が見えない……!」

「ほお、リンゴがあるではないか。リンゴは好きじゃ。色が赤い。それに形も赤子の頭に似ておる」

 

 裾から触手を伸ばした赫夜牟は、ガーデナーの持っていた食料の山からリンゴだけを抜き取る。

 そして、袖で軽く拭いて勢いよく嚙みついた。

 

「うん、中々に美味じゃ。よく持ってきてくれたなガーデナー。褒めてやるぞ」

「あぁっ、私のリンゴ……」

 

 悲し気な声を出しながら、ガーデナーは食料を机に慎重に降ろす。

 そして、腰に手をやりわざとらしく息を吐いた。

 

「……ガーデナーちゃん、ナニコレ」

「ソルソルが目覚めたら、ご飯をいっぱい食べさせようと思って。あの子、しばらく何も食べてないでしょ? きっとお腹が空いていると思うんだ。お腹空くとナイーブになるし、ご飯を食べるのは大切だよ!」

「成程。目覚めたらパーティーか」

「そういう事!」

 

 ガーデナーは笑顔で頷く。

 そして楽しげな表情で言葉を続けようとしたその時だった。

 

「――おめでとうございます」

 

 声と共に、その場に転移魔法陣が展開される。

 フリルがあしらわれた黒い目隠しに、短く切りそろえた髪と燕尾服。

 特徴的なその容姿に、ガーデナーはすぐに思い当たり名を呼んだ。

 

「妄信のソルシエラ……?」

「はい。私はソルシエラバトルの管理者ですから、貴女達に最終ステージへの招待状を差し上げに参りました。……と言っても、破滅のソルシエラに挑む正統な権利を持つ彼女は眠っているようですが」

 

 妄信のソルシエラは、ベッドで眠るソルシエラを見て残念そうに肩をすくめる。

 それから気を取り直してガーデナーへと向き直ると、一通の招待状を差し出した。

 

「この招待状自体に魔法式が刻まれています。それを持つことで、破滅のソルシエラの住まう城、ホシヨミキャッスルへと入る事が可能です」

「ネーミングセンス……」

「明日より、いつでも最終ステージへの挑戦が可能です。十分に英気を養って挑むよう、自罰のソルシエラにも伝えてください。それでは」

「待って」

 

 すぐに消え去ろうとする妄信のソルシエラを、ガーデナーは呼び止める。

 妄信のソルシエラは足を止め、ゆっくりと振り返った。

 

「何か?」

「彼女はもう自罰のソルシエラじゃない。正真正銘、ただ一人のソルシエラとして挑むよ。当然、私達も一緒に」

「……そうですか。それは結構な事でございますね」

 

 妄信のソルシエラはそれだけ言うと、次こそ姿を消した。

 少しの沈黙の後、ガーデナーはソルシエラの傍に腰を下ろす。

 

 そして、片手にリンゴを持って齧りつきながらソルシエラを見た。

 

「絶対に勝とうね……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワイルドな子だなぁ。これだけ逞しくないとソシャゲ主人公は務まらないか』

『やっぱ妄信の目隠しはえっちだな^^ 後で相棒にもフリル目隠しをプレゼントしないと(使命感)』

『おぉ……赫夜牟よ、食べ物を貰う時はきちんと相手にお伺いを立てるのだ……』

『わかったのじゃ』

『カメ、それじゃ赫夜牟というコンテンツには合わないだろ。赫夜牟、こいつの言う事は聞くな。今のままでいい^^』

『え、わ、わかったのじゃ』

『おぉ、そんなコンテンツ狂いの言う事は聞くな。赫夜牟、人の物を奪ってはいけないぞ。そんな事ばかり続けていると、星詠みの杖のようになってしまうぞ』

『あ?』

『ん?』

『喧嘩は止めてー!><』

 

 

 

 

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