【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第411話 記憶喪失コンテンツと始まりの星

 えっちっちっちっち!

 これは良いコンテンツわよ!

 こんないい物を見られるなんて、俺の前世は聖人か何かわよか?

 

『前世もこんな感じだろ』

 

 ?

 

『?』

 

 それにしても何と素晴らしい美少女コンテンツだろうか。

 記憶を失ったケイに寄り添うクラム。

 その心には優しさだけではなく、打算や欲望と言った薄暗いものも存在している。

 

 ケイはそれを知っているのだろう。

 しかし、それでも今は少しでも寄りかかれる存在が必要だから受け入れるんだ。

 

 そう! これこそ共依存の一種!

 我が極東の地に遥か昔から伝わるコンテンツでぃ!

 

『伝承するものを取捨選択するべきだねぇ』

『おぉ……お耳はもう大丈夫なのだろうか、マイロード』

 

 大丈夫だよ。

 一時的に腰の骨がナイナイになったけど、その後にこの美少女コンテンツにより俺は完全に復活。いや、それ以上の進化を遂げた!

 

『……もしかして主殿はお耳が弱点なのじゃ?』

『この完全無欠の怪物にも弱点が……?』

 

 怪物でもないし完全無欠でもないよ。

 俺はまだまだ見習いのミステリアス美少女。

 

 仮に魔力が切れてしまえば、ただの女装男子になってしまう。

 

『総受け女装男子!? 私は一向にかまわないねぇ!』

 

 雑食にも程があるぞ星詠みの杖君。

 

『雑食じゃない。私の主食は君だけだよ^^ いずれ骨の髄までわからせてあげるからねぇ^^』

 

 助けてカメさん!

 

『むっ(威嚇)』

『カメ先生は頼もしいのじゃ』

『私としては同士討ちして一人でも数を減らして欲しいのですが……というか、そうですか。耳ですか、成程』

『……一応言っておくが、相棒のお耳は星詠み条約により保護されている。私的利用は私が裁くから控える様に^^』

 

 君が一番私的利用していそうなんだよね。

 

『私には常に相棒のお耳を管理する義務がある!』

 

 ねえよ。

 

『本当に……どうして私はこんな人たちに負けてしまったのでしょう……どうして……』

 

 嘆いている暇があるのかな?

 今の君には使命がある筈だが、そんな余裕そうで良いのかい?

 

『使命?』

『おぉ……出来たぞ、信愛のソルシエラのボディだ……。今、マイロードの脳内へと送信する。現地で生成すると良い』

 

 むむっ、信愛のソルシエラのボディを美少女粒子状で受け取ったよ!

 

『人体にない機能』

 

 それじゃあこれを実際に形にしようね。

 テム子、いいかい? 今から君は信愛のソルシエラだ。

 ソルシエラに憧れて背伸びをする見習いとして演じるんだ。

 

『私が何故そのような事を……』

『嫌だというなら、私とカメで貴様のシステムに直接刻み込むが?^^ 選べよ、尊厳と自我を失う死か。それとも尊厳を美少女にする再誕か』

『どっちも死じゃないですか! ええい、わかりましたよ。やりますよ! やればいいんでしょう!?』

『よし^^』

 

 流石テム子!

 偉いね。後で一緒に新作ASMR『星詠みの夜~大人な私と小さな私、どちらがお好き?~』を録音する権利をあげよう。

 

『お断りです』

『おぉ……お洋服は破滅のソルシエラのものをアレンジした、小さなウェディングドレスだ。武器は危ないから、ブーケを武器として召喚できるようにしたぞ……』

『武器という事はそれを使って戦えるのじゃ?』

『花びら一つ一つに砲撃陣を刻み込み、葉と茎を下級天使の制御術式で編み上げた……。テム子自身は戦わずとも、これを振るえば砲撃と天使が辺りを蹂躙するだろう』

『過保護かな?』

 

 けどソシャゲ界隈の幼女って大抵強いからね。

 テム子、来年実装されようね……!

 

『もうこれ以上与太話を続けるのはやめてください。さっさと体を作って私に下さい』

『そんなに信愛のソルシエラになりたいんだねぇ』

『違います』

『なりたいと言わなければ、脳を美少女コンテンツ漬けにする』

『……な、なりたいです』

『よし^^』

 

 やめろー!

 美少女コンテンツは誰かに押し付けるもんじゃねぇ!

 誰もが笑顔になって幸せになれるコンテンツなんだ!

 

『はっ、青い事ばかり言うねぇ! ならばコンテンツバトルと行こうか。私はこの信愛ロリーンドラゴを使わせて貰おう』

『私じゃないですか』

 

 いいぜ! 俺が勝ったらこんな事やめさせてやる!

 行くぞ、信愛ロリンザー!

 

『こっちも私……?』

 

 コンテンツセット!

 

『ノーオプションバトル!』

 

 うおおおおおおおおおおお!

『うおおおおおおおおおおお!』

『助けて』

 

 これより、信愛のソルシエラのおまけエピソードを開始する!

 

『星詠みの杖先生と主殿、楽しそうなのじゃ』

『おぉ……今までにないタイプの子が入ってきて嬉しいのだろう……。赫夜牟もあちらに行って良いのだぞ?』

『願い下げじゃ』

 

 

 

 

 

 

 クラムとケイがケーキを楽しんでいる頃、とある部屋で二人の少女が向かい合っていた。

 

 まるで生活空間というよりは作業場である一室。

 

 床には工具箱や分解途中の聖遺物が散乱し、配線の切れ端やダンジョンコアだったものが転がっている。

 机の上は図面やノートで埋め尽くされ、文字や数式、思いつきの走り書きが重なり合っていて、どこが本筋なのか判別できないほどだ。

 

 

 壁際には大小さまざまな試作品が積み重なり、金属の匂いと油の匂いが混ざって鼻をつく。

 奇妙な形の器具や歯車が取り付けられた装置は、完成品なのか失敗作なのか判然とせず、埃を被っているものさえある。

 

 乱雑さと熱気が入り混じるその部屋は、部屋の持ち主であるミユメの頭の中をそのまま映し出したような場所だった。

 

「もう一度聞くっすけど、本当にいいんすね?」

 

 その顔は真剣であった。

 が、同時にその瞳の奥に期待と興奮が見え隠れしている。

 その眼が、今から発明品を使える喜びである事を、トアはよく理解していた。

 

「う、うん。いいよ……!」

 

 トアとミユメは雑多なもので溢れかえった部屋の中で向かい合っている。

 食事を終え、大満足のトアは自ら部屋を訪れていた。

 今なら、勇気を出せると思ったからである。

 

「わかったっす。じゃあ最後に確認っす。今日、何度か無いはずの景色がハッキリと見えたと。そしてそれが、ネームレスの記憶かもしれない……そう言いたいって事っすよね?」

「う、うん。すっごく悲しい景色を見たんだ……まるで自分が体験したみたいで辛かった……。私にはアレがただの幻だったようには思えないんだよ」

「成程成程……うん。じゃあ、この発明品の出番っすね!」

 

 そう言うと、ミユメは発明品の山の中に手を突っ込んだ。

 ガチャガチャとかき回しながら、ミユメは目当ての物を探す。

 

「これはもしもこの学園に侵入者がいた場合、全てを白状させることが出来る様に防犯催眠自白装置として作ったっす」

「防犯……?」

「その名も『ロボ(とみ)1号!』っす!」

 

 ガチャリと最後に大きな音を立ててミユメの手が引き抜かれる。

 その手には、ワイヤーに繋がれた金貨。

 どこからどう見ても、古典的な催眠グッズであった。

 

「こ、これ?」

「そうっす! あっ、見た目で判断しないで欲しいっすよ! これを揺らすことで周囲の魔力に独自の波を発生させて制御、掌握するっす。そうしたら後はその魔力で相手の深層意識と接続。この金貨の発光パターンを刷り込むことで、外部から記憶領域を操作してなんでも自在に吐き出させることが出来るっすよ!」

「ひえ」

 

 怯えるトアの反応を、好意的なものに勘違いしたのかミユメは深く頷く。

 

「私も良い発明品だと思ったっすけど、ミロクさんにもルカさんにも全力でストップされたっす。お蔵入りで悲しかったっすけど、ようやく試せるっすよ!」

「だ、大丈夫なのそれ……?」

「大丈夫っす。既にクラムさんで一度だけ試してるっすから」

「えっ」

「自分の想像の中にいる一番ビジュと都合が良いソルシエラを元にした抱き枕を生成して欲しいっていうこの世の終わりみたいな依頼を受けてだいぶ前に使ったっすよ。今思えばケイちゃんがソルシエラだった訳っすから、知り合いの夢抱き枕を作って欲しいっていうヤバめの依頼だったっすね! アハハ!」

「な、なんで笑えてるの……?」

「もう一度これを使えるからっす!」

「ひえ……」

 

 トアはもうすでに後悔しかけていた。

 ミユメが頼れる仲間の眼をしていないのである。

 いつものトアなら逃げていただろう。

 しかし、今は違う。ご飯を食べて大満足したトアならば、この程度の壁は乗り越えることが出来た。

 

「じゃ、じゃあお願い……!」

「よーし、じゃあいくっすよ!」

 

 ミユメはトアの前に金貨を突き出す。

 そしてユラユラと揺れ始めた。

 

 魔力に干渉する特殊な繊維と極小のナノマシンにより制御され空気中の魔力にある一定の波が生まれる。

 それはトアの脳へと滑り込むように溶け込んでいき、やがて金貨が――。

 

 

 

 

 

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