【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
「すんませんしたぁっ!!!!」
リュウコ、本日二度目の土下座である。
しかしその顔には満足感がにじみ出ており、謝罪の気持ちは一切感じられなかった。
「もうっ、駄目だよリュウコちゃん! ケイちゃんが困ってたじゃん! ……ケイちゃん、大丈夫?」
「う、うん……」
ケイはトアからもやや距離を取り、バルティウスの影に隠れながら頷いた。
トークショーから予定が変更され、ケイの撮影が突如として開催されたソルケットは大盛り上がりである。
特に、まるで本物のような容姿から繰り出される羞恥に満ちた顔は彼女達の中に新たな知見を与えたようだ。
そんなスペシャルステージを終えた三人は、ステージ裏のテントで現在お菓子を囲んで談笑中だ。
ケイはそんな事はつゆ知らず、無事に終わったことにホッと一息ついている。
ちなみに、衣装は未だにソルシエラっぽいゴスロリ衣装のままであった。
「いやぁ、おかげで来年の人気投票は私の一位が確定されたようなものだよ! ありがとうね! あ、未来の1位のサインでも貰っておく?」
「いや、私は別にいいよ。……ああ、前にミズヒちゃんが貰って来たインスタントみそ汁なら大歓迎だよ!」
「相変わらず食いしん坊だなぁ。そんなに気に入ったのなら、私とコラボしてクッソ余った食品を後で送ってあげるよ!」
「やったぁ!」
食いしん坊と卑しん坊は利害が一致して互いに笑い合う。
ケイはそれを見て、この場に自分の味方はいないのだと悟った。
「それにしてもトアちゃん、来ているなら言えばいいのに」
「リュウコちゃん、生徒会長になってから忙しいかなと思って」
「ははは、雑務はぜーんぶ生徒会がやってくれているから、私は特に何もやる事はないよ!」
「えっ」
「前に生徒会の予算でリュウコTシャツ作って以降、予算関係は特に触らせてもらえないんだ! もうね、置物! ……うぅ、ぐすっ」
言っていて悲しくなったのか、リュウコは顔をしわくちゃにして項垂れる。
しかし理由が理由なので、慰める者はいない。
「だからヤバそうな組織に金を流して、ヨイショして貰う事にしたんだ。ソルシエラ同好会は激ヤバ組織の中でも比較的人道的な組織だから、復活させてもOKってね! 私生徒会長だし! 何やってもいいでしょ、わはは!」
「これがSランクの発言……?」
「トアちゃん、リュウコちゃんって悪い人なの……?」
「悪くはないんだけど……うーん」
「……あ、そう言えば六波羅ちゃんと知り合いなんだよね?」
「そうだね、リュウコちゃんと六波羅さんは同じSランクだよ」
リュウコは二人の会話を聞いて、ふふんと胸を張った。
「ケイ、私は六波羅さんに勝ったことがある凄いSランクなんだぜ? 一緒に仕事(強制)をした回数も数えきれないくらい。もう一人の相棒といっても過言ではないね!」
「過言でしょ……」
「トアちゃんトアちゃん」
「どうしたの?」
ちょいちょいと手招きされたトアは近づく。
リュウコはケイには聞こえないように、囁き声でこう告げた。
「後で生徒会長権限でクローマスペシャルお食事券100枚あげる」
「ッ!? ケイちゃん、リュウコちゃんは六波羅さんとは唯一無二の相棒と言っても過言ではないよ! それに、たくさんの凶悪な事件を解決したんだ!」
「うんうん」
食事の前ではトアは無力である。
食の街と言っても良いクローマのスペシャルお食事券など、トアからすれば胃袋から手が出るほどに欲しいものであった。
「そ、そんなに凄い人だったんだ! ソルシエラだけじゃなくて、六波羅ちゃんとも相棒だったなんて」
「いやぁ、バレちゃったね(笑) あんまりこれ言うと、萎縮されちゃうから普段は黙ってんだよ。ま、今まで通り気軽にリュウコって呼んでよ」
「バレたもなにも、自分から言ったんじゃ……?」
「私がそんな無駄に自尊心を満たすような行為をするわけがないじゃない」
そう言ってヘラヘラと笑うリュウコ達の足元へと、何かが転がってくる。
「ん? ナニコレ」
「宝石かな」
「アッ!」
それは宝石を削り出したような昆虫であった。
昆虫は何かを探す様に辺りを見渡し、やがてリュウコをその視界にとらえると動きを止める。
そして、ブルブルと震え始めた。
「やばいやばいやばいやばい!」
「トアちゃん、これもクローマだとよくある事なの?」
「ないよ?」
「ば、バルティウス、逃げるよ! 早く、飛ぶ準備をして!」
わたわたとしているリュウコに二人が首を傾げていると、やがて怒号が飛んできた。
「リュウコの馬鹿はここですのね!」
「げぇー! ダイヤちゃん!」
お嬢様とは思えない激烈ダッシュで一瞬でリュウコに距離を詰めたダイヤは、リュウコの首根っこをあっという間につかんだ。
その間、バルティウスは何もせずに寝息を立てている。
「トアちゃんトアちゃん、あの人は?」
「ダイヤ元生徒会長。すっごく強い人なんだって」
二人はひそひそ話しながら事の行く末を見守る。
「……あはは、ダイヤちゃん、こんにちは」
「ごきげんよう。それでリュウコ生徒会長、本日の業務は?」
「…………ナイデス」
「ありましてよっ! 他校の復興がまだ完全とは言えないこの時期に、こんな奇祭に勝手に予算を流して……! 貴女にもやるべき事は山積みの筈です! というか、なんであのいかれた組織を復活させたのですか!? 全員、目がどこかにごめんあそばせしている連中でしてよ!?」
「でも私に投票してくれるって――」
リュウコは逃げようともがいているが、完全に関節を抑えられたため何も出来ていない。
ダイヤはリュウコを拘束したままケイとトアを見て真剣な顔で言った。
「あまりこの子の意見を鵜吞みにしない事。すると、こんなになってしまいますわよ」
「「はい」」
それは教訓を得たものの返事であった。
と、その時である。
ケイの迷子から発見にいたる緊張と緩和、ケイの羞恥顔を見たことによる脳の活性化など、他にもいくつもの偶然が重なり、何とも言えない最悪のタイミングでそれは完遂された。
「……だし、た」
「「「え?」」」
「思い……だしたっ……!」
■
思い出したようだな! あの日に隠された真実を!
ちなみに俺にはデータがないぞ!
『今回は何を思い出したのかわかりませんでした! いかがでしたか?』
『おぉ……マイロードアルバムがまた一ページ……』
『お祭りはどんな奇祭でも熱気を感じられて良いの。楽しいのじゃ』
お、赫夜牟君はお祭りが好きなんだねぇ。
じゃあ、後で皆で星詠み祭りでも開こうか。
『Q.星詠み祭りにおいて、R指定のものを販売する事は可能ですか?』
同人イベントじゃねえんだよ。
『そんな無駄話をしていないで、戦闘に集中してくださいっ!』
テム子の言葉に俺の意識は目の前の光景に引き戻される。
今、俺達はソルシエランドの一画に大量発生した悪シエラを倒していた。
「きりがないですね!」
「それは良い事だね。素材が集まる」
「よくないです!」
ガーデナーちゃんに突っ込みを入れながら、信愛のソルシエラはその小さなおててに握ったブーケを振る。
するとキラキラとしたエフェクトの魔力砲が放たれ、悪シエラを一掃した。
「はぁはぁ……つかれました」
「じゃ、次行こうか」
「はい……」
今、俺達は地獄の周回作業により街から悪シエラを一掃している最中であった。
『無垢シエラによる記憶喪失コンテンツが無ければ、退屈のあまり改造天使のレイドボスを始めるところだったねぇ』
『おぉ……いっぱい頑張っていて偉いぞテム子』
『こんな事しなくても、悪シエラは時間と共にその魔力量に耐えきれずに消滅します! 最低限の警備で問題はないはずです!』
だがそれをガーデナーちゃんが許すかな!?
「……ん、ガーデナーちゃん。私次の周ったらいったん抜けるわ」
「先生、トイレでサボり?」
「違うっての。……ちょっと野暮用でね。ま、遅くならないうちに戻るよ」
おやおや、ラッカちゃんがどこかに行ってしまうようだ。
そうなったら、俺達がより周回作業を頑張らないとな!
うおおおおおおお!
赫夜牟君とソルシエラ系はドロップ率が上昇するぞ!
パティシエ騎双組とツグノちゃん、リュウコちゃんでもドロップ率は上昇するが、効率を考えるならソルシエラを二人はパーティーに入れるんだ!
『上昇も何も、あなたが指定して勝手に操作しているだけですよね?』
スタミナを回復して、イベント終了ギリギリまで回せええええええ!