【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第433話 憧れと始まりの星

 無垢シエラは今、人吞み蛙を追ってミズヒ先輩達の方へと向かっていた。

 激ヤバドリンク(美少女製の為安心安全)を渡して、少しでも役に立とうとしているのだ。

 

 そして同時に自分が再び星詠みになるかどうか、その答えを出すためのヒントを得ようとしている。

 非常に良い兆候だ。

 こうして皆の戦う理由や覚悟を知って、自分だけの答えを出して欲しいソルねぇ……。

 

『でも最後には体を乗っ取るんですよね……?』

 

 乗っ取るとは失礼だなテム子。

 俺があの体の持ち主なんだけど?

 所有権を主張するのは当然だと思うけど?

 

『でももうあの意識は魂として完成しつつあります。あのままだと体と完全に融合して本人になりますよ?』

『それはそれでハッピーエンドじゃな!』

 

 そんな訳ないだろ。

 君達、あの二人が衣装制作で忙しいからって好き勝手に言っていないか?

 まったくこれだから急にソシャゲイベントを開催する奴と赤子食ってる奴は……。

 

『ソシャゲイベントなんて知らないです!』

『赤子は美味しいのじゃ』

『貴女も大概ですね!?』

『頭蓋が薄くて食感も良い。それに魂も瑞々しくて渇きも満たせるのじゃよ』

 

 赫夜牟君は隙あらば人外であることを俺に思い知らせてくれるね。

 でもいいぞ! そっちの方がソウゴ君の試練になる!

 

『見よテム子。これが今の我の立場じゃ。未来で強化アイテム化が約束されたのじゃロリなのじゃ』

『??????』

『まだわからずとも良い。後で一緒にカメ先生ドリルをやるぞ。美少女コンテンツについて少しは学べるじゃろうて』

『洗脳教育』

 

 安心してくれテム子。

 俺は君の心のカギをほんの少し開けてあげるだけなんだ。

 ソルシエランドとかソルシエラバトルとかやってた君なら、すぐにコンテンツについて理解できる。

 むしろ理解せずにあそこまで仕上げた君の才能が恐ろしいよ。

 赫夜牟君と一緒に、次代を担うコンテンツ生産者になろう!

 

『私にとっては誹謗中傷ですねそれ』

『今の我にとってはもう褒め言葉じゃな(侵食度:中)』

『まともなのは私だけですか!?』

『さっきからうるさいねぇ! こっちは集中しているんだから少しは配慮してくれ!』

『おぉ……テム子よどうか怖がらないでくれ。星詠みの杖は今、形態の制作で忙しいのだ。かくいう私も天使とデモンズギアの融合式の構築に追われていて相手が出来ない。すまない。後でめいっぱい遊んでやるからな……!』

『我も遊ぶのじゃ!』

『おぉ、当然だ!』

 

 ご覧、テム子。

 アレが未来の君だ。

 

『ひぇ……』

 

 さ、そろそろミズヒ先輩達の所に到着するみたいですよ?

 無垢シエラがどんな答えを出すか見守ろうねぇ。

 

 

 

 

 

 

 人吞み蛙に案内されてケイが向かったのはフェクトムではあまり使われることがない体育館であった。

 半分が物置として使われているためか、外から見た時よりも狭く感じる。

 

「失礼しまーす……」

 

 ケイがそう言ってゆっくりと扉を開けたのは、あまりにも静かだったからだ。

 クラムやヒカリのように激しい特訓をしているのかと思いきや、ミズヒ達は火を囲んで静かに座っている。

 それも明かりも付けずに、薄暗くなった体育館で火を囲んでいたのだ。

 誰も一言も発することなく、火をじっと見つめている。

 

 その厳かな空気も相まって、まるで何か崇高な儀式をしているかのようだった。

 

「む、ケイか」

 

 ケイに気が付いたミズヒは顔を上げる。

 その瞬間、中心の火が小さく音を立てて消えた。

 

「ぷはぁっ、耐えた……!」

「まだ5分ですよトアちゃん」

 

 何かが終わりを告げたようで、トアは後ろに倒れ込む。

 ミロクは変わらず姿勢を崩してはいないが、その額には汗が浮かび上がっていた。

 

「何かあったのか?」

「あ、ええっと、これを持って来たんです。ミユメちゃん特製のドリンクです。飲むと訓練の効率がすごく上がるって言っていました」

「成程、ありがたい」

 

 ミズヒは礼を言って受け取ると、ミロクとトアにも渡す。

 真っ先にドリンクを飲み干したトアは、満足げな顔で再び床に仰向けに転がった。

 

「お腹空いたよぉ……でも、頑張らないと。あの子を助けるんだ……!」

「良い覚悟だ。ただの食いしん坊ではないという事を証明して見せろ」

 

 覚悟を決めてやる気のトアと、それに感化されてより真剣な顔つきになるミズヒ。

 そんな二人を見ながら、ケイはこっそりとミロクに問いかけた。

 

「これは、何をしているんですか?」

「ミズヒちゃんの焔に、私達の魔力を集めているんです。そうする事で、徐々に魔力の波長を合わせ、共鳴現象を引き起こすのだとか。これはその練習ですね」

「な、成程……?」

 

 ケイには詳しい事がよくわからなかったが、難しい事をしているのだという事はわかった。

 そしてあまりわかっていない者はここにもう一人。

 

「こうすることで、欠片? とかいうのが活性化するらしい」

 

 この話を提案してきたミズヒが一番理解が及んでいなかった。

 

「先生は昔から主観で話す人だったからよくわからん。これを続けていく事で力が手に入るそうだ。仕組みや具体的な力についての記載はないが、先生の言う事だから本当だろう」

「こんなものがあったなら、もっと目立つ場所に残して欲しかったですね。よりにもよって書庫の端の方に雑に積まれていたなんて……」

「でも先生って昔からそういう所あったからね」

「……その、先生とは?」

 

 名前ではなく肩書で呼ばれている。

 しかし、その先生という存在を語る彼女達の声には温かさがあった。

 

「私達に戦い方を教えてくれた凄い人だよ。ラッカちゃんって言うんだけど。……そう言えば、記憶を失う前のケイちゃんとも知り合いだったんだよ」

「そうなんですか……?」

「うん。どこで知り合ったのかはわからないけれどね。先生は忙しい人だったから、あちこち動き回っていたんだよ。あ、これがミズヒちゃんの見つけたノートね」

 

 トアに差し出されたノートは、やや古めかしいものであり日に焼けた跡があった。

 ケイはパラパラとそれをめくってみるが、確かに『ぎゅおってなる』や『すっと入ってきたら、後は流れでいけると思う』など、感覚の言葉が多い。

 ノートの最後には、特に大きな文字で『皆仲良く!』と刻まれていた。

 

「皆さんの事を、大切に思っていたんですね」

「ああ。きっと先生がネームレスになったトアの事を知れば悲しむだろう。故にあの人の代わりに私達は彼女を連れ戻さなければならない。そしてその為の力がここにはあるんだ」

 

 自身の胸を叩き、ミズヒは頷く。

 その目に迷いはなかった。

 

(ああ、いいなぁ)

 

 その目を見てケイは漠然とそう思った。

 自分にもこれだけの強い心があったなら、まともな答えをすぐに出せていたのではないだろうか。

 きっと、0号の提案にあの場で答えを出せていただろう。

 

「……ケイちゃん、どうかしたのですか?」

「いえ、ミズヒ先輩は凄く強い人だなぁと思って」

「ふふ、そうですね。私達とは違って即断即決。すごく頼もしいです」

 

 ケイに寄り添うように、ミロクはその手を握って隣に座らせる。

 

「何か悩み事ですか?」

「っ……そういう訳じゃないです」

 

 咄嗟に嘘をついてしまい、心の奥がちくりと痛む。

 しかし、決して口に出来るわけがなかった。

 もう一度ソルシエラになりたいなど、思う事すら罪なのだから。

 

「……そうですか。ああ、そうだ。ケイちゃん、良ければ後で書類の整理を手伝って貰えませんか?」

「私に出来る事なら喜んで」

「はい。では、お願いしますね」

 

 ミロクは優しく微笑みかける。

 間もなく、また中心で焔が灯った。

 

「休憩は終わりだ。始めるぞ。ケイも見ておくといい。魔力を肌で感じる良い経験になるだろう」

「はい……!」

 

 三人は再び焔へと魔力を流し始め、ケイはそれを固唾をのんで見守る。

 時折小さく揺らめく焔を見ながらその脳裏では常に自問自答が繰り広げられていた。

 

(ソルシエラになればネームレスを助けられる。けど、それだと皆の優しさを踏みにじってしまう。私は、どうすればいいんだろう)

 

 答えの出ない問いは、まるで自身に対する罰であるかのようだった。

 こうしている間にも、時は刻一刻と過ぎていく。

 

 ケイの思考が途切れたのは、それから1時間後。

 ミズヒの元へと入った、ミユメからの連絡が原因だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今は悩むんだ無垢シエラ……!』

『揺れ動く心に目が離せないのじゃ』

『うーん、白は取り入れたいが。真っ白は違うねぇ。もっと白と黒を組み合わせて……』

『おぉ、カメさんお守り浮遊兵装を取り入れるのだ。周りに浮かせる事で、攻防一体の動きが可能になる』

『おや、この三人の持つ輝きはもしや……いえ、止しましょう。私の勘違いで混乱を生みたくありません』

 

 

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