【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第45話 遭遇と美少女

 正直、あんまりだったな……。

 揶揄うのは楽しいけど、もっとこう、俺は百合百合したいというか。

 

 メスではなく、美少女になりたいというか……。

 精神的BLはまた話が変わってくるんだよ。

 

『相変わらず面倒臭いねぇ』

 

 俺は野郎に興味はねえんだよ。

 トウラク君にリスペクトはあれど、情欲は存在しない。

 

 ほら、さっさと帰るぞー!

 

『やれやれ……あ』

 

 ん? どうしたの?

 

『たぶん、妹に見つかったねぇ。私は隠れるから、後は好きにやってくれたまえ。これは……たまたま同じ敷地内にいたのかな?』

 

 え、妹?

 なになに、何が来るの?

 

『それじゃあねー』

 

 おい!

 ……引っ込んじゃった。

 んだよ、急に。

 

 俺は相変わらずしょうがない相棒にため息を吐きつつ、俺はエントランスを進む。

 そしていざ外に出ようとしたその時だった。

 

「――おい、ちょっと止まれ」

「え?」

 

 声を掛けられて、俺は振り返る。

 

 なんだ? 男なのに美少女が漏れ出てたか?

 

 そう思って振り返れば、そこには赤い髪がトレードマークの彼がいた。

 

 ご存じ騎双学園のSランク探索者、六波羅さんである。

 

「えっ」

「ああ、やっぱりフェクトム総合学園の奴だな。……那滝ケイであってたか?」

「あ、はい」

 

 何故俺を呼び止めた????

 なんで?

 

 主人公に続き、六波羅さんと連続でエンカウントとか。

 これ、ボスラッシュ? ボスラッシュ始まった?

 

 それはそれとして、またフェクトム総合学園にちょっかい掛けようとしたら許さねえからな。

 がるるるるる……!

 

「……何か用ですか」

「おいおい、怖い顔すんなよ。俺はただ見知った顔だったから声を掛けただけだぜ? それともなんだ、俺に声を掛けられちゃマズい理由でもあんのか?」

「仮にも、一度ああやって戦った人間に良い印象を抱く人はいないでしょう」

「あ? だからこそだろ。俺は殺しがいのある人間しか覚えねえぞ?」

 

 この人やっぱりやべえや。

 んで、俺は覚えられてんだ……。

 

 助けて星詠みの杖!

 

『私を呼ばないでほしいねぇ……マジで、見つかるから。……静かにね。私は居留守を使ってますから……』

 

 ひそひそと、星詠みの杖はそう囁くとまたスーッと消えていく。

 使えねえ!

 

「用がないなら俺は行きますけど」

「ああ、ちょっと待ってくれ。……おい、エイナいい加減降りろ」

 

 そう言うと、六波羅さんは背中にしがみついたエイナを引き摺り落とした。

 

「うぅっ、教えたんだから後は自分で探して下さいよぉ」

「この病院の敷地内にいるって教えただけだろ。ほら、コイツを見てさっさと答えろ」

 

 六波羅さんは、エイナの首根っこをヒョイと掴むと俺の前に差し出してきた。

 

 ぎゃあっ! おどおど系美少女が目の前にいるぅ!

 突然の供給に脳が焼けるゥ!

 

「……あ、少しだけお姉様の魔力を感じます」

「そうか」

 

 平坦な声で六波羅さんがそう言うと同時に、俺の目の前に刃が迫ってきていた。

 

「ッ!」

 

 腕輪が出現し、俺はそれを紙一重で躱す。

 あ、髪が数本斬られたぁ!?

 

「ははっ、不意を突いたと思ったんだがなァ。やっぱりいいね、お前」

「いきなりどういうご挨拶だ?」

「お、そうだよその眼だよ。敬語で行儀良くなんてお前らしくねえ。エイナ、さっさとテメエ使わせろ。ネズミ狩りだ」

 

 六波羅さんがそう言って手を伸ばすと、エイナは必死に首を横に振った。

 それから半泣きで、六波羅さんにしがみつく。

 

「ち、ちち違いますよぉ! この人はお姉様じゃないですぅ! ただ、微かに残滓を感じるだけでぇ」

「……あ?」

「わ、私はこの人からお話を聞こうと、提案したかったんです。なのに、どうして斬るんすかぁ!」

「……あー、なるほど」

 

 六波羅さんは俺とエイナを交互に見ると、得物をしまう。

 そして、にこりと笑って「悪い。ミスった」と言った。

 

 ミスで殺されるところだった……?

 

「つーわけで、ソルシエラについて話せ」

「どういう訳だ」

「エイナがこの病院でソルシエラの反応を検知した。んでもって、お前からもソルシエラの魔力残滓が感じ取れる。つまりよォ、お前が接触した人間の中にソルシエラがいる可能性が高いんだよ」

「……ソルシエラを探してどうするつもりだ」

 

 俺の問いに、六波羅さんはそれはそれは素敵な笑顔で答えた。

 

「死なねえ程度にぶっ殺して、理事会に連れていく」

 

 ひえっ……。

 Sランクが俺を探しているのは知っているけど、六波羅さんに捕まるのだけは絶対に嫌だ。

 マジでなにされるかわかったもんじゃねえからな!

 

「で、どうなんだ? それらしい奴は見たのか?」

「……いや、見てない」

「嘘ついたら、殺すぞ」

 

 病院で滅多な事言うもんじゃないぞ。

 ただでさえ、六波羅さんの騎双学園の制服はここでは目立つんだから。

 

「嘘じゃない。きっと俺からソルシエラの魔力を感じ取ったのは、事件の当日に遊園地に俺も居たからだ。」

「へぇ」

 

 六波羅さんは興味深そうに笑う。

 

「あの日、俺は空に巨大な魔法陣が描かれるのを見た。それと、辺りの物質が魔力に変換されて吸収されていく光景も。……あんなの、今でも現実の光景とは思えないね」

「あ、確かにお姉様はそれできますね。それに、あの時の魔力の放出は凄まじい物でした。アレなら、確かにこの人の身体の中にお姉様の魔力が残っていてもおかしくないっすよ、リーダー」

「なるほどなぁ。じゃあ、お前は知らねえんだ」

「ああ。むしろ被害者だよ。早く捕まって欲しいね」

 

 俺は背中に汗をダラダラかきながら必死に言葉を並べる。

 マジで見逃がしてください……。

  

 ぼくはただの、いっぱんじんです。

 

「そうか」

 

 六波羅さんは、意外とすんなり理解をしてくれた。

 話せばわかる人だったんだね……!

 

「時間取らせて悪かったな。行くぞ、エイナ」

「あ、はい。じゃ、えっと、さよなら」

 

 俺は軽く会釈する。

 ……ずっと気になってたけど、エイナちゃんの背負ってるリュック何が入ってるんだろう。

 原作だとそんなリュック背負っていなかったのに。

 

「――ああ、そうだ」

 

 六波羅さんは僅かに歩いて立ち止まると、振り返らずに言った。

 

「近いうちに会う事になるかもしれねェが、そん時は互いに全力で行こうぜ」

「そんな機会願い下げだな」

「ハッ、そうかよ」

 

 それ以上、何も言う事なく六波羅さんはエイナを連れて病院の奥へと歩き去っていった。

 

 なんだったんだ……。

 病院で会っていいタイプのキャラじゃなかっただろ、あの人。

 

『あ、もう良さそうかい? ……はあ、隠れるの疲れたねぇ』

 

 あ、君ね! 大切な相棒が一大事の時に隠れないでよ!

 

『でも隠れなかったらエイナに見つかるからねぇ。あの子、探知能力だけなら私以上だから』

 

 そんな凄かったんだ……。

 ただのおどおど系美少女じゃなかったのか。

 

『君の判断基準は相変わらずだねぇ。さ、早く帰ろう。まったく、君がスーパーミステリアス美少女タイムをしたせいで、危うく見つかるところだったじゃないか』

 

 ごめん、でも、気持ちよくって……。

 たぶん、次も機会があったらやると思う……。

 

『あくまで自分を貫き通すつもりか。下手に出てるのに我が強いんだよ君は』

 

 だって世の中って美少女が中心だし。

 わはは。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ただ歩いているだけで、職員も患者も道を空ける。

 その光景は既に六波羅にとっては慣れたものだった。

 

「リーダー、さっきみたいなのは絶対に駄目ですからね。マジで」

「あ? それはソルシエラに出会ってからのお楽しみだなァ」

「絶対またやるじゃん……」

 

 廊下を歩きながら、エイナはピッタリと六波羅の後ろについて、そう呟く。

 さらに文句を言ってやろうかと考えたエイナだったが、彼の機嫌と夕飯が直結しているのを思い出して口を閉ざした。

 

 それから五分程廊下を進んだ先で、六波羅は足を止める。

 そこは一つの病室の前だった。

 

「……チッ、入るぞ」

「え、ノックとかは? あ、ちょ」

 

 六波羅は、不機嫌そうに舌打ちをして中へと入っていく。

 エイナも慌てて中へと続いた。

 

「――ああ、時間通りだね。グッド」

 

 ベッド横の椅子に座った少女の声が、二人へと掛けられる。

 酷く陰鬱な声だった。

 六波羅は、それにあからさまに不機嫌な態度で返す。

 

「仕事はこなす。当然のことだ」

「流石執行官様だ。私も既に自分の仕事はこなしたよ。と言っても、いくつかの書類にサインを貰うだけだったのだがね」

 

 少女はそう言って笑った。

 かつては美しかったであろう容姿は、ボロボロの肌と荒れ果てた髪で台無しになっている。

 喉元を掻くのが癖なのだろう。

 思わず顔を顰めてしまう程の痣が首元に残っていた。

 

 少女は、まるで生気のない眼で六波羅とエイナを見ると唇が裂けるのも気にせず笑みを浮かべる。

 

「さて、紹介しよう」

 

 少女はベッドを指さすと嗤ってその名を呼んだ。

 

「彼女が、蒼星ミロクだ」

 

 六波羅は名を呼ばれた少女を見る。

 ベッドの上の彼女は、ただ曖昧な笑みを浮かべるだけだった。

 

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