【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第448話 始まりの月のエピローグ

 瓦礫に覆われた街は、もはや元の姿を留めていなかった。

 崩れた建物、砕けた舗道、空にはまだ戦いの名残の煙が薄く漂っている。

 風が吹くたび、乾いた破片が転がり、遠くで金属が軋む音がした。

 

 その廃墟のただ中で、ソルシエラは静かに膝をついていた。

 腕の中には、黒髪の少女が抱き留められている。

 煤と埃で汚れた頬、伏せられた睫毛。その小さな体がこの争いを巻き起こしたと言われて果たして誰が信じるだろうか。

 

「……ふふっ、お寝坊さんね」

 

 蒼銀の少女はそう囁き、そっと抱く力を緩める。

 その声が届いたのか、ネームレスの指先がわずかに動いた。

 次いで胸が小さく上下し、かすかな吐息が漏れる。

 やがてゆっくりと、瞼が開いた。

 

「……うぅ、いき、てる?」

 

 かすれた声で問いかけながら、黒髪の少女は視線を彷徨わせる。

 崩壊した街の光景が映り込み、それから――目の前にある蒼銀の髪を見て、ネームレスは目をぱちくりさせた。

 

 どうやら、自分は少しばかり気を失っていたらしい。

 

「もう。まだ寝ぼけているのかしら」

 

 その言葉とともに、ソルシエラは微かに微笑んだ。

 疲労と傷を隠しきれない表情だったが、そこには確かな安堵と、守り抜いた者だけが浮かべる静かな誇りがあった。

 

 ネームレスはしばらく呆然としたまま見つめ返し、やがて状況を理解したのか、震える息を吐く。

 そして、そっとソルシエラの腕に自分の手を重ねた。

 

「……ありがとう。ごめんなさい」

 

 その言葉を告げるまで、どれだけの遠回りをしてきただろうか。

 それでも、ネームレスは最期に答えを得たのだ。

 

「もう少し、素直になっていたら未来も変わっていたのかな……」

 

 ネームレスはそう言って自分の手を見つめる。

 指先から光の粒子が天に上り、溶けていくように消え始めていた。

 

 肉体を持たない彼女は、その魂こそが存在の寄る辺である。

 故に、旅を終えた彼女の魂は糸が切れたように限界が訪れようとしていた。

 

(良かった……これで静かに眠れる)

 

 赦しと祝福。

 これはネームレスにとってはこの上ない終わりだろう。

 ネームレスは再び目を閉じる。

 

 そして、ソルシエラの腕の中でその時を静かに待つことにした。

 荒廃した街の中を流れる穏やかな風、かすかな衣擦れの音、そして遠くから聞こえてくる――。

 

「で、で、出来たっすーーーーー!」

 

 根底から何かをひっくり返しそうな声。

 

「ん?」

 

 安らかな眠りを受け入れようとしていたネームレスは目こそ開けなかったが、自分とソルシエラの他に更に気配を感じた。

 それは一つ、また一つと増えていく。

 

「これを使えばいいのか?」

「はいっす。この『ピッタリ魂フィットちゃん極』を、ネムトアちゃんに装着させてくださいっす! ……あ、魔力の流れを読んでタイミング良くっすよ?」

「ミズヒ、貴女の眼に掛かっていますからね」

「ミズヒちゃんファイト……!」

 

 どうやら自分に何か変な物が装着されるらしい。

 それを理解したネームレスは目を開く。

 

 するとそこには、自分を覗き込むようにフェクトムの面々がいた。

 

「あ、起きましたよ!」

「マーちゃんズ、そのまま手足押さえててねー」

「なっ、何これ!? 離せー!」

「へへっ、いい気味だな! マーちゃんズ顔に乗せちゃお」

 

 騒ぐネームレスの顔に人吞み蛙を乗せてクラムは指をさしながらヘラヘラと笑う。

 その姿をソルシエラに見られているという事など頭からすっぽ抜けていた。

 

「今ですよ、ミズヒ」

「ああ」

 

 ミズヒだけは真剣な顔でその手に持った首輪をネームレスへと近づける。

 そして、カッと目を見開いて一気に首輪を装着した。

 

\フィット!/

 

 首輪からおそらくは成功を知らせるであろう音声が聞こえ、全員がホッと一息をつく。

 顔に蛙を乗せたネームレスだけが状況を理解できていないのか必死にもがいていた。

 

「くそっ、前が見えない! 顔の上でゲコゲコ鳴くな! トリム助けて!」

「諦めろ。ボクではどうにもならない。……あの、シエル姉さんこれのおかわりはあるか?」

「どうぞ。丁度、ウエハースチョコを大量に処理できる人材が欲しかったです故」

「お菓子に買収されんなよ!」

 

 頼れる相棒は既にお菓子により買収されていたようだ。

 もがもがと藻掻くネームレスだったが、その頭を優しく撫でられて動きを止める。

 間違える筈もない。それはソルシエラの手だった。

 

「落ち着きなさい」

「ケイ……」

「ミユメ達に手伝って貰って、魂を定着させたのよ。だから、貴女は消えないわ」

「……え?」

「いい気分で一人だけ一抜けなんて許すわけないでしょう?」

 

 そう告げるソルシエラの声色は明るくいつもよりも弾んでいる気がした。

 表情はわからないが、それでもきっと微笑んでいるのだろう。

 

「……私、生きて良いの?」

「当然でしょう」

「…………そっか、そうなんだ」

 

 それから少しの間、ネームレスは黙り込んだ。

 その時初めて、彼女は自分の顔の上に乗った機械仕掛けの蛙に感謝をした。

 これなら、自分が今どんな顔をしているのかわからないだろう。

 

「――ああ、よかったなぁ……」

 

 誰も言葉を発する者はいない。

 

 流れる風に乗って、一人分の啜り泣きだけが優しく響いていた。

 

 

 

 

 

 

 ン素晴らしい!

 これこそ俺が求めていたものだよ!

 美少女達が困難を乗り越え、絆を結び幸せになる!!

 

 このあったけえ世界こそが俺の生きる理由なんだ!

 

『うんうん、これでネムソルの解像度が上がるねぇ^^ やっぱり捕食者は多い方が良い』

『おぉ……マイロードよ、体に違和感はないか? 星天形態はデモンズギアと天使の融合形態。もしかしたら体に凄まじい負担がかかっているかもしれない。ここはまず、カメさん子供クリニックをここに建設して診察するとしよう……!』

『流石に過保護じゃろ、先生』

『しかしマイロードにもしもの事があってはいけない。あれだけの力を振るったなら何が起きてもおかしくはないのだぞ』

 

 大丈夫だよ、カメ君。

 俺の体に負担なんてある訳がないだろう。

 あるのは、BIG LOVE……!

 美少女が美少女を愛するその無限大のエネルギーで、どうして俺が負担を感じるんだい?

 

『全然論理的ではない説明ですね……』

『おぉ、確かにそうだな!』

『論理的じゃないって私言ったばかりなんですが』

『テム子はいつまで主殿に論理が通じると思っているのじゃ?』

 

 失礼だな君達は。

 俺は常に論理的に行動を選択しているつもりだよ。

 一体今まで何を見てきたんだか。

 

『今までを見てきたから言っているんですけど』

 

 なら何も文句はないな!

 ヨシ!

 

『何を聞いてヨシって言ったんですか……?』

 

 さ、皆! ここから忙しくなるぞ!

 なんか理事長が銀の黄昏と良い感じに戦っているらしいから、こっそり覗いて隙あらばミステリアスに助太刀しよう!

 そしてルシエラにリベンジだ!

 

 黒VS白のコスモ美少女決戦するぞオラァ!

 

『ボコボコにしようねぇ!』

『おぉ、もう私達の存在を脅かす者など天上の意思ぐらいしかいない。銘を持つ人間程度は造作もないだろう』

『流石ご主人じゃ! 頑張るのじゃー!』

『なんでもいいので私を早く解放してください……』

 

 

 

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