【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第450話 美少女は戦いを楽しむ余裕がある

 フェクトム総合学園にとっての決戦が終わりを迎えた頃、その区域は既に見る影もない程に荒れ果てていた。

 ネームレスとソルシエラ達との戦いなど比べ物にならない程にビルは砕け、辺りは塵と焔に覆われていく。

 それは互いが互いを殺す為に本気で力を行使しているからだった。

 

 尤も、それでも戦いが終わりを迎える気配はないが。

 

「チッ、よりにもよって面倒な二人を――」

 

 博士は舌打ちをして荒廃しきった街を駆ける。

 そのすぐ後ろを追従するのは、巨大な怪鳥であった。 

 

「龍位継承――八咫烏」

 

 地を滑るように黄金と黒の体を持ったバルティウスが迫る。

 じりじりと肌を焼くような高熱が近づき、次の瞬間には博士は消し炭に変えられた。

 

 が、どこからともなく蝶が現れると、再び彼の姿を形作る。

 焼き殺されたというのに、彼の表情は涼しげだった。

 

「品が無いな。力任せな馬鹿二人を当てつけの様に……!」

「バルティウス、もっかい!」

「二度も通じるか。既にその姿は多重提唱空間で解を出した」

 

 旋回して迫りくるバルティウスへと向かって博士は片手で銃の形を作った。

 照準を定めるように片眼を閉じ、冷静にバルティウスの頭部を狙う。

 

「コード06:解体――バン」

 

 何かを撃ちだすようなしぐさを博士が取ったその瞬間、バルティウスの姿が歪む。

 大型のカラスは影も形もなくなり、銀の粘液のような物体へと戻ってしまった。

 

「へぶっ!?」

 

 バルティウスの上に乗っていたリュウコは地面に落ちた勢いで地面に転がる。

 その姿を見て博士は嘲笑した。

 

「理解と解体は研究にはつきものだ。お前達にとっては異能と分類される不可思議な力であろうとも、僕にとっては全てが緻密な理屈と理論の上に存在している。お前の情報は、一つ一つこの体を利用して吸収させて貰うよ」

「毎回無様に殺される癖になんでこいつはこんなに偉そうなんだよ……!」

 

 鼻を押さえながらリュウコは立ち上がる。

 そして傍にいたバルティウスへと手を添えた。

 

「龍位継承――ケルベロス」

 

 銀の不定形はすぐさま形を変えて三つの首を持つ恐ろしい猛獣へと変化した。

 その姿を見て、博士は興味深そうに再び銃を撃つ仕草をした。

 

「コード03:再現――バン」

 

 彼の背後で蝶の嵐が巻き起こり、中から黒と金の巨大な烏が姿を現す。

 その姿はつい先ほどリュウコが使役していたバルティウスと酷似していた。

 リュウコはその光景を見て顔を顰める。

 

「それやめてよー!」

「お前が手札を晒せば晒すほど、僕の可能性は広がる。これが何を意味するのか分かるだろう? 既に何体を模倣され、手駒にされた?」

 

 荒廃した大地、それは神話に語られる怪物同士が争った結果生み出されたものだった。

 

「僕の銘の本質は物事を理解して再現する事。人智はやがて奇跡すら再現できる。お前らが相手をするのはそういう上位の存在なんだ」

「なーにが上位だ! 残機が1ならとっくに負けている癖に!」

「銘がある限り、僕に敗北はないさ」

 

 自身の体を犠牲にして相手を理解する。

 それは突飛かつ無謀な手段に見えたが、銘を持つ者ならば話は変わってくる。

 その心に背かない限り、銘を持つ者に死はあり得ない。

 

 故に彼は自身の不死性の根源に全幅の信頼を寄せ、狂気とも呼べる戦闘スタイルを確立していた。

 

「断言しよう、君では僕には勝てないよ。仮にこの僕が復活しないように殺したとしても、この学園都市のどこかで別の体に博士が宿るだけだ」

「くそっ! やっぱり断っておけばよかったー!」

「泣き言を吐く割には、戦う気はあるんだな」

「だって引き受けちゃったし!」

 

 そう言ってリュウコはバルティウスに指示を送る。

 狙うは模倣された八咫烏と博士だ。

 

 対する博士も八咫烏へと指示を送り、再び銃の形をした手をリュウコへと向けた。

 

「ちなみに僕は一度、彼女にも殺されているんだ。コード03:再現――バン」

 

 瞬間、博士の前に青紫色の魔法陣が展開され魔力が収束する。

 そして間髪入れずに銀の閃光が放たれた。

 

「はぁっ!? それって――」

「ああ、ソルシエラだ。と言っても、収束砲撃だけだが」

 

 別個体であろうとも博士がそれによって殺されたのならば、再現は可能になる。

 数と経験、それこそが博士を銀の黄昏の幹部にまで押し上げた強さであった。

 

「うわーん! 助けて六波羅さーーーーん!」

「うるせェ!」

 

 迫る銀の閃光が横から飛び出してきた赤の光に塗りつぶされる。

 ぱぁっと表情を明るくしたリュウコが光の飛んできた方を見れば、そこにはスカートと髪を風に揺らす六波羅がいた。

 

 その背後には彼女が今まで殺しつくしてきた数十体に及ぶ神話の怪物の亡骸が転がっている。

 

「こっちはてめえのコピー処理してんだから一人でなんとかしろォ!」

『そうだそうだ! 最初から強そうなの召喚するとか敗北フラグだってわからないのかぁ!』

「だってすぐに終わらせたかったんだもん!」

「ハッ、こんな面白ェことすぐに終わらせてたまるかってんだ」

 

 次の瞬間、六波羅の姿が消える。

 博士が周囲を見渡そうとしたその瞬間、彼の背後にいた八咫烏はその羽根を数枚残して木端微塵に砕け散った。

 八咫烏の代わりに、博士の背後には蹴りぬいた姿勢のまま六波羅が立っている。

 

「ぬるいなァ……」

『ああっ、リーダー駄目ですぅ! そんな姿勢だとパンツが見えちゃいますよぉ!』

「……チッ、うっせーな」

 

 悪態をつきつつも、六波羅はそっと足を降ろす。

 ふざけたやり取りではあるが、六波羅とリュウコは博士を挟む形で優位な陣形を築き上げていた。

 

「てかよォ。お前、偉そうに再現がどうとか言ってたけどよォ……」

 

 六波羅は弓を構え、矢をつがえる。

 

「俺の無敵を再現出来ていねェ時点で、限界が知れてンだよなァ!」

「舐められたものだ。コード03:再現――バン」

 

 放たれた矢が、突如として現れた白い羽に防がれる。

 否、羽だと思われたものは、人の手が折り重なってできた歪なオブジェだ。

 

 羽が広げられ、それが全容をあらわにする。

 白亜の手で編まれた、フクロウの形をしたそれは紛れもなく天使であった。

 

「こっちは既に6度世界を救っている。その過程で倒したものは全て再現が可能だ。例え、厄災として降臨した天使だとしてもな」

 

 そう言って博士は5度撃つ仕草を繰り返す。

 それは即ち、厄災が5度再現されるという事に他ならない。

 

 この世界とは異なる場所で、異なる人類が経験し乗り越えた6つの絶望。

 それは一人の天才により完全に再現され、今や忠実な下僕になりさがっていた。

 

「掛かってこいよ、青二才。ルシエラよりも先に決着をつけてやる!」

「ハッ、いいねェ! エイナァ! これに勝ったら一緒に一週間の旅行に行ってやるよォ! 当然、理事会の金でなァ!」

『それって実質新婚旅行じゃないですかぁ! やったああああああ!』

「うーん、私にはメリットが一つもないぞこの戦い」

 

 反応は三者三様でありながら、同時に全員が出し惜しみ無しの戦闘へとシームレスに移行する。

 戦いはまだ、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、やってるやってる。へえ、こっちは厨キャラチームと博士かー。乱入するにはちょっとなぁ。ルシエラはどこにいるんだろ』

『スカートでも平気で戦闘をする六波羅……うん、彼女はまだ青い。熟すまでもう少し掛りそうだ^^』

『おぉ……天使の模倣か。こういう事が出来てしまったから天上の意思から裁定を下されたのではないだろうか……?』

『流石は探求の銘……! 気をつけてください。あの銘は信奉の次に生まれた銘です。強力ですよ……』

『主殿が完全に模倣されたなら、それって変態が二人に増えるって事なのじゃ?』

 

 

「ねえソルシエラ、どうして戦いに参戦しないの?」

「……まだ、最後のピースが揃っていないからよ」

「なるほど……!」

 

 

 

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