【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
で、俺達はいつになったらあそこに行けるんですか?
出る幕ないんじゃないっすかね。
『おぉ、マイロードが傷ついてはいけない。このままここでやり過ごすのだ。もしも桜庭ラッカが負けそうならば私が助太刀しよう』
『それじゃ星天形態の意味がないだろ過保護。さっさとあの場所に乱入してどっちもボコボコにすればいいねぇ! その後、夢幻の杖とかいうやつも破壊してしまおう』
『いえ、いくら常軌を逸した変人と言えどもあの二人の戦いに乱入するのは危険です。ここは状況をよく見定めるべきかと』
あの二人について詳しく知っているのかテム子!
『システムにいくつか該当する情報が存在します。特にルシエラの持つ信奉は一番初めに作られた銘であり、信じる事によって世界に理を生み出す。言ってしまえば、彼女が望むことなら全てが現実になるでしょう』
ずるじゃねえか。
……ん? なら、俺をTSさせて欲しいと願って貰えば……?
『流石のルシエラにも選ぶ権利はあると思うのじゃ』
酷いちくちく言葉だ。
『そしてラッカの持つ憧憬の銘は、他者の信じる事象を現実にする力。二人の能力は、対極に存在していると言っていいでしょう。そんな二人を相手に戦うなど、如何にソルシエラと言えど危険です』
『いや余裕だろ。星天形態舐めんな。おうカメ、君だって勝てると思っているだろう』
『おぉ、あの二人を同時に相手にしても99%勝利できるだろう。マイロードが美少女を相手に本気を出すことが出来ればだが』
はは、本気なんて出さないよ。
あくまでコンテンツとしてちょちょいのちょいさ!
しかしねぇ、こうして二人の戦いを見ているとここにソルシエラとして俺が入っていくのは些か無粋な気もするんだ。
どうやら二人の間には因縁がある様子。
もしかすると俺の知らない場所でこの二人のカプがタイムラインに流れているのかもしれない。
そう考えると如何に星の様に美しい少女と言えども乱入は躊躇ってしまうよ。
『単にこのコンテンツをジュルジュルしたいだけだろ』
へへっ。
だがそれだけじゃねえぜ。
ソルフィちゃんの話だと、トウラク君がここに来る予定だそうじゃないか。
主人公だぞ?
原作ボスVS原作主人公が見れるんだから、ここは邪魔しちゃいけないだろ。
ラッカちゃんと共闘とかしたらもうたまらんね。
強くなっているって話だし、どんな感じになっているんだろう。
星斬りの強化とか想像がつかないや。その辺、星詠みの杖君は0号として想像できたりする?
『うーん、どうせ出力がちょっと上がっている程度だろ^^ 斬れる物が増えたりとかじゃないか? 私達の様に見るからに変化しているという事は考えづらいね。あんまり期待すると肩透かしを食らうかもしれないから気を付けたまえ』
『……あの、成功体5号と六波羅のペアの進化は想定を逸脱しているので、今回もかなり強力な変化をしているのでは?』
『テム子は馬鹿だねえ。演算に使っているプロセッサは何世代前なのかな^^ あんなことが何度も起きる訳ないだろう?』
……いや、しかしトウラク君ならあり得るかもしれないぞ。
もしかすると星天形態に匹敵するかも……。
『ないない(笑)』
『おぉ、流石にそれは冗談だろうマイロード(笑)』
そ、そうかなぁ。
『考えても見たまえ。デモンズギアの始祖と天使、そして理想の銘を持つ君が合わさる事で星天形態が完成したんだ。わかるかい? これだけ強力な形態がその辺の人間と妹一人に匹敵されては姉の立つ瀬がないのだよ。まあ、やってみろって感じだが』
そっかぁ。
『けれどまあ、ラッカと二人ならルシエラ相手に丁度いいんじゃないかな。まず負けはないだろう』
『確かにラッカはクッソ強いのじゃ! 流石のルシエラと言えども二人掛かりだと負けるじゃろうて』
『ですが、ラッカの銘の輝きは……』
どうかしたのテム子。
『いえ、私の勘違いかもしれません。気にしないでください』
『お前それ本当にやめて欲しいねぇ^^ 気になるだろうが』
テム子、気にせず言って欲しい。
俺達は魂で繋がった同志じゃないか!
『えっ(絶望) そ、そうですか。では……』
俺達はテム子の言葉を待った。
理想の銘のシステムの言葉だ。きっとただの勘違いではないだろう。
『――いえ、やっぱりやめます。私の勘違いで余計な騒動を引き起こしたくはありませんので』
『はぁ、お前は本当にクソ真面目だねぇ!』
『おぉ、星詠みの杖よ我慢するのだ。まだ自我をもって幼いのだ。どうか許して欲しい』
『いいからこういう時は言って欲しいねぇ! 大抵そういうのって勘違いじゃあないんだから!』
『勘違いだったら恥ずかしいので言いません! 絶対に嫌です! 理想の銘は間違えたりしないんです!』
『クソガキか君は』
ふえぇ、皆仲良くしてよぉ!
■
位相の海――世界と鏡界のあいだに広がる、現実の影だけが漂う異次元の空間。
そこでは時間も距離も曖昧で、星のような光がゆっくりと流れ、戦場の音や熱だけが、遠雷のように遅れて届いていた。
「先生……大丈夫かな。本当なら私と二人掛かりの予定だったのに……」
ソルシエラとネームレスはその海の縁に並んで立っていた。
足元には水面のように揺らぐ位相が広がり、そこに映るのは、別の次元で繰り広げられている壮大な戦い。
蒼銀の剣を振るう少女と、不可視の槍を操る少女。
二つの力が衝突するたび、世界が削られ、都市が消えていく。
光と歪みが交錯するその光景を、二人は言葉もなく見つめていた。
「……ねえ」
ネームレスは息を吐く。
エクスギアはより強く握られ、かすかに震えていた。
それを見てソルシエラは、ネームレスの手を上から包み込むように握る。
「ふふ、仲間思いなのね。安心なさい。この戦いの勝利は約束されたものだから」
ソルシエラはそう答え、視線を逸らさない。
その横顔は静かで、決して焦っていなかった。
「……そっか。なんか、ケイに言われると不思議と納得しちゃうな」
「ケイじゃなくて今はソルシエラよ。もう、舞台の上で役者の名前を呼んではいけないわ」
二人の肩は自然と触れ合っていた。
意識せずとも、そこにいるのが当たり前の距離。
位相の海を渡る冷たい光の中で、互いの体温だけが確かな現実として伝わってくる。
ネームレスは、そっとソルシエラの服の袖をつまんだ。
不安からではない。
ただ、ここにいるという確認のような、ささやかな仕草だった。
ソルシエラはそれに気づき、何も言わずに指先を重ねた。
強く握るわけでもなく、離すでもなく。
信頼が形を持っただけの、静かな触れ方だった。
「私たちの番は、まだ先なんでしょ?」
ネームレスが言う。
「ええ、そうね」
ソルシエラは微笑み、ほんの少しだけ声を柔らかくした。
「まずは、素敵な剣士さんの出番が先だもの」
「……ふーん」
ネームレスは口をとがらせて、より強く手を握って見せる。
まるで自分を主張しているような動作のいじらしさにソルシエラはふっと微笑む。
そして握り返した。
「勿論、貴女にも期待しているわよ」
「……うん!」
その言葉に、ネームレスは小さく頷く。
疑いはない。
かつての恐れも、迷いも、もうそこにはなかった。
位相の海の向こうで蒼銀の剣と不可視の槍が再び激突し、世界がまたひとつ砕け散る。
けれど二人は動かない。
互いの存在を確かめ合いながら、
その時が訪れるのを、静かに待っていた。
『で、トウラク君って結局いつ合流するの?』
『『『『さぁ……』』』』
『こんだけ各方面のスペシャリスト揃ってて誰も知らないことあるんだね……』