【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
はわわわわわわ!(警告音)
はわわわわわわ!(警告音)
エマージェンシー! エマージェンシー!
トウラク君が無性美少女に進化を遂げました!
近隣の皆様は落ち着いて避難を開始してください!
『うーん……ルトラが……私の想定を超えて……完成体に……』
『うーん……デモンズギアが……人間と完全に融合して……』
『おぉ、二人共しっかりするのだ』
『今更この程度で気絶するとは思わなかったのじゃ』
『この程度!? 赫夜牟、貴様ァ!』
『落ち着くのだ星詠みの杖!』
『ルトラとかいう脳筋が、完成体になったんだぞ!? しかも、新たなコンテンツである無性キャラだ! わかるか!? 私達ですらまだ踏み入れていない領域の美少女になったんだぞ!』
『コンテンツとか美少女についてはよくわからないですけれど、デモンズギアが人間と融合したのは予想外と言わざるを得ません。元々デモンズギアは女王の棺の力を分割しただけの存在。あの姿はもはや……女王の棺そのものと言っても、いやそれすら凌駕しているかもしれません』
流石は原作主人公様だ。
俺らの想像を軽く超え、その上でコンテンツまでお出ししてくるなんて。
『……? そう言えば、なんで主殿は今のトウラクが無性であるとわかったのじゃ? 確かに中性的な顔立ちにはなったが、それ以上は何もわからないじゃろて』
見ればわかるだろ。
『………………成程なのじゃ!』
『あ、今諦めましたね』
『主殿は見ればわかると答えた。ならそれが全てじゃ。それ以上の情報は必要ないじゃろう。質問の答えになっていないとか、そもそも無性なら美少女ではないのでは? とかは疑問に思ってはいけないのじゃ』
そうそう、見ればわかる通りだよ。
それにしてもTSではなく無性化とは……。
いや、あれも広義の意味ではTSか? いずれにせよ、今の内に拝んでジュルジュルしておかないと。
それに、きっと強いぞ!
星天形態が強すぎてどうしようかと悩んでいたが、その心配は必要なかったようだね。
だってトウラク君が俺と同じくらい強くなってくれたのだから!
あー、もう本当に好き♥ ミハヤちゃんと末永く幸せになってね♥
『おぉ、なんという魔力の生産量だ。マイロードは今、喜びで胸がいっぱいなのだな』
『これだけの魔力どう使うんじゃ……』
これなら俺と六波羅さんと一緒にアンソロジーコミックでヒロイン水着回が出来るね♥
デモンズギア使いしか入れない特殊な海水浴場型ダンジョンに三人で行こうね。
いや、あるいはゴシックロリの館型ダンジョンでもいいな。
会場はこちらで用意するから安心してね♥
『ダンジョンを私物化するなんて……』
『今更じゃろ。コンテンツの為にどれだけの物を私物化してきたと思っているのじゃ』
ほら、星詠みの杖君も正気に戻ってくれよ。
トウラク君も美少女としてコンテンツの新たなステージに立ったんだ。
なら俺達もグズグズしていられないぞ。
俺達のコンテンツロードはまだ始まったばかりなんだ!
『あの……一応はルシエラとの決戦なのでもう少し真面目にして貰えると……』
真面目に決まってるだろ!
ラッカちゃんとルシエラとの因縁!
そして原作主人公の新たな覚醒!
これにはミステリアス美少女と言えども思わず背筋を伸ばしてしまうよ。
俺は今、気持ちは正座しているからね。
『正座している人間の言動ではないぞ主殿』
『随分と好き勝手言うようになったじゃないか赫夜牟^^ 私が少しばかりラーニングに時間がかかったからと言って調子に乗りすぎじゃないか?』
あ、星詠みの杖君!
ようやく正気に戻ったんだね!
『ああ、私は正気に戻った! 無性トウラク……実に興味深いよ。同時に惜しいねぇ。無性ソルシエラという可能性がなくなってしまった。一つのコンテンツに二つの無性は入れない』
そうだね。
だからこそ俺達はトウラク君に敬意を表してミステリアス美少女を全うしなければ。
まずはトウラク君のあの姿をさも知っていた風にしてネームレスにマウントを取る所から始めよう。
それから頃合いを見計らって参戦するんだ。
ルシエラ相手なら、最強形態同士が並び立っても問題ないだろう!
『待って欲しい。果たしてミステリアス美少女が集団リンチをするだろうか。それに、ああやって決闘の形をとっている以上、君が入るのは無粋と言うものだ』
ならどうするってんだよ。
隣でネームレスが、その時を今か今かと待っているんだ。
『うーん、しかしねぇ。ピンチでもないのにミステリアス美少女が出て行くのはスポンサー的にねぇ』
『それに貴女が行くとルシエラの尊厳まで破壊されかねません。私はルシエラが美少女論議を繰り広げる所を見たくはありませんよ』
俺だってそれはちょっとしか見たくないよ。
というか、君の中で俺は何になっているんだ?
『侵食の銘』
誹謗中傷だぞ!
『侵食……カッコいいのじゃ……!』
『あ、赫夜牟ってそっち系が好みなんだねぇ』
俺は侵食なんてした覚えはないぞ。
転んでいる美少女に手を差し伸べ、雨に濡れた美少女に傘をさす。
そんなどこにでもいるミステリアス美少女さ。
『自認が凄いですね』
どうにかして無性トウラク君と星天形態を並び立たせたいよぉ。
何か、良い方法はないものか……。
『そろそろ神羅形態とか呼んであげて欲しいのじゃ。流石にずっと無性トウラクは可哀そうじゃ』
『おぉ、赫夜牟は優しいな……! 後でザクロゼリーを作ってあげよう』
『やったのじゃぁ!』
うーん、参戦出来るタイミング……タイミング……。
『無性トウラクの臀部はどうなっているんだ……? それを知るために私達はアマゾンの奥地に向かうべきじゃないか……?』
『最終決戦なのにずっとこの調子なの気が狂いそうです! ああ最高ですね!(ヤケクソ)』
■
位相世界からトウラク達を見ていたソルシエラとネームレスは互いに確信をしていた。
この戦いはトウラクが勝利するだろう、と。
「圧倒的ね、あの力は」
「わかるの?」
「ええ、勿論」
ソルシエラはそう言ってほほ笑む。
するとネームレスは感心したように頷く。
「流石だね。……見ての通り、アレはデモンズギアの完成形態。名を、星斬り・神羅。ミユメちゃんが最後まで研究していた形態なんだ。理論上は女王の棺を凌駕するよ」
「………………成程、道理であれだけの力を扱えるわけね」
「見ただけでわかるなんて、ケイは凄いや」
それはソルシエラからしてみれば、イレギュラー以外の何物でもない。
星詠みの杖に匹敵するそれを前にすれば本来はもっと驚いている筈だ。
それでも冷静でいられるのは、この事態を想定していたのか。
あるいは、牙塔トウラクという青年を心の底から信じていたのか。
「……少し妬けるね」
「どうかしたのかしら」
「べっつにー」
ネームレスは口をとがらせてそっぽを向く。
しかし彼女もまた、その心情は存外穏やかである。
(ミユメちゃん、貴女の研究は無駄じゃなかった。きっと、この世界は貴女の思い描いた通りの素敵なハッピーエンドになるよ)
かつて天才から託された力は、今ここに花開いた。
それも、ネームレスが想像していたよりもずっと美しく壮大に。
「見ていてよ。星斬り・神羅はここからがすっごいんだから!」
はしゃぐようにそう紹介するネームレスを見て、ソルシエラは静かに耳を傾ける。
その優しさを理解しながらネームレスは素直に甘えた。
かつて、天才が自分に発明品を得意げに説明してくれたように。
今はいない彼女の分まで、今度はネームレスが楽し気に最後の発明品を紹介する。
それがあの世界で最後まで一緒にいてくれた友達への、ネームレスなりの手向けであった。
『ネームレスがめっちゃ知ってんだけど。全知ムーブできねえんだけど!』
『全知ムーブはできない。ミステリアス美少女の活躍シーンもない。想定外だねぇ』
『むしろ今まで想定内だったことってどれくらいありましたか……?』