【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第462話 愛の証明は美少女でも容易ではない

 決戦の幕は壮大な銀光と共に落とされた。

 

「「――ッ」」

 

 ルシエラとソルシエラが同時に収束砲撃を放つ。

 本来は星一つ破壊できる程の収束がなされた砲撃は、空中で激しく爆発を起こす。

 

 その黒煙を裂いてトウラクは斬りかかっていった。

 

「『A-132【苛烈】の鋳造を開始――鋳造、刻印、完了。神羅、一振り』」

 

 戦いを経て十分に二人の情報は得ている。

 後は、斬り伏せるだけだ。

 

「『今度こそ、お前を斬る』」

「その攻撃は私には効かないと「うるっせえバーカ!」……っ、無作法な」

 

 ルシエラの真横で陽炎が舞い、ネームレスが姿を現す。

 次いでルシエラの体を衝撃が襲った。

 

「――act6。私の無敵はお前にも有効だよ」

『当然、ボクがエクスギアの出力を底上げしたおかげだ』

 

 ネームレスが蹴りぬいたのだと気が付いた時には、彼女の思考には一時的な空白が生まれていた。

 すぐに視線を上げたルシエラの視界に空中で破裂しようとしている黒い蛙が目に入る。

 それはルシエラが止める間もなく派手な爆発を引き起こし、黒煙で更に視界を覆った。

 

「っ」

「逃がすか!」

「『その道は読めている』」

 

 黒煙から三人が勢いよく飛び出す。

 まるで舞うように三人は常に位置を変化させながら剣と異能による応酬を続けていた。

 

(これは厄介だな)

 

 攻撃を受け流し迎撃をする中でもルシエラは態勢を立て直すための思考を止めない。

 

(トウラク一人用の戦闘理論は既に構築したが、ネームレスが……やり辛い)

 

 意外な事にルシエラはトウラクよりもネームレスへの対処が急務であると判断をしていた。

 その理由は多岐にわたる。

 エクスギアというイレギュラーの兵器に、トリムというデモンズギア最終号の二つを持っている彼女はそれだけで脅威だ。

 

(随分と先読みされている気がするけど)

 

 苛烈により既に調和と智慧は意味をなしていない。

 故にルシエラは培った経験のみでこの攻撃を受けきっていた。

 

 数多の戦場を駆け抜けた経験がルシエラにとっての最適解を無意識のうちに導き出す。

 しかし、そうして回避をした先で、あるいは迎撃を試みた瞬間に、決まってそこにはネームレスがいるのだ。

 

「act3」

 

 トウラクの斬撃を回避した足元で蛙が鳴き、爆発する。

 蒼銀の剣を構え直せばその瞬間に、漆黒の翼がいくつも彼女に襲い掛かっていった。

 その他にも無敵や焔、切断など多くの手札が状況に応じて切り札に変化していく。

 

(まるで、私と戦ったことがあるかのようだ。どこかでデータを取られたかな。なら、知られていることを前提に戦おうか)

 

 ルシエラは攻撃の中で僅かな隙を突き、ネームレスへと視線をやった。

 

「君にこの一撃は防げないと信じているよ」

 

 瞬間、蒼銀の剣が不規則な軌道でネームレスへと向かう。

 そして直撃しようとしたその時、それは横から飛び出してきた刀により防がれてしまった。

 

「『その可能性は苛烈により否定された』」

「……目の良い戦士が組むとこれだから困るね」

 

 何よりも恐ろしいのは、戦闘の隙間に差し込まれる互いへのサポートであった。

 戦場において天賦の才ともいえるトウラクの眼。

 過去に多くの人と死線を潜り抜けた経験から、戦いの中で合わせることに特化したネームレスの勘。

 

 この二つがまるで初めからそうであったかのように噛み合わさり、独特のコンビネーションを生み出しているのである。

 

「手数で私達に勝てるわけないじゃん! 月詠みじゃなくてもこの程度余裕だわ!」

『余裕だな!』

「『油断は駄目だネームレス』」

「わかってんよ。でもこれで負けろって方が無理じゃんか。ははっ、精々私の足引っ張るなよ英雄!」

『ルトラの使い手如きがボク達の心配をするな!』

 

 勝利を確信して、ネームレスとトウラクはルシエラを追い詰めていく。

 今となっては、その戦いに夢幻の杖が介入することはない。

 

 何故ならばその愛は今、一つの星へと向けられているのだから。

 

 

 

 

 

 

 砲撃の後、こちらは静かに戦いが始まった。

 黒煙の中へと消えて行った互いの仲間を信頼して、二人はまるで鏡合わせの様に微笑み合う。

 

「初めまして。よければ君達の名前を教えてくれるかな」

「ソルシエラよ。ああ、貴女の自己紹介は結構よ、夢幻の杖」

「そうかそうか。……それで、君の中にいる四体の愛すべき者達の名前は? 私は、君達全員の名前を聞きたかったのだが」

 

 夢幻の杖は笑顔で一歩を踏み出す。

 まるで握手を求めるような緩慢な動作で極彩色の大鎌を振り上げ、一歩ずつその歩みは加速していった。

 目的はただ一つ、ソルシエラに愛を届けるためだ。

 

「君のような秘密が多い子も私は愛すさ」

「レディの名前を聞くにしては少し品が無いわね」

 

 振り下ろされた質量のある愛に対して、ソルシエラは平然とした表情で指を鳴らした。

 その瞬間、夢幻の杖の周囲にいくつもの魔法陣が展開され、中から銀の鎖が飛び出す。

 夢幻の杖はそれに気が付いたが、構う事はなかった。

 

「それも愛だ」

 

 愛であれば平等に受け入れる。

 愛であれば自身を縛る訳がない。

 

 故に、彼女にとってこれは拘束の意味をなさない。

 

 銀の鎖は夢幻の杖の四肢に確かに巻き付いたが、次の瞬間にはするすると解けていった。

 

「まずは愛してあげよう」

「貴女の愛なんていらないわ」

 

 ソルシエラの目の前で極彩色の刃がぴたりと止まる。

 その柄には、解けた筈の銀の鎖が巻き付いていた。

 

「おや」

「それに」

 

 不思議そうに首を傾げる夢幻の杖に向けてソルシエラは大鎌の柄を向ける。

 そして、魔法陣を展開させた。

 

「愛はもう間に合っているの」

 

 銀の光が夢幻の杖を飲み込み、轟音と共に辺りを揺らす。

 完全に不意を突いた、至近距離での収束砲撃。

 

 しかしソルシエラは油断することなく空へふわりと浮かび上がると、その大鎌を掲げた。

 

「星に愛を届けようだなんて。随分とロマンチストなのね、お嬢さん」

「人間は誰だってロマンチストだろう。まあ、私は人ではないが」

 

 砲撃など無かったかのように、砂塵と煙の中から夢幻の杖が姿を現す。

 

「造物でも、愛することはできる。私はそう信じたいね」

 

 その顔はやはり微笑み、慈愛に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 そう、ミステリアス美少女は一対一でこそ輝く!

 夢幻の杖とかいうなんかよくわかんないけどたぶん強い奴を相手にすることで、ソルシエラの強さが強調されるってもんよ!

 

 でも今までのように孤独ではないので、ここぞという場面で協力しようね。

 

『ああ^^ ……ところでカメ、お前また天使の力を最初に使おうとしただろ。油断も隙もあったもんじゃないねぇ!』

『おぉ……最初にルシエラと砲撃を撃ちあった時点で、一番初めをお前に譲るという条件はクリアされたと判断している。何も言われる筋合いはない』

 

 うんうん、息がぴったりだね。

 

『どこがじゃ』

 

 星詠みの杖君、カメ君、その調子で頼むよ。

 自分が活躍するだけじゃなくて、無性トウラク君ちゃんを輝かせるのもミステリアス美少女の重要なお仕事なのだから。

 

『それよりも、さっき私達の存在バレてましたって! ねえやっぱり博愛の銘はまずいですって! 三人でルシエラをすぐに倒して、こっちに取り掛かりましょうよ。一人で相手する存在じゃないですよ!』

『お前相棒の話を聞いていたのかな? 賢いフリをしてとんだ腰抜けだねぇ! 私達の星天形態が負けるわけがないだろう!』

『おぉ、案ずるなテム子よ。勝率はカメさん%だ』

『数値ですらない……』

 

 大丈夫だテム子、この流れで負けるなんてコンテンツに反するから絶対に勝つよ。

 

『説得力だけあるのなんなんですか……』

 

 問題点があるとすれば、ルシエラと夢幻の杖がどっちも美少女の輝きを持っているので殺せないって事かな。

 

『えっ』

 

 ルシエラの方は、トウラク君なら殺さないっていう信頼があるから大丈夫。

 原作でもそうだったし、仮にネームレスが殺そうとしても俺がいい感じに話を着地させて生かすよ。

 こう……なんか……まだ脅威が去っていないから戦力が……みたいな……。

 

『おぉ、最悪の場合、カメさんエマージェンシーでなんちゃって厄災を起こして話を有耶無耶にしよう。皆で力を合わせて天使に勝利するのだ……』

『マッチポンプじゃないですか!?』

『今更なのじゃ』

『幼き命がカメさんライトを劇場で振ってくれれば、マイロード達はきっと勝てるぞ!』

『…………これあっちの陣営が勝った方が人類の為なのでは』

 

 なんてことを言うんだテム子。

 よし、そんなテム子の為に証明してあげよう。

 

『な、なにをですか……』

 

 君は夢幻の杖の愛の方がコンテンツに勝るのではないかと心配してるんでしょ?

 

『違いますよ』

 

 だったら、俺は君に見せてあげるよ。

 美少女コンテンツへのBIG LOVEを……!

 

『話聞いてくれない……赫夜牟先輩、貴女からも何か言ってあげてください』

『任せよテム子、ここは我が『赫夜牟、わかっているね?^^』…………っ、流石主殿! BIG LOVEがあれば勝てるのじゃ!』

『先輩!?』

 

 行くぞ皆!

 博愛の銘に、本当のBIG LOVEを教えてあげるんだ!

 

『『『応っ!』』』

『どっちが勝っても人類が終わるかもしれませんねこれ……』

 

 

 

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