【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
ソール!(警報)
ソール!(警報)
緊急事態発生ソル! 天上の意思が顕現したのでラスボス戦が数か月前倒しになったソル!
緊急事態ソルよ! 皆、ソルフラグベースへ集合ソル!
『まだ余裕あるねぇ』
『やけくそで狂ってるだけの気もするのじゃ』
『おぉ、正直マズイぞ。私なんて直属の上司に楯突いたのだからな。だが、可愛い娘の為なら私はカメさんを全うしよう……!』
『私達に言わず一人で処理しようとしなければ良かったのにねぇ。無駄に刺激しただけだろ』
カメ君は俺に心配を掛けさせたくなかったのだろう。
ありがとうカメ君、君のそのあっちい想いは確かに受け取ったぜ!
ここからは皆で戦うんだ!
『良い話だねぇ。私達が勝てる確率が1%未満であるという事に目を瞑ればだが』
『やばいのじゃ……おしまいじゃ……』
えっ、そうなの!?
星天形態ならなんだかんだでボコボコに出来てクールに勝利出来ないの!?
コンテンツの未来は!? TSの明日はどこなんですか!?
『そこの棚に置いてなければ今シーズンはもう生産終了しましたねぇ』
『おぉ、いくら星天形態と言えども流石に天上の意思では相手が悪い。……いや、正確には今の天上の意思の状態ではマズイとでも言おうか』
解説役のカメ君、詳しく頼む!
『本来、天上の意思は六体の天使を乗り越えた人類の元に現れ、それぞれのレベルに合わせた姿で顕現する。滅ぼすのではなく、導き自身と同じ存在へと昇華するための手伝いをするのが本懐なのだ。この文化レベルなら中々に強力な形態で顕現した事だろう。本来、それは星天形態や神羅・星斬りの敵ではない。のだが……』
今回は違うの?
『違う。今の天上の意思はいわばデバッグモードだ。完全に顔真っ赤でイレギュラーを修正しに来ている。力のセーブなどするわけがない。最初から全力で私達を消去しに来るだろう』
『どうしろって言うのじゃ。テム子だけ気絶して絶望していないのズルいのじゃ……。我も気絶するのじゃ!』
『お前は怯える姿も良いから気絶は絶対にさせないよ^^』
『(絶句)』
そ、そんな……。
最強形態としてお披露目したのに負けるなんて情けないよ!
戦歴がネームレス一勝とかふざけてんのかって思われちゃう。
後にショート動画で『【最弱?】あまり強くない最強形態3選』とかに載せられちゃう!
インスタントなコンテンツとして小馬鹿に消費されちゃうよぉ!
『心配する所はそこでいいのかい?』
『おぉ……マイロード、戦うなら止めはしないが勝てないと思うぞ。星天形態は確かに強い。しかし、文字通り次元が違うのだ』
そんな……俺達のコンテンツはここまでなのか……!?
TSするために多くの愛を見届け、育み、世界を照らしてきたが、ここで終わりなのか!?
俺達は……本当にここで……!
……チラッ。
『おぉ、しかし』
お?
『今回に限り^^』
おお!?
『『勝てる策を用意した』』
やったぜ!
『流石先生方なのじゃ!』
『私達は完璧なデータキャラだからねぇ! たった今、プランを用意した。データは完璧だ。私の理論が勝利に導くだろう』
安心から不安への高低差が凄いな。
一旦、データキャラっていう言葉を禁止しようか。
敗因がフラグとか情けないからね。
『おぉ、99.9%勝利できるだろう。全てのデータが揃った今、負ける可能性は僅かだ……』
その僅かに可能性残すタイプの回答も止めてね。
こういう時って、絶対その0.1%を引いちゃうから。
『安心すると良い、本当に理論は完璧なんだ^^ そもそも私とカメは対天上の意思プランを星天形態制作後から練っていたんだねぇ』
『マイロードは全てが異常だ。故に天上の意思がイレギュラーとして排除しに来る可能性は高い。ならば、策を用意しておくのは当然だ。まさか本当に現れるとは思わなかったが』
成程! とにかく、勝算があるんだな!
ヨシ、皆で天上の意思を倒すんだ!
原作死亡キャラ生存ありタグ付きの二次創作みたいなメンツが揃ってんだから、ここで負けるのはコンテンツじゃない!
決戦のコンテンツを、余すことなくジュルジュルして俺達は明日へと向かうんだ!
『カッコいいのじゃ……!』
『う、うーん……ハッ! 何やら強大な力を感じますがこれは……え、ええ!? 天上の意思!? なんで!? う、うーん……』
『テム子ー!』
『はい、おみみ強制起床^^』
『んぁっ♥ ……ハッ、私は一体何を』
テム子、起きたのか。
よし、これで全員揃ったな!
『え? え? あっ、そうですよ皆さん! 天上の意思が降臨したんです! アレは危険ですよ!』
『そういう話し合いのフェーズはもう終わってるんだねぇ』
『おぉ、テム子よ恐れることはない。いつも通り、海より広く深い愛で包み込めばいいのだ』
『BIG LOVEじゃ!』
『え、え? なんですかこの雰囲気。私が気絶している間に何があったんですか!? というか早く天上の意思への対策を立てましょうよぉ!』
よし、皆の心は一つだな! 俺達五人が揃えば絶対に負けない!
例の作戦(理解度0%)を開始するぞ!
天上の意思に一泡吹かせ、そしてあわよくばコンテンツを教え込むんだ!
『もしかしてとんでもなく恐ろしいこと言ってます?』
行くぞ! 星詠みの杖君、カメ君、赫夜牟君、テム子。
『ああ^^』
『おぉ……』
『やってやるのじゃぁ!』
『あの、前から気になってたんですけどなんで私だけいつも呼び捨てなんで――』
進めえええええええ!
■
天上の意思は本来、裁定の最終段階以外では姿を現すことはない。
もしもそれが姿を現した時は、全てが終わりを告げる時だろう。
しかし、それでも抗う戦士たちがいるからこそ世界は存続していた。
「『三手』」
「愛の傷は消えないと信じているよ」
博愛の銘による三度の斬撃が信奉の銘により現象として固定化され、天上の意思へと明確に切り傷を残す。
僅かな傷ではあるが、体に残る傷をつけた事は間違いない。
小さな一歩ではあるが、トウラク達は確かに反撃を始めていた。
「余を相手に無駄な事ばかりするのだな、人類は」
「いつまで気取っているのかしら、お嬢さん」
声が聞こえると同時に、天上の意思の体が銀の鎖により縛り上げられる。
天上の意思に対して本来は動きを制限する鎖など意味をなさない。
がしかし、その肉体自体が夢幻の杖であるが故、そしてソルシエラの放った鎖一つ一つが銀河を束ねて完成させた極限の収束状態であるが故に彼女はその場で完全に固定された。
「合わせろトア!」
「言われなくてもやってやらぁ!」
攻撃が流れるように移り変わる。
トウラクとルシエラに代わるように動いたのはネームレスとラッカの二人である。
ラッカは駆けながらその手に持った槍を思い切り投擲した。
「トリム、いい所見せろ!」
『ようやく出番か!』
ネームレスは大鎌を構えると、収束砲撃の体勢へと移行する。
そしてラッカの攻撃に合わせるように間髪入れずに砲撃を重ねるように放った。
黄金の光が槍と混ざり合い、次元を裂く眩い光となって天上の意思へと迫る。
「何かと思えば、またその程度の攻げ――ほう」
今度の攻撃は停止しなかった。
天上の意思という存在の生み出すルールの壁をすり抜けるように、光の槍が迫る。
ここに来てようやく、天上の意思は自らの意思で一つの力を行使した。
「何故攻撃が届くのかと思っていたが……そうか。博愛の銘を無理矢理全員で共有しているのか」
「土壇場にしては会心の連携なのにすぐに見破ってくれるとはね……!」
それは、博愛の銘ならば攻撃が通じるという一点に賭けた、作戦とすら呼べない無茶であった。
トウラクの博愛の銘を起点として、かつて博愛の銘だった銘を持つ四人が共鳴することによって無茶は成り立っている。
負担を理想が打ち消し、信奉が力に指向性を持たせ、探求が安定化、憧憬が再出力する。
このプロセスを経て、トウラクの博愛を銀の黄昏の四人は一時的かつ攻撃に付与する形ではあるが、使用が可能になっていた。
共に一つの時代を駆け抜けた四人だからこそできる荒業とも言えるだろう。
「素晴らしいぞイレギュラー。こんな出会い方でなければ一人一人に正式に銘を授けていたところだ」
称賛の言葉と共に天上の意思は、ただ一つ命じる。
【墜ちよ】
それは言葉ではなかった。
辺りへと響き渡るそれは、言うなれば世界全体に作用するコマンドである。
天上の意思の命令はそれ一つで銘や異能を遥かに凌駕していたのだ。
光の槍は天上の意思の眼前で崩れ落ち、彼女を縛っていた銀の鎖も地に落下する。
「おいなんだよ今の頭に響くような声!」
「アレが天上の意思が最強である証。世界において絶対の効果を発揮する超越命令だ。ちなみに僕達の多重提唱空間でも再現率は僅か0.3%に満たない。まさに、特権だ」
「特権なんて大層な物ではない。余は命じただけだ。それだけで世界は望みのままに形を変える。……さて、戯れも程々に修正を開始したいところだが」
天上の意思は周囲を見渡す。
天上の意思の本質はプログラムに近い。
故に、この場で最もイレギュラーは誰であるかを探り、優先度をつけるために一人一人を確認していく。
「ふむ……」
それは、過去に世界ごと滅ぼした筈の者達だった。
それはこの世界に本来存在しない銘を模倣する力を得た剣士だった。
それは時間を超越した旅人だった。
一つ一つが歪となり得るイレギュラーである。
が、何よりも大きなものは――。
「……なんだ、お前は」
それは、博愛の銘の残骸から生み出された兵器と熾天使級にまで進化した第三の天使とこの世界では本来あり得ない改造を施されたダンジョン昇華体と銘の管理と再生という禁忌を司るシステム――を体に宿した人間の形をした何かだった。
「そうか、お前が全ての元凶か」
天上の意思はすぐにこの世界がねじれ歪んだ原因を理解し、そこで初めて一歩踏み出した。
世界が一人の少女を裁くために牙を剥く。
「修正が必要なようだ」
「あら、最初は私と踊ってくれるのかしら」
自分へと意識を向けられたことに気が付いたソルシエラは、優美に大鎌を構える。
天上の意思による最初の裁きが今、始まった。
『こっちに来ましたよ! どうするんですか!』
『主殿、作戦って結局何なのじゃ?』
『さあ?』
『ではこれから、タイミングを見て爆発四散しようねぇ』
『『『えっ』』』
『おぉ……安心すると良い。青紫の光をパッと散らして綺麗に四散するぞ。演出にもピッタリだ。存分に負けに行くと良い』
『『はわわ……』』
『はわ……あ、なるほどね! 全部わかったわ!』
『なんでわかるんですかー!?』