【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第472話 希望の先にはいつも美少女がいる

 戦場を染める銀の閃光は、これまでの劣勢を書き換えてしまう程だった。

 

「ソルシエラっ!」

「『駄目だ、近づいたら君まで危ない!』」

 

 駆け寄ろうとするネームレスの腕を掴み、トウラクは無理やり止める。

 ネームレスは銀の光へとその名前を叫ぶが、返事が返ってくるわけもない。

 

「act1!」

 

 掴んでいた筈の腕が焔に巻き込まれ消える。

 そして次の瞬間には、ネームレスは銀の光の目の前に現れたのだが――。

 

「無駄にする気かよ、この馬鹿が」

 

 空から飛来した赤い光が、ネームレスの動きを停止させる。

 それに合わせて、ネームレスの体を縄が縛り上げた。

 

「っ、なんだこれ!」

「グレイプニル。めっちゃ強い縄だよ。……ごめん、少し拘束させてもらう」

「っ、リュウコ! それに……六波羅さんまで」

 

 ネームレスの前に降り立った六波羅の肩には意識を失った理事長が担がれていた。

 その後ろには、長い鬣のようなものを伸ばした龍にまたがったリュウコもいる。

 二人共、その表情は暗かった。

 

「……どうして」

 

 ネームレスは彼女達を見て、怨嗟のように吐き出す。

 

「どうしてもっと早く来なかった! アンタ達がいれば、もしかしたら……!」

「無理だな」

 

 六波羅は冷酷にそう切り捨てる。

 

「あそこで無駄に頭数を増やしたところで意味がねェ。それに理事長を回収するのが優先だ」

「君達で無理なら、私が一人追加されたところで……ね」

「それはっ……でも……!」

「お前の気持ちも良く理解できるがァ……絶望よりも先にやることがあるんじゃねェか」

 

 六波羅はそう言って背後の銀の光を親指でさす。

 

「……成程、考えたね求道者」

 

 その光景を見て、ルシエラは悲痛な面持ちながらも納得したように頷いた。

 やがて銀の光は収まっていったが、全てが消え去ったわけではない。

 

「どうやら、自身の銘のエネルギーを使って一時的に特殊な空間を形成したようだ」

 

 爆発の中心にあった銀の光は収まる事は無く、半球状でその場に固定されている。

 それはまるで天上の意思を封じ込めているようだった。

 

「ソルシエラが無策で自爆するかよ。あいつはきちんと仕事をしたんだ」

『リーダー……』

 

 燃え尽きることなく地球へと墜ちた銀の星のように輝くそれは、辺りに不可思議な磁場を形成し、付近の岩や砂を巻き上げている。

 

「いくら天上の意思と言えども、あれだけ強固な壁ならばすぐには破れないだろう。求道者は、私達の為に時間を稼いでくれたんだ」

「求道者……また私を置いて勝手な事を……! くそ、やってやるよ!」

 

 ラッカは歯を食いしばり顔を上げる。

 銀の黄昏の戦士にとって、離別と喪失は慣れ親しんでしまったものだ。

 それが長い時を経てようやく再会した友人との早すぎる別れであっても、である。

 

「さて、それでは彼女がくれた時間を有意義に使うとしよう。今からは一分でも惜しい。多重提唱空間で有効なプランを練るとしよう。データは十分に手に入った」

 

 博士はそう言うと、真っ先に銀の光から背を向ける。

 それが博士なりの彼女への手向けであった。

 意外にも、それに続いたのはラッカである。

 

「……私も、一旦フェクトムに戻ろうかな。こんな形にはなったけど、最終決戦の前にあいつらの顔を見ておきたい。そして、次こそ奴を討つ」

 

 それだけ言い残して、彼女はその場から跳躍と共に消え去った。

 ここで悲しむ暇などある筈もないとでも言いたげに、一人、また一人と戦場から姿を消す。

 

「俺とリュウコも、一旦戻る。ここで伸びてるうちの(かしら)をどうにかしねえとなァ。余裕ぶっていっつもふんぞり返っている癖によォ……」

「ボロボロだね、理事長……」

 

 バルティウスに乗り、二人も空の向こうへと消えていく。

 残されたのはルシエラだけであった。

 

「……さて、ここまでお膳立てをされては今度こそ勝たなければいけないね。牙塔トウラク」

 

 振り返り、戦友となった者の名を呼ぶ。

 返事は鋭く輝いた眼光と共にもたらされた。

 

「『わかっている。必ず勝とう』」

 

 トウラクは刀を握り、強く頷く。

 神と修羅を束ねたこの一刀に敗北は許されない。

 星の輝きに誓ってでも、彼はこの戦いに勝たなければならないのだ。

 

 そして、最後に一人残された者は。

 

「『ネームレス、君はどうする』」

「……戻ってくるって、言った」

 

 微かで細い希望の糸に縋るように、ネームレスは掠れる声で呟く。

 今にも崩れ落ちそうで、声を上げて泣いてしまいそうで。

 

 かつての彼女だったらそうしていただろう。

 しかし、今は違った。

 

「なら、あの子が戻ってきた時に、失望されないように頑張らないと……! 私が、今度こそ!」

「『ああ、そうだね』」

 

 それは楔であった。

 ネームレスとトウラクが、自暴自棄にならないように。

 そして無理やりにでも銀の黄昏と足並みを合わせられるようにとソルシエラが最期に与えた偽りの希望。

 

「『この戦いは、皆で勝つんだ』」

「待っててね、ソルシエラ……!」

 

 しかり、それに縋らざるを得ないと知っていても、トウラクとネームレスはその希望を胸に前を向く。

 その姿を見て、ルシエラは何の意味もないとしてもこう告げた。

 

「私も、彼女が生きていると信じているよ」

 

 

 

 

 

 

 決まったぞ! ソルシエラダイナマイト!

 あれは危険すぎてかつて封印した技だが、やむを得なかったんだ!

 

『見事な爆発四散だったねぇ』

『おぉ、身体は痛くないだろうか……』

 

 大丈夫だよカメ君!

 むしろ調子が良いくらいだ。

 

『人間の発言とは思えませんね……』

『主殿を人間にカテゴライズしているの、たぶんテム子だけじゃ』

『えっ』

 

 いやだなぁ、俺は人間だよ。

 ちょっとばかり特殊な臓器を持っていて、好きに自爆できるだけの、ね。

 

『そんな人間いないのじゃ』

 

 で、ここからどうするの?

 俺はこれより先を聞かされていないんだけど。

 というか、ここは……鏡界?

 自爆すると、鏡界にリスポーンするの?

 

『おぉ、私がいたいのいたいの飛んでいけシステムにより、マイロードを鏡界に飛ばしたのだ……。これこそが、作戦の肝である』

 

 空を極彩色が覆い、地面は巨大なグミが幾重にも組み合わさってできたように不思議な感覚である。

 遥か遠くから感じる美少女エネルギーは、ガーデナーちゃんのものだろうか。

 

 うん、どうやら本当に鏡界のようだ。

 

『あの超越者系コンテンツは、私達が死んで分解されそのエネルギーが鏡界に戻ったと思っているだろう。爆発型直帰だとは思わずね』

 

 そりゃ誰も思わんて。

 

「――というわけで、これからが本番だ」

「あっ、0号!」

 

 俺の前に、見目麗しい瓜二つの美少女が姿を現す。

 それと同時に、星天形態が解除され俺はいつものゴスロリ衣装に戻った。

 

「急に出てきてどうしたの?」

「おぉ……私もいるぞ」

「カメ君! 久しぶりの和ロリじゃないか!」

 

 ぬっと地面から生えてきた和ロリに、思わずほっこり。

 地面から和ロリが生える季節か。

 ……もう、秋が来るなぁ。

 

『主殿の季節を感じるタイミングがおかしいのじゃ』

『おかしいのそれだけじゃないですよね? なんですかあの幼女は。天使が幼女になる意味あるんですか?』

『その理屈だと我もテム子も異常になるぞ』

『……』

 

 カメ君は、手毬を両手で持ちながら俺を見上げる。

 

「マイロード、これより私と星詠みの杖は別行動をする」

「えっ」

「では、今回の作戦を発表しようねぇ」

 

 星詠みの杖君はわざとらしい咳払いをして、こう続けた。

 

「天上の意思が留守の間に、エネルギー全部奪っちゃおう作戦!」

「かしこい」

『賢いですか?』

『主殿が賢いって言ってるなら賢いのじゃ』

 

「天上の意思は今、あの世界に顕現している。腕だけでも現れてしまった以上、そちらに集中しなければならない。そうでなければあの世界を壊してしまうからな。破壊は天上の意思の望むところではない」

「相棒、私達に足りないのはエネルギーだ。それさえ揃えば、必ず勝てる。だから、三人に別れて同時にエネルギーを吸収。共鳴現象を起こし、再び星天形態になるんだ」

「成程! この期に及んでやることがエナジードレインとか、流石はミステリアス美少女だぁ!」

『ミステリアス美少女? でっかい寄生虫では?』

『テム子は恐れ知らずじゃなぁ……』

「テム子、お前は後でおみみスペシャルの刑な^^」

『えっ』

『哀れじゃ』

 

 正攻法ではなく、裏を突いてクールに勝利。

 かなり俺好みである。ちょっと敵っぽい事に目を瞑れば、完璧だ。

 

「というわけで、早速失礼するよ^^」

「え、結構離れる感じ?」

「当然だ。同じ場所から吸収するよりも、離れた方が効率が良いだろう」

「おぉ……心配するなマイロード」

「星詠みの杖君、カメ君……!」

 

 二人は強い美少女を感じさせる笑みで頷く。

 

「エネルギーを吸収している間、きっと天使がわんさか襲ってくるだろうから、頑張ってくれ。私とカメは大丈夫だが、君はうっかりがあるからねぇ」

「え」

「というわけで、テム子」

『な、なんですか』

「本体はこっちにあるだろお前。今からここに徒歩で来い」

『ぱ、パワハラ……』

「赫夜牟よ、しっかりとマイロードを守るのだぞ……。もしもの時は、戸棚にしまってあるカメさんラッパを吹くと良い。小規模のカメさんエマージェンシートルネードが起こせる」

『わかったのじゃ!』

 

 二人は伝えるべきことは全て伝えたという風に、頷き合う。

 そして、それぞれが別の方向へと歩き始めた。

 

「星詠みの杖君、カメ君! ……無事に帰ってきてくれ!」

「……ああ」

「おぉ、当然だ」

 

 やがて星詠みの杖君は黒い羽根を散らし姿を消し、カメ君は地面にとっぷりと沈む。

 二人共……。

 

『まあ、脳内でずっと会話はするんだけどねぇ』

『おぉいつでもお話だマイロード』

 

 なーんだ! よかった!

 

『おうさっさと来いテム子^^ 相棒を任せるんだから、毛一つ傷つけるなよ?』

『今、向かってますから待っててください!』

 

 よーし、それじゃあ皆行くぞ!

 これより『神の居ぬ間に作戦』を開始する!

 

『『『応ッ!』』』

『ぜぇっ、ぜぇっ……あ、これ転移すればよかったんだ……』

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