【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第481話 天の光は全て美少女であるというのが今の学者たちの通説

 それは語られることがない神話である。

 全てを束ねた一人による、神たる創造主への挑戦。

 

 最新の神話とも言うべき戦いは、個人同士の争いとして片付けるには規模が大きすぎた。

 

「剣士、お前ももはや修正対象だ」

「『ならやってみせろ』」

 

 両者、その姿を互いに捉えるだけで数千の死を一瞬にしてもたらした。

 プロセスは違えど、出力される答えは等しく同じ。

 

【息絶えよ】

【一振り】

 

 世界へと放たれた言葉が絶対の理としてトウラクに襲い掛かるが、それは同じく世界の根幹へと至った一刀により切り裂かれた。

 概念である超越命令すらも今のトウラクからすれば容易く斬れる対象に過ぎない。

 

「『その程度か』」

 

 白亜の世界で、溶け込むように白い太刀を構えてトウラクは踏み出した。

 瞬間、彼の背後にあった無限の鞘の螺旋のうち数本が光を放つ。

 それは彼の目の前に飛来すると、ひとりでに刃を抜き放ち、追従を始める。

 

【銘、刻印。六振り】

 

 鞘に銘が刻み込まれ、世界を救う条件を満たした一刀が同時に六本完成する。

 それらは銘により各々が力を解放し、トウラクの一振りに合わせて放たれた。

 

 もはや彼は全ての刀を振るう必要はない。

 一度、剣を振り下ろすだけでも天上の意思の四肢を同時に切り落とし、首を断ち、そして心臓を穿つことが出来た。

 

「『どうした。お得意の命令で止めてみせろ』」

「その必要はない」

 

 切り離された首はなんてことの無いようにそう答えると、すぐにその下に続く胴体を形成した。

 世界の全てである肉体に、死はあり得ない。

 夢幻の杖の姿を模ったのは、彼への挑発に他ならなかった。

 

 意味のない行動であると示すように、天上の意思は嗤う。

 心がなくとも、そうすればトウラクの精神を揺さぶれると学習したからだ。

 

「余は世界だ。故に余が死ねば貴様も死ぬ。であれば、貴様が死なぬ限りは――」

 

 瞬間世界に突如として渦がいくつも形成される。

 この場に博士やミユメがいれば、それが全ての魔法陣の根源であり極致であるとすぐに看破しただろう。

 

「余に死はあり得ない」

 

 天上の意思が頭上に生み出した渦。

 それは、彼女が認識する全てを形成する根本のエネルギーそのものを放つシンプルな射出装置であった。

 

「消えぬ光があるという事をその小さな頭蓋に刻むと良い」

 

 極彩色のエネルギーが渦より放たれる。

 放たれたその瞬間こそただのエネルギーであったそれは、自在に形を変えトウラクを殺すのに適したものへと変わっていく。

 

 エネルギーは雄々しく吠えたて口を広げる龍の頭へと変化した。

 無数の龍は、銘を喰らうものとしてその瞬間に作り出されトウラクへと牙を剥く。

 

「『……確かに、消えない光は存在する。だが、それはお前ではない』」

 

 トウラクは龍の頭を飛び越え、刀で受け流し、銘の力で瞬時にその場から消え去り次々と回避していく。

 その移動に乗じて、彼の背後で再びいくつかの鞘に銘が刻み込まれ、抜き放たれた。

 

【銘、刻印。十振り】

 

 凄まじい勢いで飛び出した刀が勇猛果敢に龍の首を落としていく。

 十本の刀は持ち主がいなくとも龍と互角に戦いを繰り広げていた。

 一本の刀が首を落とせば、その刃が別の龍により噛み砕かれる。

 砕かれた刃は無数の小さな刀へと変化し、最後にその龍を打倒する。

 

 一進一退の龍と刀の攻防。

 それは、両者が全て同時に崩壊することで全くの引き分けという形に終わった。

 

 しかし天上の意思にとってそれは一つの答えを意味している。

 

「この程度で互角か。その束ねた一刀にも限界があるだろう。余はこのまま数千、数万……いいや、数えるのも馬鹿らしくなる程に永劫の時を戦っても良い。……だが貴様の精神は持たないだろうなぁ」

 

 同格と言えるほどの力を手に入れたトウラクにも決して変えられない事がある。

 それは彼自身の精神であった。

 

「『いらない心配だ。その前にお前を切り伏せるのだから』」

「切り伏せる……切り伏せるか」

 

 天上の意思の思考はプログラムに限りなく近い。

 故にこの戦いの果てがわかっていた。

 

「3度」

「『……何?』」

「3度宇宙が生まれ、そして崩壊した後。貴様の精神もまた擦り切れただの力の器となるだろう」

 

 それは予言であり、未来を決定づける言葉だった。

 

「その威勢は認めよう。しかし、造物である以上限界がある」

 

 トウラクの絶対の勝利条件は天上の意思を殺す事。

 決して妥協は許されない。

 

 対して天上の意思は違った。

 トウラクを自ら殺さずとも、待てばいいのだ。

 その身は不滅である故に、天上の意思はトウラクのやろうとしている荒唐無稽な絵空事をただ眺めているだけでいい。

 

 最果てで勝利するのは必ず天上の意思なのだから。

 

「大人しく修正を受け入れよ。あるいは、その身を我にゆだね新たな裁定者として迎えてやっても良い」

「『天使の真似事をしろと?』」

「真似事ではない。正しく、そうなのだ。お前が自身の目でその文明が存続するべきかどうかを選定せよ。この条件を受け入れるならば、貴様の世界は褒美として見逃してやっても良い」

 

 天上の意思を相手に世界の平和を約束させたことは、結果としてはあまりにも大きい。

 しかし、トウラク達が求めるのはその先にあるのだ。

 

「『断る』」

「ほう、理由を聞こう。愚かな剣士よ」

 

 彼は刀を腰だめに構え、居合の姿勢をとる。

 その瞬間、彼の背後で再び数本の鞘に銘が刻まれた。

 

【銘、刻印。十三振り】

 

 鞘は輝きトウラクの傍に浮かぶと、ゆっくりと刃を解き放つ。

 

「『僕達の世界は元から僕達のものだ。お前にわざわざ見逃してもらう程小さな存在ではない。最初から、お前の助けなんかいらなかったんだ』」

「はは、よくほざく」

 

 天上の意思は興味深そうに笑みを浮かべながら、再び渦を生み出す。

 本来逃げ回っていれば良い彼女がそこまでしてトウラクと戦う理由は本来存在しない。

 彼が幾星霜の果てに朽ち果てるという演算結果が出た以上、もう彼女に戦う理由はない。

 それでも戦うのは天上の意思としての矜持。

 しかし、そもそもの話――。

 

「余は今、感情を抱いているのか?」

 

 矜持などという概念は天上の意思にとってイレギュラーであり、この戦いの歪であった。

 トウラクは決してその隙を見逃さない。

 

「一振り」

 

 トウラクが勢いよく飛び出す。

 彼の一刀は今、十三の銘として同時に天上の意思に襲い掛かる。

 

 天上の意思は感情に困惑しながらも冷静に、渦よりそれぞれに適した力を生成し放った。

 

「感情に類するものを刻み込む……博愛の系統か? 奇妙な銘を使ったものだな」

「『僕はそんな事をしていない』」

「何?」

「『天上の意思、一つ謝罪をしよう。僕は今に至るまで全力を出していない』」

 

 トウラクは天上の意思へと迫り、刀を振りかざす。

 その剣撃は強力なエネルギーとなり天上の意思めがけて放たれ――その横をすり抜けた。

 

「『正確には、出せなかったと言うべきか。常に千を超える銘であの子を探していたのだから』」

 

 この戦いの中の勝利条件は天上の意思の打倒。

 であるならば、トウラク一人では不可能であろう。

 それは彼が何よりも良く理解していた。

 

 故に彼が万能となってまず初めにしたことは、無限に続く鏡界の世界でその力を捉えることである。

 爆発により自身と天上の意思を紐づけ、鏡界を漂いながらも少しずつ干渉を続けていたもう一人の人類代表。

 その手を取るために、トウラクはこの瞬間まで戦っていたのだ。

 

「何を言って――っ!?」

 

 通り抜けた斬撃は、何かを破壊する音と共に唐突に世界に穴をあけた。

 その向こうには鏡界が広がり、色鮮やかな空が見える。

 

「一振り」

 

 十三の剣の力を借り、トウラクは一気にその穴へと向かった。

 同時に拡張領域から取り出したのは、学園都市が総力を決して作り上げた最先端の赤いダイブギアである。

 

 彼はそれを思い切り穴へと投げた。

 そしてその名を叫ぶ。

 

「『ソルシエラ! 君を迎えに来たッ!』」

 

 瞬間、ダイブギアが点滅し起動する。

 最先端のそれは多くの機能を搭載しているが、何よりも重要なのはそれが存在を固定する目的で開発されたことだ。

 ただ一度、とある少女を助け出すためにそのダイブギアは機能を発揮する。

 

 変化はすぐに訪れた。

 ダイブギアの輪は空洞であった筈が、いつの間にか少女の手が形成されている。

 

 トウラクはその手を見ると、迷わず握り一気に引き寄せた。

 その瞬間、鏡界から世界の根源に招待された彼女は不定形のエネルギーにより途端に実体を持つ。

 

 手を引かれトウラクの胸元に抱き寄せられるように、蒼銀の髪を靡かせてその少女――ソルシエラはここに復活を果たした。

 

「『ごめん、遅くなった』」

「上出来よ」

 

 息もかかる程の距離で短く言葉を交わした後、ソルシエラはトウラクの胸を軽く押して離れる。

 そして呆れたように笑いながら、髪を手で払った。

 

「ふふっ、私を抱き寄せるだなんて。ミハヤが見たらどう思うかしら」

「『あっ……それは必要だったんだよ! 僕が手を掴み鏡界から引き寄せるという工程が――』」

「冗談よ、生真面目ね。……さて」

 

 彼女をよく知る者であれば見慣れたゴシック調のドレスは、僅かに変化を遂げていた。

 銀糸ではなく金糸で刺繍が為され、見慣れた中に確かに彼女が変わったのだという変化の証がある。

 控えめなフリルもまた、眩く輝く黄金に変化を遂げ、まるで煌々と輝く星の様に存在感を示していた。

 黒と金が調和するその姿は、まるで輝く星々をそのまま切り取ったかのような壮大な美しさが宿っている。

 

「感情のある鮮やかな世界にようこそ、神様」

「……イレギュラー。余に感情を植え付けたのは貴様か」

「派手に死んで見せたのだから、それくらいのリターンはないと割に合わないでしょう?」

 

 ソルシエラは大鎌を構えると、天上の意思へと向けた。

 その大鎌に合わせるように、トウラクもまた刀の切っ先を天上の意思へと向ける。

 

 ソルシエラは一度だけ視線を交わすと、まるで世界の決戦など忘れたかのように穏やかに笑い宣言した。

 

「星々の輝きを、見せてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これが噂の、原作主人公様と一緒に最終決戦が体験できるアトラクションかぁ。数か月並んだ甲斐があったなぁ! 興奮するなぁ!』

『よしよし。では折を見て天上の意思へと干渉を始めようねぇ。既に感情は埋め込んだし、後はテム子の時みたいにパパッといけるだろ^^』

『おぉ、細かながらも確かな変化が美しいぞマイロード!』

『いくのじゃー! 大将首じゃー!』

『変なプロセスと理屈で銀の黄昏の悲願が達成されようとしている……凄く複雑です……』

 

 

 

 

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