【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第482話 美少女の全ては幸福でなくてはならない

 全てが白で染まった世界の根源に、新たな輝きが生まれる。

 それは夜空よりも黒く、そして朝日よりも眩い黄金の星。

 

 星が輝くならば、彼女達に敗北などあるだろうか。

 それはもはや問いではなく、世界に刻み込まれた新たな理だろう。

 

「『ソルシエラ、今の僕は世界と同化している。周りに何もなくて驚いただろうが――』」

「大丈夫よ、全て把握しているわ。……貴方達が私を助けるために色々としてくれたこともね」

 

 黒と白の線が螺旋を描き時には交差して天上の意思へと迫る。

 両者ともにその顔は決戦とは思えない程に明るい物であった。

 まるで、もはや天上の意思など障害ではないとでも言っているかのようだ。

 

「『一振り』」

 

 天上の意思の前で二手に別れたトウラクは一刀を構える。

 その背後には十三の剣が煌めき、主の抜刀と共に解き放たれた。

 

「余を相手にここまで食い下がった事は褒めてやる。だが、余が負けるなどあり得ない」

 

【墜ちよ】

 

 超越命令により太刀が次々と落下していく。

 本来ならば、それで終わりだ。

 しかし、落下した太刀は下方に生み出された水面のような何かに飲み込まれ、いくつも波紋を広げた。

 

 世界の根源は、純粋かつ単純な力で満たされていなければならない。

 しかし天上の意思の視線の先に広がっているのは、深い海だった。

 その奥深くに見えた影に天上の意思は驚愕する。

 

「……っ!? 何故、裁定の天使が根源に!?」

「さあ、なんでかしらね? 一緒に考えてあげようかしら」

 

 声にハッと顔を上げれば、そこには空があった。

 満天の星空の中央、少女が大鎌を掲げている。

 否、その輝きは星ではなかった。

 星と見間違うほどに煌々とそして誇らしげに輝くそれは、人の愛である。

 

「理想……いや、博愛の銘を更に昇華させて全ての世界を繋げたのか……!? 貴様、そんな事を造物の分際でして良い訳がないだろう!」

「それを決めるのは貴女ではないわ、可愛いお嬢さん」

 

 天の星々が煌めき、無数の光線が降り注ぐ。

 それら一つ一つが人々の愛を元にした純粋な砲撃であった。

 星一つを軽々と砕く威力のそれが天上の意思へと一点に集中して向かうと同時に、水面から再び十三の刃が飛び出す。

 上からは光が、下からは刃が天上の意思へと迫り――。

 

「『一振り』」

 

 一閃、どの攻撃が届くよりも早くトウラクの刀が天上の意思の胴を切り離した。

 

「この程度で余が負ける訳ないと言っているだろう……!」

 

 分かたれた下半身を捨て置き、天上の意思が再生を始めると同時にその体は十三の剣撃により更に分割され、星の輝きに飲まれて煌めく爆発を起こした。

 

「『これで倒れてくれれば良いけど』」

「あら、せっかく相応しい衣装を用意したのだからもっと楽しみたいのだけれど」

 

 ソルシエラはそう言って指を鳴らす。

 その瞬間、爆発の中に蒼銀の鎖が飛び込み、何かを引きずり出す。

 それは肉体の再生を終えようとしている天上の意思だった。

 

「貴様らは、もはやイレギュラーなどという生易しい存在ではない。余のシステムを脅かす敵だ!」

 

 鎖を無理矢理引きちぎり、天上の意思は渦を大量に展開する。

 それは夜空に輝く星に対抗して無数に生み出されたのだが、トウラクとソルシエラはいたって余裕であった。

 

「『ようやく敵と認めたのか。遅いな』」

「まあ、認めたところで私とトウラクには敵わないでしょうけど」

「『……』」

「どうかしたの?」

「『君に、そこまで素直に認められるとむず痒いな』」

「正当な評価をしたまでよ。そんな事で照れるなんて、貴方はまだ精神が未熟なのね」

 

 ソルシエラはそう言って今まさに砲撃が放たれた渦へと真っ先に飛び出した。

 その珍しい行動にあっけにとられたトウラクはコンマ数秒ほど遅れて、同じく飛び出す。

 そして砲撃ではなくソルシエラの方を見て言った。

 

「『もしかして照れ隠しで飛び出したのか?』」

「……その無神経さは、ルトラとトウラクどっち由来かしら」

 

 呆れた様子で吐き捨てたソルシエラは大鎌を振るう。

 すると軌跡をなぞって鏡界が開かれ、放たれた砲撃がその中へと吸い込まれていった。

 それは水面から激しい水飛沫と共に飛び出すと天上の意思へとそのまま返される。

 

「小癪な」

 

 天上の意思はその向きを力ずくで捻じ曲げ、再びソルシエラへと放った。

 が、水面から飛び出した巨大なウミガメがその甲羅で容易く砲撃を弾き、霧散させる。

 

 再び大きな水飛沫を上げて位相の海へと潜っていくその姿を天上の意思は忌々し気に睨みつけた。

 

「反逆者め……! この戦いが終わった後はあいつの処分だな」

「あら駄目よ。アレは私のかわいいペットなのだから」

「『いつの間に天使を飼ったんだ君は』」

「良いでしょう? とっても良い子なのよ」

「ふざけるなァ! 貴様は悉く余を愚弄するのだな」

 

 自身の攻撃を使いである天使に防御させるなど、天上の意思からしてみれば挑発以外の何物でもない。

 もはや、天上の意思に傲慢とも言える余裕はなかった。

 

「貴様らを消去する」

「さっきから口ばかり。貴女、神様向いていないんじゃないのかしら」

 

 一瞬の視線の交錯の後、二人は同時に動き出した。

 

【砕けろ】

【砕けなさい】

 

 二つの超越命令が同時に世界に対して下される。

 それらは対象へと行使されようとした後に、両者の圧により無効にされた。

 

「やはりお前もこの力が使えるのか」

「この程度なら、誰でも使えるわね。例えば――」

 

 ソルシエラは指を鳴らす。

 

宇宙(そら)へ】

 

 瞬間、三人は世界の根源の上に広がっている星空の中にいた。

 見渡す限りが全て星で満たされたそれは、ソルシエラが作り出した人間の可能性を可視化した特殊な空間である。

 

「あんな場所じゃ味気ないから、こっちで遊びましょう?」

「冗談ではない。……こうなれば、仕方が無いな」

 

 天上の意思は冷徹な目を二人へと向ける。

 そして、宣言した。

 

「貴様らだけではなく、存在するものを一切合切リセットしよう。数多の世界を全てやり直す!」

「『僕達を消すためにそこまでするか』」

「もうなりふり構っていられないのね」

「後悔する間もなく消えるが良い」

 

 あらゆる事象の初期化。

 それは、天上の意思だけが持つ最終決定権である。

 それを行えばトウラク達の世界はおろか、裁定を終えた世界やこれから裁定を迎える世界もまとめて全てを消し飛ばす究極にして終焉の一手。

 

 天上の意思はそれを使う事が最も合理的であると判断し、迷わずそのシステムを起動した。

 

【世界よ、閉じ【美少女の全ては幸福でなくてはならない】……は?】

 

 最上位の超越命令に割り込むようにして刻み込まれたそれに、天上の意思の思考は一時的に停止した。

 そして信じられないとでも言いたげにソルシエラを見る。

 自分の認識が間違っていなければ、確かにふざけた命令はこの少女により行使された筈だ。

 

「貴様……今、なにを刻み込んだ?」

「人の可能性よ」

「ふざけるな! 今のは一体なんだ!?」

「『様子がおかしいな。どうしたんだ』」

 

 トウラクは何も気が付いていないのか、刀を構えたまま訝し気に天上の意思を警戒している。

 その隣でソルシエラは静かに笑みを浮かべていた。

 

「大方、私にそのリセットとやらに割り込まれたのが悔しいのでしょう」

「違う! そうではない! だってお前は先ほど、超越命令で美しょ「^^」……っぐっ!?」

 

 突如、視界がスパークし、天上の意思は頭を押さえながらよろめく。

 その瞬間を見逃すトウラクとソルシエラではない。

 

「トウラク、今よ」

「『わかった。一振り』」

 

 トウラクが飛び出し、刀を天上の意思へと振るう。

 その時天上の意思は確かに見た。 

 

 トウラクの背後、何もせず佇んで「^^」と笑っているソルシエラの姿を。

 それはこの瞬間に天上の意思の中に初めて恐怖を刻み込んだ。

 

「ひぃ」

「『驚いたな。お前も死を恐れるのか』」

「そういう事では――」

 

 答える間もなく天上の意思の首が飛んだ。

 しかし、やはりそれで天上の意思が死ぬことはなかった。

 

 首から下が形成され、天上の意思は二人を見下ろしながら改めて叫ぶ。

 

「なんなのだ! イレギュラーという規模では収まらぬ。敵と呼ぶにはおぞましすぎる。お前は一体……!」

「そう。今、初めて見るのね」

 

 ソルシエラは天上の意思を見て微笑む。

 

「これが貴女が造物と吐き捨てた人間の持つ可能性。裁定なんかでは測れない輝きよ……!」

「くっ、まるで理解が出来ない」

「『そうだろう。そうして見下ろしてばかりのお前では』」

「黙れ!」

 

 天上の意思はトウラクを黙らせようと渦からエネルギーを放つ。

 しかしそれはソルシエラが四方の星より放った砲撃により相殺された。

 

「っ、駄目だ。早くなんとかしなければ」

「『まだわからないのか、天上の意思。その考え自体が間違っているのだ』」

「くっ……」

 

 植え付けられた感情に天上の意思は振り回されていた。

 ソルシエラへと問いかければ、何故かトウラクが答える。

 それも、彼は色々と気が付いていないのか話が絶妙に噛み合っていない。

 

 それが何よりも恐ろしかった。

 

「クソっ、余は何を相手にしている」

「あら、諦めが悪い造物は初めてなのかしら」

 

 ソルシエラはそう言ってトウラクの隣に並び立つ。

 そして天上の意思を見つめながら、呟いた。

 

「あれを根本から殺すのは不可能ね。死ねば、世界そのものがなくなるわ」

「『なら、どうする』」

「貴方が天上の意思から権能だけを切断して。そうしたら、干渉の力で私がその権能を完全なシステムに作り替える。天上の意思なんてふざけた存在ではなく、その世界に生きる人々が自らの手で未来を選べるように」

「『ああ、わかった。それでいこう』」

 

 トウラクは頷き、背後の鞘に全ての銘を刻む。

 この戦いを終わらせるために。

 

【銘、刻印。収束。一振り】

 

 応えるように、ソルシエラも大鎌を構える。

 すると、辺りの星々が共鳴するように輝き始めた。

 

 星々から編み込まれたレースのような細長い魔法式がソルシエラの持つ大鎌へと次々接続される。

 ソルシエラはその柄を天上の意思へと向け、引き金に指を添えた。

 

「っ、人々の意思があんな存在と共鳴をしているのか……!?」

「――確かに、私はちっぽけな存在よ。でも……それでも私は、私達は」

 

 ソルシエラはトウラクへと視線をやり、それから自信満々に宣言をした。

 

「生きたいと願ったのよ。トウラク、お願い」

「『ああ!』」

 

 トウラクは全ての銘を束ねた一刀と共に天上の意思へと向かう。

 同時にソルシエラの向けた銃口の先には大量の魔法陣が展開され、ロングバレルを形成した。

 輝きがソルシエラへと集い、大鎌が生を求めるように脈動する。

 

「『天上の意思、お前にはその永遠に近い一生をかけてもわからないだろう! これが人間なんだ』」

「余はそのように人間を作った覚えはない!」

 

 渦が天上の意思の背後で次々と生み出される。

 しかしそのエネルギーが放たれるよりも早く、トウラクの一閃は届いた。

 

「『神羅一振り』」

 

 無限に存在する銘が束ねられた一撃は、世界の根幹を管理するシステムを切り離すには十分だった。

 天上の意思の体にはなんの変化もない。

 しかし、確かに権能の全てが切り離されたのだ。

 

「余の力が……!?」

 

 体の中から消え始めた力に気が付き、天上の意思は即座にその権能をかき集めようと意識を集中させる。

 好機はここにあった。

 

「『今だ、ソルシエラ!』」

「ありがとう、トウラク」

 

 彼女は遂に、その引き金を引いた。

 その瞬間世界が光で満たされる。

 

 それは全て、ソルシエラの放つ砲撃がもたらした輝きだった。

 眩い輝きは全てを飲み込み、そして天上の意思へと迫る。

 

「っ、馬鹿な。余が、余が光に……!」

 

 そうして天上の意思を眩い光が包み込み――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『上位存在系美少女コンテンツ確保ー!』 

『意外と弱かったねぇ』

『おぉ、元上司故に少し気まずいぞ……』

『圧勝じゃったな!』

『世界が救われたならもういいです! わぁい! (思考放棄)』 

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