【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第490話 裏方ムカデは妥協しない

 この逃走劇にやがて唐突な終わりが来ることを、ソルシエラ本人が良く知っていた。

 故に、彼女はまっすぐに逃走するのではなく、もしもに備えて得物を求める。

 狭く薄暗いダクトを抜けた先、インストールされた記憶の通りそこにあったのは武器の保管庫だった。

 あるいは、武器の製造室だろうか。

 大鎌が機械に繋がれ、いくつも鎮座している。

 

「あった。これがあれば、もしもの時は戦える……!」

 

 ソルシエラはその中の一つへと手を伸ばそうとする。

 と、その時背後で大きな音が鳴った。

 

「ひゃっ!?」

 

 体を縮めて驚いた彼女は、弾かれたように後ろへと振り返る。

 と、そこには今まさにチューブやケーブルが外れたであろう大鎌が転がっていた。

 他の無機質な物とは違う、赤い甲殻のようなものを取り付けられたまるで生物のような大鎌だ。

 刃はのこぎりのような形状をしており、切り裂かれた者がどうなるかなど想像に容易いだろう。

 

「こっちの方が強そう……?」

 

 ソルシエラは恐る恐る赤い大鎌に近づく。

 そして、手を伸ばしたところで止まった。

 

「これ、勝手に盗んで良いのかな……」

 

 言葉にしびれを切らしたように、大鎌がかたりと独りでに揺れる。

 そして次の瞬間、ソルシエラの手の中へと飛び込んできた。

 

「うわあっ!?」

 

 手の中に収まった赤い大鎌は、訴えかけるように何度も脈動する。

 

「使って良いの……?」

 

 その問いかけに答えるように、風が大鎌より一度吹き付けソルシエラの前髪を揺らした。

 ソルシエラは大鎌を抱きしめ、額を当てる。

 

「ありがとう。それじゃあ、脱出の間よろしくね」

 

 言葉に呼応するように大鎌は真紅の腕輪へと形を変え、ソルシエラの腕に装着される。

 それを見て頷いたソルシエラは再びダクトの中へと戻っていく。

 そして、出口を目指して再び進みだした。

 

 その後ろを追いかけるムカデは依然として健在である。

 

『危うくカス武器を掴まされるところだったのじゃ。流石の無垢シエラと言えどもカス武器じゃと、他の偽シエラに負けるからの』

『ですが、流石にあの武器は強力すぎでは?』

『別に我の力で遠隔操作しているだけじゃ。加速と最高率の収束砲撃しか使えん』

『それが強力だと言っているのですが。……それに無垢シエラに特徴的な武器を持たせるなら、あの人に許可を貰わないと』

『真面目じゃのう。それじゃあ久方ぶりに、連絡してみるとするか』

 

 

 

 

 

 

 朝、根源の端から美少女が昇る頃に俺達は目覚める。

 美少女になった今の俺達でなければ眺めることが出来ないご来光だ。

 

 さ、皆で今日の目標を言おうね。

 

 新しい美少女コンテンツに出会えますように!

 

『相棒が淫乱どスケベダンジョンに入りますように^^』

『マイロードがすくすくと育ちますように』

『誰か助けてー! 余を解放してくれー!』

 

 もううるさいなぁ、天上君は。

 他二人を見習ったらどうだい?

 ……ごめん、そっちのエロ同人脳は見習わなくて良いや。

 

『最近、エチシエラお得詰め合わせパックを発売したよ^^ 売上週間ランキング1位だった^^』

 

 反面教師にしてくれ。

 こいつはもう手遅れなんだ。途中までは確かに手綱を握れていた筈なのに、今やアダルトコンテンツ製造機になってしまった。

 さて、じゃあそろそろ今日もいろんな位相世界のコンテンツを覗いていくとしよう。

 

『もうやめてくれ! 頭がっ……頭がおかしくなる……!』

『おぉ、前がおかしかっただけだぞ天上よ。むしろこれから正常になるのだ』

『なんで自分の造物にこんな事を言われなきゃならないのだ余は!』

 

 はいジタバタしない。

 次、ジタバタしたらちいちゃいちいちゃい幼女にしますからね。

 

『ひっ』

『おぉ!』

 

 えーと、前回は確か陰キャ美少女が巻き起こす勘違い曇らせ世界をジュルジュルしたんだったかな。

 その前は男の娘の現代怪異世界だったし……うーん、今回は久しぶりにストレートなほのぼの美少女四コマ世界に行くよ!

 

『おぉ……むむっ、マイロードよ。赫夜牟からカメさんテレフォンが発信された』

『天使の権能に奇妙な名前を付けるな!』

 

 おお、赫夜牟君か。

 じゃあ、繋げて貰おうかな。

 

『少し待っていてくれ』

 

 今の俺達は根源美少女コンテンツ弾丸ツアーをしているので、元の世界の事を知らない。

 予定では、今頃は無垢シエラがメインのコンテンツが生成されている筈だ。

 赫夜牟君の録画機能(後付け)でばっちり記録しているから、今から待ち遠しい。

 

『主殿ー!』

 

 あ、赫夜牟君! 久しぶり!

 元気だったかい? こっちは美少女だったよ!

 

『? まあ美少女なら良いって事じゃな! 主殿、実は無垢シエラのコンテンツで相談があるのじゃが……武器って我のやつでも良いかの……?』

 

 赫夜牟君の武器?

 うーむ。

 

『少し唐突すぎる気がするねぇ。無垢シエラと赫夜牟には何の関係もない。無意味な情報は考察勢に嫌われるだけだ』

『おぉ、しかし赫夜牟の事だから必要だと思ったのだろう?』

『そうなのじゃ。我とテム子は主殿達のように無垢シエラそのものを強化する術を持ち合わせていない。故に、コンテンツを成立させるために、必要だったのじゃ』

『ちなみに、後から情報を書き換えて赫夜牟の力を抽出しようとしていたという事にすることも可能です。今回の黒幕は完全にこちらで思考誘導済みですので』

 

 あ、テム子! 久しぶり!

 元気に美少女コンテンツしてた?

 

『ええ、はい(疲労)』

 

 そっかそっか。

 確か、計画ではその辺の悪い奴を捕まえて洗脳する予定だったけど、上手くいったんだね。

 

『はい。それが、元から丁度良く狂っていたので思考誘導も容易かったです。洗脳じゃないですからね。それと、その黒幕が何やら気になる事を……いえ、すみません。恐らくは気が触れた戯言でしょう』

『お前その癖直せって言ったよな^^』

『おぉ、思わせぶりは良くないぞ』

 

 まあまあ、本当に重要だったら言うだろう。

 よーし、赫夜牟君! その案は採用だ!

 無垢シエラにも特徴が欲しいと思っていたんだよ。

 赫夜牟の力を疑似的に再現できる武装……いいじゃないか。

 じゃあその辺は自由に作って良いよ!

 

『許可が下りました。さっさと戻りましょう先輩』

『テム子、何を焦っておる』

『ここにいるとコンテンツに侵されます』

『待て、余も連れて行け! これ以上は余が光になる! 光になっちゃう!』

 

 君は駄目だよ^^

 

『ひっ……それじゃあこれで失礼します後の事はまた追って報告するのでよろしくお願いいたしますさようなら!』

 

 矢継ぎ早にそう告げたテム子の気配が消える。

 赫夜牟君の声も聞こえなくなったし、コンテンツ制作に戻ったのだろう。

 

 うーん、楽しみだ。

 こっちも負けていられないな!

 

『相棒、TSループコンテンツの世界を発見した^^』

 

 で か し た。

 ではこれより、ほのぼの美少女四コマとTSループコンテンツの同時観測を行う!

 各自、柔軟にジュルジュルするように!

 

『『応っ!』』

『余が何か悪い事でもしたのか?』

 

 

 

 

 

 

 夜闇に包まれた廃ビル群は、昼間とはその雰囲気を一変させた。

 街灯もない街は、ビルの下が見えずまるで底なしの闇が広がっているようである。

 知らず知らずのうちに明かりを求めて空を見上げてしまうのも無理はない。

 

 が、それはあくまで普通の探索者の話である。

 

「うっわー、これ配信間に合うかなぁ」

「大丈夫でしょ。見たところ規則もないし、大したランクのダンジョンじゃない」

 

 二人はいたって冷静であった。

 迷うことなくビルから飛び降りた二人は、蛙達に受け止められる。

 そして改めて夜になった街を歩き出した。

 

「魔物もいないね」

「系統としては学園に使用されてるような改造されたダンジョンコアかな。そして、ここ全体を包んでいたというよりは、あのビルの屋上だけがここに繋がる入り口だったんだろうね。だから、あそこに行った人間はここに転移させられる」

「なんでそんな事を?」

「さあ。まだ情報が足りないね。少なくとも、私達を歓迎しているわけではなさそうだけど」

 

 と、その時である。

 遠くの方で何かが争う激しい音が響いた。

 

「おっと、向こうから手がかりをくれるみたいだ」

「行こう。リンカ。マーちゃんズお願い!」

「えっまさか、ばくは――」

 

 問いかけが終わる前に、リンカの背後で激しい爆発が起きる。

 それは決して彼女を焼くことはなく、勢いのみで彼女の背中を前へと押し出した。

 

「うわっ。やるならやるって言えよぉ!」

「これくらいで騒ぐなよ探索者だろ」

「私は諜報員なの!」

 

 爆発により器用にビルの間をすり抜け、クラム達は遂にその現場へと到着する。

 見ればそこでは、一人のソルシエラが複数体のソルシエラから逃げ回っている状況だった。

 

 

 

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