【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第504話 理想の星は止まらない

 ネームレスが移動した先で目にしたものは、想像を越えていた。

 

「な、な……」

 

 てっきりボロボロのクラムがそこには一人でいて、自分からの労いの言葉でも待っているのだろうと考えていた。

 あるいは存外楽勝で、自信満々のドヤ顔を見せつけてくれるだろうと。

 

 しかし、今ネームレスの目の前にいるのはクラムだけではなかった。

 

「け、けい……?」

 

 彼女が見間違うはずがない。

 蒼銀の髪に知性を感じさせる瞳。

 そしてすらっと伸びた手足と控えめで可愛らしい唇。

 

 その全てをネームレスは良く知っている。

 だからこそその姿を目視した瞬間にネームレスは駆け出していた。

 

「けいいぃぃぃぃぃ――わっぷ!?」

「ケイジャナイ」

 

 顔面に飛び込んできた人吞み蛙に視界を覆われ、ネームレスはみっともなく倒れる。

 それを予期していた人吞み蛙達は、すぐさまそれを下で受けとめ、そのままお腹の反発力で押し返した。

 

「暗いよー! ケイはどこー!?」

「まあ落ち着けよ(笑)」

 

 つい先ほどまでの自分の失態を華麗に忘れたクラムは、慌てるネームレスを前にして渾身のドヤ顔で指を鳴らす。

 すると人吞み蛙が空気を読んでネームレスの顔から剥がれ落ちた。

 

「っ、クラムどういうつもりだよ!」

「どうもこうも、お前が勘違いをしているからさ」

 

 クラムは隣の少女を大胆に抱き寄せ、それはそれは見せつけるようにして言った。

 

「この子はステラ。私達フェクトムの仲間だよ」

「よ、よろしくお願いします……」

「ステラ……うーん? あの時のケイに雰囲気が近いか」

 

 それはフェクトムの面々との決戦を繰り広げた当時の記憶の中のケイとよく似ていた。

 いつものような余裕そうな表情は一切なく、無垢で一生懸命で自分を助けようと必死だったあのケイだ。

 

「とりあえず、よろしく。私はネームレス。ネムトア、黒トア、なんでも好きに呼んでいいよ」

「わかったよ、よろしくねネムトアちゃん」

 

 ステラはその中から一番名前に近しい物を選び、控えめに名を呼んだ。

 その姿にケイの面影を見たネームレスは感極まる前に目線を逸らし、クラムを見る。

 こっちは何度見ようが別に感極まることはなさそうだ。

 

「当然、事情を聞かせてくれるよね」

「勿論。マーちゃんズが既にスライドを用意しているよ!」

「お前マーちゃんズを最近働かせすぎだぞ」

「大丈夫大丈夫! 私とマーちゃんズの仲だもんねぇ」

「ッスネ」

「ね?」

「私は忠告したからな」

 

 ネームレスは知っている。

 ミユメが既に人吞み蛙達をターゲットに何かをしようとしていることを。

 しかし別に教える義理もないし、出来ればクラムには情けなく泣いて欲しいので黙っている事にした。

 決してケイ似の少女を抱き寄せているからではない。

 

「ステラ、早速一ついいかな」

「う、うん」

「あんまりそいつに近づかない方が良いよ。良い奴ではあるんだけど、まともではないから」

「ッスネ」

「そんな訳ないだろぉ!」

 

 やいのやいのと騒ぎ始めたクラムへとさらに体を寄せて、ステラはネームレスへと微笑む。

 

「大丈夫だよ。クラムちゃんが優しくて強くて頼りになるのは、わかってるから。少し変だけど、それも私は魅力だと思うんだ」

「お、おうふ(しどろもどろ)」

「ヘタレ」

「こんなキモイ反応する奴には勿体ないくらいにいい子だなぁ」

 

 ネームレスはステラの純真さにうんうんと頷く。

 それから二人を先導するように歩き出した。

 

「じゃあ行こ。皆にも紹介しないと」

 

 明るく軽薄に、そして飄々と。

 けれどどうしてもその心には落胆もあった。

 

(ケイじゃなかったかぁ……)

 

 ステラという少女に対して悪感情は抱いていない。

 むしろ、新たな仲間として大歓迎である。

 しかし一度彼女にケイの姿を重ねてしまった故に、その落差は中々に堪えるものだった。

 

「……はぁ」

 

 誰にも気が付かれないようにため息をつくネームレスの視界に誰かが映る。

 それは今まさにネームレスへと追いついたトアの姿だった。

 

「ぜえっぜえっ――」

「おぉ、息上がってんなぁ」

「ひ、ひとりでいかないでよぉ……」

 

 フラフラの足どりでネームレスへと近づいたトアは、呼吸を整えるのもままならない様子だ。

 相変わらず持久力はない、と内心で思いながらネームレスは後ろを親指で指し示す。

 

「ん」

「え? ……え、ケイちゃん!?」

「違うってさ。けどさ」

 

 トアの頭に黒い人吞み蛙を乗せてネームレスは笑う。

 

「派手に歓迎してやろうぜ」

「……うんっ!」

 

 一切の混じり気の無い笑顔と共にトアは頷いた。

 それを見ると、やはり実感する。

 自分はもう、トアとは随分と違う人間らしい。

 

「とりあえず、馬鹿みたいな量のから揚げでも作ってやるかぁ。手伝えよ、私」

「勿論! ……でもその前に、ラーメン食べたいなぁ」

「それは確かに」

 

 相変わらずのその発言には共感できる辺り、やっぱり同じなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

『――以上で、私と先輩のコンテンツは終了となります。なお、文句は受け付けません』

『頑張ったのじゃ!』

 

 グッド……!

 そうか、無垢シエラはついに名前を貰ったんだね。

 ステラちゃん……ステラちゃんかぁ……!

 

『あ、もうコンテンツに組み込もうとしていますね! やめてください、あの子は貴女と違って純粋なんですから!』

『触手服着せた奴の台詞じゃないだろ。それにしても、随分とエッチな形態だったねぇ。素人どスケベ質問で悪いのだが、下着は触手か?』

 

 聞いたことのない質問ジャンルだなぁ。

 

『答えたくもありませんね!』

『沈黙は肯定だねぇ』

『じゃあハッキリ否定してあげましょうか!』

『のじゃ、テム子は元気じゃのぉ。カメ先生、我は今回頑張ったからシールを欲しいのじゃ!』

『おぉ……三枚あげるとしよう。それにしても、ステラは幼き命にはならなかったか。無垢ではあるがあれは幼き命ではない……少し残念だ』

 

 遠回しな言い方だけど、結局ロリを望んでいるだけだよねそれ。

 やれやれ相変わらず一番まともな俺がしっかりしないとこのチームは駄目だな!

 

 実際、今だって俺だけは真面目に戦っているしね!

 

「星の輝きと呼ぶには、あなたは少し歪ね」

 

 どこかの宇宙のどこかの星。

 テム子に渡された座標に「やあ^^」した俺は、目の前に居たよくわからない触手トカゲをボコボコにしていた。

 最初は威勢よく転移とかしてたのだが、それ俺も出来るし。舐めんなし。

 

 というわけで瞬殺だった。

 あんまり強くなかったなこいつ。ルシエラとかトウラク君の方がもっと強いぞ。

 もっと概念をいじくり回すとか、並行世界の銘を束ねるとかしないとやっていけないよ?

 この鏡界のルトラ時空の後日談とか、並大抵の敵じゃ務まらないって。

 

『ありがとうございます。私と先輩では場所は特定できても流石に遠すぎて……』

『このコンテンツは解決で終わりなのじゃ。だから、もう黒幕は用済みじゃ』

 

 その思い切りは良し!

 実際、こんなの放置しておいたら星詠みの杖君がエチエチジャンルに悪用しそうだしね。

 

『とても参考になりました^^』

 

 手遅れっすね、これ。

 で、これどうしようかな。

 

『おぉ……であれば幼き命にするのはどうだろうか』

 

 今はまだ調教中の子がいるから、流石に飼えないよカメ君。

 でも一応、先っちょだけ千切り取って、持って帰るか。

 

『おぉ……ではそれを培養して幼き命触手としてカスタマイズしよう』

 

 話聞いてた?

 勝手にいじらないで、戸棚の奥にしまっておいてね。

 

「その力、私が貰ってあげるわ」

 

 俺は触手の端っこを大鎌で切り落とす。

 そして残りは盛大に収束砲撃をぶっ放して星ごと消し炭に変えた。

 この光もいつか地球に届くのかな。

 

『ロマンチックだねぇ』

『そうですか?』

『おぉ、マイロードはロマンチストだな』

『そうですか?』

『主殿はロマンチストじゃな!』

『……うーん、先輩までそう言うならまあ。というか、天上の意思はどうしたんです? 前に来た時はコンテンツでグルグル巻きにされてましたけど』

 

 ああ、彼女なら今その脳髄に美少女を詰め込んでいるところだよ。

 じゃ根源に戻ろうか。

 ソルシエラはまだ現実世界に顕現できる時間が少ないからね。

 

『嘘ばっかりじゃないですか!』

 

 嘘じゃないよ。

 俺が信じるものが真実だからね。

 じゃ、帰る前にコンテンツ締めるよー。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 ソルシエラは少し寂し気に地球のある方向を見る。

 そこには漆黒の宇宙と無数の星々だけが広がり、見覚えのある青い星はない。

 

「…………またいつかって言ったものね」

 

 一人静かにそう呟き、彼女は虚空へと消えて行く。

 今だにソルシエラがこの世界に顕現できる時間は限られている。

 今回はこの場所が鏡界の綻びであったが故、例外的に顕現することが出来たが本来はまだ姿を現すことはできない。

 

 故に事が済んだ後、少女のその姿は跡形もなく消え去った。

 残ったのは星と怪物だったものの塵だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここ必要ですか?』

『必要じゃ』

『先輩がそう言うなら……』

 

 

 

 

 

 

 

 

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