【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第507話 完成された銘 1‐3

 フェクトム総合学園の中でもその部屋に入る為には特別な資格が必要である。

 Sランクを筆頭にデモンズギア使いや天才のみで構成された最強の中の最強の証。

 フェクトム生徒会。

 幾度も学園都市を救った英雄たちの朝は、新入生達とは違った。

 

 曰く、彼女達には通常の授業は必要なく全てが実戦仕様の特別カリキュラム。

 だからだろうか。フェクトム生徒会は、朝から全員で生徒会室に集まる事が多かった。 

 

 メカニックにより改造された生徒会室は、ダンジョンコアを使用した事により外から見えるよりもずっと広く、設備が充実している。

 いつの間にか持ち込まれた黄色と黒の冷蔵庫や焦げた案山子など、どう考えても普通の生徒会室にはないものばかりだ。

 

 そんな生徒会室に今日も変わらず集まった少女達は優雅に朝食中である。

 

「見ろ、ケイ。もやしと豚肉をこんなに朝から食べられるんだぞ! 戦領祭で勝ったから! お金がいっぱいだ!」

「うーん……マーちゃんズを改造するにはもっと根本のシステムが……」

「おいネームレス! 私の浅漬け取っただろお前ェ!」

「act6」

「あっ、こいつ無敵になりやがった!」

「もう、クラムったら私のあげますから」

「私のもあげます故。デモンズギアにお野菜は必要ありません故。お菓子とお肉だけで良いです故。……ミロク、なぜ私の皿に野菜を追加したのですか?」

「ふははは! シエル姉さんは雑魚だな。ボクは最強のデモンズギアだからお野菜なんて余裕「じゃあ、あげます故」ああっ、やめてよぉっ!」

「(言葉は不要とばかりに食すトア)」

 

 おそらく、優雅に食事中であった。

 

「皆、朝から元気なんですね」

「ええ。戦領戦で優勝したおかげで全てが好転しましたから。心配事がなくなり、先生もたまに顔を見せに来る。それにケイちゃんも帰ってきましたしね」

 

 ソファに隣同士に座り、ミロクは穏やかな笑顔でケイを見つめている。

 心から安らいでいるであろうことがとてもよく分かった。

 

「……もう三日目ですよ。会うたびにそれを言ってないですか?」

「ふふ、何度でも言います」

「そ、そうですか。……あのちなみに」

「はい?」

「一人で食べるという選択肢は……?」

「無いですね。はい、あーん」

「……あ、あーん」

 

 曰く、これは廊下で騒いだ罰であったらしい。

 天上の意思を相手に激戦を繰り広げたソルシエラも、先輩には敵わなかったようだ。

 いつものミステリアスな口調や態度はどこかへ消え、少し困り気味に敬語で対応する姿に、数名の心が掻き立てられている事など本人が知る由もない。

 

 今の彼女は差し出された玉子焼きを素直に食べる可愛い後輩だ。

 

「美味しいですか?」

「美味しいです」

 

 それは以前の様に誰かを気遣っての嘘ではない。

 味を感じ、食感を楽しみ、風味と共に嚥下する。

 食を楽しめる体を取り戻したケイの心からの言葉だった。

 

「ふふっ、それは良かったです」

 

 再び笑みを浮かべるミロクを見て、ケイは気恥ずかしそうに視線を逸らす。

 そして小さく呟いた。

 

「……私、甘い玉子焼きが好きなので」

 

 今しがた食べた玉子焼きへの感想であったのだが、それはフェクトム生徒会からすれば重要な情報である。

 

「! そうなんですねケイちゃん……!」

「おいネームレス、鳥捕まえに行くぞ。でっけえやつ」

「待てよ。リュウコに神話の卵貰った方が美味い。あいつ、アレで激うまスイーツ作ったりしてるだろ」

「二人共絶対にやめて。……ミユメも、玉子焼き器なんて作らなくて良いから」

「もう出来たっす。卵舞Mark2っす」

「改良までしたの……?」

 

 困惑するケイを他所に、ミユメは今まさに作られた機械を起動する。

 見た目はどう見てもただの黒い箱なのが余計に怖かった。

 

「これに卵を入れると、美味い玉子焼きになるっす。他に材料は不要っす」

「革命じゃねえか。じゃあ私が煮卵作る用に用意した卵を一つあげるよ。ケイの為だもんね!」

「いや私そんなに食べられない」

「大丈夫大丈夫。私とトアがいる限り、料理が残る事なんてないよ」

「(頷きながらも食事の手を止めないトア)」

 

 こうしてネームレスから与えられた卵が箱の中に投入される。

 ケイの見間違いでなければ、箱が開いたわけではなく上に乗せた瞬間に卵がゆっくりと箱の中に沈んでいった。

 

「ミロク先輩……私、あれを食べるんですか?」

「大丈夫ですよケイちゃん。私が最初に味見してあげますからね」

 

 ミステリアスの皮が剥がれ、やや怯えた姿のケイを愛おしそうに撫でながらミロクはそう言った。

 その目には何故か艶はあるのに光はない気がした。

 

「この装置で玉子焼きを作ると全ての栄養価が完璧なパーフェクト玉子焼きになるっす。食べるだけで一週間は寝ないで仕事ができるっすよー」

「あんなこと言ってますけど、本当に食べるんですか?」

「丁度、書類を片付けなければならなかったので」

「私も手伝いますから食べるのやめましょう」

 

 真剣にそして縋り付いて後輩にそう言われれば、ミロクは頷くことしか出来なかった。

 ケイがミロクに弱いように、ミロクもまたケイには弱いようだ。

 

「えー、じゃあ誰が実験体……じゃなくて味見してくれるっすかー。もう出来ちゃったっすよー」

 

 僅か数十秒。

 それだけで、箱はまたゆっくりと上に綺麗な形の玉子焼きを吐き出す。

 その際に入れた覚えのない皿の上に乗っていたのが尚の事怖かった。

 

「私の手料理食べて欲しいっすー!」

「手料理……?」

 

 クラムは首を傾げる。

 自分の知っている手料理とは違ったからだ。

 

 と、その時だった。

 開けられた窓から桜色の影が生徒会室へと侵入する。

 

 突然の出来事だったが、すぐに動いた者達がいた。

 

「ナナちゃん星蝕み」

「合わせろ、ネームレス、ケイ」

「はい」

「act4」

「マーちゃんズ」

 

 生徒会の中でも戦いに特化した者達が侵入者を感知したその瞬間に動き出す。

 生徒会室へと規則が付与され、焔と切断、銀の鎖と無数の異能を持った爆弾が殺到する。その後方では、魔眼による対象の解析も始まっていた。

 

 誰が入ってこようとも即死は免れない。

 が、その少女だけは例外だった。

 

「ちょ、待って待って待って! 曰く桜庭ラッカは無敵マジ無敵本当に無敵ぃ!」

 

 情けない言葉と共に、迫った全ての攻撃が無力化される。

 六波羅のような異能による無敵化とは別のプロセスを経た無敵の付与。

 そもそも攻撃が通じるという考え自体が間違いであると世界に認識させることによる自身の無敵化は、その少女――ラッカだけの特権とも言えた。

 

「あ、先生か! よく来てくれた! おはよう!」

「おはよう。とりあえず皆、その立派な得物を仕舞おうね。窓から入った事は謝るからね」

「これに懲りたら次は変な登場をしないでくださいね」

「えぇ……でも、桜の木が見える窓から入るって……すっごいメインヒロインじゃん? ガーデナーちゃんにもウケが良いんだけどなぁこの登場。あ、これ貰っていい? 朝ごはんまだなんだよね」

「どうぞっす!」  

 

 流れるように玉子焼きを受け取ったラッカは、遠慮なく口にそれを放り込んだ。

 それから何度か咀嚼して、驚いたようにミユメの方を見る。

 

「美味ァ! えっ、これ君が作ったの?」

「私のお手製っすね」

「すっごぉ……なぜだか体の調子も良くなった気がする。ありがとね! そして……求道者ー!」

 

 ラッカはその卓越した身体能力でケイへと一気にダイブする。

 しかしその体は空中から現れた銀の鎖と大量の人吞み蛙達によって抑え込まれた。

 

「オキャクサン オサワリ ダメッス」

「うわっ、急にモチモチに捕まったぁ! ……いや、これ歓迎だな?」

「違うわよ、先生。というか、教え子たちの前でそんな情けない行動は止めて頂戴」

「冷たいなぁ求道者は。おかげで今まで通り、変わりがない事がわかってよかったよ。まさかとは思ったけど、本当に早く戻って来たね」

 

 人吞み蛙達の中から顔だけ出して、ラッカは言葉を続ける。

 その表情はやがて真剣なものに変わっていった。

 

「本当ならソルシエランドで皆とおかえりパーティーをやりたいけれど、今回はそうはいかないんだ。――仕事だよ、求道者」

 

 桜吹雪と共に舞い込んだ少女。

 それは新たな事件の予兆であった。

 

(今ソルシエランドって言った? 配信で耳でも狂ったか?)

(ソルシエランドって言いましたよね今……!)

(ソルシエランドとか未来でも聞いたことないんだけど)

 

 それとは別のワードに心を奪われている者達もいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『事件の予感ソル! コンテンツが香しいソルねぇ!』

『君、本当に近いうち全員に貪られそうで良いねぇ^^』

『先生……! という事は、もしや銀の黄昏絡みの事件でしょうか。天上、気を引き締めてください。私達だけでもまともでいないと……!』

『うーん並べると眩い太もも。特にあの金髪の太ももはまさに太ももという感じがして良いな。余は気に入ったぞ。あの太ももにもベルトを巻いたら至高なのでは?』

『ああっ(絶望)』

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