【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第508話 完成された銘 1‐4

 ケイにとって玉子焼きは数少ない母親の味なんだよね……。

 

『急に変な過去を生やさないでください』

 

 は? 可愛い娘のために母親が作ってくれたあの甘めの玉子焼きをご存知ない!?

 これだからテム子は……。

 

『なんで私に非があるような言い方なんですか』

 

 後で教えてあげるよ。那滝家の玉子焼きをね。

 

『ないものは教えられないですよ』

『赫夜牟君は甘いものが好きだから、玉子焼きも喜んでくれると思うがねえ』

『…………一応、レシピだけは後で聞いておきます』

 

 グッドだ相棒。

 

『攻めは任せたまえ。私達は二人で一人のコンテンツだ^^』

 

 一心同体、攻めと守りの完璧な調和……パーフェクトハーモニー。

 天上君、よく見ておくと良い。

 これがコンテンツを作る事に命を賭ける者達だ。

 

『学ばせて貰おう』

『なんで意欲的なんですか貴女は』

 

 という訳で、俺達は侵入してきたラッカちゃんと朝食を食べていた。

 格好よく事件だとか言った割に、彼女は玉子焼きに心を奪われている。

 

「うめっ……うめっ……玉子焼きうめっ……」

「そんなに気に入ってくれて良かったっすよ。良ければこの機械、あげるっす」

「マジ!? よっしゃ、あっちで天使の卵入れてみよー!」

「絶対に止めなさい。先生、貴女の目的は私に仕事を依頼する事でしょう」

「もぐもぐもぐもぐもぐ……! よし、ごちそうさまでした! じゃあ求道者のお願いの通りにお話といこうかな」

 

 玉子焼きを好きなだけ食べたラッカちゃんは満足そうにお腹を撫でながら、ソファに体を預ける。

 そしてヘラヘラと笑いながらこう言った。

 

「もう一度、厄災ぶっ飛ばそうぜ」

 

 えっ!?

 天上君!?

 

『うーむ、余は知らんぞ。それよりもあのラッカとかいう美少女のニーハイソックスはなんだ? 太ももとの境目がパーフェクトではないか。こいつのいる人類はもう厄災クリアで良いだろ』

『忖度の仕方がキモイです』

 

 忖度は駄目だよ天上君。

 苦難を越えて輝く美少女もいるんだから。

 死なない程度に、ギリギリ頑張って踏ん張って乗り越えられる試練は与えないと。

 

『貴女も大概ですよ』

『お前もだぞ^^』

 

 ソルシエランドを生み出した功罪は大きいぞテム子。

 

「厄災……それはどういうことかしら」

「もうしらばっくれちゃって。……私達の世界、まだ救われてないっしょ。リベンジだよ、求道者」

「……そう、確かに思い返せば教授を相手に馬鹿な提案をした奴がいたわね」

 

 トウラク君がどっちの世界も救う宣言をして主人公ポイントをMAX加算した事は記憶に新しいだろう。

 なるほど、俺が種をまいていないコンテンツ。

 つまりは天然物かつ脂の乗った上物コンテンツだ!

 

『後日談ほのぼの百合と化したソルシエラでも可能な曇らせが来たか……! 腕が鳴るねぇ』

『余は初めてのコンテンツ作りでドキドキだ。早く他の者にも輝きを教え、光にしてやりたい』

『そんな悠長で良いんですか? 先生の話の通りなら、銀の黄昏が負けた厄災ともう一度戦うって事ですよ。もっと危機感を持たないと』

 

 確かに銀の黄昏が負けたってのは少々不安要素だな……なんて言うと思ったか。

 テム子、冷静に考えてくれ。

 今の学園都市のメンツに誰が勝てるって言うんだ?

 正直、俺かトウラク君だけでいいよ。

 

『というか、余が沈めてくるか? 話を聞くに選定のシステムだろう。そんなのちょいと根源側からいじってやれば良い。わざわざ戦う必要はない』

 

 それはもったいないよぉ!

 折角、海流に乗ってきてくれたコンテンツなんだから。

 

『コンテンツ回遊魚?』

 

 これは存分に楽しまないと。

 ついでに、過去の事で曇るソルシエラがやりた~い!

 

「本当はもう少し求道者にもゆっくりしてもらってから始めたかったんだけど、どうにもアトラスティアに渡るなら、鏡界の調子的に今が絶好のチャンスらしいんだ」

 

 そういうの鏡界にもあるんだ。

 

「なんでも、早朝に熾天使が位相世界を大横断したらしくその影響で時空の流れが変わったらしい。それでアトラスティアに戻る為のルートがたまたま補強されたって訳。いやぁ、天使もたまには良い事するね」

 

 ……今朝ピクニックに出かけた熾天使いない?

 しかも、位相世界を渡るのが得意な奴。

 

『可能性はあるねぇ』

『流石は余の造物先輩だ。素晴らしい働きである』

『上か下かわからない物言いですね』

 

 どうにも身内の仕業の予感がするのだが、俺は真面目な顔でラッカちゃんと会話を続けた。

 

「それで急いで来たという訳ね。まったく、ダイブギアで連絡すれば良いでしょうに」

「求道者の顔が見たかったんだよー! あの時みたいにナイーブになっていないかと思ってさ」

「……貴女、少し黙りなさい」

 

 ラッカちゃん、いいぞ。

 黙るな、もっと言ってくれ!

 

「えー。アイドル衣装とかメイド服とか色々なソルシエ――もがっ……!?」

「ふふ……ミロク先輩、ちょっと廊下でお話してきますね」

 

 銀の鎖でラッカちゃんの口を縛り上げ、俺は笑顔を固定して告げる。

 星詠みの杖君、怒りオーラ差分2をよろしく。

 

『まかせたまえ』

『魔力の放出量で威圧のパターンを変えるのか……なる程、勉強になる』

『実体を伴う怒りオーラなんて聞いたことないですけどね』

 

 このままラッカちゃんを引き摺って行こうとした俺だったが、その手がミロク先輩に握られ足を止めざるを得なかった。

 ミロク先輩の顔にはいつも通りの笑顔が浮かんでいるが、何故か背後に腹をすかせたグリズリーが見えた。

 まさかミロク先輩も俺達と同じ技を……!?

 

「まあまあ、いいじゃないですかケイちゃん。色々と聞かせてくださいよ。それに、どうして先生に求道者と呼ばれているんですか?」

「確かにそうだな。それにお前は以前から先生を知っている様子だった。どういう事だ、ケイ」

「それは……」

「ぷはっ、曰く桜庭ラッカは束縛されない! っしゃあもう拘束無効だもんねー! って訳で私が答えます! 求道者は、私と同じく元銀の黄昏の構成員! 正義の味方だったってわけ!」

 

 その瞬間、殆んどの者が驚いた声を上げた。

 ……トアちゃんは、ご飯に集中できて偉いね!

 ……ナナちゃんもソシャゲのデイリー忙しいもんね!

 ……トリムちゃんはそもそも俺に興味ないか! そっか! 

 

「ケイちゃん、本当ですか!?」

「……はい。黙っててすみません。でも、私の場合は一度教授に殺されているので、前世の記憶として求道者であったことを覚えていると言った感じでしょうか」

「そうそう、そんな感じ。でも、可愛さは変わってないね! ほら、ぎゅー!」

「やめなさいラッカ……! ミロク先輩達が見てるでしょう!」

「やっと名前で呼んでくれた。もう、皆の前だからって気を使わなくて良いのに。前みたいにラッカって呼んでよー!」

「う……うるさいわ貴女。朝から騒がしいのよ」

 

 俺はグイグイとラッカちゃんを押しのけようとするが、身長差があるためあっけなく抱きしめられる。

 魔法を使わないとケイちゃんってこんなに非力なんだね♥

 

『どの立場なんですかその発言は』

『やっぱり総受けじゃないか!』

 

 真正面から感情をぶつけられることに慣れていない(自己申告)ので、俺は少しだけ顔を赤らめながら、何とか逃れようとする。

 と、その時だった。

 

「act1」

 

 俺の視界が一瞬黒い焔に巻かれ、次の瞬間にはミロク先輩の背後に移動していた。

 今の俺の前にはミロク先輩とネームレス、そしてマーちゃんズの姿が。

 

「先生、確かにケイちゃんの言う通り少しはしたないんじゃないですか? この子、困ってましたよ?」

「……え、ミロクもしかして怒ってる?」

「怒ってませんよ?」

 

 ニコニコと笑いながら、ミロク先輩は俺を抱き寄せる。

 そして見せつけるように、より力強く抱きしめた。

 

「ケイちゃんは私たちフェクトムの仲間です。それを忘れて話を進めて貰っては困ります」

「そうだそうだ! 先生だからって横暴だぞ! クラムを見ろよ。突然の見せつけに耐えられずに脳が破壊されちゃった!」

 

 ネームレスが指さす方向では、情けないうめき声を出しながらヒカリちゃんの胸に顔をうずめるクラムちゃんがいた。

 その傍ではマーちゃんズが慰めるように跳んだり跳ねたりしている。

 

「私の方が最初に好きだったのに……!」

「あーはいはい。ここから逆転しましょうねー」

「マケルナ!」

「わあ、愛されてるんだね求道者! うんうん、なんだか安心したよ。というか……」

 

 ラッカちゃんはミロク先輩達を指さして、得意げにウインクを決めた。

 

「君達も行くんだよ? 銘の欠片、入ってるでしょ? 幼馴染ズは強制参加でーす」

「「えっ」」

「おお! 別世界で戦えるのか!」

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ……えっ、私も?」

「そう。トアちゃんが二人いるから二倍お得だね」

 

 ミロク先輩とミズヒ先輩、トアちゃんにネームレス。

 どうやらこの四人もコンテンツに参加するらしい。

 嬉しいなぁ。

 

「ラッカ、どうして皆も巻き込むのかしら。別に天使と戦うだけなら私達だけでもいいでしょう?」

 

 俺はラッカちゃんへと厳しい口調で問いただす。

 

『さっき嬉しいって言ったのに……』

 

 俺の問いに、ラッカちゃんは意外にもすぐに答える事はないようで、ミユメちゃんから貰った卵舞を拡張領域にしまい込みながらこう言った。

 

「あー、その辺は道中で教えるよ。まだ行くところがあるから」

「行く所……?」

「そう。教授を釈放しないとね」

 

 どうにも今回のコンテンツは一筋縄ではいかなそうだ。

 

 

 

 

 

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