【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第510話 完成された銘 1‐6

「本当なら、ゆっくりとティータイムといきたいところだが歓迎している時間はないみたいだ」

「そもそもお前一応は大犯罪者でもあるからな」

 

 ラッカの言葉にルシエラは何故か嬉しそうに笑う。

 穏やかなその佇まいが本来の彼女なのだろう。

 

「ケッ、私とソルシエラの顔を見てもそんな余裕たっぷりだとか、ムカつくわ」

「ネームレスは相変わらずのようだね。私と違って自由に外を出歩けるようで良かった。……ソルシエラ、君も無事に戻ってきたようだ」

「そうね。案外、楽しい旅だったわ」

 

 その決戦は二人にとってはもはや過去の事だ。

 例え殺されようとも、裏切られようとも今こうしているならばそれが真実であり最も重要な事である。

 その為、意外にも二人の間で交わされる言葉は非常に穏やかで静かで、まるで波に揺蕩う葉のようだった。

 

「よし、じゃあ教授も回収したし行くか」

「そうだね。悠長に構えている暇はない。せっかくの好機を逃すわけにはいかないから」

「博士達はもう星木の学園で待ってるから、私たちで最後だね」

 

 ラッカは槍を握るような動作をして、目の前の空間へと振り下ろす。

 すると、目の前にぱっくりと切り口が生まれ、向こうには極彩色の空間が見えた。

 

「帰りは簡単なんだよね、ここ」

「そうやって出来るのは君くらいなものだろうに」

 

 呆れた様子のルシエラとは違い得意げな彼女はそのまま極彩色の世界へと足を踏み入れる。

 続いてルシエラ達もその中へと入っていった。

 

「鏡界に続く特殊な位相ってところかしら」

「そう! さっすが求道者!」

「貴女まで抱き着かないで。歩きづらい」

「そーだそーだ! 離れろ先生! バーカ!」

「同じトアちゃんとは思えない程に口悪いなこいつ」

 

 未だにケイに密着しているネームレスにラッカはそこそこ引いていた。

 ちなみにトアは既に離れている。

 が、依然としてネームレスだけは明らかに恐怖など関係なく抱き着いていた。

 

「じゃあこっちはミロクで我慢しよー」

「やめてくださいね、先生」

「そういう反応の方が効く……」

 

 大げさに肩を落とししょんぼりする姿を見て、ルシエラはため息をつく。

 それからこの弛緩した空気を多少なりとも正すために言った。

 

「先生は、彼女達に作戦を全て説明したのかな?」

「してない!」

「君はいつもそうだね。それで講師と私からどれだけ説教されたと思う?」

「いっぱい!」

「……良ければ、私から説明をしようか」

「ありがとう!」

「…………桜庭ラッカは説明に真面目に補足してくれると信じているよ」

「あっコイツ」

 

 ラッカへと規則が適応され、彼女の背筋が少しばかり伸びる。

 それを見てルシエラは歩を進めつつも、全員を一瞥した。

 

「今回の作戦は、完全に私達の我儘だ。先生や私達のいた世界を取り戻す為のもの。一度、裁定に失敗した私達の世界は博士と学者の尽力により全てが停止した」

「レイの凍結のすっごいバージョンだと思っていいよ。というか、レイの異能がそもそもアレのデチューンだしね」

 

 先ほどのふざけっぷりが嘘のようにラッカは真面目にそう補足した。

 

「まさに滅びが始まる数秒前、そこで私達の最後の生存圏アトラスティアは止まっている。泣いていた子も、死の間際に意思を託そうとした兵士も、まだ抗おうとしていた者も全てね」

「……それらを救うのが今回の最終目標という訳かしら」

「求道者はやはり理解できているね。そう、これは本来、求道者や先生達が進めようとしていた計画だ。私達の方舟計画とは違う」

「その方舟計画について聞いても良いでしょうか」

 

 ミロクの問いにルシエラは僅かに眉を下げながらも素直に頷く。

 それは彼女にとって罪の告白に近いからだ。

 

「裁定を越えた世界へ自分達の世界のテクスチャを張り付ける事で、疑似的に裁定を越えたことにする。それが方舟計画。私と博士と学者が導き出した答えだ」

「こいつ、マジ最悪っしょ? 要するに、ミロク達の世界を全部乗っ取って自分の世界にしようとしていたって事」

「それが最も私達の人類が生き残る可能性が在ったからだ。君達の言っていた、数多の世界を旅して裁定の失敗を覆すだけの力を付ける計画など、計画ではない。……だけれど、結局はそっちの方が正しかったね」

 

 自信満々に頷くラッカをルシエラは直視することが出来なかった。

 本来、自分にはこうして世界を救う資格など無いと知っているからである。

 

「今、裁定を覆せるだけの戦士が揃ったことでこの作戦は可能となった。だから私達がこれからまずするべきことは、世界の停止を解くことだ。そしてそのためには――」

 

 ルシエラはソルシエラを見る。

 それからミロク、ミズヒ、トア、ネームレスと順に視線を移した。

 

「銘による七段階の認証をクリアしなければならない」

「信奉、探究、智慧、狂楽、調和、憧憬、理想。世界を停止させたシステムのエネルギー源はこの七つの銘。そして認証も七つ。これらを活性化させることで世界はもう一度動くんだ。まあ、動き始めた瞬間に滅び始めるけどね。そこからはもう理屈抜きにめっちゃ天使とか殺しまくろう。そういうのミズヒとか得意でしょ?」

「ああ!」

 

 ようやく自分にわかる部分があったのか、ミズヒは笑顔で頷く。

 最後に戦うという部分だけ、彼女の脳には無事にインプットされたようだ。

 

「その為に、私は自らが殺した彼女らを蘇らせる」

「蘇らせる……!?」

 

 誰よりもその言葉に反応したのはケイであった。

 遥か昔、殺された記憶がある彼女だからこそその言葉が信じられない。

 

「別に銘を他人に植え付けても良い筈よ。事実、この学園都市で貴女は自分に都合の良い人々に銘を与えた」

「弁解する気はないよ。あれが彼女達への冒涜だという事も理解している。だが、だからこそ今回はきちんと彼女達を蘇らせなければならない。救われた後の世界を見る権利はあるからね」

「……どちらにせよ、蘇らせるつもりだったのかしら」

「ああ。博士ゼロツーのデータロイドがまさにそれだ。死人を蘇らせる手段を、私達はずっと模索していた。あれならば、全員を蘇らせることが出来る」

 

 言葉には力強い確信があった。

 データロイドにより幾度となく助けられてきたフェクトムの面々も、異を唱えるつもりはない。

 だからこそ何も言わないのだが、その沈黙はむしろ場の空気を重い物へと変化させていく。

 ルシエラの言葉の端々から垣間見える、自身への嫌悪と懺悔がそれを加速させているのも理由の一つだろう。

 そしてそれを見過ごすラッカではなかった。

 真面目な彼女が折れそうになった時、ラッカはいつも強引に手を引き進むのである。

 

「まとめるよ。私たち以外の死んでいる銀の黄昏構成員の講師、学者、指揮者をデータロイドとして蘇らせる。これが最初の目標。皆、わかったかな?」

「待ってくれ、先生。そもそもこんな私達の都合でしかない計画に参加してくれるか改めて確認を「ごちゃごちゃうるせぇな! そういう所は直せって講師に言われたでしょ!」……そうだったね」

 

 ルシエラの手を握ったラッカは、見せつけるようにニッと笑う。

 それからぐいっと引っ張って走り出した。

 

「よし、競争だ! 皆、私とルシエラについてこい!」

「いいだろう!」

「乗り気なのミズヒちゃんだけだよ……?」

 

 そうしてフェクトムの少女達は走り出す。

 それをケイは少しの間立ち止まって見ていた。

 が、やがて彼女は静かに笑うと走り出す。

 

「相変わらずね」

 

 ルシエラとラッカへ向けるその視線は、懐かしさに満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラッカ×ルシエラか……銀の黄昏は百合カプ製造組織だった……?』

『あいつからも受けの気配がしていて良いんだよねぇ^^ ソルシエラとルシエラが貪られる本を所望する』

『しないでください』

『余も所望する』

『しないでください! というか……星木の学園で合流と言っていた割にこの座標はソルシ……いえ、ですが……』

『何かわかるのかテム子』

『……いえ、私の勘違いかもしれません。余計な発言で場を乱すつもりはないので気にしないでください』

『お前それやめろって言ってるんだがねぇ! ちょっと来い、おみみスペシャルの刑だ^^』

『ひえ、何でですかぁ! 理不尽です!』

『これはテム子が悪い』

 

 

 

 

 

 

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