【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第518話 対終末部隊「■■■」総隊長 1‐3

 はわわわ、求道者ちゃんが倒れちゃったよぉ><

 どうしよう、大変だ~!

 

『倒れてムニッてなってる太ももを見よ。アレは銘の輝きである』

『違いますよ。というか、ギリギリ終わった……! 一段階、無事に納品完了です……!』

『お疲れ様であるシステム先輩。余が直々に褒めさせていただこう』

『立場が上なのか下なのかわかりませんね。けど、素直に受け取っておきましょう』

 

 お疲れ様、テム子。

 俺からもお礼を言わせて貰おう。

 

『褒美だ。今度のソルシエラバトルのエグゼクティブプロデューサーに任命しよう^^』

『それは別にいらないです。呪いと同じじゃないですか』

 

 それで、求道者ちゃんにはどんな記憶を注入したんだい?

 それによってこれからのコンテンツの焼き上がりが変わるからね。

 中はもっちり? それともふわふわ?

 

『コンテンツが酵母で出来てると思ってるんですか?』

『もっちり……ふわふわ……つまり太ももか、先導者よ』

 

 違う方が釣れちゃった。

 天上君、君は本当に脚が好きだねぇ。

 どうしてそんなに好きなんだ。俺もカメ君も星詠みの杖君も……いや、星詠みの杖君はちょっとあるかもしれないけど、脚の授業をしたことはないよ。

 

『ん? 先導者の黒タイツえちえち太ももこそが余の学びの全てではないか』

『こいつ元から素質あっただろ^^ 面白いから、後で私のコンテンツ作業部屋に来ると良い。ソルケットに向けて制作中の原稿を見せよう』

『では、ありがたく』

 

 脚フェチと変態が手を組んじまった。

 テム子、どうにかしてくれ! まともなのは俺と君だけだ!

 

『は? それは勝手に困っていてください。それよりも重要なのは、取り戻した記憶でしょう? その辺は抜かりありませんよ』

 

 本当?

 ソルシエラバトルとか開催した人が抜かりないって言っても前フリにしかならないけど?

 

『むっ失礼な! いいでしょう教えてあげましょう。私が求道者に与えた大きな記憶は二つ。一つは彼女がアトラスティアに来る事になった経緯です。これはマストでしょう。最後に始まりを思い出す方法もありますが、今回の主役は求道者一人ではないと判断した為、ボツ。それに彼女の始まりは特段面白い物ではありません。それだけでは今後のコンテンツにはなり得ないでしょう』

 

 ほう、流石は俺達きってのソシャゲコンテンツ派だ。

 すぐに楽しめるコンテンツについては饒舌になるね。

 それに道理も通っている。

 

『それ誹謗中傷ですよ。……話を戻しますが、私が今回起爆剤として入れた二つ目の記憶。それは――』

 

 

 

 

 

 

 アトラスティアの歴史は浅い。

 それはあくまで当初の役割が厄災に向けて作られた最新鋭の軍事基地であったからだ。

 それがやがて人類最後の生存圏になるまでの間、人々はそれぞれが身を寄せ合って天使の脅威に対抗してきたのである。

 

 その中で最も歴史が古い国の一つが、アトラスティアから南東に位置する場所に存在する巨大な山岳都市であった。

 至る所に伸びる岩山はまるで剣山のように乱立しており、それが天然の防壁として長年人類を守り続けてきたのだ。

 名を雲零(うんれい)

 かつて、天に轟く武功を上げた勇士により作られた闘う者の為の国だ。

 

 戦う相手が人類から天使に変わったとしてもやる事は変わらない。

 自身の価値を戦いの中で示し、派手な散り様を後世に残す。

 それこそが最大の美学なのである。

 

 しかしそれも時代の終わりと共に崩れ去ろうとしていた。

 

「我らが(けん)よ、再び天使が出現しました。」

 

 我らが剣――それは武器ではなく、この都市を統べる者に与えられる栄誉の名である。

 雲零の玉座に座る空色の髪の少女こそが、今は全ての民の剣であり最強の資格を持つ戦士であった。

 

「そうですか。では、片付けましょう」

 

 立ち上がった少女を見て家臣達は驚き、辺りからはどよめきが起こる。

 

「貴女様自らが……!?」

「今日は遠方より客人が来ます。戦いは雲零の華ですが、天使との戦争は見せるべきではないでしょう。つまらないものですから」

「でしたら我々にお任せください。すぐにでも」

「いいえ、私の方が早いです」

 

 少女は広間から続く巨大なバルコニーに出る。

 そして連なる岩山を前に目を凝らした。

 

「あそこですね」

「は、はい」

「では行ってきます」

 

 瞬間、衝撃波と共に少女の姿が消えた。

 バルコニーから飛び出したと理解できたものはどれだけいただろう。

 まるで砲弾が直撃したかのような衝撃の後には、そこにはこの国の最高戦力の姿は無かったのだ。

 

「数は……千程度ですか」

 

 マッハに到達する程の速度で飛来した少女は天使の軍勢を見つけると、その数を大体把握する。

 千程度なら、遊びにもならないだろう。

 

「では終わらせましょう」

 

 少女は空気を蹴って無理矢理体を停止させる。

 それから天使へ向けて落下を始めた。

 

「また一つ大穴が出来ますね」

 

 背中から放出された魔力が落下速度を増していき、その姿は流星へと至る。

 いくら天使と言えども、それに対抗する事など出来る筈もなく着弾した少女により発生させられた魔力波により地面ごと根こそぎ塵へと変えられた。

 

 少女が天使を目視して一秒にも満たない出来事である。

 

「ふぅ――」

 

 砂ぼこりが舞い視界が奪われた世界で少女は息を吐く。

 そして背後に向けて突如として振り向き様にハイキックを放った。

 魔力により強化された脚撃が空間を裂いて狙いの場所へと向かう。

 

「おっと」

 

 その足は優しく受け取るように止まった。

 足首を掴んでいるのは陶磁器のように美しい手。

 人類として完成された黄金比の中に存在する唯一の肉体を少女が忘れるわけがなかった。

 

「博愛のソルシエラ、随分と早い到着ですね」

「天使の気配を察知したからねぇ」

 

 足から手を離し、博愛のソルシエラはそう言って笑った。

 極彩色の髪はこの砂埃の中だとより一層に鮮やかに見える。

 

「それに君ならここに一人で来ると思っていたから」

「私と密談ですか? それなら別に城でも可能ですよ」

「ははは、違うよ求道者」

「求道者……?」

 

 聞き覚えの無い名前は、確かに自分を呼ぶために使われているようだ。

 その事に少女が首を傾げていると、博愛のソルシエラは数歩後ろへと下がる。

 

「三度目の要求になるが、どうか国民全員をアトラスティアに避難させてほしい。これ以上は、雲零では守りきれないだろう」

「私では不足だという事ですか」

「強いだけではもう駄目なんだ」

 

 博愛のソルシエラは微笑みと共に告げた。

 

「君達と同じだけの力を持っていたアリアータと陽蹄国が天使により壊滅した事は知っているだろう。もう時代は変わったんだ」

「雲零の歴史は戦いの中で刻まれます。……仮に天使との戦いにより滅ぶのならそれもまた正しい滅びです」

「滅びに正しさなんてないさ。と言っても、君は真面目で融通が利かないからねぇ」

 

 博愛のソルシエラの手に二本の杖が現れる。

 魔導合金と天使の死骸を用いて作られた特殊デバイスは、素人目に見ても兵器であった。

 そしてそれがゆっくりと少女に向けられる。

 その意味を理解できない程愚かではない。

 

「雲零式の交渉術に倣おうか。私が勝ったらアトラスティアに来るんだ。そして求道者の名を受け取って貰う」

「……では私が勝ったなら二度と雲零に干渉しないでください」

 

 それから少女は一礼をし、博愛のソルシエラに向けて構えを取った。

 徒手空拳の彼女の構えはしかし妙に研ぎ澄まされており、まるで抜刀前の剣士の様である。

 

「合図は無い。好きに始めたまえ」

「では」

 

 両足に込められた魔力が瞬時に爆発する。

 加速した少女は一瞬にして博愛のソルシエラまで距離を詰めると、そのまま脚を首へ向けて放った。

 しかしそれは突然現れた極彩色の鎖によって絡めとられる。

 

「っ!?」

「いいだろう。教え子の作った新しい魔法だ。まだ式が複雑で全員が使えるわけではないのがネックだがね」

 

 博愛のソルシエラは得意げにそう言って、片方の杖を少女へ向ける。

 

「そして一番見せたいのはこれだ! 名前は――」

 

 杖が辺りの砂埃すらも魔力に変換し、一気に収束を始める。

 そして次の瞬間、杖は閃光を放った。

 

「収束砲撃だ。最高にCOOLだろう?」

「――ッ」

 

 瞬く光に少女は本能的危険を感じ取り、大量の魔力を放つ。

 力任せの鎖の破壊。

 それからすぐに魔力を足に込めて、今まさに杖より放たれたその魔力砲に対して真正面から打ち付けた。

 

「っ、なんて威力……!?」

「私からすれば収束砲撃を蹴り返そうとしている君も大概だがねぇ。でも残念」

 

 閃光の向こうから博愛のソルシエラの声が聞こえる。

 そして次の瞬間、少女の背後に転移してきた残るもう一本の杖と共に茶目っ気のある言葉が向けられた。

 

「こうなるだろうと思って杖は二本持ってきたんだ」

「後ろッ!?」

 

 それは言葉や態度からはかけ離れた確実に少女を倒すための動きである。

 

(博愛のソルシエラ、貴女は本気で私を倒しに来たのですか)

 

 少女がそれを理解したのは、背後から放たれた閃光を目にした時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サルベージしてて思いましたけど、やっぱり卑怯ですよ! 求道者は正々堂々戦ってるのに!』

『足技主体か……この子に銘をあげれば良かったと、余は大後悔中である』

 

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