【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
エッチッチッチッチッチッチ!
キッモッモッモッモッモッモ!
『変な警報を二個も鳴らさない下さい。うるさいんですよこれ!』
『な、なんだこれは。余の脳内に直接警報が……!』
『うるさ^^』
学者のエチエチスーツをご覧よ!
これで警報を鳴らさずにいつ鳴らすって言うんだい?
現場は既に混乱しているんだよ! 悠長なことを言っている場合じゃないだろ!
あんなスーツ、エロゲでしか見たことないよ。
体のラインをあんなにくっきりと出して……この都市の子供たちはこんなものを見て育つって言うのか?
アトラスティア、なんて未来に生きた都市なんだ。
……それに比べて天上君! なんだあれ!
流石に人型クリーチャーかなと思っていた俺の予想を遥かに超えてきたね!?
あれはあれでR指定が入ったゲームでしか見れないよ。
子供泣いちゃうよ。
ごく少数がとんでもない拗らせ方をする以外は、全員がトラウマになっちゃう。
『余のモモトリスはトラウマにはならないだろう! 見てくれあの美しい太ももの曲線美を! 可能であれば今すぐ抱きしめに行って頬ずりをしたい』
『こいつキモいです』
『じゃあ私は相棒の太ももに頬ずりしようねぇ』
『それは余もしたいぞ!』
『(無言のドン引き)』
はっはっは、ソルシエラの太ももはお触り厳禁だよ。
特に星詠みの杖君、君は駄目だ。
美少女健全コンテンツ法違反になってしまう。
『そんなぁ』
『なら余は!』
君は……うん、ちょっとその熱意の方向性を見てからだね。
とりあえずお出しされたモモトリスだけだと正直星詠みの杖君と別ベクトルでヤバそうなので怖いです。
本当にどうして鶏と太ももをくっつけたの……?
『太ももの可能性を信じて色々と試してみる事にした結果だ。最初にしては中々に良いぞ。スペックも申し分ない。先導者の世界の第一の天使よりもずっと強く仕上げさせて貰った』
俺の世界の天使より強いんだ……。
『当然だ。銀の黄昏は余が作り出した人類の中でも最高峰の出来だからな。生半可な天使だと強めの一般人にすら殺される』
アトラスティアって修羅の都市?
『それはこれから起きる事を見ていればわかるだろう。……だが! モモトリスもただ無様に敗北するわけではない! 太ももの美しさではこちらに軍配が上がるだろう!』
そこの勝負は誰もしていないんだよ天上君。
『厄災のリセット機能以外の数値は全て身体能力に振った事により脚部より生み出される強力無比な一撃を是非ともご覧あれ』
……ん? 厄災のリセット?
それは俺聞いてないよ。
『第一の太ももを降臨させるなら、ルールに則ってまた一から厄災を始めないと他の世界に不公平だろう。余、そういう所は真面目にやりたい』
天上君は真面目だなぁ。
『真面目ですか? ただの太ももエゴイストでは』
なら俺もその真面目な気持ちに応えられるようにもっと頑張らないとな!
『これ以上頑張らないでください。世界の為のお願いです』
『相棒が頑張るって言っているんだから頑張らせてやろうじゃないか^^ こういう時、そっと背中を押すのが仲間ってやつじゃないのかい?』
『違いますね。これの場合、犯罪の教唆になっちゃう可能性が高いので』
『余の行動は真理であり罪にならない。この原則がある限り大丈夫だぞ』
『急に神様のスケール出してくるのは反則では?』
これは俺も天上君に負けて居られないぞ。
有り合わせではあるが、簡易エチエチ形態を作らないと……!
『断固拒否します』
『ソルシエラシリーズの衣装を手掛けておいて言う事かい?』
『は? あれはエッチじゃないですが? 健全な魂の研磨に必要な衣装ですが?』
『ふーん^^ なら今回ものその健全とやらでやってみれば良いだろう。それでもしもエッチッチッチッチだったら君はどスケベコンテンツ職人だ』
『なんて不名誉な称号を……! いいでしょう、受けて立ちますとも!』
えぇ……テム子のチョロさには心配になるよ。
君、お外に行くときは絶対に誰かと一緒に行くんだよ? 赫夜牟君とかでも良いからね?
『は? 私はチョロくありませんが? 自身のデザインの正当性と健全性を証明するために立ち上がっただけですが?』
そ、そっか。
『それじゃあ待っていてください。私は今から形態を作り始めるので!』
凄い熱気だ……! テム子、本気なんだね。
見せて貰おうか、銘修復システムの実力を。
『余も負けてられないな。行け、モモトリス!』
■
天使との戦いは日常である。
アトラスティアにとっては常識であり、武器を持てる健康な肉体であれば、老若男女を問わず一度は天使を殺した事があるだろう。
それは当然、研究職である学者も例外ではない。
さらに言えば、研究職とは言えど銀の黄昏の構成員。
本人はそれを控えめと表現しているが、しかし一人で高位の天使を相手どれるだけの実力があった。
「いくよぉ!」
特殊な加工が為された転写スーツは、高位転写紙機と同じ効果を発揮する。
四肢に沿って引かれたラインが淡く光り輝くと、彼女は音すらも置き去りにして加速した。
「パーンチ!」
『――!』
朗らかな笑みからは想像できない速度で飛び出した彼女は、天使に向けて拳を放つ。
拳はいつの間にか外骨格に覆われており、小型のジェットエンジンにより更に速度を増す。
対する天使はその強靭な脚部を振り上げると、真正面から攻撃を受け止める姿勢に入った。
しかし。
『――!?』
抵抗すら不可能であった。
天使は完全に反応し、自身の最も有用な武器で対抗してみせた。
が、その上で学者により真正面から殴り飛ばされたのである。
「へっへーん。私は今、すっごく沢山のエネルギーを使っているから、負けないよぉ!」
起き上がろうとした天使の傍には既に学者が待っていた。
殴り飛ばした天使よりも早く移動し、今度は足で一気に上へと蹴り上げる。
そして上空に飛ばされた天使に狙いを定め、高位転写紙機を数センチ千切り取った。
「つよキャノン」
彼女の背後で巨大な砲台が構築され、砲身を天使に向ける。
巨大戦艦に乗せられているような武骨な姿の砲台は、学者の号令と共に今、エネルギー弾を放った。
「撃てー!」
水色の輝きが弾丸となって天使に迫る。
空中で脚を巧みに操り姿勢を整えた天使はそれを見て魔力障壁を足に纏わせ蹴り返そうとするが、あっけなく失敗に終わった。
砲弾が障壁をすり抜け、直撃したのである。
その光景を見てフェクトムの面々は驚き、思わず声を上げた。
「つっよ……本当に私達って来る意味あったの?」
「今の障壁をすり抜けたように見えましたが……ナナちゃん、わかりますか?」
「……わかりません。あの砲弾が魔力で構成されているわけではない事は確かですが」
「気になるなら、教授にでも教えて貰いますか?」
ケイがミロクにそう問いかけている時には既にルシエラは咳払いをして喉の調子を整えているところであった。
しかしそれよりも早くラッカが手を挙げながら割り込む。
「私知ってるよー! 学者は特異体質でこの世界以外の技術とエネルギーが扱えるんだ。なんか夢? みたいなので並行世界? を観測できて、それを現実に出来るのがあの巻物みたいなやつなんだ。私が聞いたのは、魔力以外に霊力、妖力、理力、アースゲイン、後他には――」
「……まあ、別に私でなくとも銀の黄昏はわかるだろうしね。解説なんていらないだろうね……」
「ぼ、僕は後で詳しく知りたいなぁ」
「牙塔トウラク……!」
救われたように牙塔トウラクを見るルシエラの顔を直視できなくて思わずトウラクは顔を背ける。
そして背けた先でケイと目が合った。
彼女は申し訳なさそうに眉を下げるばかりで、肝心のラッカは仲間の事を説明出来て嬉しいのか、教え子たちに意気揚々と説明を続けている。
「この都市が化け物みたいなスペックなのも、魔力以外も沢山使用しているからなんだ。それに学者が大きいのだって、全てのエネルギーに適応する肉体を作ろうとした結果だしね。まあ大きくなるのは想定外だったらしいけど」
説明の最中も学者は圧倒し続けた。
時に妖でしか扱えない力を使い、時に世界の裏側に適応しなければ会得できないエネルギーを纏い、彼女は一方的に戦いを進めて行く。
3分も経つ頃には、天使はその機能を停止し黒焦げになって落ちてきた。
「――よし、勝ったよぉ!」
妙に食欲の湧く良い香りが中庭に漂う中、学者は笑顔で手を振りながら皆の元に駆け寄る。
丁度それに合わせて、ラッカはこう説明を締めくくった。
「だからアトラスティア本体は一度たりとも破られたことがない。彼女が完全無欠の要塞そのものなんだよ。彼女がいれば、人々の安寧が確約される」
「えへへ、ピース!」
自分が褒められていることに気が付いた学者は照れくさそうに両手でピースをする。
その笑顔は、彼女が民から愛されていた女王であることの何よりの証明であった。
『な? 瞬殺だっただろう。銀の黄昏はやばいのだ。モモトリスだって、弱めの人類の裁定だったら最後の厄災レベルの強さはあるのに……。モモトリス、その太ももは墓標に刻むことを誓おう』
『霊力とか妖力とかいろいろ言っていたけど、確かにそんなの天上君教育美少女弾丸ツアーの時に見たな……』
『あれ君にも出来そうだけどねぇ』
『いや、俺がやると多分全部美少女エネルギーになっちゃう』
『そっちの方が変だと思いますけどね』