【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
講師の参戦は明らかに戦況を一変させた。
現在アトラスティアの停止により、実質半分程度の実力しか出せない学者とは違い、彼は制限を受けていない。
銀の黄昏の中でもラッカや求道者と同じ、天使との戦闘を担当する彼はこの戦いで欠けていた前衛の役割を見事に果たしていた。
【天使からの攻撃の事は気にするな! 俺が全て防ぐ!】
トアとネームレスを庇う様に立った彼は、既に数度天使の砲撃を拳のみで跳ね返していた。
言葉よりも彼のその戦い様が信頼に値すると証明している。
「じゃあ遠慮なく守られるとするかぁ。講師、よろしく」
「よろしくお願いします!」
【( ^ω^ )】
「講師、天使は魔力を吸収するんだよー!」
【どうやらそのようだな。しかし魔法技術を発展させた時点で、このような権能を持つ天使の降臨は予測できていただろう。だからこそ、俺は博愛のソルシエラにスカウトされたのだ】
再び砲撃が向かってくるが、講師は翼を勢いよく羽ばたかせ、真っ向から向かっていく。
【学者よ。当初の想定プラン通りに動くぞ。この天使の力は――俺が頂戴する】
「うんっ。勿論だよぉ!」
天使の撃破の意味がここにきて大きく変わる。
魔力の完全な吸収と再現の権能は今となっては障害ではなく、講師の戦力の増強にしかならない。
「私も頑張るよぉ! 学者斬りぃ!」
【名前……(´・ω・`)】
素人丸出しの剣が、神力をまとって第三の天使を切り裂く。
巨大な脚は薄く切れ目が入っただけで、次の瞬間にはすぐに修復された。それどころか、その斬撃は肌が波打ったかと思うとそっくりそのまま返される。
その時、タイミングを計っていた講師が一気に天使へと肉薄した。
【動きは遅いな。所詮はまだ第三か】
講師の攻撃は至ってシンプルに、拳を握って力任せに振るうだけだ。
しかしその攻撃は天使に深く突き刺さると、全体へ激しい衝撃をもたらす。
天使は肌を波打たせながら、勢いよく後方へと転がった。
「噓ぉ!? あのサイズ殴り飛ばせんの!? 六波羅でも無理でしょ!」
「すご……」
収束を続けながら、二人は驚愕する。
確かに講師は大きいが、それ以上に第三の天使は巨大であった。
まるでアリが人間を掴んで投げ飛ばすが如きあり得ない光景。
しかし銀の黄昏の者は誰一人として驚いてはいない。
彼ならそれだけの事を容易くなせると知っているからだ。
【成程……中身を守るために外側に相当なエネルギーを集めているな。学者、この天使の解析はどれくらい進んだ?】
「6割かなー。まだコアの場所がぼんやりとわかっているだけで、弱い箇所や破壊に最適なエネルギーの選別は済んでいないよー」
【コアの場所がわかれば十分だ( ´,_ゝ`)】
得意げな顔がヘルメットに浮かぶと同時に、彼はトアとネームレスへと振り返る。
【収束の方は順調か!】
「おかげさまでね。もうすぐ撃てるようになるよ!」
「合図さえもらえれば、合わせます!」
【初めて扱うエネルギーをこれ程早く収束できるのか。良い腕だな( ´∀`)bグッ!】
「いや、講師のおかげで集中出来たからだよ」
彼が来てから、一度も二人は攻撃へ意識を向けなかった。
その前に、彼が全てのエネルギーを力づくでなぎ倒すからだ。
おまけに、エネルギーは空で派手に爆発四散し辺りに満ちていく。
これほどお膳立てされた状況で収束すら終えられないようでは、砲手の名折れだろう。
トアの足元では黄金の魔法陣が更に大きくなり、最高率でエネルギーを彼女の体に満たしていく。
それはやがて辺りを黄金の粒子で染め上げ始めた。
「そろそろあっちは撃てそうだねー」
【ああ、そのようだ。では……学者よ、二人の補助は任せた。俺はコアを露出させる】
「えっ、どうやってぇ?」
【こうやってだ!】
荒野に轟音を立てながら転がった天使へと講師は近づく。
そして、両腕を大きく掲げるとそのまま天使の表皮へと勢いよく突き刺した。
【うおおぉぉぉぉぉ! (#゚Д゚)】
講師は、次第にずぶりと深く沈んでいく腕をこじ開けるようにさらに力を込めた。
彼の腕は数十倍に膨れ上がり、巨人のような白い腕へと変貌を遂げる。
中で膨らんだ講師の腕は、間もなく天使の表皮を裂き内部の肉を露出させた。
学者の剣でも完全に切り裂くことが不可能だった分厚い肌と、驚異的な再生能力があってもなお、第三の天使は大きく裂かれようとしている。
【まだまだあぁぁぁぁぁ!(#゚Д゚)】
講師はさらに力を込めて、天使の中を無理矢理裂いていく。
魔法も別の世界の力も関係ない、純然たる肉体による制圧。
巨大な太ももを下から裂いていく大男の光景は、冗談のような神話にしか思えなかった。
やがて、彼が狙っていた箇所がぶちりと音を立てて裂け、守られていた巨大な白い球体が姿を現わす。
講師はそれを見て叫んだ。
【コアを露出させたぞ! 今だ!】
「えぇ……」
「はっ、はい! ――第一術式、解放。定格出力『アルテミス』への移行を開始。第二術式、連結。第三から第五までを限定解除」
講師の合図に、黄金が輝きを増す。
周囲に浮かぶ黒焔さえも煌々と燃え盛り、黄金に染まっていった。
「……っ、凄い力」
トアは荒れ狂う力を自身の中に抑え込み、引き金に指を掛ける。
「発射シーケンスへ移行」
照準は既に定まっている。
第三の天使の露出したコアは数キロ先にあるが、トアからすれば目の前にあるのと変わりはない。
やがて、世界を軋ませる程のエネルギーは重砲より放たれた。
「星に祈りを――アルテミス・ウルティマ」
その瞬間、辺りが眩い光に包まれる。
太陽の如き輝きが一つに束ねられ、真っ直ぐに第三の天使へと向かっていった。
「うわぁっ!?」
今まで以上に体に掛かる衝撃に思わずトアは倒れそうになるが、後ろには既に大量の黒い人吞み蛙達とネームレスが待っている。
彼女はトアを後ろから支えると、照準を安定させた。
「派手だね! これでお前も晴れて天使打倒組の仲間じゃん?」
「うわぁぁぁぁ! す、すご、すごいよぉぉ!」
「あ、喋る余裕ないか」
幾度となく収束砲撃を放ってきたトアですら驚愕するそのエネルギーは、博士の最高率化と学者の用意した別世界のエネルギーにより、天使を殺せるまでに至っていた。
第三の天使もそれは理解している。
故に、自身を今まさに裂いている講師を放って、使える力をすべて使って収束砲撃を逸らそうとした。
肌が波打ち、大量の砲撃が天使より放たれる。
しかしそれは放たれてすぐに、周囲を囲む別世界の生物や学者によって相殺された。
「露払いは任せてねぇ」
各々が役割を果たした末、収束砲撃は――直撃した。
天使が地上を転がった時とは比にならない揺れと轟音が辺りを覆う。
仮に世界が停止していなければ、地割れが起きていただろう。
「うわぁぁぁぁ!?」
「撃った奴がなんで一番効いている声だしてんだよ」
やがて、土煙が晴れる。
そこには、講師が掴んでいた部分以外が跡形もなく消え去った第三の天使の残骸だけがあった。
【少し残ってよかった。これで頂戴できる】
講師の腕がポンプのように伸縮を繰り返し、第三の天使の肉片を吸収していく。
やがて、第三の天使は本当に全てがなくなった。
「やったぁ! やったよ講師ぃー!」
【ああ☆-(ノ´∀`)八(´∀`*)ノイエーイ】
淡白に頷く講師とは裏腹に、そのヘルメットには喜びが最大限に表現された顔文字が浮かんでいた。
こうして、第三の天使は無事に撃破できたのである。
『太ももが裂かれる光景なんて見る日が来るとはねぇ』
『あれは流石に気持ち悪いです』
『講師つっよ……。天上君、アレで講師って銘を持ってないの?』
『ああ。まあ、銘以外での厄災クリアサブプランではあるし何もおかしくないぞ』
『そんなの用意されてるんだ……。この世界の人類すっご……』
『ん? 先導者の世界にもいるぞ? 余と直接の決戦はなかったが』
『えっ!?』