【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
第四の天使は無事に撃破された。
しかし、まだ厄災は終わっていない。
干渉や逸話の完全な再現を可能とする強力な力ですら、第四の天使程度。
学園都市の天使と比べてみても、その規模が大きい事が良くわかるだろう。
それもその筈だ。
今ここに揃ったのは、一人一人が世界を救う素質を持った英雄なのだから。
尤も、英雄と呼ぶには少々奇天烈が過ぎるが。
「全員復活おめでとう! ウェーイ!」
【ナカ━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)━━マ】
「(いい子のふりをしている優雅な微笑)」
「わぁい! これで皆揃ったねー!」
「すやぁ……」
「めでたいから寝てる求道者胴上げしようぜ!」
「それは妙案ですね。では、求道者に対する重力だけ調和してフワフワに……」
【指揮者、それで過去に求道者を三日間空の上に置き去りにしたの忘れてないか?】
「ふふふ、辞めておきましょう。私は求道者の事を妹のように思っていますから」
「じゃあ普通に胴上げしようぜ! ワッショーイ!」
【それなら良し。では俺も∩(´∀`∩) ワッショーイ】
「なら私も」
「私も混ぜてぇ」
寝ている求道者が持ち上げられ、四人から胴上げをされる。
講師が加わっているせいで、滞空時間がとんでもない事になっており、殆んど曲芸の域だった。
「むにゃむにゃ……任務成功むにゃ――ハッ!? ここは!? えっ、空? なんでぇ!?」
「ワッショイ!」
「また貴女ですか先生!」
【求道者、久しぶりだな!】
「あ、講師! 無事に復活できたんですね。それは喜ばしいです! が、それはそれとして降ろしてくださいっ」
目覚めと同時に胴上げの浮遊感を味わったせいで、求道者は目を白黒させていた。
その気になればその常人離れした身体能力でどうとでもなるのだろうが、やがて楽しくなってきたのか、普通に受け入れている。
「あははっ皆を見下ろせるのは気持ちが良いですねぇ!」
こんな事を言ってしまえるくらいには順応していた。
それを遠巻きに見つめながら、トウラクは呟く。
「……凄い集団だね」
「ええ。何故かSランク達を思い出したわ。まあ、アイツらにここまでの協調性はないけれど。自分本位で勝手に動くもの」
「……そうだね」
トウラクはケイを見て物凄く何かを言いたそうだったが、ぐっとこらえている。
言ったが最後、ここでケイと戦う羽目になりそうだからだ。
戦闘自体は大歓迎だが、流石に第五の天使との戦闘を控えた状態では心の底から刀を振るえないだろう。
さらに言えば、ネームレスとミロクも口を開けかけていた。
「……ようやく揃ったね」
講師達を見ていたルシエラが感慨深そうにそう言った。
その景色は本来、一つの世界を犠牲にした上に成り立つものだった。
しかし多くの奇跡と助けを借りて、今最善の結果としてこの現実は目の前にある。
「7人が揃うなんていつぶりだろうか」
「これで万全の状態で戦いに臨めるな」
仮想ウィンドウから目を離すことなく答えた博士を見て、ルシエラは優しく微笑みかける。
「君もあそこに混ざってきていいんだよ? 再会を喜ぶ暇くらいはあるさ」
教授の提案を博士は鼻で笑い一蹴する。
「興味ないね。僕がそういうのは苦手だって知っているだろう」
「そうか。じゃあ私と一緒に二人で銀の黄昏の復活を喜ぶかい?」
「遠慮しておく。大方、殺した自分が混ざる資格はないと思っているんだろ。そういうの気にする連中じゃないってお前も知っているだろ」
「……ああ、君は銀の黄昏に入った時からそうだったね」
「昔話なら付き合わないぞ。まさかあいつらに影響されて感傷に浸っているんじゃないだろうな」
博士は少しうんざりした様子でそう言ったが、ルシエラは微塵も反省した様子はなく微笑んでいる。
博士はルシエラを一瞥したが、すぐに興味なさそうに視線を仮想ウィンドウに戻した。
「ほら、向こうからやって来てくれたぞ教授」
言われてそちらを見てみれば、講師がいた。
その顔には【(´・ω・`)】と浮かんでいる。
「どうしたのかな講師。体の調子が優れないのかい?」
【いいや、それは問題ない。しかし、求道者のことなんだが】
講師は後ろで未だに胴上げをされている求道者を見て、ルシエラ達にこっそりと告げた。
【もしかして先生と喧嘩しているのか? ずっと、先生呼びで距離があるんだが】
「あら、それが普通じゃないの?」
興味が隠せていないケイの質問に、講師は首を横に振る。
【いいや。先生と求道者は仲が良かった。特に求道者の方は、ラッカちゃんと呼ぶくらいには……】
「えっ」
「先生が……ラッカちゃん呼びされていた!? ほ、本当かしら? 今、あんななのに!?」
【ああ】
講師は深刻そうに頷いた。
【何かわだかまりがあるのなら、第五の天使までに解消するべきだ。……特に俺達は不和が原因で一度滅びかけているのだからな(ノД`)】
「心配はいらないぞ講師」
博士は視線を向けることなく答える。
それどころか、その質問が来ることがわかっていたかのように講師へと一冊の本を手渡す。説明をしようとしていたルシエラは、その機会を逃して僅かに肩を落としていた。
【これは?】
「今の求道者の扱い方が書いてある。他のやつはその辺が得意だが、お前は意外と不器用だからな。まとめておいた」
【ありがとう、助かるよ。……ふむふむ、今の求道者は記憶が欠けているのか。φ(・ω・`)メモメモ】
「徐々に取り戻している最中だから、あまり気にするな」
【成程。……ちなみに、取り戻す順番に法則性は?】
「無いな。アイツ次第だ」
【なら、厄災が始まってから死ぬまでの記憶は】
「それはまだ殆ど戻ってない。教授に殺されたことは最初に思い出したけれどな」
【そうか……】
講師は再びマニュアルをぱらぱらとめくる。
それから頷き、閉じると懐へとしまった。
【わかった。ありがとう博士】
「構わない。面倒事を避けるためだ。お前はまともだから話していて楽だな」
【博士こそ、相変わらず全員をよく見ている。俺が困惑すると想定していたのだろう】
「いつもの事だからな」
それ以降口を閉ざした博士を見て、講師は一礼をすると再び求道者たちの方へと
戻っていった。
すぐにルシエラが近づき、揶揄うように言う。
「君は優しいね」
「やめてくれ。教授にまでそんな風に揶揄われたら僕はどこで安寧を受け取ればいいんだ? 全く、さっさと次の認証システムを目指すぞ」
作業を終えて博士は立ち上がる。
そして珍しく率先して彼は認証システムへと歩き始めた。
「彼、ああ見えて意外と嬉しいんだよ」
ルシエラは歩きながらこっそりとケイとトウラクにそう告げる。
こっそりとは言え聞こえている距離ではあるのだが、博士は相変わらず何も言わず仏頂面だった。
『これより、コンテンツ隠蔽を図ったテム子の裁判を始めるよ。司法は今、君の全てを白日の下に晒し公平に裁きを与えるだろう』
『な、なんですか。私は聞かれなかったから黙ってただけじゃないですか!』
『本当かい? その辺をじっくり聞こうねぇ』
『どうせ太ももも隠しているのだろう!? そうなのだろう!? 余、そういうのわかっちゃうぞ!』
たぶん情報解禁されました!
わぁい!