【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第561話 天より墜ちた罪人1-5

「……始まったね」

 

 ルシエラは、足を止めて天井を見上げた。

 全てが停止した世界では、この戦いで基地が揺れる事はない。

 しかし、肌を刺すような殺気と押しつぶされるような威圧感がそれの再臨を物語っていたのだ。

 

「勝てるかなぁ……」

 

 銀の黄昏は、確かに揃った。

 しかしそれだけでは足りない事をルシエラは理解している。

 仮に銀の黄昏だけであれば、戦闘を避け別世界への逃亡を計画していただろう。

 それ程までに無謀な敵であった。

 けれど彼女は勝利を確信し、学者に笑みを返す。

 

 「勝つさ。牙塔トウラク達がいるからね」

 

 かつて自分を止めた剣士の言葉が、今ここまで彼女を連れてきた。

 

『救いたくはないのか、世界を』

 

 あの日の言葉が、今も頭の中で繰り返される。

 

「世界を救うのは私達だと信じているよ」

「うん、頑張ろうねー」

 

 意気込む学者に笑みを返す。

 きっと彼女は、それを決意だと受け取ったのだろう。

 しかし、それは彼女にとってはあの日の彼との誓いなのだ。

 

『どうする、他所の世界の剣士にあっけなく世界を救われるか、それとも今度こそ英雄になるか』

「……私は英雄にならなければならないね」

 

 ルシエラの足取りは、一歩ずつ重くなっている。

 その事に本人は気が付いていない。

 

「教授……あ、あの」

「一つ、お願いしてもいいかな学者」

「は、はい! なにかなぁ?」

「私の銘が管理している認証システムを代わりに破壊して欲しい。合図の後で頼むよ」

「いいけどぉ、一人で大丈夫ー?」

 

 心配そうに顔を覗き込んでくる学者に、ルシエラは咄嗟に顔を逸らした。

 そして、そんな自分の仕草に気が付いて自嘲気味に笑う。

 

「すまない、これじゃあ昔と同じだ」

 

 まず最初に、彼女は取り繕う事を止めた。

 そして学者を見つめ返す。

 

「あの部屋で、一人にしてくれないか。少しだけ……覚悟を決める時間が欲しいんだ」

「わかったよぉ」

 

 学者は、快く頷いた。

 そして何かを思いついたように、ルシエラに大げさに抱き着く。

 

「学者?」

「私を信じてくれてありがとうねぇ。教授は、本当に変わったんだねえー」

「そうかな。自覚はないけれど……あの人が、別れを告げてくれたからだろうか」

 

 ルシエラは学者を抱きしめ返し、すぐに再び歩き出す。

 

「それじゃあ、手筈通りに頼むよ」

「わかったぁー」

 

 彼女は信じて、地上へ続く道に背を向ける。

 きっと彼らなら自分が居なくても勝利するだろうと信じているからだ。

 

 

 

■

 

 

 

 ねえねえ、この天使強くない?

 めっちゃ強くなーい!?

 

「ケイちゃん、無茶はしないでくださいね!」

「はい!」

 

 俺は今、強化形態でお空ピュンピュンバトルの最中である。

 でっかい鳥さん相手に、そこそこマジのバトルを繰り広げていた。

 さて、そんな俺のイかれたメンバーを紹介するぜ!

 

 まずは、俺を率いるフェクトムの愉快な仲間達!

 Sランクにデモンズギア使いが二人、そして収束砲撃食いしん坊と、万能型のネームレス。大抵はこれで何とかなっちまう。控え選手に万物創造とかもいるぞ!

 

 そして我らが主人公、牙塔トウラクとルトラ!

 言わずと知れた俺達の世界の最強の一人だ。 

 剣に銘を刻印し、力をその身に宿すことができるぞ!

 

 最後に銀の黄昏の方々!

 ラッカちゃんを筆頭に「もうあの人だけでいいんじゃない?」というメンツだけで固められた、僕の考えた最強のチームだ。

 

 こんな三組が揃ったドリームチームが、第六の天使改め第五の太ももと戦うなんて、こりゃ勝ったも同然だな! おいおい、簡単に勝っちまったら俺の新形態お披露目出来ないよぉ!

 

 ……って、思ってました!

 

『こいつやっべ^^』

 

 アトラスティア上空を縦横無尽に飛び、俺とトウラク君が天使に喰い下がる。

 そもそもサイズ感からして、100mの鳥と俺達とではスケールに差があった。

 羽ばたきの風圧が魔力を起こし、それだけで俺達を押し返す。

 

「『U-1874【空蝉】の鋳造を開始――鋳造、刻印、完了。神羅、一振り』」

 

 その場でトウラク君の気配が消失する。

 次の瞬間、彼は天使の進行方向に姿を現わした。

 

「『A-132より銘【苛烈】の鋳造を開始――』」

 

 鞘が彼の前に飛来し、その中に銘を刻印された剣が創造されていく。

 

「『鋳造、刻印、完了』」

 

 彼は苛烈の名にふさわしい斬撃で天使を真正面から斬りつける。

 そして、その最中で叫んだ。

 

「ケイ!」

「わかったわ」

『本当に?』

 

 原作愛を舐めるな。

 ……うーん、たぶん、こうしたいのかな?

 

 剣に意識が向いた僅かな隙をついて、俺は天使の翼と足に銀の鎖を放つ。

 これで拘束は完了した。

 後は、この鎖を地上のメンバーに渡せばよい。

 

「講師、先生」

「よし来た! 曰く、桜庭ラッカは城を片手で押した事がある」

【ぬおおおおおおおお!】

 

 二人は鎖を掴むと、そのまま力任せに地上から引っ張った。

 剣撃と鎖が天使を地上に堕とす。

 広場に落下した天使へと、充填を終えたトアちゃんとネームレスが、収束砲撃を放った。

 それに続くように、博士が無数の兵装の銃口を天使に向けて、大量の魔力砲を放つ。 

 更に重ね掛けされるように、世界に規則が二つ追加される。

 

『前提規則、攻撃を避けてはならない』

「実はあなた、飛べないんですよ(咲いた花のような笑み)」

 

 向かう攻撃は不可避になり、そして翼はその役目を失う。

 間もなく、その体は焔によって燃え盛り、概念から焼却が始まった。

 

『普通、ここまでやれば勝てるんだけどねぇ。もうこうやって地上に堕とすの何回目だい?』

 

 4回目?

 なんかギミックだけのクソボスを相手にしている気分だよ。

 なんかやたらとタフだし、攻撃も一撃食らったら即死レベルだし。

 天上君、これ調整ミスってない?

 

『そんなことないぞ。当時のアトラスティアの文明レベルに合わせたのだ』

『……試しに第六の天使のスペックを教えてください。ゲーム風に』

『システム先輩、第六の天使ではなく第五の太ももだ』

『そこ訂正しなくていいので』

『大事だぞ。で、肝心のスペックだが別に特筆すべき点はないな。全位相世界で最高のHPと、魔力、物理ダメージ99%カット。概念干渉耐性あり、即時再生、他にも――』

『もういいです。これはクソボスです。炎上です。ショート動画で悪口いっぱいです。後日の生放送が荒れます』

 

 天上君、やりすぎだよぉ!

 なんでそんな強い化け物を野に放ったの?

 そんなの勝てるわけないじゃん!

 俺達の世界でも勝てるか怪しいよ!

 

『それより強い余に勝った時点で勝てるぞ。それにこの世界には高位の銘である博愛がある。博愛、本当にすごいんだからな! なんでも出来るんだから、これくらいは倒して貰わないと困る』

『こいつ真面目にこれ言ってるのやばいねぇ』

『高難易度の意味をはき違えているゲーム運営ですね』

 

 やれやれ、困ったものだよ。

 しかもこの後に新生して中から太もも出てくるんでしょ?

 もっと強くなられたら困るんだけど。

 

『いや、ムチムチの白い美女が出てくるだけでスペックは変わらないぞ。しいて言えば、速度が微増する』

 

 意味の無い第二形態とは恐れ入った。

 

『ちなみに星天形態とやらで事足りるぞ。天使の攻撃は問題なく通るからな』

 

 駄目だ。

 星天形態にはカメ君が必要不可欠……!

 ど、どうすれば!

 

『はっはっは、余ってば天使の更に上位の存在なんだから代用できるぞ。余、便利強化パーツだぞ。余ったスロットに余を装備してくれ』

 

 ……くっ、カメ君がいないと!

 

『えっ、先導者、余の話は聞こえていないのか?』

『星天形態は私とカメの形態なんだ。それを相棒はこだわっているんだろう』

『なるほど、合理的判断だ』

『どこがですか?』

 

 これでは勝てない。

 負ける事も無いだろうが、千日手だ。

 どうすれば……!

 

『……ふむ、ならばこう提案しよう。先導者よ、今こそ余との合体。天上形態になるべきではないだろうか。衣装はシステム先輩が用意してくれている』

 

 天上君……!

 

『太もものように、左右揃ってこそ完成するのだ。余が左太もも、先導者が右太ももだ』

 

 天上君……?

 

『タイミングは先導者に一任する。しかし、太もものハリはこちらに一任させて貰う』

 

 天上君……!?

 

『貴女ですよ、この化け物を育てたのは』

 

 お、俺はなんて存在を……。

 いつの間にこんな……!

 

『おや珍しく後悔していますね』

 

 こんな、コンテンツに真摯な子を育ててしまったんだ……!

 

『あっ、こっちも化け物でしたね』

 

 わかったぞ天上君。

 それじゃあ、ここでお披露目しよう。

 

 このコンテンツは銀の黄昏が主役だからこそ、俺はこの辺がちょうどいい!

 俺は決して出しゃばらないミステリアス美少女なんだ!

 

『ミステリアス美少女にしては出しゃばりまくりですけどね、貴女』

『行くぞ、先導者。今こそ、余たちの太もも(ひかり)を見せる時だ!』

『……ん? 今、光のニュアンスがおかしくなかったですか?』

 

 

 

 

 

 




今日はミロク先輩が公開ソル~!
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