【12/12 1巻発売!】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない 作:不破ふわる
実に一年ぶりの新形態だ……!
祝福形態は言わば、究極形態である。
ならばこれは本編後の強化形態というべきだろう。
『システム先輩、余は見くびっていたようだな。口先だけのソシャゲ馬鹿だと思っていたが』
『ふふん、そうでしょうそうで――ソシャゲ馬鹿!?』
『まあまあ素直に実力を認めているんだからいいじゃないか』
『よくありません! いいですか、私はこの集団の中で一番まともなんですから!』
そんな事はないと思うよ。
『えっ』
さーて、それじゃあ暴れさせて貰おうかな。
まずはクールに脚をアピールしないとね。
「『ケイ……その姿から感じる力はやっぱり』」
「そうよ。天上の意思の力。正確には、その残滓だけれど」
俺は軍服の裾を摘まみ上げながら、そう言った。
トウラク君の驚いた顔を見ていると、この姿になった甲斐があるというものだ。
「あの天使に有効なのは、やはり根源の力。だからアドリブだけれど天上の意思の力を纏ってみたの」
「『そんな土壇場で……』」
「大丈夫よ。だって、貴方やミロク先輩達がいるじゃない」
俺はそう言って流し目と共に笑みを浮かべる。
それ以上は何も言う事はない。
元はミステリアス美少女なんだから、おしゃべりにはならないよ。
代わりのおしゃべりさんがいるからね。
「相棒、いつの間にそんなに絆されたんだい? あんなに孤独を愛していたというのに君は。……私を表に出したのも、外付けの制御装置にするためだろう? 人間一人に与えるには天上の力は過ぎた代物だからねぇ」
「『なんだって!? ケイ、やっぱり――』」
「もう心配性ね。保険よ。私がそんなに無茶をするように見えるのかしら」
「『見える』」
「……はあ、もういいわ。さっさと始めましょう」
俺はため息と共に天使を見る。
天使は派手に蹴り飛ばされた後、地面でダウンしているようだった。
もうほぼ瀕死である。
この形態、つっよ……。
『当然だ。余、上司だぞ。上司のキックだぞ』
『上司がこんな有様だとは思わないでしょうね』
天上君、ちなみにこの形態で出来る事は?
『全ての行動が超越命令になるぞ。あと、太もも』
バランス考えてね。
『はぁ、これだから素人は。そんなインフレをしても、プレイヤーが離れるだけですよ』
『うーん……なら、根源パワーで全スペックの強化にするか。あとは、その辺の空間を裂いて、鏡界エネルギーをビームとして出せる、とか。どうだろうか』
うんうん、それならいいね。
強いけど無法ではないいい塩梅だ。
これなら、これからフェクトムで事件が起きてもこの姿を使えるよ。やっぱり本編後は特別な形態を切り札で持ちたいもんね。
『事件、起きるのか? 外から来訪者が侵略してくることはあるだろうが』
あんだけ生徒が入ってきて訳アリが0人な訳ないだろ! 俺の美少女センサーが告げてるんだよ。フェクトムでまた一波乱あるソルねぇ……って。ツグノちゃんとか怪しいよ。
ってわけで、これは試運転も兼ねているんだ。
ここで使っておけば「あれは、あの時の……!」って誰かが言ってくれるかもしれない。
「――ッ!」
俺はその場で魔法陣を蹴って進む。
この姿だと空を飛ぶことが出来ないので、魔法陣を地面に展開しての移動になるからだ。
『そんな事はないぞ?』
この姿だと空を飛ぶことが出来ないので、魔法陣を地面に展開しての移動になるからだ!
『わかった』
『順応早いなこの新人』
天使に近づいた俺は、その懐に潜り込むと大きく蹴り上げた。
巨体が軽々と宙に浮かび、その無防備な体を空に晒す。
「呆けていると、私だけで殺してしまうわよ?」
その言葉に全員が動き出した。
天使に全方位から攻撃が集中する。
激しい爆発の中、天使は翼を羽ばたかせて更に高く飛翔した。
恐らくは一度距離を取って仕切り直すつもりなのだろう。
逃がさんぞ!
『先導者よ、その鎌をその場で振るうのだ』
ほう、鎌に何か仕込んだか。面白い!
「逃がさないわ」
俺は細身になった鎌を遥か上空の天使へと振るう。
すると、鎌はその接合部が次々と外れて、一本のワイヤーで繋がれた蛇腹の刃となり天使に向かって伸びていった。
なにこれ、すご……。
『普段は幾重にも折りたたんで鎌として使える。そして遠距離の相手にはこのように蛇腹剣として自由自在に伸縮して巻き付いたり切り裂いたりするぞ。本当ならこれと超越命令を組み合わせて距離無限の攻撃になったんだが……これじゃあまあ10キロメートルが限界だろうな』
『まだ力の加減にラスボス残ってますね』
『こいつ自分基準で厄災を作ってるから難易度バグってんだろ』
後で天上君に程よい強者講座を開いてあげるとして、この武器は今までのソルシエラにはなかったな!
武器が増えるとコンテンツに幅が出る。ありがとう!
『できれば、その蛇腹で敵を縛り上げてその上に乗って足で踏んで欲しい。その為に作った』
……まあ、ありがとう!
「ふふっ、空に逃げ場なんて無いわよ」
刃は天使を抜き去り、更に空高く伸びる。
そして空で格子状に組み上げられると、瞬く間に天使を捕縛した。
俺は刃を踏みつけて、一息に刃の網を縛り上げる。
翼すら満足に動かせなくなった天使は、すぐに再び地面に落ちた。
『今! 踏みつけチャンス今!』
『こいつうるせえな^^』
『うるさいですね……』
やれやれ、仕方ないな。
「――あら、もう捕まえてしまったわ」
俺は天使の上に飛び乗り、網へと繋がるワイヤーを足で踏みつけ抑える。
その下では天使が逃げ出そうとしているが、刃から放たれるなんか強そうなエネルギーが天使の体を破壊していった。
マズイ、このままだと勝っちゃう。
圧勝しちゃう。
『大丈夫だ。これはまだ旧第六の天使に過ぎない。ここから第五の太ももになるのだから』
『大丈夫なわけ無くないですか? あなたの中で太ももって万能な理論なんですか?』
まあ、なら大丈夫か。
この蛇腹鎌でまだまだトリッキーな戦い方もしたいしね。
博士に華も持たせやりたいし、へへっミステリアス美少女はやることが多くていけねえや!
『ミステリアス美少女なのに鼻の下を擦ってそうな言い方しないでください』
■
天上の意思の力は、圧倒的であった。
まさか、それを味方側として実感することになると果たして誰が予想していただろうか。
「はぁ」
ケイは全員の前で、完全に天使を無力化している。
その表情は余裕そのものであり、冷たい目で天使を見下ろす姿はやはり裁定者であった。
「つまらないわね」
「『流石ケイだね、手を貸す間もなかった。そのまま切り刻んでしまおう……ケイ?』」
トウラクの呼びかけにケイはすぐに答えなかった。
彼女は眉間にしわを寄せて、天使を見ている。
「弱すぎる」
「『え?』」
彼女の表情は、不愉快そうに歪んでいた。
まるで、この圧勝は天上の意思の力が理由ではない、とでも言いたげに。
「その通りだ、那滝ケイ。先程から、どうにも観測上の数値がおかしい」
「博士……やっぱりそうなのね。道理で、私が殺そうとしているのに慌てないと思ったわ。貴方の事だから、この天使を殺すのに躍起になると思ったのに」
彼はその言葉を肯定も否定もしなかった。
ウィンドウに映る彼の顔は、ただ目の前の現象を興味深そうにしている。
「以前に比べて攻撃よりも防衛に特化した能力……まるで何かを守っているようだ」
「何か……それって――っ!?」
足の下がぐらりと大きく揺れる。
天使の体が震え始めたのだ。
「っ、これ……!」
「奴の魔力量が上昇して――いや、違う! 奴の中にある何かの魔力が溢れているんだ!」
「『なら、早く斬ってしまおう!』」
一瞬あっけにとられたトウラクだったが、すぐに気を取り直して太刀を構える。
その背後に六本の銘が刻まれた鞘が飛来し、収束を始めていた。
間もなく、彼が身動きの取れない天使に向けて斬撃を放とうとしたその時である。
天使の体にひびが入り、その中から何かが飛び出した。
刃の網を潜り抜けて、それは再び空へと昇る。
まるで、本当の自分を見せつけるように。
「……成程、その姿でようやく本当の第五の天使というわけね」
ケイは納得したように、ソレを見上げる。
手元で軽くグリップを振ると、ワイヤーが巻き取られ再び大鎌の姿に戻った。
この天使だったものを縛る必要はもうないのだろう。既に意味はないのだから。
言うなればこの大きな体は、蛹だったのだ。
「――裁キ、ヲ」
大理石を掘り出したような白く輝くその体は、美しい美術品の様であった。
外観こそ人型だが、白くのっぺりとしたその体は何かが人を表面上だけ再現したように見える。
銀色の目が、世界を見下ろす。
その背に生えた白い翼は、指を束ねて作られていた。
ここに、真に第五の天使が降臨を果たす。
「お互い、準備運動は出来たという訳ね」
この厄災はまだ、終わらない。
『白く輝く脚もいいぞ!』
『相棒、そのワイヤーで相棒を縛ってもいいかい?』
『いい訳ないだろ張っ倒すぞ』
『うーん……あの姿ではガチャ実装は出来ないですよ。どうして服を着せなかったのですか。エネミーすぎますって見た目』
※10/27 今日は遂に彼女が来たソル~!近況報告に走るソルよ~!
今日は遂にソルシエラが公開ソル~!