【書籍化決定】かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない   作:不破ふわる

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第60話 突貫と第二形態

 六波羅さんがちゃんと強くて誇らしいよ。

 

 エイナは距離を無視して相手に必中する矢を放つ事ができる。

 これに六波羅さん本体の持つ無敵モードが追加されると手の付けようがない。

 

 だから、事前に無敵モードを使わせておく必要があったのだ。

 エイナだけなら、対処できそうだからね。

 

『とはいっても、スーパーミステリアス美少女タイムでなければ難しかっただろうねぇ。エイナはどうやら考えうる限りで最良の契約者を手に入れたようだ。充分に力を使いこなしている』

 

 流石は六波羅さんやでぇ……。

 

『どうするんだい? 充分にミステリアス美少女をしたのだからいい加減片付ける? その気があるなら終わらせるが』

 

 それは六波羅さんに失礼だろ!

 六波羅さんはなぁ、エイナちゃんのためになぁ……!

 

『勝手に自己完結して感極まって貰っては困る』

 

 倒して良いなら既に倒しているよ。

 正直、エイナちゃん狙いで永遠に砲撃を続ければ良いわけだし。

 矢だって、気合で耐える。

 

『気合で……?』

 

 美少女エイナちゃんと六波羅さんの合作の矢だぞ。

 ちょっと刺激的な形をした愛みたいなもんだろ。

 

 俺はそれを全身で受ける覚悟がある!

 

『ミステリアス美少女は絶対にそういう事はしないからな』

 

 わかってる。 

 だから、一度不利な状況っぽく見せて六波羅さんも立ててるんだろうが。

 全部、ミステリアス美少女としての筋書きだよ。

 

 六波羅さんは原作における最強格のキャラである。

 これから起こる様々な事件に対して「でもそれ六波羅さんで勝てるじゃん」とマジレスされるくらいには強い。

 

 そんなお方を例えミステリアス美少女と言っても一方的にボコボコにするわけにはいかない。というか、ボコボコにしても最後にはあの人勝ちそうだし。

 ならば、ここで俺が取るべき行動は何か。

 わかるかな、星詠みの杖君。

 

『うーん、また幻覚でもするかい? 次は本当に』

 

 え? 君、そういうのもいけるの?

 やば……。

 

 じゃなくて、ミステリアス美少女はそんな短期間で同じ搦手を二回も使わないんだよ。

 あくまでミステリアス美少女は多くの手札を持って、全ての事象に対してクールに対処しなければならない。

 同時に、六波羅さんの顔を立てる。

 

 ならば、ここは敵対勢力同士の衝突という形に落ち着けるのが良いだろう。

 

『敵対勢力……ああ、牙塔トウラクか』

 

 イエス、その通り。

 トウラク君から見れば、Sランク同士の戦いだ。

 主人公とは関係のない所でぶつかり合う最強同士……いいよね。

 

 これからトウラク君がこの強敵たちと戦うことになるのだという事を読者に知らしめる為のいわばお披露目回。

 

 勝つのは決まっているが最強議論で「でもアレは初見だったから負けただけで、次は六波羅さんが勝つだろ」という意見を出すように立ちまわる必要があるのだ。

 

『ふむ、具体的な方法は?』

 

 まず第二形態を用意します。

 

『待て待て待て待て、急に変なものを用意するな』

 

 変なものか。

 六波羅さんが初めてソルシエラを第二形態へと変化させるのだ。

 ソルシエラにより本気を出させた六波羅さんの実力が窺えるってものだろ。

 

 同時に、ミステリアス美少女の底の知れなさをアピール出来る。

 

『そうか……まあ、確かに?』

 

 というわけで第二形態っぽい雰囲気を出すことにしよう。

 まあ、いつものように口八丁手八丁で、後は魔法陣を豪華にして風起こしたり?

 

『いや、そんなことするくらいなら契約段階をフェーズ2に上げるさ。ちょっと待ちたまえ』

 

 待て待て待て待て。

 え? 本当にあるの?

 嘘とかでもなく?

 

『本来は無いが、君との契約状態がぐちゃぐちゃになっているからねぇ。こうして段階を踏んで上げないと力が解放されないんだ。二度手間だよ、まったく』

 

 なんかごめんなさい……。

 でも、それならいけそうわよ!

 

 ミステリアス美少女の第二形態をお披露目するわよ!

 

『あ!』

 

 どうした。

 

『マズい、私たちは一つミスを犯した』

 

 え、何?

 この完璧絶対無敵究極最強天才ミステリアス美少女がミスを犯した……?

 

『ああ……第二形態なのに、衣装がない……』

 

 …………ああああああああああ!

 やっべえ、そうだわ!

 せっかくミステリアス美少女の第二形態なのに、用意がないわよ!

 こんな事なら、昼に適当な衣装を買っておくんだったぁ!

 

『どうするんだ相棒。せっかく第二形態を披露しても見た目が変わらなきゃパッとしないぞ!』

 

 えー俺史上、最大のピンチです。

 六波羅さん相手に、新たな力を解放したという事にするならば衣装の変化はしたい。

 

 見た目が変わる第二形態と変わらない第二形態では、全然意味が違うのだ。

 

 今後戦うときも「アレは、六波羅との戦いで一度だけ見せた形態……!」とか言われるようにしたい。

 

 その為に衣装が必須だ。

 

『……相棒』

 

 言わずともわかっている。

 今から、用意するんだろ新衣装を……!

 

『ああ、そうだとも。昼に行った店を覚えているね?』

 

 勿論。

 

『あそこは電子マネーによる決済が行える。私が君のダイブギアとレジに同時に干渉して、爆速で会計を済ませよう』

 

 まさかの力業。

 でも、確かにミステリアス美少女は服を盗んだりしない。

 

『勿論、買い物の時間も書き換える。これにより、いつの間にか買われていた衣装という不思議な状況になるわけだ』

 

 ミステリアス美少女は買い物すらミステリアスに行うと、そういう事だな!

 

 よし、では今から俺は六波羅さんの矢を相手にしながらビルをぶち破ってダイナミック買い物を始める。

 

『買うものは演算で私が自動で拡張領域にしまい込む。君はただあの店のエリアを通り抜けるだけで良い』

 

 なんて頼もしい相棒なんだ……!

 

『ヒノツチPayのキャッシュバックキャンペーンもきちんと対応してあげるからねぇ^^』

 

 財布にも優しい。

 

 これで心置きなく買い物出来るぜ!

 

「…………っ」

「おいおい、逃げるのかよォ!」

 

 ぴゅーと飛んだ俺を見て、六波羅さんは声を上げながら矢を放ってくる。

 俺は無数のビルの間を縫うように進み、旋回し、一本ずつ砲撃で相殺していく。

 

 一直線にビルに突っ込むと、露骨すぎるしここは何度か遠回りをして……、今です!

 

 既に六波羅さんがエイナを解放した時に付近のビルの窓ガラスは割れている。

 俺達のいたビルも例外ではなかった。

 

「っ」

「無駄だ。矢はテメエを必ず貫く」

 

 ガラスが割れ、枠だけになった場所へと、俺は減速せずに入り込む。

 動体視力が爆上げ中なので、こんな狭い場所もホイホイ潜れちゃうのだ。

 なんなら周りを見渡す余裕すらある。

 

 あ、このペンダント良いね。

 最後の一個みたいだし買っちゃお。星詠みの杖君、これもこれもー!

 

『仕方ないねぇ。無駄遣いは推奨しないのだが……はい、買い物は完了したよ。そのまま向こう側に行ってくれ』

 

 通過した時間は一秒程だろうか。

 しかし、俺は確かに買い物を終えているようだった。残高もたぶん減ってる。

 星詠みの杖君……いくらの服買ったんだろう。

 

『後で、たくさんダンジョン救援しようねぇ^^』

 

 おい高いの買っただろお前ェ!

 

『はっはっは、ミステリアス美少女が安い服買うわけないだろう! そういうギャップ萌えのユーモアはSNSにありがちなキャラ崩壊四コマでしかありえない!』

 

 君、また勝手にダイブギアに干渉してネットサーフィンしたでしょ?

 急にそういう俗物系の例えとか出すの止めてよね。

 

 すげえ納得したけどさ。

 

『というわけで、今から拡張領域に入れた新衣装を早着替えできるように新たに魔法式をデザイン込みで組み直すから少し待っていたまえ』

 

 はーい。

 

 それじゃ、六波羅さんの上でもくるくる飛んでますかね。

 

 俺はビルを抜けてすぐに急上昇。

 追ってくる矢を撃ち抜いて、そのまま六波羅さんを見下ろせる位置へと戻った。

 

「まさか、逃げ疲れて降伏しにきたのかァ?」

「そんな訳ないじゃない」

「ま、そりゃそうか。今更そんなのしらけるしなァ」

 

 六波羅さんは矢を再び放ってくる。

 その数、20。

 一秒に放たれたとは思えない圧倒的な数に対して、俺は横に五つの魔法陣を展開して矢を全て迎撃した。

 

 二つの高密度の魔力がぶつかり合う事で、今日何度目になるかわからない激しい爆発が起こる。

 

「ははっ、いいねェ」

「……」

 

 俺は無表情で六波羅さんを見つめた。

 ちなみに何も考えていない。

 

『よっし、出来たよ! 後は好きにやってくれたまえ』

 

 流石、仕事が早いね。

 

 ならば、こちらも行くとしようか!

 

「っ!」

「来るか、ソルシエラァ!」

 

 俺は六波羅さんへと向かって飛ぶ。

 

 迎撃の為に放たれた矢を撃ち落としながら急接近して、俺はわざと大振りに六波羅さんへと切りかかった。

 

「――当たらねェよ、そんなぬるい攻撃」

「っ」

 

 大鎌の攻撃を六波羅さんはその場で低く飛んで回避する。

 そして、着地する事無く体を捻りながら俺へと矢を放った。

 

「お返しだ」

 

 回避も迎撃も不可能な距離。

 俺は全力で魔力による障壁を作り上げて矢から身を守った。

 

「誰が一本だけって言ったよォ!」

 

 矢がさらに放たれる。

 一度、防御にリソースを割けばその分だけ迎撃がおろそかになる。

 やがて、俺は無数の矢によって障壁を破られようとしていた。

 

「……」

「だんまりかァ? なら、これで終いだァ!」

 

 最後に一際強く魔力が込められた矢が放たれた。

 

 今までで一番大きな輝きを放つ矢は、俺へのトドメとしては相応しいだろう。

 

 そう、あくまで今は六波羅さんのターン。

 六波羅さんの強さを立てるシナリオである。

 

 ここまでは優勢にさせておいて構わない。

 

「っ!?」

 

 最後の一矢により、障壁ごと激しい爆発が起きる。

 というか、起こした。

 

 辺りを黒煙が包み込み、視界が一時的に制限される。

 

『風、行きまーす。5、4、3、2……』

 

 相棒の声がカウントダウンを始める。

 

 今までは六波羅さんの見せ場。

 

 ここからは、スーパーミステリアス美少女タイムだ。

 

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