the Official Demon King 作:朝型人間
初めての投稿なので、改行など工夫できそうなことがあればアドバイスください!
ユグドラシル――かつて、VRMMORPGの頂点に君臨したゲーム。
その名を知らぬ者は、当時のゲーマーにはいなかっただろう。
圧倒的な自由度。
数千を超えるスキルと、数百に及ぶ種族と職業。
そして、プレイヤーたちが自らの手で築き上げる拠点やNPC。
それらすべてが、ユグドラシルを単なるゲームではなく、一つの世界へと昇華させていた。
だが、どんな栄華も永遠ではない。
サービス終了の告知がなされたのは、数週間前のことだった。
――サービス終了まで、残り一時間。
円卓の間は、静まり返っていた。
モモンガは一人、長机の中央に座り、虚空を見つめていた。
「……誰か、来るだろうか」
その呟きは、誰にも届かない。
かつては四十一人の仲間と共に笑い合ったこの場所も、今は彼一人きり。
サービス終了の告知が出たその日、モモンガはギルドメンバー全員にメッセージを送った。
『最後くらい、みんなで集まりませんか』
何通か返信はあった。
「仕事で無理です」
「家族サービス中なので」
「また今度の機会に…」
だが、ゲームに顔を出す者はいなかった。
(……わかっていたさ。みんな、もう別の生活を送っている)
それでも、最後の瞬間を共に過ごしたいと願い、彼はログアウトしなかった。
だが、扉は開かない。
一人で過ごす寂しさを紛らわせるために、かつての仲間たちが作ったNPCの設定を開き、指先でスクロールする。
「アルベド……シャルティア……デミウルゴス……」
仲間たちが丹精込めて作り上げた存在。その一つ一つを読み返すたび、胸の奥に温かさと痛みが同時に広がった。
(……アルベドの設定、そういえば)
モモンガは、ふと視線を止めた。
『ちなみにビッチである』
「……くくっ、懐かしいな」
仲間の悪ふざけ。
ギャップ萌えだった彼女の創造主を思い出し、懐かしさを噛みしめる。
ただ、女の子にこの設定は可哀想だろう。
だから、最後くらいは――
指先が、ゆっくりと動く。
『モモンガを愛している』
文字を打ち込み、保存を押す。
(……何をやっているんだ、俺は)
罪悪感と、ほんの少しの期待。
それは、孤独に抗うための、ささやかな悪あがきだった。
ピコン、と軽い音が響いた。
【システム通知】
長年のご愛顧、誠にありがとうございます。
あなたはこれまで「非公式魔王」としてユグドラシルを大いに盛り上げてくださいました。
その功績を称え、最後のサプライズとして――
あなたを「公式魔王」に認定します!
報酬:
・オーバーワールドアイテム【魔王の玉座】
・専用エリア「魔王城」生成
・特別称号「Official Demon King」
※本イベントはユグドラシル最後のサプライズです。
「……は?」
次の瞬間、地響きのような轟音が響き渡る。
ナザリックの地上に、黒曜石と紅玉でできた巨大な城が、まるで大地を割るように出現していく。
黒い炎を灯す塔、血のように赤いステンドグラス、空を覆う漆黒の尖塔――
それは、まさしく「魔王城」と呼ぶにふさわしい威容だった。
「……クソ運営、最後まで悪ノリか……」
口元が、自然と笑みに歪む。
「だが……最高だ!」
彼の視界に、新たなアイテムが表示される。
【魔王の玉座】――オーバーワールドアイテム
ワールドアイテムをも超えるそのアイテムは眩くも、怪しく、そして邪悪な魅力を備えた、まさしくユグドラシルの最後にふさわしいアイテムであった。
モモンガがアイテムをセレクトするとフレーバーテキストが浮かんだ。
『魔王は姫をさらい、玉座に座して勇者を待つ。ナニがなければ何もできまい』
「……おいおい、最後の最後で何をぶっ込んでくるんだ、運営……!」
だが、その胸は、久しく感じたことのない高揚感で満たされていた。
光が全身を包み込む。
骨の軋む音が消え、代わりに、肉が張り付く感覚が走る。
冷たかった世界に、温もりが戻ってくる。
「……これは……」
鏡に映るのは、現実の自分よりも健康的で、力強い男。
だが、その顔には、かつての疲れ切ったサラリーマンの影はなかった。
「……運営、最後までやってくれるじゃないか」
彼は笑った。
その笑みは、骸骨の冷たい笑みではなく、人間の温もりを帯びたものだった。
――サービス終了まで、残り三十分。
モモンガは時間を忘れ、新たに習得したスキルやアイテムを調べていると、この世界の終わりが近づいていることを示す表示が映し出された。
「最後くらい、みんなと玉座の間で過ごすか」
彼はメニューを操作し、ナザリックの全NPCに召集命令を送り、玉座の間へと転移した。
数分後、玉座の間の巨大な扉が開き、守護者たちが次々と姿を現した。
アルベドを先頭に、シャルティア、デミウルゴス、コキュートスたち守護者や、セバス、そしてプレアデスの面々、それにすべての僕達が――
彼らは一斉に跪き、頭を垂れる。
無言のまま、完璧な礼を取るNPCたち。
その光景に、胸の奥が熱くなる。
(……まるで、こう言っているみたいだ)
『我らが至高の御方、モモンガ様に忠誠を!』
そんな錯覚が、彼の心を震わせた。
モモンガはゆっくりと立ち上がり、背後の壁に掲げられた四十一枚の旗を見上げる。
「お前たちの創造主は――もう戻らない」
低く、しかし玉座の間に響き渡る声。
「この世界も、やがて終わりを迎えるだろう。だが――」
彼は手を掲げ、黒炎を生み出す。
炎は瞬く間に広がり、旗を包み込み、焼き尽くしていく。
「このモモンガだけは、ここに残った!」
炎の赤が、骸骨の瞳に映る。
「お前たちが望むのであれば――これからも、永久の時を共に過ごそう!」
(そんなことはできないと、わかっている……)
(だが、せめて――かつての仲間たちが残した、子供も同然の彼らとともに……)
モモンガは玉座の間を見渡し、声を張り上げた。
「聞け、我が愛しき者たちよ!」
「我こそが、アインズ・ウール・ゴウン!
――お前たちの唯一の支配者だ!」
モモンガは、静かに指輪を見下ろす。
流れ星の指輪――三つの願いを叶える事ができる指輪。
「……ならば、願おう」
彼は心の中で呟く。
『愛するNPCたちと永久の時を過ごすこと』
『彼らが望む支配者であること』
指輪が淡く輝き、星の光が玉座の間に降り注ぐ。
その瞬間、世界が白に染まった――。
筆が乗ってスラスラ書けた割に文字数が少ない…。
小説って難しいですね…。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。