DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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PROLOGUE

ここは“地球”とは異なる世界。

ここには皆それぞれに動物の耳と尻尾を持った人々が暮らしている。

 

――異世界フロニャルド。

 

これは一人の青年と彼を取り巻く多くの人々が織り成す、耳と尻尾と勇気と希望と……その他諸々以下略の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いくら何でも投げやりすぎやしないか!?」

 

俺は自分でもわからない謎の衝動に駆られて、誰とも知れない相手に向かってツッコミを入れていた。

 

「お兄ちゃん?」

 

突然大声を出した俺に、隣を歩いていた少女が首を傾げつつ問い掛けてきた。

 

「ん?……ああ、気にするな。ちょっと変な電波を拾っちまっただけだ」

 

「わひゃあっ!?」

 

くしゃっ、と少しばかり乱暴に少女の頭を撫でて、なんでもないと言うように歩き出す。

 

「ま、待ってよ!」

 

「あんまりのんびりしてると置いていくからな~」

 

「むー、お兄ちゃんの意地悪!」

 

「ワハハ、ユキは拗ねた顔も可愛いなぁ」

 

「か、かわっ!?」

 

「お、今度は真っ赤になった」

 

「お兄ちゃんっ!」

 

「ヤベ、流石にからかい過ぎたか」

 

少女の纏う空気が剣呑なものに変わったのを感じて、加減を間違えた事を悟る。

 

ここはもちろん――三十六計逃げるに如かず、ってことで。

 

「よし、このまま住処まで競争な!」

 

適当な理由を作って、いざ逃走開始だ!

 

「あ、逃げるな!……今日という今日は負けないんだから!」

 

「ほほぅ。それなら、もしユキが勝てた時には何でも言う事を聞いてやろうじゃないか」

 

「む……その言葉、二言はないよね?」

 

「当然だ。俺に出来る範囲で何でもしてやるよ」

 

「よーし。それなら……輝力、全開!」

 

瞬間、ゴウッと俺の横を突風が吹き抜けていった。

 

「……ふむ。いい加減少しは学習したようだ」

 

グングン遠ざかっていく黄色の光を見ながら、俺は独りごちる。

 

「だが、まだまだ甘い」

 

グッと姿勢を低くした次の瞬間、

 

 

――ズドンッ

 

 

巨大な爆発音に周囲一帯の森が揺れた。

 

 

 

 

 

もうじき住処が見えてくるというところまで迫ってきた時に、不意に違和感を覚えた。

 

「静か過ぎる……」

 

俺達のような土地神が住む場所というのは、ある種『聖域』と呼んで差し支えない独特の空気を持っている。

 

故に普段から静かな場所ではあるのだが、それでも今の静けさは異常だった。

 

「……とにかく、先を急ごう」

 

これが杞憂であればいい、と願いながら進む。

 

しかし、住処へ近づけば近づくほど、違和感はその存在を強くしていく。

 

それを無理矢理抑え付けて、足を踏み入れた住処(そこ)には――

 

「はぁ、また負けた……。あれ、お兄ちゃん、どうしたの?」

 

最悪と言っていいタイミングで、ユキが追いついてきてしまった。

 

「来るな、ユキ!」

 

「…………え?」

 

目の前に広がる光景を見たユキが言葉をなくす。

 

彼女が見たもの、それは――

 

「お父さん……?お母さん……?」

 

「……クソッ!」

 

物言わぬ亡き骸となった彼女の両親だった。

 

 

――ガサッ

 

 

「「っ!?」」

 

不意に静寂を破った物音に反応した俺達は、そこで『犯人』の正体を知ることとなる。

 

「グルルッ」

 

「魔物、だと……?」

 

その口から滴る赤い液体が、事実を雄弁に語っていた。

 

「あ、ああ……」

 

「ユキ?」

 

「ああぁぁあああぁぁぁああああぁぁぁぁっ!!」

 

突然突き付けられた両親の死と、そこに現れた魔物(はんにん)に感情が振り切れたユキが吠えた。

 

「ガウッ」

 

明確な敵意を向けられた魔物がそれに応じるように低く唸る。

 

「バカ野郎っ!」

 

俺は咄嗟に魔物へと飛び掛かるユキと、迎え撃とうと爪を振るう魔物の間に飛び込む。

 

「ぐぅっ!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

魔物の一撃をまともに喰らって吹き飛ぶ俺を見て、我に返ったユキが駆け寄ってくる。

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃんっ!」

 

「大じょ、ゲフッ、ぶ、だ……」

 

少し動かすだけでも全身に激痛が走るが、それを気合でねじ伏せて無理矢理身体を起こす。

 

「でも血が!血が出てっ!」

 

「これくらい、どうってことないさ。それよりユキ、お前は今すぐ逃げろ」

 

痛みを押し殺して、ユキに笑顔を見せる。

 

「嫌だ!このままじゃお兄ちゃんまでっ!」

 

「おいおい、俺はこんなところでくたばる気はないぜ?」

 

「でも、でもっ!」

 

「デモもストもない、駄々っ子は嫌われるぞ?」

 

「う、うぅっ……」

 

「うん、いい子だ」

 

優しくユキの頭を撫でると、俺は自分の血で地面に印を結んだ。

 

「お兄ちゃん、これは……?」

 

「転移の術だよ。……さよなら、ユキ」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 

――バシュゥゥン!

 

 

一瞬の閃光の後には、彼女の姿はこの場から消えていた。

 

「さて、待たせて悪かったな」

 

「グルルッ」

 

隙だらけだった俺達に襲い掛かりもせず、律儀に(?)その場に留まっていた魔物に向き直る。

 

「アイツがいると俺も全力が出せないんでね」

 

言葉を交わせぬ相手に向かって、俺は饒舌に語る。

 

「何せ全力だからな。手加減なんてものがあるわけもない。もちろん、最初からするつもりもないが」

 

「ぐ、グルゥ……?」

 

俺の様子に何かを感じたのか、魔物が困惑気味に唸る。

 

「だって、そうだろう?お前はあの娘(ユキ)の両親を殺したんだ」

 

喋りながら、俺は自身に掛けている封印(リミッター)を1つずつ解いていく。

 

「あの人達は、天涯孤独になった俺を本当の家族のように迎えてくれた恩人だった。それをお前が……」

 

さっきまで血を流し、傷だらけでボロボロだった身体は、既に万全の状態にまで回復していた。

 

「クゥン、クゥン」

 

「何だ、今さら怖気づいて命乞いか?もう遅いんだよ、何もかもな」

 

俺は目の前でガタガタと震える魔物に向かって最後通牒を突きつけた。

 

「消えろ。存在の欠片すら残さずに。お前はそれだけの罪を犯したのだから」

 

 

 

 

 

――その日、フロニャルドの大地から1つの森が消えた。

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