DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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EPISODE:11

川原での一件から数日。

 

ユキの状態も落ち着き、元の平穏を取り戻していたある日のこと。

 

「え?フロニャルドについて教えてほしいって?」

 

「いや、そこで意外そうな顔をされても困るんだけど……」

 

「アハハ、冗談だ。いいぜ。約束だからな」

 

俺は、雪花亭を訪ねて来たシンクを縁側で迎えていた。

 

「シンクもお茶でいいー?」

 

「あ、お構いなくー」

 

来客の対応に中へと入っていくユキに片手を上げて答えるシンク。

 

彼女の姿が見えなくなったところで、俺はシンクに話しかけた。

 

「ユキとも随分仲良くなったみたいだな」

 

「うん。一昨日、エクレ達と一緒に川遊びをしてからかな?お互いに名前で呼ぼうって話になって」

 

「いいことだ。知らない土地に慣れるには、人と仲良くなるのが一番の近道だからな」

 

「僕もそう思う。フロニャルド(ここ)の人達って、皆すごくフレンドリーだし」

 

「そうだな」

 

「お待たせー」

 

話がひと段落したところで、お盆を持ったユキが縁側に戻ってきた。

 

「それで、何の話をしてたの?」

 

「いや、シンクもだいぶこっちに馴染んできたなって」

 

「ユッキーや皆が仲良くしてくれてるからね」

 

「うん。これからもよろしく」

 

「こちらこそ」

 

2人が握手を交わすのを見ながら、俺は大元の話題に話を戻す。

 

「……で、今日はどんな話を聞きたいんだ?」

 

「うーん。一応、大まかには姫様から話を聞いてるんだけど……」

 

「よし。だったら、まずはおさらいからいこうか」

 

「うん。お願い」

 

シンクの了解を得て、俺は話し始めた。

 

「まずは、この世界そのものについてだな。フロニャルドは惑星(ほし)そのものに不思議な力が宿っている。これが『フロニャ力』だ。フロニャ力には、主に以下のような効力がある。

 

 1.街や集落は、フロニャ力の強い場所に作られる

 2.フロニャ力の働く場所においては、『戦』で死傷することがなく、“だま化”するだけで済む

 3.フロニャ力の働く場所においては、飢えで命を落とすことはない

 4.上記より、フロニャ力の弱い土地では怪我をするし、最悪命を落とすこともある

 

まぁ、2についてはフロニャルド出身の人間にしか効果がないから、シンクの場合は普通に怪我したりしてるだろ?」

 

「あー……うん。そうだね」

 

「ただ、それも身体へのダメージが一定以上に達した時だけってことにはなってるから」

 

「なるほど」

 

俺の質問に頷き、ユキの捕捉で納得した様子のシンク。

 

「んじゃ、続けるぞ?フロニャ力を自身の『紋章』に集めて、自分の生命の力と混ぜ合わせ変換したエネルギーを『輝力』と呼ぶ。これは知ってるな?」

 

「大丈夫」

 

「ところで、そもそも『紋章』っていうのは国の領主や王族から贈られるものでな。皆が皆持ってるわけじゃないんだ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「ああ。だから、シンクも姫ちゃんから貰っただろ?」

 

「うん」

 

「次に、紋章術について触れるとしよう。変換して得た『輝力』を使った術全般をそう呼んでいる。特に、『戦』における紋章術は非常に強力な武器となるが、同時に使いどころを選ぶ諸刃の剣でもある」

 

「確かに。1回紋章砲を撃つだけでも結構疲れるもんね」

 

「まぁ、疲労に関しては、変換率の調整っていう裏技がないこともないんだが……」

 

「えっ!?」

 

「短期滞在をご予定の勇者殿には、残念ながら教えられないな」

 

「ヒドい!」

 

シンクをイジりつつ、俺は話を続ける。

 

が、俺自身説明しているのが少々退屈になってきていた。

 

「ちなみに、輝力には個人ごとに異なる“色”があってな。『輝力光』と呼ばれている」

 

「僕は?」

 

「シンクは赤だね。ちなみに、私は黄色だよ」

 

「俺は……ヒミツだ」

 

「なんで!?」

 

「いや、なんとなく?」

 

「ヒドい!」

 

「そのツッコミ、2度目だね」

 

「単調なツッコミは飽きが早いぞ?」

 

「理不尽すぎる!」

 

「「アハハハ」」

 

結果として、シンクをイジることに主目的が移っていく。

 

今度は、同様に聞き飽きていたらしいユキも一緒になって。

 

「うん、やっぱりイジりがいのあるヤツは楽しいなぁ。な、シンク?」

 

「それ、本人に聞くの!?」

 

「あ、ごめん、わざと間違えた。じゃ、改めて……な、ユキ?」

 

「そうだね、お兄ちゃん」

 

「今、わざとって言ったよね!?」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「シンクの聞き間違いじゃない?」

 

「もう嫌だ、この2人!」

 

「「アハハハ」」

 

たまらないね、このリアクション。

 

「まぁ、漫才はこれくらいにして」

 

「ハァ、ハァ……」

 

「シンクもお疲れのようだし、今日はこれで終わりにするか」

 

「そ、そうしてください……」

 

「お疲れさま、シンク。はい、お茶」

 

「ありがとう、ユッキー。……はぁ」

 

お茶を飲んで落ち着いたのか、1つ息を吐くシンク。

 

「今の、ジジくさいぞ?まだ13歳だろ?」

 

「そうだけど。今日は2人の知らなかった一面を見せられて疲れたよ……」

 

「いやいや、本気を出したら今日程度じゃ済まないぞ?なぁ?」

 

「そうそう」

 

「ごめんなさい。もう止めてください」

 

「だが断る」

 

「鬼!悪魔!」

 

「ハッハッハ!何とでも言うがいい!」

 

「ドS!シスコン!」

 

「妹が好きで何が悪い!」

 

「「へ?」」

 

「あ」

 

瞬間、場の空気が凍った。

 

「……うん。じゃあ、僕はこれで」

 

「待て!この空気は放置か!?」

 

立ち去ろうとするシンクの肩を、俺は反射的に掴んだ。

 

「いや、だって……ねぇ?」

 

「原因を作ったのはお前だろ!?」

 

「でも、自爆したのはオウカだし……」

 

「うぐ」

 

言葉に詰まると同時に、掴んでいた肩を放してしまう。

 

「今日はありがとう。また来るよ」

 

「おい!帰るな!帰らないでくれぇぇぇ!!」

 

その隙をついて、シンクは全速力で去っていった。

 

後に残されたのは俺と、

 

「はふぅ……エヘヘ」

 

何やら恍惚の表情を浮かべて、クネクネしているユキの2人。

 

「……潮時、か」

 

状況がこうなってしまった以上、もう結論を先送りにはできないだろう。

 

そろそろ俺達の関係にケリをつけなければ。

 

「ユキ」

 

「………………」

 

「ユキ!」

 

「……は、はいっ!?」

 

1回目よりも大きな声で呼びかけると、ようやく反応が返ってきた。

 

「明日、デートをしよう」

 

「…………で、デート!?だ、誰と誰が!?」

 

「この場には俺とお前しかいないと思うが?」

 

「そ、そうだよね!……あぅぅ」

 

クッ……真っ赤になって俯くユキが可愛すぎるっ!

 

心の中で悶えながらも、表面上は平静を保って話を続ける。

 

「せっかくだから、城下町の広場にある噴水前に10時待ち合わせってことで」

 

「わ、わかった」

 

「話はこれで終わりだ。意識するなとは言わないが、なるべく自制してくれ」

 

「う、うん。頑張る……ぅぅ」

 

とりあえずこの場は収まったが、やはり空気はまだぎこちなかった。

 

 

 

 

 

そして、運命の翌日。

 

一足先に家を出て、待ち合わせ場所の広場に到着した俺を待っていたのは――

 

 

『我らガレット獅子団領は、ビスコッティ共和国に対し、新たな戦を申し込む!』

 

 

隣国ガレットの領主レオンミシェリ閣下による、ビスコッティへの宣戦布告だった。

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