DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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EPISODE:12

―Side ユキカゼ

 

 

 

「宝剣を懸賞にって、宝剣は国の代表の証なんじゃないの?」

 

「もちろん、そうでありますが……国と国の友好の証として一時的に貸し出したりは時々あるのであります」

 

「民衆は今回もそんなノリだと思ってるみたいだけど、ちょっと様子が違うと思う」

 

お城の中庭を、私とシンク、リコの3人で話しながら歩いている。

 

「そうなのであります。今、姫様やエクレ達が話し合っているのでありますが」

 

「……そういえばユッキー、オウカは?」

 

「お兄ちゃんなら会議に出てるよ」

 

私はシンクの問いにやや低い平坦な声で返す。

 

「……ユッキー、もしかしてご機嫌ナナメでありますか?」

 

付き合いの長いリコがすぐに気付いて聞いてくれる。

 

昨日の出来事から思い当たったのか、シンクは苦笑いしている。

 

「……まぁ、ちょっとね。……レオ様には少し空気を読んでほしかったなって」

 

後半は自分でも驚くほど冷え切った声が出た。

 

「(勇者様、ユッキーがめちゃくちゃ怖いであります!)」

 

「(僕に言われても困るよ!っていうか、怖いのは僕も一緒だから!)」

 

いくら小声で話してても、すぐ隣で話されたら聞こえちゃうって気付かないかなぁ。

 

「2人とも、大丈夫。もう気持ちの切り替えはできてるから」

 

「そ、そう?」

 

「うん。むしろ、今回の戦はやってやるぞ!って感じかな」

 

「そ、それは頼もしい限りであります」

 

「だから、あまり気にしないで」

 

「「あ、あはは……」」

 

私の様子に、2人はぎこちない笑顔を浮かべていた。

 

 

 

―Side Out

 

 

 

 

 

「本当に、レオ閣下はどうなされてしまったのか……」

 

「これではまるで、本気で我がビスコッティを侵略する気としか……」

 

「それはないと、思いたいがのぅ……」

 

元老院のお歴々から、弱々しい声が上がる。

 

ここはフィリアンノ城内にある会議室。

 

緊迫した空気の中、今朝のガレットからの宣戦布告に対するビスコッティ側の対応を決める重役会議が催されていた。

 

「しかし現に、ビスコッティの宝剣を懸賞として差し出すよう、提案されています。アメリタ、届けられた布告書を」

 

「はい」

 

騎士団長のロランの指示に従い、アメリタ女史が布告書の内容を読み上げる。

 

「宣戦布告書には、宝剣の預かり期間は最長60日と記されていますが、展示や使用目的については、両国の審議の下不義なきよう扱い、期間内の返還を制約する、としか……」

 

「つまりは、期間内にはどう使おうが自由ということ……」

 

「断れぬものかのぅ……」

 

絶望的な状況に、元老院のお歴々は嘆くことしかできない。

 

「しかし、先の会見で両国の民の心はしっかり掴まれてしまっております故なぁ」

 

「こちらが宝剣を出せないとすれば、我々の非という形になってしまいますから」

 

「補填の為には、かなりの持ち出しが必要になります」

 

ヒナ、エクレール、ロランが順に発言する。

 

誰も彼も、その表情は暗く堅いものだ。

 

「おぉ、どうするかのぅ……」

 

「どうするかのぅ……」

 

「困ったのぅ……」

 

『『『………………』』』

 

意気消沈し、皆が不安に駆られている中で、俺は立ち上がった。

 

「はいはい。落ち込むのはそれくらいで止めようか」

 

『『『…………?』』』

 

場の空気にそぐわぬ俺の様子に、皆が怪訝な顔をしてこちらに注目する。

 

「この国が置かれている状況は、確かに危ういのかもしれない。だが、始まる前からこの調子では勝てる戦も勝てなくなるぞ?」

 

「勝てる戦だと?バカなことを言うな!」

 

俺の言葉に、エクレールが食って掛かる。

 

「エクレールの言う通り、相手はあの(・・)ガレットだ。我々が勝利するのは非常に難しい相手と言えるだろう」

 

(エクレール)に同意して、ロランも口を開く。

 

「先の2連戦、ビスコッティはそのガレットに勝ったじゃないか」

 

「ぐっ……」

 

「それは……」

 

俺の指摘に、口ごもるエクレールとロラン。

 

「確かに、これまで通りなら厳しい戦いとなるだろう。しかし、今のビスコッティには『勇者』がいる」

 

「おぉっ!」

 

「彼の活躍は周知のことと思うが、その姿はまさしくビスコッティを救う『英雄(ヒーロー)』たり得るものだろう」

 

「確かに……」

 

「オウカ殿の仰る通りかもしれぬ」

 

どうやら、元老院は全面的に支持してくれた模様。

 

他の面々は、まだ納得していないものの、理解はできるといった様子だ。

 

「それから、俺は君の意見を聞いてみたい。話してくれないか、姫ちゃん?」

 

俺の振りに合わせるように、この場にいる全員の視線が上座に座る少女に集まる。

 

「は、はい。えぇっと……」

 

いきなり話を振られて、何から話そうか迷っている様子。

 

なので、俺の方で会話をリードすることに。

 

「まず、そうだな……ここ最近のレオについてどう思う?」

 

「えっと……急に冷たく接するようになられて、困惑しています」

 

「確かに、昔の君達を知ってる俺も、レオの態度には違和感を感じている」

 

「はい。きっと何か理由があってのこととは思うのですが……」

 

過保護なくらいに可愛がってくれた姉の心変わりに、領主としても友人としても心を痛めていたのだろう。

 

「姫ちゃん自身には、特に心当たりはない、と?」

 

「はい……」

 

俺の問いに力なく首を振る姫ちゃん。

 

「理由を知りたい、とは思わないのかい?」

 

「それはっ!」

 

思わず、といった調子で出た大きな声。

 

「……できることなら、聞きたいと思っています」

 

「なら、直接会って確かめてみればいい」

 

 

――ザワッ

 

 

俺の落とした爆弾に、会議室が揺れた。

 

「ですが……」

 

自分でも考えなかったわけではないのだろうが、姫ちゃんは躊躇いを見せる。

 

「最前線に出て、君の目で見てくるんだ。その為にできることなら、俺は何だってしてみせる」

 

「また貴様は何を!」

 

エクレールが吠える。

 

が、俺はそれを無視して話を続ける。

 

「俺は『勝利をもたらす天才軍師』だ。君がそれを望むなら、存分にこの力を揮うことを誓おう」

 

「オウカ……」

 

姫ちゃんの目に光るものが見えた。

 

気持ちが決まったのか、姫ちゃんが何かを言おうと――

 

「失礼。そういうことであれば、もちろん拙者も全力を尽くすと約束しましょう(お主に空気を持っていかせるわけにはいかぬでござるよ)」

 

「(は?)」

 

口では姫ちゃんに話をしつつ、アイコンタクトで俺を牽制してくるヒナ。

 

「姫様のお心が決まったのであれば、我々もそれに従い全力でお守りすることを誓います(フンッ、貴様には負けん!)」

 

「(……?)」

 

それにエクレールも続く。

 

何故か俺に対して対抗心を燃やしているようだが、何かしただろうか?

 

「ブリオッシュ、エクレールも……ありがとう。私、決めました!この度の戦、あちらの条件を飲もうと思います!」

 

『『『おおっ!!』』』

 

姫ちゃんの堂々とした発言に会議室が沸いた。

 

「そして、レオ様に会ってそのお心を問いたいと思います!」

 

俺達の進む道は決まった。

 

この先に何が待っているのかはわからないが、俺は俺のやるべきことを果たすとしよう。

 

心残りがあるとすればユキのことだが、今度の戦が終わった後に改めて話をすればいいだろう。

 

翌日の開戦に向けて慌しく準備を進めるうちに、その日は更けていった。

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