「みなさーん!朝早くからこんなに集まってくれてありがとうございまーす!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
お城のバルコニーから集まった参加者達に向かってスピーチを始める姫ちゃん。
「今日はガレットとの大戦ですよー!昨日はちゃんと休めましたかー?」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
聴衆に向かって質問を投げかけると大歓声が返ってくる。
「朝ご飯はちゃんと食べましたかー?」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
今回の戦にかける皆の意気込みの高さが感じられる。
それもこれも、本を糺せば昨日の姫ちゃんの演説に遡るわけだが。
《回想・始》
「こんにちはー!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
広間に集まった観衆から歓声が上がる。
「さて、皆さん。今朝のニュースはご覧になりましたよね?レオ閣下からいきなりの宣戦布告。急な話だったので、私達もびっくりしちゃいました。元老院の皆なんて、驚いて椅子から落っこちちゃったくらいで」
『『『ワハハハッ!!』』』
姫ちゃんの話す裏話に笑いが起こる。
「でも、怪我はなかったのでご心配なく」
話が途切れたことで、広間に静寂が広がる。
「……私が領主になって以来、ガレットにはたくさん敗戦をしてしまいました。戦自体は楽しめても、皆に勝利を味わってもらうことは中々できなくて……。でも、ビスコッティは決して弱い国ではありません。これまでの敗戦はひとえに、充分な戦支度を整えられなかった私の力不足です」
『そんなことないですよー』
『そうです』
『そうだそうだ』
国民に愛される領主っていうのは、この娘の大きな美点だ。
「……ありがとう、皆。でもですね。だからこそ、これ以上負けないようにこの半年しっかり準備を整えてきました。フィリアンノ商工会が武器と装備を揃えてくれました。若い騎士見習い達も、訓練を重ねて強くなってくれました。ですから……」
再び訪れる静寂。
バルコニーの姫ちゃんは一呼吸置いて、
「ビスコッティは、ガレットよりの宣戦布告を喜んでお受けします!」
堂々とした表情で宣言した。
――ヒュ~
――ドーン!ドーン!ドーン!
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
宣言に合わせて花火が打ち上がり、集まった群衆は沸き上がる。
「もちろん、聖剣エクセリードと神剣パラディオンを賭けるのも受けて立ちます!何故なら、私達は負けないからです!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
指輪状態のエクセリードを嵌めた右手を掲げてスピーチを続ける姫ちゃん。
「この戦に勝利しましょう!勝って楽しい明日を掴みましょう!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
――ドーン!ドーン!
鳴り止まぬ花火の音と大歓声の中、演説は終了したのだった。
《回想・了》
「今回の戦場は、両国の国境付近です。私達の本陣はここ、スリーズ砦。ここは主に騎士団の守備隊と後方支援隊の皆さんで守ります」
映像板に映る地図を示しながら説明を続けている姫ちゃん。
「オウカ様」
「了解」
その後も一通りの説明が終わるまではバルコニー裏で待機していた俺だが、そろそろ出番らしくリゼル隊長に呼ばれた。
「それから、今回の戦には素敵なゲストが参加してくださいます。その方を紹介しますね」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
姫ちゃんに手招きされ、俺はバルコニーへと足を踏み出す。
『『『おおっ!?』』』
姫ちゃんが呼んだゲスト。それが世に噂されたローブの軍師だとわかると、広間からどよめきが起きる。
「皆さんもご存知とは思いますが、改めてご紹介させていただきます」
姫ちゃんの台詞に合わせるように、俺はローブを脱ぐ。
「『勝利をもたらす天才軍師』こと、オウカ・フローネイトです!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
群集の前に、今初めて曝された謎の軍師の正体。
その事実に、全ての聴衆が一瞬でヒートアップしていた。
「一言、お願いしますね」
笑顔の姫ちゃんから差し出されたマイクを受け取り、広間に集まった人々を見渡して口を開いた。
「オウカ・フローネイトだ。この俺が味方するからには、この戦の勝利を約束しよう!諸君らの勇気に報いるべく、俺も全力を尽くそう!」
『『『うおおぉぉぉっ!!』』』
元々高かった士気を更に高めるべく、俺は言葉を紡ぐ。
「さぁ、戦いの時は来た!皆のもの、剣を取れ!我らがミルヒオーレ姫殿下に勝利の栄冠を!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
俺の煽りに皆がノッてくる。
「いざ進め!戦場が我らを待っているぞ!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
最高潮のテンションを維持したまま、マイクを姫ちゃんに返した。
「さぁて、それでは隊列を組みますよー!移動、開始ーっ!」
『『『うおおぉぉぉっ!!』』』
こうして、ビスコッティvsガレットの一大戦興行はその幕を上げたのだった。
『さぁ、午後に入り食事も終えたビスコッティ・ガレット両軍、現在チャパル湖沼地帯にて戦闘開始の合図を待っております!』
湖沼地帯を挟んで睨み合う両軍。
「あー、あー。テステス。各隊長諸君、聞こえているか?」
俺は通信用の護符を使って呼び掛けた。
『こちら1番隊。問題なく聞こえているよ』
『2番隊、大丈夫だ』
『3番隊も問題なしでござるよ』
ロラン、エクレール、ヒナから返事が返ってくる。
「よろしい。では今回の作戦を確認するぞ。1番隊は湖沼地帯でのアドバンテージを確保しつつ、敵拠点に向けて進軍」
『了解だ』
「3番隊は遊撃だ。まずは湖沼地帯で1番隊のフォローをしてもらうが、状況次第では前に出てもらうからそのつもりで」
『心得たでござる』
「そして2番隊。お前達は先駆けだ。湖沼地帯での戦闘は避け、最短ルートで敵拠点を目指せ」
『わかった』
「俺は本陣に残るが、戦況によって動き出すから見かけた時は注意するように」
『『『サー、イエッサー!!』』』
うん、俺も極力味方に被害は出したくないからな。
『皆様、お待たせしました。開戦の合図までまもなくです』
丁度いいタイミングでアナウンスが入る。
『チャパル湖沼地帯の実況と解説は私、ビスコッティ国営放送、エビータ・サレスと』
『ガレット国営放送、ジャン・カゾーニの2名がお送りします』
アナウンサー2人の自己紹介を間に挟みつつ、
『さぁ、カウントダウンが始まります!現場の皆さんも、放送をご覧の皆様も、どうかご一緒にお願いします!』
いよいよ、世紀の大戦が始まる。
『『せーの!』』
『『『5!…4!…3!…2!…1!』』』
――ヒュ~
――ドーン!ドーン!
『『開戦!!』』
戦いの火蓋が、ここに切って落とされた。
「全軍、進めーっ!!」
「ガレット戦士団、突撃ーっ!!」
『『『わああぁぁぁっ!!』』』
『『『うおおぉぉぉっ!!』』』
両軍騎士団長の掛け声の下、参加している兵士達が駆けて行く。
―Side シンク
「駆け抜けるぞ、勇者!」
「オーライ、親衛隊長!」
僕はエクレや2番隊の皆と一緒に戦場の脇を走り抜けようと――
「ヒャーッハァーッ!!」
「おわっ!?」
していたところで、ガレットの兵隊に迎え撃たれていた。
「獲物がいたぞーっ!」
「野郎共、全員で囲めーっ!」
しかも、向こうは殺る気満々だ。
「ちょっ、話が違う!」
「えぇっ!?」
事前に聞かされていた状況との違いに困惑して足を止めてしまう。
『止まるな2番隊!そのまま突っ込め!』
「「オウカ!?」」
しかし、通信符からオウカの声が聞こえたことで我に返る。
「行こう、エクレ!」
「ええい!その言葉、信じるからな!」
僕達は止めた足を再び前へ踏み出す。
「弓隊、放てーっ!!」
――ヒュンヒュンヒュン
ガレット側から矢の雨が降り注ぐ。
このままじゃ直撃する!……そう思ったその時。
――ゴォッ
――ズガァァァン!
「凄い……」
「あの規格外め……」
遮るもののなくなった戦場を駆けながら、改めてオウカの強さに感心させられる。
この戦が終わったら、帰るまでの間にオウカに稽古してもらおうかな。
そんなことを考えながら、僕は先を急いだ。
―Side Out