DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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EPISODE:13

「みなさーん!朝早くからこんなに集まってくれてありがとうございまーす!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

お城のバルコニーから集まった参加者達に向かってスピーチを始める姫ちゃん。

 

「今日はガレットとの大戦ですよー!昨日はちゃんと休めましたかー?」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

聴衆に向かって質問を投げかけると大歓声が返ってくる。

 

「朝ご飯はちゃんと食べましたかー?」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

今回の戦にかける皆の意気込みの高さが感じられる。

 

それもこれも、本を糺せば昨日の姫ちゃんの演説に遡るわけだが。

 

 

 

《回想・始》

 

 

「こんにちはー!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

広間に集まった観衆から歓声が上がる。

 

「さて、皆さん。今朝のニュースはご覧になりましたよね?レオ閣下からいきなりの宣戦布告。急な話だったので、私達もびっくりしちゃいました。元老院の皆なんて、驚いて椅子から落っこちちゃったくらいで」

 

『『『ワハハハッ!!』』』

 

姫ちゃんの話す裏話に笑いが起こる。

 

「でも、怪我はなかったのでご心配なく」

 

話が途切れたことで、広間に静寂が広がる。

 

「……私が領主になって以来、ガレットにはたくさん敗戦をしてしまいました。戦自体は楽しめても、皆に勝利を味わってもらうことは中々できなくて……。でも、ビスコッティは決して弱い国ではありません。これまでの敗戦はひとえに、充分な戦支度を整えられなかった私の力不足です」

 

『そんなことないですよー』

 

『そうです』

 

『そうだそうだ』

 

国民に愛される領主っていうのは、この娘の大きな美点だ。

 

「……ありがとう、皆。でもですね。だからこそ、これ以上負けないようにこの半年しっかり準備を整えてきました。フィリアンノ商工会が武器と装備を揃えてくれました。若い騎士見習い達も、訓練を重ねて強くなってくれました。ですから……」

 

再び訪れる静寂。

 

バルコニーの姫ちゃんは一呼吸置いて、

 

「ビスコッティは、ガレットよりの宣戦布告を喜んでお受けします!」

 

堂々とした表情で宣言した。

 

 

――ヒュ~

 

 

――ドーン!ドーン!ドーン!

 

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

宣言に合わせて花火が打ち上がり、集まった群衆は沸き上がる。

 

「もちろん、聖剣エクセリードと神剣パラディオンを賭けるのも受けて立ちます!何故なら、私達は負けないからです!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

指輪状態のエクセリードを嵌めた右手を掲げてスピーチを続ける姫ちゃん。

 

「この戦に勝利しましょう!勝って楽しい明日を掴みましょう!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

 

――ドーン!ドーン!

 

 

鳴り止まぬ花火の音と大歓声の中、演説は終了したのだった。

 

 

《回想・了》

 

 

 

「今回の戦場は、両国の国境付近です。私達の本陣はここ、スリーズ砦。ここは主に騎士団の守備隊と後方支援隊の皆さんで守ります」

 

映像板に映る地図を示しながら説明を続けている姫ちゃん。

 

「オウカ様」

 

「了解」

 

その後も一通りの説明が終わるまではバルコニー裏で待機していた俺だが、そろそろ出番らしくリゼル隊長に呼ばれた。

 

「それから、今回の戦には素敵なゲストが参加してくださいます。その方を紹介しますね」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

姫ちゃんに手招きされ、俺はバルコニーへと足を踏み出す。

 

『『『おおっ!?』』』

 

姫ちゃんが呼んだゲスト。それが世に噂されたローブの軍師だとわかると、広間からどよめきが起きる。

 

「皆さんもご存知とは思いますが、改めてご紹介させていただきます」

 

姫ちゃんの台詞に合わせるように、俺はローブを脱ぐ。

 

「『勝利をもたらす天才軍師』こと、オウカ・フローネイトです!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

群集の前に、今初めて曝された謎の軍師の正体。

 

その事実に、全ての聴衆が一瞬でヒートアップしていた。

 

「一言、お願いしますね」

 

笑顔の姫ちゃんから差し出されたマイクを受け取り、広間に集まった人々を見渡して口を開いた。

 

「オウカ・フローネイトだ。この俺が味方するからには、この戦の勝利を約束しよう!諸君らの勇気に報いるべく、俺も全力を尽くそう!」

 

『『『うおおぉぉぉっ!!』』』

 

元々高かった士気を更に高めるべく、俺は言葉を紡ぐ。

 

「さぁ、戦いの時は来た!皆のもの、剣を取れ!我らがミルヒオーレ姫殿下に勝利の栄冠を!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

俺の煽りに皆がノッてくる。

 

「いざ進め!戦場が我らを待っているぞ!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

最高潮のテンションを維持したまま、マイクを姫ちゃんに返した。

 

「さぁて、それでは隊列を組みますよー!移動、開始ーっ!」

 

『『『うおおぉぉぉっ!!』』』

 

こうして、ビスコッティvsガレットの一大戦興行はその幕を上げたのだった。

 

 

 

 

 

『さぁ、午後に入り食事も終えたビスコッティ・ガレット両軍、現在チャパル湖沼地帯にて戦闘開始の合図を待っております!』

 

湖沼地帯を挟んで睨み合う両軍。

 

「あー、あー。テステス。各隊長諸君、聞こえているか?」

 

俺は通信用の護符を使って呼び掛けた。

 

『こちら1番隊。問題なく聞こえているよ』

 

『2番隊、大丈夫だ』

 

『3番隊も問題なしでござるよ』

 

ロラン、エクレール、ヒナから返事が返ってくる。

 

「よろしい。では今回の作戦を確認するぞ。1番隊は湖沼地帯でのアドバンテージを確保しつつ、敵拠点に向けて進軍」

 

『了解だ』

 

「3番隊は遊撃だ。まずは湖沼地帯で1番隊のフォローをしてもらうが、状況次第では前に出てもらうからそのつもりで」

 

『心得たでござる』

 

「そして2番隊。お前達は先駆けだ。湖沼地帯での戦闘は避け、最短ルートで敵拠点を目指せ」

 

『わかった』

 

「俺は本陣に残るが、戦況によって動き出すから見かけた時は注意するように」

 

『『『サー、イエッサー!!』』』

 

うん、俺も極力味方に被害は出したくないからな。

 

『皆様、お待たせしました。開戦の合図までまもなくです』

 

丁度いいタイミングでアナウンスが入る。

 

『チャパル湖沼地帯の実況と解説は私、ビスコッティ国営放送、エビータ・サレスと』

 

『ガレット国営放送、ジャン・カゾーニの2名がお送りします』

 

アナウンサー2人の自己紹介を間に挟みつつ、

 

『さぁ、カウントダウンが始まります!現場の皆さんも、放送をご覧の皆様も、どうかご一緒にお願いします!』

 

いよいよ、世紀の大戦が始まる。

 

『『せーの!』』

 

『『『5!…4!…3!…2!…1!』』』

 

 

――ヒュ~

 

 

――ドーン!ドーン!

 

 

『『開戦!!』』

 

戦いの火蓋が、ここに切って落とされた。

 

「全軍、進めーっ!!」

 

「ガレット戦士団、突撃ーっ!!」

 

『『『わああぁぁぁっ!!』』』

 

『『『うおおぉぉぉっ!!』』』

 

両軍騎士団長の掛け声の下、参加している兵士達が駆けて行く。

 

 

 

 

 

―Side シンク

 

 

「駆け抜けるぞ、勇者!」

 

「オーライ、親衛隊長!」

 

僕はエクレや2番隊の皆と一緒に戦場の脇を走り抜けようと――

 

「ヒャーッハァーッ!!」

 

「おわっ!?」

 

していたところで、ガレットの兵隊に迎え撃たれていた。

 

「獲物がいたぞーっ!」

 

「野郎共、全員で囲めーっ!」

 

しかも、向こうは殺る気満々だ。

 

「ちょっ、話が違う!」

 

「えぇっ!?」

 

事前に聞かされていた状況との違いに困惑して足を止めてしまう。

 

『止まるな2番隊!そのまま突っ込め!』

 

「「オウカ!?」」

 

しかし、通信符からオウカの声が聞こえたことで我に返る。

 

「行こう、エクレ!」

 

「ええい!その言葉、信じるからな!」

 

僕達は止めた足を再び前へ踏み出す。

 

「弓隊、放てーっ!!」

 

 

――ヒュンヒュンヒュン

 

 

ガレット側から矢の雨が降り注ぐ。

 

このままじゃ直撃する!……そう思ったその時。

 

 

――ゴォッ

 

 

――ズガァァァン!

 

 

空から吹き付けてきた(・・・・・・・・・・)竜巻が飛んできた矢を飲み込み、そのままガレット軍を薙ぎ払っていった。

 

「凄い……」

 

「あの規格外め……」

 

遮るもののなくなった戦場を駆けながら、改めてオウカの強さに感心させられる。

 

この戦が終わったら、帰るまでの間にオウカに稽古してもらおうかな。

 

そんなことを考えながら、僕は先を急いだ。

 

 

―Side Out

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