DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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EPISODE:14

「姫様、報告いたします」

 

戦闘開始からしばらく、本陣に伝令がやってきた。

 

「先程ガレットより使者が訪れ、至急姫様にお伝えしたいことがあると」

 

天幕の入り口に立っている兵士がこちらを向いて対応を求めてくる。

 

俺と姫ちゃんは互いに頷き合って、中へ入れるよう促す。

 

「わかりました。お通ししてください」

 

「はい」

 

 

――バッ

 

 

兵士が外へ声を掛けると、返事と共に1人の女性が中に飛び込んできた。

 

「うわっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

声の方を見ると、他にも2人、兵士が女性に拘束されていた。

 

 

――ボフッ

 

 

――ボフッ

 

 

あっという間に無力化されてしまう兵士達。

 

「姫様。無礼の程、お詫びの仕様もございません。ですがどうか、我々の願いをお聞き入れ下さい!」

 

3人の中の隊長格と思しき女性が姫ちゃんの前に跪いて嘆願してくる。

 

ザ・ピーンチ、と本来なら思うところだろうが、生憎そうは問屋が卸さない。

 

「あの……ごめんなさい」

 

「?」

 

突然の謝罪に、困惑した女性が姫ちゃんを見る。

 

 

――ボフンッ

 

 

それとほぼ時を同じくして、彼女(・・)にかかっていたユキの術が解ける。

 

「自分、姫様ではないであります」

 

天幕の玉座に座っていたのは、姫ちゃんの姿をしたリコちゃんだったのだ。

 

 

――カチャ

 

 

驚きに目を見開く女性。その首筋に、横から剣が向けられる。

 

「はい、動かないでくださいね」

 

彼女が視線を向けた先には、帯剣したリゼル隊長が立っていた。

 

残る2人も、メイド隊の少女達に拘束されている。

 

「影武者で騙したことは申し訳ないとも思うが、これで逆チェックメイトだ。残念だったな」

 

そこでようやく、俺は隠れていた玉座の背から姿を現す。

 

「あ、貴方は!?」

 

現れた俺を見て、女性は先程以上に驚いた様子を見せる。

 

「お茶の用意をしているから、ゆっくり話でもしないか?ね、ビオレさん?」

 

顔馴染みの彼女に対して笑顔で提案を持ちかける俺。

 

「……はい、わかりました」

 

状況はひっくり返らないと悟ったようで、彼女も苦笑していた。

 

 

――ボシュッ

 

 

――ヒュ~

 

 

――パァン!

 

 

「オウカ様、合図を送ったであります」

 

装置の操作を終えたリコちゃんが報告してくれる。

 

「ああ、ご苦労様。それじゃ、リコちゃんも前線組に合流してくれ」

 

「了解であります!」

 

笑顔の敬礼を残して、彼女は天幕を出て行った。

 

その後、メイド隊の皆が茶会の支度を整えてくれたところでビオレさんに話しかけた。

 

「さて。それじゃ、話を聞かせてもらおうか」

 

「その前に……1つよろしいですか?」

 

彼女が控えめに手を上げて質問してくる。

 

「どうぞ」

 

俺は短く答えて彼女に先を促す。

 

「本当に、貴方はオウカ・フローネイト様ですか?」

 

そういえば、こうして会うのは久しぶりだったな。

 

「……10年くらい前だったか?ヴァンネット城の厨房でビオレさんが―【自主規制】―」

 

「わあぁぁっ!?わかりました!わかりましたから!!」

 

俺が披露し始めたマル秘エピソードを最後まで言わせまいと慌てて遮ってくる彼女。

 

「信じてくれたかな?」

 

「疑ってしまった自分を呪いたくなる程度には……」

 

「それはよかった」

 

赤さの残る顔で溜息を吐く彼女に、ニヤニヤ顔で返す俺。

 

「……それで、オウカ様が聞きたいのはレオ様のことですよね?」

 

「こんな状況で知りたいことは他に思いつかないな」

 

少しして落ち着きを取り戻した彼女が真面目な顔になって話を振ってきた。

 

俺もそれに合わせて表情を引き締める。

 

「私も知ったのはつい最近なのですが――」

 

彼女の口から聞かされた話は、俺の怒りメーターを振り切らせるには充分過ぎる内容だった。

 

「ほぉ……あれほど忠告したってのに、アイツは……」

 

「あ、あのぅ……オウカ様?」

 

恐る恐る、といった様子でビオレさんが話しかけてくる。

 

が、彼女の言葉は俺の耳には届いていなかった。

 

「仕方ないなぁ。また教育(・・)し直さないといけないじゃないか」

 

「…………」

 

最高にイイ笑顔を浮かべる俺に彼女が引いていたが、そんなことは気にも留めない。

 

「それじゃビオレさん、俺ちょっと用事ができたんで」

 

「い、いってらっしゃいませ……」

 

引きつった笑顔で見送る彼女に片手を上げて返すと、俺は天幕を後にした。

 

「レオ様、どうかご無事で……」

 

残された彼女は、自らの主の為に合掌して祈っていたとかいなかったとか。

 

 

 

 

 

「……おかしい」

 

俺はガレット軍の本陣であるグラナ浮遊砦へ駆けながら、違和感を感じていた。

 

ところで、スリーズ砦の本陣を出発した後、周辺のフィールドで戦闘をしていた連中を残らず吹き飛ばしてきたんだが、大丈夫だろうか?

 

『お、俺の出番はこれだけかよーっ!!』

 

『ガウ様、落ち着いてぇー!』

 

『あーん、またやられたぁ!』

 

『これはこれでオイシイかも……』

 

『ぅおのれぇ、次は覚えておれよ!』

 

……うん、多分大丈夫だな。

 

「……周辺の大地から感じるフロニャ力が弱まっている、だと?」

 

思考を元のベクトルに戻すと、違和感の正体に気付いた。

 

「戦が行われるくらいだから、ここら一帯の守護の力はそれなりに強いはず」

 

それが、僅かだが弱くなっている。

 

「まさか、出るのか……?」

 

同時に、俺の中で1つの可能性が存在を主張し始める。

 

「……チッ、間に合ってくれよ!」

 

俺は悪い予感を振り切るように頭を振ると、更にギアを上げて目的地へと全力で走っていった。

 

 

 

 

 

―Side レオンミシェリ

 

 

 

ここは、グラナ浮遊砦の頂上にある天空武闘台。

 

「バカな……!?」

 

ワシは目の前に現れた、今ここにいるべきでない(・・・・・・・)人物の姿に言葉を失っていた。

 

「レオンミシェリ閣下、どうかお聞かせください。この戦の本当の理由、レオ様のお心の真実の在り処を!」

 

その人物―ミルヒがワシに問い掛けてくる。

 

あまりのショックに頭が混乱してしまい、ワシは動くこともできない。

 

「ァッ!」

 

そんなワシに代わって、動いた者がいた。

 

 

――ガキンッ

 

 

「ルージュ!私は今、レオ様と!」

 

ワシに仕えてくれている近衛メイド長のルージュだ。

 

「お叱りは後でいくらでも!ですが、今は説明を差し上げている時間がございません!」

 

此度の事情を知っているルージュが必死になってミルヒに語りかける。

 

 

――カッ!

 

 

ミルヒが右手の人差し指と中指に嵌めていたエクセリードとパラディオンにルージュが手を伸ばした瞬間、強い光が生じた。

 

見えない衝撃に弾き飛ばされるルージュ。

 

「ぁ……」

 

光が収まった後、ミルヒの手には短剣として顕現したエクセリードが握られていた。

 

「宝剣が必要なら、事情を説明していただければ、いくらでもお貸しします」

 

決然とこちらを見据えて、ミルヒが話す。

 

「なのに、どうしてレオ様は私に何も教えてくださらないのですか?」

 

その強い視線に、思わず目を逸らしてしまう。

 

「昔はあんなに仲良くしてくださって」

 

ミルヒの声に悲しみの色が滲む。

 

「いつも優しくしてくださって」

 

それは徐々にはっきりと色を成していく。

 

「宝剣のことだけじゃないです」

 

それは、聞いているワシにチクリチクリと痛みをもたらす。

 

「このところの戦のことだって」

 

耳を塞ぎたくなる衝動に駆られるも、それだけはするなと自身の心が叫ぶ。

 

「レオ様は……レオ様は、そんなに私のことをお嫌いに……?」

 

「ワシは……っ」

 

ようやく視線を合わせると、ミルヒの目からは大粒の涙が幾筋も流れていた。

 

 

――ピシャァァァン!

 

 

雷が鳴る中、ワシとミルヒは無言で立ち尽くしていた。

 

 

 

―Side Out

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