DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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EPISODE:06

フィリアンノ城で一夜を明かした翌日。

 

「確かに、昨日やるとは言ったけどさぁ……」

 

『『『(ワクワク)』』』

 

俺は溜息を1つ吐くと、

 

 

「どうして御前試合なんてことになってるんだよ!」

 

 

力の限り叫んだ。

 

「お兄ちゃん、うるさい」

 

「ごめん」

 

が、すぐにユキによって鎮静化される。

 

「ヒナ、お前は知ってたのか?」

 

それから、俺は隣に立っているに声を掛けた。

 

「いや、拙者も今さっき聞かされたでござるよ。それより、『ヒナ』と呼ぶのは止めてほしいのでござるが」

 

「いや、今さら『騎士ブリオッシュ』とか『ダルキアン卿』とか違和感あり過ぎだから」

 

「そこを何とか……」

 

拝むように俺に向かって手を合わせてくるヒナ。

 

「じゃあ、今日の模擬戦でお前が勝てたら考えてやるよ」

 

「……それは考える気がないと宣言しているようなものではござらんか?」

 

「なんだ、最初から勝負を諦めるのか?」

 

「……む。確かに今の発言は弱気が過ぎたでござる。先の発言はなしということで」

 

「そうこなくっちゃ」

 

そうして2人で拳をぶつけ合っていると、

 

「皆さーん、おはようございまーす!」

 

『『『おはようございます!!』』』

 

練兵場に姫ちゃんがやって来た。

 

「今日の試合は皆にとって、とても貴重な経験になる。各自、心して見学するように」

 

『『『はい、団長!!』』』

 

彼女に続いて、この事態の黒幕と思われる人物が現れる。

 

「おい、ロラン。御前試合(コレ)はお前の入れ知恵か?」

 

「ははは、やはり君にはお見通しか。まぁ、その通りだよ」

 

「騎士達の為、か?」

 

「ああ。君やダルキアン卿のような『達人』クラスの戦いを見ることは、若い騎士達にとって良い刺激になるからね」

 

「期待に沿えるように頑張るよ」

 

「そうしてくれ」

 

そう言って、ロランは俺から離れていった。

 

「オウカ!」

 

「おう、シンク……と、エクレール」

 

「人をオマケみたいに言うな!」

 

「別にそんなつもりはなかったんだけどな」

 

「ふん!お前など、ダルキアン卿にコテンパンにやられてしまえ!」

 

捨て台詞を残して、エクレールは観覧席にいる姫ちゃんのところへ行ってしまった。

 

「相変わらずのツンツンっぷりだな、エクレールは。そう思わないか、シンク?」

 

「あ、アハハハ……」

 

仕方がないので、まだこの場に残っていたシンクに話しかけた。

 

……苦笑いで返されてしまったが。

 

「あ、そうだ。そういえば、オウカってどれくらい強いの?」

 

「ん?そうだな……俺の5割で、全力のヒナ―あ、ダルキアン卿のことな―が3分保てばいいとこって感じかな」

 

「え!?それってめちゃくちゃ強いんじゃ……」

 

「まぁ、それはかなーり昔の話だから。今はそれなりに強くなってるだろうし、もうちょい大丈夫だろ」

 

「………………」

 

おろ?シンクのやつ、何で急に無言になった?

 

「おーい、シンク」

 

「……はっ!?な、なに?」

 

「お前、確か『戦』のときは棒を使ってるんだよな?」

 

「あ、うん。そうだけど……」

 

「だったら、試合をよく見ておけ。俺が本式の『棍』の戦い方を見せてやる」

 

「うん、わかった。しっかり見てるよ」

 

「ああ。……っと、そろそろ姫ちゃんのところに行った方がよさそうだぞ?エクレールがこっちを睨んでる」

 

そう言って観覧席の方を示すと、こちらが注目したことに気付いてプイッと視線を外す親衛隊長。

 

「ホントだ。……じゃあ、オウカ。頑張って」

 

「任せろ」

 

シンクとはそこで別れ、俺は練兵場の中央で待つヒナのところへ。

 

「待たせたな」

 

「いや。拙者にも精神集中の時間が必要だった故、問題なしでござる」

 

「オッケー、それならルールの確認だ。紋章術禁止で輝力使用は自由の初撃決着、でいいな?」

 

「異論はないでござるよ」

 

ヒナの答えに頷きで応じて、それぞれ開始位置に向かう。

 

「これより、ブリオッシュ・ダルキアンとオウカ・フローネイトによる模擬戦を始める」

 

俺達が位置についたところで、ロランがアナウンスを行う。

 

それから、まずは観覧席に座る姫ちゃんに一礼。

 

次にヒナと向き合って、互いに礼。

 

全てが済むと、俺達はそれぞれに構えを取る。

 

ちなみに互いの得物は、ヒナが刀で俺が棍だ。

 

「いつもの大太刀じゃないんだな」

 

「アレでは取り回しの関係上、お主のスピードについていけぬ故、今日はこちらを使うでござるよ」

 

「なるほどね」

 

「……さて、お喋りはここまでにするござる」

 

そう言ったヒナの纏う空気が変わる。

 

「そうだな」

 

それに合わせるように、俺も神経を研ぎ澄ませていく。

 

徐々に場を支配する緊張感。

 

そうして皆が固唾を呑んで見守る中、

 

「それでは、始めっ!」

 

 

――タッ

 

 

ロランの合図と同時に、俺達は動き出す。

 

 

――ガッ

 

 

――ガッ

 

 

互いの武器がぶつかる音だけが場内に響く。

 

ヒナが振るう刀を、時に棍の表面で刃を滑らせて受け流し、時に刃の側面に棍をぶつけて剣筋を逸らして凌ぐ。

 

「くっ……」

 

「どうした、この程度か?」

 

「まだまだっ!」

 

 

――ガッ

 

 

――ガッ

 

 

更に激しくなるヒナの攻撃。しかし、俺はその全てを悉く防いでいく。

 

そうして試合開始から10分が経とうという頃になったところで、

 

「今のお前のレベルは把握した。……そろそろ、終わらせようか」

 

俺は唐突に終了を告げた。

 

「っ!?」

 

今までの防戦から、一気に攻めに転じる。

 

「せっ!」

 

 

――ガガガガッ

 

 

「ぐっ、くぅ……っ!」

 

高速の連続突きで、ヒナの足が完全に止まる。

 

 

――ガガガガッ

 

 

「そこっ!」

 

 

――ガッ

 

 

「しまっ――」

 

俺はその場に釘付けされていたヒナの足を棍で払った。

 

そのままバランスを崩されて倒れるヒナの背後に回って、その身体を棍で上方向に吹き飛ばし、

 

「ぐぅっ!?」

 

「『烈空閃』!」

 

手に持った棍を投げ槍の要領で投擲した。

 

 

――ズンッ

 

 

「ガハッ!?」

 

空中で回避も防御もできず、直撃を喰らうヒナ。

 

 

――パシッ

 

 

それから俺はまず落ちてきた棍を掴み、

 

 

――トサッ

 

 

「よっと」

 

続けて落下してきたヒナをお姫様抱っこの形でキャッチした。

 

『『『………………』』』

 

訪れた決着に観衆が静まりかえり、やがて、

 

『『『ワァァァッ!!』』』

 

歓声が爆発した。

 

「ん、うぅん……」

 

「お、気が付いたみたいだな。大丈夫か?」

 

腕の中で身動ぎしたヒナに問う。

 

「……ん、オウカ?……そうか、拙者は負けたのでござるな」

 

「昔に比べたらかなり強くなってたよ。これは本当」

 

「それでも、お主にはまだ届かなかったでござるよ」

 

「そりゃ、俺だって鍛えてたからな」

 

言いながら、俺はニヤリと笑った。

 

「……ところで、先程からお主との距離が近過ぎるように感じるのでござるが」

 

「ま、こんな状態だからな」

 

「……こんな状態?…………(ボンッ)」

 

自分の置かれている状況を理解した瞬間、ヒナの顔が真っ赤に染まった。

 

「な、な、な……」

 

「おっと、暴れるなよ。このまま医務室に連れてくから」

 

「……すまぬ」

 

「気にするな」

 

そうして、俺達は歓声の止まぬ練兵場を後にした。

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